【フェランチ現象】軽負荷で受電端の電圧が上がる理由とは?ベクトル図・起きる場所・コンデンサの対策
電験の電力科目や、高圧受電設備の進相コンデンサの話に出てくる「フェランチ現象(フェランチ効果)」。用語集では一言でふれられますが、なぜ受け側の電圧が上がるのか、どこで起きるのか、どう防ぐのかまでは分かりにくい言葉です。この記事は、この3つだけにしぼって説明します。
ペン太
ハリタ- ひとことで言うと
- 「フェランチ現象」は、負荷が軽いときに、受け側の電圧が送り側より高くなる現象です。進相コンデンサや長いケーブルの進みの電流が原因です。
- 読み方
- フェランチげんしょう/フェランチこうか
- どこで出てくる?
- 高圧受電設備の進相コンデンサの容量決め、夜間の電圧上昇の原因調査、長い高圧ケーブル、電験の電力科目。
結論
フェランチ現象は、負荷が軽いときに、受け側の電圧が送り側より高くなる現象です。進相コンデンサや長いケーブルの進みの電流が線路のリアクタンスを流れると、その電圧が逆向きになり、受け側を押し上げます。需要家では、APFCで負荷に合わせてコンデンサを切ることで防ぎます。
- ふつう(遅れの電流)は受け側が低く、進みの電流では受け側が高い
- ベクトル図では、X・IcがVrと逆向きになり、Vs<Vr
- 長いケーブル・夜間休日の軽負荷・コンデンサの入れっぱなしで起きる
- 進み力率は料金の得にならず、電圧上昇の弊害だけが残る
この記事に出てくる言葉
読む前に、意味をざっと押さえておくと分かりやすくなります。
| 言葉 | 読み方 | やさしい説明 |
|---|---|---|
| 送電端・受電端 | そうでんたん・じゅでんたん | 電気を送り出す側と、受け取る側。この記事では送り側・受け側と呼ぶ。 |
| リアクタンス(X) | ― | コイルなどが交流の流れをじゃまする働き。線路にもある。 |
| 進みの電流 | すすみのでんりゅう | 電圧より位相が先に進んだ電流。コンデンサに流れる。 |
| 遅れの電流 | おくれのでんりゅう | 電圧より位相が遅れた電流。モーターなどに流れる。 |
| 静電容量 | せいでんようりょう | 電線と大地のあいだに電気がたまる性質。ケーブルが長いほど大きい。 |
| 進相コンデンサ | しんそうコンデンサ | 遅れの電流を打ち消して力率をよくするための機器。 |
| APFC | エーピーエフシー | 自動力率調整装置。力率を見て、コンデンサを自動で入れたり切ったりする。 |
| 分路リアクトル | ぶんろリアクトル | 進みの電流を打ち消すために、線路と大地のあいだに入れるリアクトル。 |
「フェランチ現象」を理解するために、土台になる考え方を3つだけ押さえておきましょう。
交流の電流には「遅れ」と「進み」がある
モーターなどのコイルには電圧より遅れた電流が、コンデンサには電圧より進んだ電流が流れます。ふつうの建物では、遅れの電流がほとんどです。
進みの電流だと、電圧が「上がる」向きになる
遅れの電流なら線路の電圧は受け側の電圧を下げますが、進みの電流だと向きが逆になり、受け側の電圧を押し上げます。
どんな現象? ― 軽負荷で、受け側の電圧が高くなる
ペン太
ハリタふつう、電気を遠くへ送ると、線路で電圧が下がり(電圧降下)、受け側の電圧は送り側より低くなります。ところが、負荷が軽く、進みの電流が多いときは、逆に受け側の電圧が送り側より高くなります。これがフェランチ現象です。
進みの電流は、進相コンデンサや、長いケーブルの静電容量に流れます。昼間はモーターなどの遅れの電流と打ち消し合っていますが、夜間や休日に負荷が止まると、進みの電流だけが残ります。
- ふつうは受け側の電圧が低い(電圧降下)
- 進みの電流が多いと、受け側の電圧が高くなる
- 夜間・休日の軽負荷で起きやすい
なぜ上がる? ― ベクトル図で見る
ペン太
ハリタ受け側の電圧Vrを基準にして、ベクトル図を描きます。進みの電流Icは、Vrより90°進んでいます。線路のリアクタンスXに流れたときの電圧X・Icは、電流よりさらに90°進むので、Vrと正反対の向きになります。
| 電流 | 線路の電圧 X・I の向き | 送り側と受け側 |
|---|---|---|
| 遅れの電流(モーターなど) | Vrと同じ向き | Vs>Vr(受け側が低い) |
| 進みの電流(コンデンサ・ケーブル) | Vrと逆向き | Vs<Vr(受け側が高い) |
送り側の電圧は Vs = Vr − X・Ic となり、受け側のほうが X・Ic だけ高くなります。線路のリアクタンスが大きいほど(長い線路ほど)、進みの電流が大きいほど、電圧の上がり方は大きくなります。
- 進みの電流は、受け側の電圧より90°進む
- X・Icは受け側の電圧と逆向きになる
- Vs=Vr−X・Ic。受け側のほうが高くなる
どこで起きる?どう防ぐ?
ペン太
ハリタフェランチ現象は、進みの電流が負荷より多くなる場所で起きます。電力会社の長い送電線や地中ケーブル、そして需要家(ビル・工場)の進相コンデンサが、主な原因です。
需要家でいちばん多いのは、進相コンデンサの容量が大きすぎたり、負荷が止まっても入れっぱなしだったりするケースです。APFCとVMCで負荷に合わせてコンデンサを自動で切り離し、容量を適正にします。コンデンサと直列リアクトルの考え方は高圧受変電設備の設計マニュアル⑪で説明しています。
- 長いケーブル・軽負荷・コンデンサの入れっぱなし
- 電力会社側は分路リアクトルで打ち消す
- 需要家はAPFCでコンデンサを自動開閉し、容量を適正に
まとめ|結論
結論
フェランチ現象は、負荷が軽いときに受け側の電圧が送り側より高くなる現象です。進みの電流による線路の電圧が受け側の電圧と逆向きになり、受け側を押し上げます。需要家では、進相コンデンサを負荷に合わせて切ることで防ぎます。
夜間の電圧上昇を調べるときは、この順で確かめます。
- 夜間・休日もふくめた電圧と力率の記録
- 進相コンデンサの容量と、入れっぱなしになっていないか
- APFCが付いているか、設定が負荷に合っているか
- 長い高圧ケーブルがないか(静電容量の進みの電流)
よくある質問
フェランチ現象とは何ですか?
送電線やケーブルで、負荷が軽いときに、受け側(受電端)の電圧が送り側(送電端)の電圧より高くなる現象です。フェランチ効果ともいいます。
なぜ受け側の電圧が高くなるのですか?
負荷が軽くなると、ケーブルの静電容量や進相コンデンサによる進みの電流が目立つようになります。進みの電流が線路のリアクタンスを流れると、その電圧が受け側の電圧と逆向きになり、受け側の電圧を押し上げます。
どんなところで起きやすいですか?
長い送電線や地中ケーブル(静電容量が大きい)、夜間や休日などの軽負荷のとき、進相コンデンサの容量が大きすぎて入れっぱなしの高圧受電設備などで起きやすくなります。
需要家(ビルや工場)では、どう防ぎますか?
進相コンデンサを負荷に合わせて切り離すことです。自動力率調整装置(APFC・APFR)でコンデンサを自動開閉し、容量を進み力率にならない適正な値にします。
進み力率になると、電気料金は得になりますか?
なりません。力率割引の計算では、進み力率は100%として扱われるのが一般的です。電圧上昇による機器の劣化や誤動作などの弊害だけが残ります。
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