技術図書館危険物施設の避雷は火花を出さない設計対象の4施設、原則クラスⅠの数値、離してつなぐ設計と点検この資料をスライドで見る資料一覧を見る

危険物施設の避雷設備は、一般の建物とは目的の重みが違います。一般の建物では「建物を燃やさない・壊さない」ですが、危険物施設では雷電流による火花ひとつが、爆発や火災に直結します。この記事では、避雷設備が必要な危険物施設の範囲、適用される規格とLPSクラス、火花を出さないための設計のポイント、許可・検査・定期点検の流れを整理します。

結論

指定数量の10倍以上の製造所・屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所・一般取扱所に避雷設備が必要です。規格はJIS Z 9290-3:2019・原則クラスⅠで、火花を出さないことを最優先に設計します。

  • 根拠は危政令 第9条・第10条・第11条・第19条、技術基準は危規則 第13条の2の3
  • LPSクラスは原則Ⅰ(合理的な理由があればⅡ)
  • 離隔・分離、ボンディング、接続部、SPDを強化
  • 消防法の定期点検(年1回以上)で点検。目視は6か月ごとが望ましい
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
避雷設備が必要な危険物施設として、製造所・屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所・一般取扱所と、根拠の政令の条文、指定数量の10倍以上という条件、技術基準の規則を示した図
避雷設備が必要な危険物施設。指定数量の10倍以上が目安です。
この記事で読めるようになる用語:受雷部 等電位ボンディング SPD 接地抵抗

対象の施設 ― 指定数量の10倍以上

施設 根拠 条件
製造所 危険物の規制に関する政令 第9条第1項第19号 指定数量の10倍以上
屋内貯蔵所 同 第10条第1項第14号 指定数量の10倍以上
屋外タンク貯蔵所 同 第11条第1項第14号 指定数量の10倍以上
一般取扱所 同 第19条第1項(第9条を準用) 指定数量の10倍以上
危険物の規制に関する政令をもとに作成

いずれも、周囲の状況によって安全上支障がない場合は除かれます。どう判断するかは所轄の消防機関と協議します。建築基準法(高さ20m超)の避雷設備とは別の義務なので、低い建物でも対象になります。設置義務の全体像は「避雷設備の設置義務|対象になる建物・工作物・危険物施設と「高さ20m」の測り方」で整理しています。

ここまでのポイント
  • 製造所・屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所・一般取扱所
  • 指定数量の10倍以上。周囲の状況で安全上支障がなければ除く
  • 建築基準法の20mとは別の義務。低い建物でも対象

規格とクラス ― JIS Z 9290-3・原則クラスⅠ

危険物施設の避雷設備の技術基準は、危険物の規制に関する規則 第13条の2の3で、2025年4月1日から JIS Z 9290-3:2019 によることになりました。それまでは JIS A 4201:2003 でした。

LPSクラスは原則クラスⅠで、合理的な理由がある場合はクラスⅡとすることができます。クラスⅠは、回転球体の半径20m、メッシュ5m×5m、引下げ導線の間隔10mと、一般の建物のクラスⅣ(60m・20m×20m・20m)よりずっと守りが厚くなります。

💡 既存の施設は

JIS A 4201:2003 でつくられた既存の危険物施設の扱いや、変更工事のときにどこまで新しい規格に合わせるかは、所轄の消防機関に確認してください。新JISと旧JISの関係は「避雷設備は今は新JISだけ?|JIS Z 9290-3とJIS A 4201の使い分けと、旧JISが残る3つの場面」で整理しています。

ここまでのポイント
  • 技術基準は危規則 第13条の2の3。2025年4月1日から JIS Z 9290-3:2019
  • 原則クラスⅠ(合理的な理由があればⅡ)
  • 既存施設の扱いは所轄の消防機関に確認


設計のポイント ― 雷電流で火花を出さない

危険物施設の避雷設備の設計のポイントとして、LPSクラスⅠ、離隔か分離、ボンディングを確実に、SPD、接続部で火花を出さない、の5項目を並べた図
危険物施設では、雷電流が流れても火花や高温を出さないことが最優先です。
  • 離隔か分離:受雷部と引下げ導線を、危険物がある場所や可燃性の蒸気が出る場所から離します。離隔がとれない場合は、建物から離して立てる分離したLPSも検討します
  • ボンディングを確実に:配管・タンク・架台・ダクトなどの金属を相互につなぎ、雷電流が流れても金属どうしの間で火花が飛ばないようにします
  • 接続部:緩みのない方法(溶接・圧着など)でつなぎ、爆発の危険がある場所には、できるだけ接続部を置きません
  • SPD:計装・制御の信号線と電源線にSPDを付け、雷サージによる誤動作や機器の損傷を防ぎます(「内部雷保護とSPD|雷保護ゾーン(LPZ)・引込口の等電位ボンディング・SPDのクラスと選び方」参照)
  • 接地:施設全体の接地をひとつにまとめ、電位差をつくらないようにします
ここまでのポイント
  • 受雷部・導線を危険な場所から離す。分離したLPSも検討
  • 金属をすべてボンディングし、火花を飛ばさない
  • 接続部は緩みなく、危険な場所に置かない。SPDで計装を守る

屋外タンク ― タンク本体と浮き屋根

屋外タンク貯蔵所では、鋼製のタンク本体を受雷部・引下げ導線として使う考え方が一般的です。その場合、次の点を確認します。

たとえるなら、冬のドアノブで静電気がバチッとくるのと同じです。金属どうしが離れていると、そのすき間で火花が飛びます。つないでおけば、火花は出ません。

浮き屋根式タンクに雷が落ちたとき、ボンディングがないと浮き屋根と側板のすき間で火花が飛び、ボンディングがあると導体を通って流れる様子を比べた動く図解
動く図解:ボンディングがないと、すき間で火花が飛びます。
ここまでのポイント
  • 鋼製タンクは本体を受雷部・導線として使う
  • 鋼板の厚さ、接地、付属物のボンディングを確認
  • 浮き屋根式は浮き屋根と側板のボンディングが要点


許可・検査・点検 ― 消防法の手続きの中で

危険物施設の避雷設備が、設置・変更の許可、完成検査、定期点検(年1回以上)、目視点検(6か月ごとが望ましい)の流れの中で確認されることを示した図
危険物施設の避雷設備は、消防法の許可・検査・定期点検の中で確認されます。
段階 内容
設置・変更の許可 避雷設備の図書を申請に添付。変更工事で避雷設備に手を入れる場合も変更許可の中で扱う
完成検査 設置の状況、接地抵抗などを確認
定期点検 消防法の定期点検(年1回以上)の中で避雷設備も点検し、記録を保存
目視点検 JIS Z 9290-3 では、爆発の危険がある建物は6か月ごとの目視点検と年1回の電気的な点検が望ましい
消防法の手続きと JIS Z 9290-3 の点検の考え方をもとに作成
ペン太ペン太
危険物施設の避雷針も、一般の建物と同じ感覚で設計していいですか?
ハリタハリタ
考え方は同じでも、重みが違います。一般の建物なら多少の火花は建物の損傷で済みますが、危険物施設では爆発につながる。クラスⅠで守りを厚くして、ボンディングと接続部の品質にいちばん気を使ってください。
ここまでのポイント
  • 設置・変更の許可と完成検査で確認される
  • 消防法の定期点検(年1回以上)で点検
  • 目視6か月・電気的な点検1年が望ましい

よくある質問

避雷設備が必要な危険物施設はどれですか?

指定数量の10倍以上の危険物を扱う・貯蔵する製造所(危険物の規制に関する政令 第9条)、屋内貯蔵所(第10条)、屋外タンク貯蔵所(第11条)、一般取扱所(第19条で準用)です。周囲の状況によって安全上支障がない場合は除かれます。

危険物施設の避雷設備はどの規格によりますか?

危険物の規制に関する規則 第13条の2の3により、2025年4月1日から JIS Z 9290-3:2019 によります。それまでは JIS A 4201:2003 でした。既存の施設の扱いは、所轄の消防機関に確認してください。

危険物施設のLPSクラスはいくつですか?

原則としてクラスⅠで、合理的な理由がある場合はクラスⅡとすることができます。一般の建物(クラスⅣ以上)より守りを厚くするのは、雷による火花や高温が、爆発や火災に直結するおそれがあるためです。

危険物施設の避雷設備で、一般の建物と違うところは何ですか?

雷電流による火花や高温を、危険物のある場所で絶対に出さないことが最優先です。受雷部や引下げ導線を危険な場所から離す(分離したLPSも検討する)、配管・タンク・架台のボンディングを確実にする、接続部を緩みのない方法にして危険な場所に置かない、計装・制御の線にSPDを付ける、といった点を強化します。

危険物施設の避雷設備の点検は?

消防法の定期点検(年1回以上)の中で避雷設備も点検します。JIS Z 9290-3 では、爆発の危険がある建物について、6か月ごとの目視点検と年1回の電気的な点検が望ましいとされています。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。