技術図書館避雷設備の材料はさびと電食で選ぶ材料ごとの使える場所、金属屋根の厚さ、異種金属と地際の腐食対策この資料をスライドで見る資料一覧を見る

避雷設備が機能しなくなる原因で多いのは、雷そのものよりさびと電食です。屋上や外壁で風雨にさらされ、土の中に埋まる避雷設備は、材料の選び方と組み合わせを間違えると、数年で導体が細り、接続が外れます。この記事では、材料ごとの使える場所断面積と金属屋根の厚さ、異種金属の注意、腐食しやすい場所の対策を整理します。

結論

材料は銅・アルミ・溶融亜鉛めっき鋼・ステンレスアルミは土とコンクリートに使わない銅とアルミ・亜鉛めっきを直接組み合わせないが基本です。

  • どの材料も空気中は使える。アルミは土・コンクリート不可、亜鉛めっき鋼の土中は要注意
  • 受雷部の断面積・金属屋根の厚さは規格の表で決まる
  • 異種金属はバイメタル継手で。銅を亜鉛めっき・アルミの上に置かない
  • 腐食しやすいのは地際と接続部
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
銅・アルミニウム・溶融亜鉛めっき鋼・ステンレス鋼について、空気中・土の中・コンクリートの中で使えるかを○△×で示した表
材料ごとの使える場所の概略。アルミは土とコンクリートには使えません。
この記事で読めるようになる用語:受雷部 引下げ導線 接地抵抗

材料と使える場所 ― アルミは地面に入れない

材料 特徴 注意
電気を通しやすく、腐食に強い。受雷部・導線・接地極のどこにでも使える 亜鉛めっき鋼やアルミの上に置くと、下の金属を腐食させる
アルミニウム 軽く、加工しやすい。屋上の導体や笠木に多い 土の中・コンクリートの中には使えない。しっくいなどに直接付けない
溶融亜鉛めっき鋼 安価で強い。支持金物や構造体まわり 土の中では腐食しやすい。コンクリート中の鉄筋とつなぐと、とくに注意
ステンレス鋼 腐食に強い。塩害地域や接地極にも使える 価格が高め。ほかの金属との組み合わせを確認
JIS Z 9290-3:2019 の材料及び使用条件の考え方をもとに作成

材料は、置かれる環境(空気中・土の中・コンクリートの中)と、まわりの環境(塩分・硫化物・酸性の土など)で選びます。細かい使用条件は規格の表で確認します。

ここまでのポイント
  • どの材料も空気中では使える
  • アルミは土・コンクリート不可。亜鉛めっき鋼の土中は要注意
  • 環境(塩分・硫化物)で条件が変わる

断面積と厚さ ― 規格の表で決まる

導体の太さと金属板の厚さは、雷電流で溶けたり、熱で周りを傷めたりしないように決められています。

  • 受雷部・突針:銅のテープ状・丸線で50mm²が基本です。ほかの材料は規格の表で確認します
  • 引下げ導線:材料とLPSクラスごとに最小断面積が決まっています。構造体を利用する場合は、鉄骨・鉄筋がこれを満たします
  • 金属の屋根・笠木:受雷部として使うときは、厚さの条件があります
材料 穴があいてはいけない場合 穴があいてもよい場合
4mm以上 0.5mm以上
5mm以上 0.5mm以上
アルミニウム 7mm以上 0.65mm以上
IEC 62305-3 の金属板の最小厚さ。JIS Z 9290-3:2019 の表で確認のこと

「穴があいてはいけない」のは、屋根の下に燃えやすいものがあるなど、雷で穴があくと危険な場合です。一般的な金属屋根や笠木は「穴があいてもよい」側で考えることが多く、その場合は薄い板でも受雷部として使えます。継目は電気的につなぎます。

ここまでのポイント
  • 受雷部は銅50mm²が基本。材料ごとに規格の表で確認
  • 引下げ導線はクラスと材料で最小断面積が決まる
  • 金属屋根は「穴があいてもよいか」で必要な厚さが変わる


異種金属 ― つなぎ方と置き方に注意

銅を亜鉛めっき鋼の上に置く、銅とアルミを直接つなぐ、アルミをコンクリートに直接付ける、の3つのNG例と、バイメタル継手を使うことを示した図
異種金属のNG例。電位差と雨水で、弱い側の金属が腐食します。

ちがう金属を接触させると、電位差で弱い側の金属が溶け出します(電食)。避雷設備では、次の3つに気をつけます。

  • 銅を亜鉛めっき鋼やアルミの上に置かない:雨水に溶けた銅の成分が流れて、下の金属を腐食させます
  • 銅とアルミを直接つながない:電位差が大きく、接続部で電食が進みます
  • アルミをコンクリートやしっくいに直接付けない:アルカリで腐食します

どうしても異種金属をつなぐ場合は、異種金属用(バイメタル)の継手を使います。支持金物やボルトも、導体と同じか相性のよい材料にそろえます。

たとえるなら、さびた鉄の上を流れた雨水が、下のコンクリートに茶色いしみをつけるのと同じです。上の金属の成分が、雨水に運ばれて下の金属を傷めます。

銅の導体の上を流れた雨水が、銅の成分を運んで下の亜鉛めっき鋼に落ち、表面が少しずつ溶けてさびが出る様子の動く図解
動く図解:銅と亜鉛めっき鋼が触れていなくても、雨水が銅の成分を運んで腐食が進みます。
ここまでのポイント
  • 銅を上に、亜鉛めっき・アルミを下に置かない
  • 銅とアルミは直接つながない。バイメタル継手を使う
  • アルミはコンクリート・しっくいに直接付けない

環境で選ぶ ― 海岸・工場・温泉地

環境 選び方
一般の市街地 屋上はアルミ・銅、接地は銅・ステンレス・構造体接地極
海岸・塩害地域 銅・ステンレスを優先。アルミ・亜鉛めっき鋼は腐食が進みやすい
工場・温泉地(硫化物) 銅は硫化物に弱いことがある。ステンレスなど環境に合った材料を規格の表で確認
酸性・高抵抗の土 接地極は銅・ステンレス。接地抵抗低減剤を使う場合は、材料との相性を確認
一般的な選び方の例
ここまでのポイント
  • 海岸は銅・ステンレスを優先
  • 硫化物の多い環境は、規格の表で材料の条件を確認
  • 接地極は銅・ステンレス・構造体接地極が基本

腐食しやすい場所 ― 地際と接続部

鋼製の導線が地上に出る地際と、導線の接続部が腐食しやすいことを示す断面図と、地際の保護、接続部の確実な施工、環境に合った材料の3つの対策
腐食は、地際と接続部から始まります。
  • 地際:鋼製の導線が土やコンクリートから地上に出る部分は、空気・水分・土の境目で腐食が進みやすい場所です。耐食性のテープなどで上下に保護します(銅・ステンレスなら不要)
  • 接続部:圧着・溶接・専用金物で確実に。地中の溶接部には防食処理をします。接続はできるだけ少なくします
  • 支持金物:導体と金物の材料をそろえ、異種金属の接触をつくらないようにします
  • 点検:目視点検で、接続部の緑青や白さび、地際の細りを確認します(「避雷設備の点検|点検の周期・目視と測定の項目・接地抵抗の記録と判断、落雷後の点検」参照)
ペン太ペン太
接地極の抵抗が年々上がっている建物があって…
ハリタハリタ
接地極そのものより、地際や接続部の腐食のことが多いです。試験用接続部を開けて単独で測ると、どの系統が怪しいか絞れます。材料の組み合わせも、竣工図と現物で確認してみてください。
ここまでのポイント
  • 地際は耐食テープなどで保護(銅・ステンレスは不要)
  • 接続は確実に、少なく。地中の溶接部は防食
  • 支持金物も同じ材料にそろえる


よくある質問

避雷設備に使う材料は何がありますか?

主に銅、アルミニウム(合金を含む)、溶融亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼です。どの材料も空気中では使えますが、アルミニウムは土の中やコンクリートの中には使えません。溶融亜鉛めっき鋼は土の中で腐食しやすいので注意が必要です。

銅とアルミニウムをつないでもいいですか?

直接つないではいけません。電位差で電食が進むためです。異種金属をつなぐときは、専用の異種金属用(バイメタル)継手を使います。また、銅を亜鉛めっき鋼やアルミの上に置くと、雨水に溶けた銅の成分で下の金属が腐食するので避けます。

金属の屋根や笠木を受雷部に使うとき、厚さの条件はありますか?

あります。雷で穴があいてはいけない屋根(下に燃えやすいものがある場合など)と、穴があいてもよい屋根で、必要な厚さが違います。IEC 62305-3 では、穴があいてはいけない場合は鋼4mm・銅5mm・アルミニウム7mm以上、穴があいてもよい場合は鋼・銅0.5mm、アルミニウム0.65mm以上とされています。JIS Z 9290-3 の表で確認してください。

海の近くの建物では、どの材料を選びますか?

塩分の多い環境では、銅やステンレス鋼を優先します。アルミニウムや溶融亜鉛めっき鋼は、塩化物の多い環境では腐食が進みやすいためです。支持金物やボルトも、導体と同じか相性のよい材料にそろえます。

接地極まわりで腐食しやすいのはどこですか?

鋼製の導線が土やコンクリートから地上に出る「地際」です。空気と水分と土の境目になるため腐食が進みやすく、耐食性のテープなどで上下に保護します。銅やステンレスの導線なら、この保護は不要です。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。