分電盤の設計|漏電遮断器[ELCB]の設置基準と選定方法について詳しく解説
盤リストを作っていて、「この回路はELCBか、MCCBでいいのか」で手が止まったことはありませんか。決まりは「原則ELCB、ただし免除あり」の形で書かれています。実務では、人が触れる場所の濡れ具合と対地電圧で大半が決まり、そこに住宅の扱いと個別に求められる電路が加わります。ここでは、根拠の条文から判定の手順、ELCBの感度と取付場所の選び方まで、盤リストに落とせる形で整理します。
結論
漏電遮断器は、金属製外箱・60V超の低圧機器の電路には原則施設し、免除に当たる回路だけMCCBにします。
- 根拠は電技解釈 第36条と内線規程 1375-1。どちらも「施設すること。ただし…」の形
- よく使う免除は乾燥した場所と対地電圧150V以下で水気のある場所以外
- 1375-1表:150V以下は水気のある場所だけ、150V超300V以下は湿気の多い場所と水気のある場所がELCB
- 人が条件の悪い場所から触れるなら、悪い場所として扱う
- 単相3線式の200V機器は対地電圧100V。三相200Vは対地200V
- 住宅の電路は原則ELCB。主開閉器が30A以下なら互換性形
- 浴室・屋外のコンセントなど、表とは別に個別に求められる電路もある
- 感電防止なら高感度・高速形(30mA以下・0.1秒以内)。点検できる場所に付ける
- ELCBとMCCBは何が違うの?
- 設置の根拠はどこに書いてある?
- どの場所・電圧で必要?
- 乾燥・湿気・水気はどう見分ける?
- 200Vの機器は150V以下?
- 盤リストでどう判定する?
- 住宅はどう扱う?
- 表のほかに必要な電路は?
- 感度と取付場所はどう選ぶ?
ELCBとMCCB ― 見張っているものが違う
配線用遮断器(MCCB)は、流れすぎ(過負荷・短絡)を見て切ります。漏電遮断器(ELCB)は、それに加えて行きと帰りの電流の差=大地へ漏れた電流を見て切ります。漏れた電流が人の体を通れば感電です。数十mAの漏れはMCCBにとっては小さすぎて、切れません。
だからELCBを付けるかどうかは、その機器に人が触れるか、触れる場所がどれだけ濡れているかで決まります。濡れた手や足は体の抵抗を下げ、同じ漏れでも危険が大きくなるからです。
ペン太
ハリタ- MCCBは流れすぎ、ELCBは漏れを見て切る
- 数十mAの漏れはMCCBでは切れない
- ELCBの要否は、人が触れる場所の濡れ具合で決まる
- 考え方は「原則ELCB、免除だけMCCB」
根拠 ― 電技解釈第36条と内線規程1375-1
法令上の根拠は、電気設備の技術基準の解釈 第36条(地絡遮断装置の施設)です。「金属製外箱を有する使用電圧が60Vを超える低圧の機械器具に接続する電路には、地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること」とし、続けて免除の8つの場合を挙げています。内線規程 1375-1 も同じ組み立てで、実務の判断はこちらで行うのが一般的です。
| 号 | 施設しなくてよい場合(電技解釈 第36条) |
|---|---|
| 一 | 機械器具に簡易接触防護措置を施す場合 |
| 二 | 発電所・変電所・開閉所などに準ずる場所、乾燥した場所、対地電圧150V以下の機器を水気のある場所以外に施設する場合 |
| 三 | 電気用品安全法の二重絶縁構造、ゴム・合成樹脂などの絶縁物で被覆したもの、誘導電動機の2次側電路に接続するもの など |
| 四 | 機械器具のC種・D種接地工事の接地抵抗値が3Ω以下の場合 |
| 五 | 電源側に絶縁変圧器(機器側の線間電圧300V以下)を施設し、機器側の電路を非接地とする場合 |
| 六 | 機械器具内に電気用品安全法の漏電遮断器を取り付け、電源引出部が損傷を受けないように施設する場合 |
| 七 | 太陽電池モジュールに接続する直流電路で、非接地・交流側に絶縁変圧器・対地450V以下の場合 |
| 八 | 管灯回路である場合 |
また、非常用照明・誘導灯・非常用昇降機など、止まると公共の安全に支障が出る機器の電路は、遮断の代わりに警報する装置でよいとされています。漏電で止めるほうが危ない、という考え方です。
出典:電気設備の技術基準の解釈 第36条、内線規程(JEAC 8001)1375-1
- 根拠は電技解釈第36条と内線規程1375-1
- 金属製外箱・60V超の低圧機器の電路が原則の対象
- 免除は8つ。実務でよく使うのは「二」の場所の条件
- 非常照明などは、遮断の代わりに警報でよい
場所×対地電圧の表 ― ○の欄がELCB
内線規程は、よく使う判断を1375-1表にまとめています。縦が電路の対地電圧、横が機器の施設場所です。対地電圧150V以下なら水気のある場所だけ、150Vを超え300V以下なら湿気の多い場所と水気のある場所でELCBを施設します。乾燥した場所は、どちらの電圧でも「―」です。
水気のある場所の欄には「雨線外を含む」とあります。屋外で雨がかかる位置のコンセントや空調室外機は、水気のある場所として読みます。表の下の備考2は「人が、機器を置いた場所より条件の悪い場所から触れるおそれがあるなら、悪い場所として扱う」、備考3は「住宅の電路は、この表にかかわらず原則として漏電遮断器を施設する」です。
ペン太
ハリタ- 150V以下は水気のある場所だけがELCB
- 150V超300V以下は湿気の多い場所と水気のある場所がELCB
- 水気のある場所には雨線外を含む
- 条件の悪い場所から触れるなら悪い場所で扱う。住宅は原則ELCB
場所の区分 ― 乾燥・湿気・水気の見分け方
場所の区分は、内線規程の用語で決まっています。水気のある場所は「水を扱う場所若しくは雨線外、その他の水滴が飛散する場所、又は常時水が漏出し若しくは結露する場所」、湿気の多い場所は「水蒸気が充満する場所又は湿度が著しく高い場所」、乾燥した場所はそれ以外の場所です。
判断に迷うのは、機器は乾燥した場所にあるのに、人は濡れた場所から触れるケースです。給湯室の吊戸棚の中のコンセントでも、使う人がシンクの前に立つなら水気のある場所として扱います。厨房や洗い場は、清掃で水を流すかどうかも確かめておきます。詳しくは湿気の多い場所又は水気のある場所で扱っています。
1つの建物に当てはめると、次のようになります。給湯室のシンクまわりや厨房の洗い場は水気、湯気のこもる調理場は湿気、事務室は乾燥です。屋外は、雨がかかる雨線外が水気で、軒の下の雨線内は水気に当たりません。
- 水気:水を扱う・雨線外・水滴が飛散・常時結露
- 湿気:水蒸気が充満・湿度が著しく高い
- 乾燥:それ以外の場所
- 人が立つ位置の条件で判断する
対地電圧 ― 単相200Vでも、対地は100V
表の「150V以下」は、線と線の間の電圧ではなく、大地との間の電圧です。住宅や店舗の単相3線式100/200Vは中性線を接地しているので、200Vの機器(IHやエアコン)でも対地電圧は100Vです。一方、三相3線式200Vは1線を接地しているので、残りの線の対地電圧は200Vになります。
つまり、同じ「200V」でも、単相3線式なら水気のある場所だけ、三相200Vなら湿気の多い場所でもELCBが要ります。盤リストでは、電圧の欄に「1φ3W」「3φ3W」を書いておくと、判定が速くなります。住宅の屋内の対地電圧の決まりは住宅の屋内電路の対地電圧制限で扱っています。
- 表の電圧は、大地との間の電圧(対地電圧)
- 単相3線式100/200Vは、200V機器でも対地100V
- 三相3線式200Vは、対地200V
- 盤リストに電気方式を書いておくと判定が速い
盤リストでの判定 ― 回路ごとに場所と対地電圧
ここまでを、住宅以外の建物の分電盤で使ってみます。回路ごとに場所と電気方式(対地電圧)を書き、表と免除で判定します。
ELCBは1台あたりの価格が上がるので、全部をELCBにすればよいというものでもありません。ただ、客先や元請の基準で「コンセント回路は全部ELCB」と決まっていることもよくあります。表の判定と基準の両方を満たすように、盤リストを作ります。
ペン太
ハリタ- 回路ごとに場所と電気方式を書いて判定する
- 乾燥した事務室の照明・コンセントはMCCBでよい
- シンクまわり・屋外・厨房・屋上の室外機はELCB
- 客先・元請の基準が厳しければ、そちらに合わせる
住宅は原則ELCB ― 主開閉器に置く
1375-1表の備考3のとおり、住宅の電路は表にかかわらず原則として漏電遮断器を施設します。一般には、住宅用分電盤の主開閉器(主幹)にELCBを置き、分岐はMCCBにします。主開閉器に定格電流30A以下の漏電遮断器を使う場合は、互換性形を使うことになっています(内線規程 1375-2)。単相3線式の主幹には、中性線欠相保護付きを選ぶのが一般的です。
住宅の屋内の対地電圧は原則150V以下ですが、電技解釈 第143条は、定格消費電力2kW以上の機器に限って、専用の回路や漏電遮断器などを条件に150Vを超え300V以下を認めています。単相3線式の200V機器は対地電圧100Vなので、この条件の対象ではありません。
- 住宅の電路は、1375-1表にかかわらず原則ELCB
- 住宅用分電盤の主開閉器にELCB、分岐はMCCBが一般的
- 主開閉器が30A以下なら互換性形
- 対地150V超の屋内電路は2kW以上の機器に限り、条件つきで認められる
表とは別に、個別に求められる電路
1375-1表は「一般的な施設例」です。内線規程は、これとは別に、電路ごとにELCBを求める項を並べています。浴室に施設するコンセント、屋側・屋外のコンセント、雨線外の電動機を持つ機器、プールや噴水のポンプ、建設工事用の電路などです。場所の表で「―」でも、これらに当たればELCBです。
現場で使う移動式・可搬式の電動工具は、労働安全衛生規則 第333条の対象です。対地電圧150Vを超えるもの、または水などで湿潤した場所・鉄板上など導電性の高い場所で使うものには、感電防止用漏電しゃ断装置を接続します(難しい場合の接地による代替も定められています)。仮設の分電盤でELCBが標準になっているのはこのためです。
出典:内線規程 1375節(メーカー技術資料の整理による)、労働安全衛生規則 第333条
- 浴室・屋側・屋外のコンセントは個別にELCB
- 雨線外の電動機、プール・噴水のポンプ、建設工事用の電路も
- 台所のコンセントや湿気の多い場所の機器は「施設が望ましい」
- 移動式・可搬式の電動工具は労働安全衛生規則 第333条
ELCBの選び方 ― 感度電流・動作時間・取付場所
付けると決めたら、仕様を決めます。感電防止が目的なら、高感度・高速形(定格感度電流30mA以下・動作時間0.1秒以内)が基本です。幹線など大容量の回路で、接地が確実な場合は中感度形を使うこともあります。
取付場所は内線規程 1375-3で決まっています。機械器具に内蔵する場合を除き、容易に点検できる場所に施設し、高温・湿気の多い場所・水気のある場所・特に振動の著しい場所は避けます。湿気や水気のある場所に置くときは、防雨型・防浸型の漏電遮断器を選びます。誤動作の原因と対策はELCBが誤動作する主な原因で扱っています。
ペン太
ハリタ- 感電防止は高感度・高速形(30mA以下・0.1秒以内)
- 大容量で接地が確実なら中感度形も
- 容易に点検できる場所に付け、高温・湿気・水気・振動を避ける
- 湿気・水気に置くなら防雨型・防浸型
よくある質問
ELCBとMCCBはどう使い分けますか?
原則はELCBで、免除に当たる回路だけMCCBにします。実務では、乾燥した場所か、対地電圧150V以下で水気のある場所以外なら免除になることが多く、そこがMCCBになります。
漏電遮断器の設置基準はどこに書いてありますか?
電気設備の技術基準の解釈 第36条(地絡遮断装置の施設)と、内線規程 1375-1 です。金属製外箱を有する使用電圧60V超の低圧の機械器具に接続する電路が対象です。
1375-1表の見方を教えてください
縦が対地電圧、横が施設場所です。150V以下は水気のある場所だけ、150Vを超え300V以下は湿気の多い場所と水気のある場所でELCBを施設します。乾燥した場所はどちらも「―」です。
単相200VのIHやエアコンは「150V以下」ですか?
はい。単相3線式100/200Vは中性線を接地しているので、200Vの機器でも対地電圧は100Vです。三相3線式200Vは対地200Vなので「150Vを超え300V以下」の行です。
屋外の空調室外機はどう扱いますか?
雨がかかる位置(雨線外)は水気のある場所です。対地電圧によらず、1375-1表では漏電遮断器を施設する欄になります。
給湯室のコンセントは?
機器が乾燥した位置にあっても、人がシンクの前(水気のある場所)から触れるなら、水気のある場所として扱います(1375-1表 備考2)。
住宅はどうなりますか?
住宅の電路は1375-1表にかかわらず原則として漏電遮断器を施設します。住宅用分電盤の主開閉器にELCBを置き、定格30A以下なら互換性形を使います。
接地抵抗が低ければELCBは不要ですか?
機械器具に施したC種・D種接地工事の接地抵抗値が3Ω以下なら免除になります(電技解釈 第36条 第1項第四号)。ただし3Ωを確実に保つのは簡単ではありません。
二重絶縁の機器なら不要ですか?
電気用品安全法の適用を受ける二重絶縁構造の機器は免除に当たります。ただし、コンセント回路のように何がつながるか分からない回路には使えない考え方です。
非常照明や誘導灯にもELCBを付けますか?
止まると公共の安全に支障が出る機器の電路は、漏電遮断器の代わりに警報する装置でよいとされています。漏電で遮断されて消えるほうが危険だからです。
浴室のコンセントは?
内線規程で個別に漏電遮断器の施設が求められている電路です。場所の表とは別に扱います。
屋外のコンセントは?
屋側・屋外に施設するコンセントも、個別に漏電遮断器の施設が求められる電路として整理されています。雨線外なら表の上でも水気のある場所です。
感度電流は何mAを選べばよいですか?
感電防止が目的なら、定格感度電流30mA以下・動作時間0.1秒以内の高感度・高速形が基本です。
幹線のELCBが一緒に落ちるのはなぜですか?
上位と下位が同じ感度・同じ動作時間だと、下位の漏電で両方が動くことがあります。上位を中感度形や時延形にして動作をずらします。
ELCBはどこに付けてもよいですか?
内線規程 1375-3 で、容易に点検できる場所以外や、高温・湿気の多い場所・水気のある場所・特に振動の著しい場所への施設は避けることになっています。対策がある場合は防雨型・防浸型を使います。
D種接地を500Ωにできるのはどんなときですか?
地絡を生じたときに0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設する場合です(電技解釈 第17条)。
客先の基準が1375-1表より厳しいときは?
基準に合わせます。表は最低限の線引きなので、「コンセントは全部ELCB」などの基準があれば、そちらで盤リストを作ります。
まとめ ― 取り違えやすいところ
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| 全部の回路にELCBが要る | 原則ELCBだが、免除に当たればMCCBでよい |
| 乾燥した場所でも必ずELCB | 1375-1表では乾燥した場所は「―」 |
| 200Vの機器は「150V超」の行 | 単相3線式の200Vは対地100V。三相200Vが150V超 |
| 機器の置き場所だけで判断する | 人が条件の悪い場所から触れるなら、悪い場所で扱う |
| 屋外は乾燥した場所 | 雨線外は水気のある場所 |
| 住宅も表のとおり | 住宅は表にかかわらず原則ELCB(主開閉器) |
| 表で「―」なら必ずMCCB | 浴室・屋外コンセントなど個別の決まりも確認 |
| ELCBはどこに付けてもよい | 点検できる場所。高温・湿気・水気・振動は避ける |
| 手順 | やること | 見るところ |
|---|---|---|
| 1|原則 | 金属製外箱・60V超・低圧の機器の電路か | 電技解釈36条・内線規程1375-1 |
| 2|場所 | 乾燥・湿気・水気。人が立つ位置で | 内線規程1100-1の用語 |
| 3|対地電圧 | 150V以下か、150V超300V以下か | 電気方式(1φ3W・3φ3W) |
| 4|免除 | 8つの免除に当たるか | 電技解釈36条 |
| 5|住宅・個別 | 住宅は原則ELCB。浴室・屋外コンセントなど | 1375-1備考3・1375節の各項 |
| 6|仕様 | 感度・動作時間・取付場所 | 1375-2・1375-3 |
📘 あわせて確認したいこと
分電盤全体の組み立ては幹線設備の設計マニュアル⑥ 分電盤へ落とす、施設と省略の考え方は漏電遮断器の施設と省略、建物側の火災対策は漏電火災警報器の設置基準で扱っています。
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