技術図書館相談は別々に来る|開く図面は同じEV充電・太陽光・蓄電池は、どれも既存の受電設備と幹線の上に乗る。発電は昼、充電需要は夜で相殺できないこの資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事は連載「EV充電・再エネ設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
設計・施工マニュアル EV充電・再エネ設備 第1回 全体像

「駐車場にEV充電器を付けたい」「屋上に太陽光を載せたい」「BCP対策で蓄電池を置きたい」。相談は別々にやってきます。担当部署も違えば、予算の出どころも違う。

ところが設計者が最初に開く資料は、3つとも同じです。単線結線図と、受電容量の余裕。この3つはどれも、既存の受電設備と幹線の上に乗る話だからです。

合言葉は「発電も充電も、最後は幹線の話になる」。

この連載では、EV充電設備・太陽光発電・蓄電池を、それぞれの製品知識としてではなく、既存の電気設備にどう接続するかという観点で扱います。第1回は全体像です。

3つの設備は、電気の流れ方が違う

トピック①:3つの設備は、電気の流れ方が違う
3設備の性格でよくある問題と、その原因・対策を示した図
つまずきやすいところを、先に押さえておきます。

まず整理しておきたいのは、この3つが電気的にまったく別の性格を持っていることです。

  • EV充電設備は、負荷。電気を消費するだけです。ただし1台6kW、急速充電なら数十kWと大きく、しかも数時間にわたって連続で使われる
  • 太陽光発電は、電源。電気を供給します。出力は天候で変わり、発電する時間帯も決まっている
  • 蓄電池は、両方。充電しているときは負荷、放電しているときは電源。時間帯によって役割が入れ替わります

この違いが、設計の入口を分けます。負荷なら容量を足す話、電源なら系統に流し込む話、両方なら時間軸で考える話になる。

EV充電設備・太陽光発電・蓄電池の電気の流れ方の違いを示した図
EVは負荷、太陽光は電源、蓄電池は時間帯で入れ替わります。
3つの設備は、電気の向きが違う 同じ「新設」でも、設計の入口が変わる 系統・幹線 EV充電設備 負荷(消費するだけ) 大きい・長時間 太陽光発電 電源(供給する) 天候と時間帯で変わる 蓄電池 負荷にも電源にもなる 時間帯で役割が入れ替わる 容量を足す話 系統へ流し込む話 時間軸で考える話 この違いが、必要な計算も手続きも分ける
ここまでのポイント
  • EVは負荷、太陽光は電源、蓄電池は時間帯で役割が入れ替わる
  • 負荷なら容量を足す話、電源なら系統に流し込む話
  • 蓄電池は時間軸で考える話になる
  • 設計の入口が、この性格の違いで分かれる

太陽光を載せても、EVの分は相殺できない

トピック②:太陽光でEVの分は相殺できない
相殺の誤解でよくある問題と、その原因・対策を示した図
つまずきやすいところを、先に押さえておきます。

企画段階でいちばん多い誤解がこれです。「太陽光を載せるので、その分EV充電器を足しても受電容量は変わらないはず」。

成り立ちません。理由は2つあります。

ひとつめ。太陽光の発電は、当てにできる容量ではありません。夜間は発電しません。曇れば数分の1になります。受電設備は「発電がゼロのときにも成立すること」を前提に決めるので、太陽光の出力を差し引いた容量にはできない。

ふたつめ。EV充電の需要と、太陽光の発電時間帯がずれます。事業所なら日中に発電しますが、社用車の充電は帰社後の夕方から夜間に集中する。集合住宅なら発電は日中、充電は夜間です。同時に起きていないものを相殺することはできません。

相殺できる場合もある、ただし条件付き
蓄電池を挟んで、日中の発電を夜間の充電に回す構成なら、契約電力の低減には効きます。ただしそれは「容量が要らなくなる」のではなく「ピークの時間帯をずらしている」だけです。設備容量は変わりません。この違いを企画段階で説明できるかどうかで、後戻りの量が変わります。
太陽光の発電時間帯とEV充電の需要時間帯がずれることを24時間で示した図
24時間で見ると、発電のピークと充電のピークは重なりません。
ペン太ペン太
太陽光を載せるので、EV充電器の分は相殺できますよね。
はりたはりた
それが企画段階でいちばん多い誤解なんだ。受電設備は発電がゼロのときにも成立することを前提に決める。
ペン太ペン太
曇りや夜間は発電しない、ということですか。
はりたはりた
それに加えて、発電は日中、充電は夕方から夜間。ピークがずれるから、そもそも打ち消し合わないんだ。
ここまでのポイント
  • 太陽光の発電は、当てにできる容量ではない
  • 夜間は発電せず、曇れば数分の1になる
  • 発電の時間帯と充電の時間帯がずれる
  • 蓄電池を入れても、ピークをずらすだけで設備容量は変わらない

つなぐ場所で、必要な手続きが変わる

トピック③:つなぐ場所で、手続きが変わる
接続点と手続きでよくある問題と、その原因・対策を示した図
つまずきやすいところを、先に押さえておきます。

次に決めるのは接続点です。ここで、その後の設計と手続きがほぼ確定します。

  • 低圧で連系するか、高圧で連系するか。発電設備の出力規模と、既存の受電方式で決まる
  • 逆潮流を出すか、出さないか。余った電気を系統へ流すのか、自家消費だけに留めるのか。出さない場合は逆電力継電器などで確実に止める仕組みが要る
  • 電気事業法上の扱い。発電設備の出力によっては自家用電気工作物となり、保安規程と電気主任技術者が必要になる
  • 電力会社との協議。系統連系は事前協議が前提。申込から連系までの期間が、工程を決める

この4つは相互に絡みます。たとえば「逆潮流なし」を選べば売電収入はなくなりますが、協議は軽くなる。「出力を50kW未満に抑える」という設計判断が、保安体制の要否を左右することもあります。技術的な最適解と、手続き上の現実解が食い違う領域です。

接続点を決めることで確定する4つの分かれ道を示した図
接続点を決めると、この4つがまとめて決まります。
なぜ相殺できないのか 同時に起きていないものは、差し引けない 電力 0時6時12時18時24時 太陽光の発電 EV充電の需要 夕方から夜間に集中 夜間は 発電ゼロ 山と山が重なっていない 発電がゼロの時間に充電需要が立つので、受電容量は差し引けない 重ねるには、あいだに蓄電池が要る
接続点を決めると、手続きが決まる 技術の最適解と、手続きの現実解は食い違うことがある どこにつなぐか 低圧か、高圧か 出力規模と既存の受電方式 逆潮流の有無 売電するか、自家消費だけか 法令上の扱い 自家用電気工作物になるか 連系点の位置 保護継電器の構成 遮断器の選定 逆潮流あり 系統への影響検討が増える 逆潮流なしなら協議は軽い 保安規程 電気主任技術者 定期点検の体制 そして、すべての前提に電力会社との事前協議がある 申込から連系までの期間が、そのまま工程の締切になる
ペン太ペン太
売電はしないそうなので、手続きは軽くなりますよね。
はりたはりた
協議は軽くなる傾向がある。ただし逆潮流を確実に止める仕組みと、その動作確認は要る。
ペン太ペン太
逆電力継電器ですね。
はりたはりた
そう。「つながないから何もしなくてよい」ではない。あと、出力の決め方ひとつで自家用電気工作物になるかどうかも変わる。接続点を決めた時点で、その先がほぼ確定するんだ。
ここまでのポイント
  • 低圧で連系するか、高圧で連系するか
  • 逆潮流を出すか、出さないか。出さないなら確実に止める仕組みが要る
  • 出力によっては自家用電気工作物となり、保安規程と主任技術者が必要になる
  • 系統連系は事前協議が前提。申込から連系までの期間が工程を決める

「同時に使わない」を、どこまで設計に入れるか

トピック④:容量で持つか、制御で持つか
容量か制御かでよくある問題と、その原因・対策を示した図
つまずきやすいところを、先に押さえておきます。

EV充電設備の容量計算でいちばん悩むのが、ここです。

充電器を10台置くとして、10台×6kWで60kWを見込むのか。実際には全台が同時に満充電を要求することは稀ですが、では何割で見るのか。この係数の置き方で、必要な受電容量も幹線サイズも変わります。

近年は、これを設計の想定ではなく制御で解く方法が広がっています。負荷率制御(ダイナミックコントロール)といって、建物全体の使用電力を監視し、余裕のぶんだけEV充電に配分する仕組みです。契約電力を超えそうになったら充電を絞る。

  • 制御を入れる → 受電容量は増やさずに台数を増やせる。ただし充電時間は保証されない
  • 制御を入れない → 台数×定格で見込む。確実だが、受電設備の増強が必要になりやすい
容量で持つ方法と制御で持つ方法を比較した図
どちらが正解かは、その駐車場の使われ方で決まります。

どちらが正解かは、その駐車場の使われ方で決まります。社用車が翌朝までに満充電であればよいなら制御で十分。来客用や急速充電なら、待たせられないので容量を確保する。設備の話ではなく、運用の話として聞き出す必要があります。

企画段階で確認しておきたい5つ
①充電するのは誰の車か(社用・従業員・来客・入居者) ②いつ充電するか(日中・夜間・24時間) ③何時間で充電できればよいか ④将来何台まで増やすか ⑤課金や認証が必要か。この5つが決まらないと、容量も配線ルートも決まりません。
企画段階で確認しておきたい5つの項目を示した図
この5つが決まらないと、容量も配線ルートも決まりません。
容量で持つか、制御で持つか 運用の聞き取りが、そのまま設計条件になる 容量で持つ 台数 × 定格で見込む 10台 × 6kW = 60kW を確保 同時に使っても待たせない 向いている場面 来客用・急速充電 待たせられない運用 受電設備の増強が要ることが多い 制御で持つ 余裕のぶんだけ配分する 建物全体の使用電力を監視し 契約電力を超えそうなら絞る 向いている場面 社用車・従業員用・集合住宅 翌朝までに充電できればよい 受電容量を増やさずに台数を増やせる
ここまでのポイント
  • 容量で持つ:台数×定格。確実だが受電設備の増強が必要になりやすい
  • 制御で持つ:負荷率制御で余裕ぶんを配分。充電時間は保証されない
  • どちらかは、その駐車場の使われ方で決まる
  • 企画段階で、誰の車か・いつ・何時間・将来何台・課金の要否を聞く

この連載で扱うこと

トピック⑤:この連載で扱うこと

全6回で、EV充電・太陽光・蓄電池を既存設備につなぐまでを扱います。

  • 第2回 EV充電設備:充電方式の選定、容量計算と同時使用率、負荷率制御、駐車場の配線と防水
  • 第3回 太陽光の系統連系:パワーコンディショナ、連系点、保護継電器、単独運転防止、協議の流れ
  • 第4回 蓄電池と自立運転:kWとkWhの違い、特定負荷と全負荷、切替時間、設置場所の制約
  • 第5回 保護と施工:電気が両方向に流れる系統の保護協調、直流側の危険、接地とSPD
  • 第6回 申請と図面化:系統連系申請、法令上の届出、単線結線図に何を描くか
EV充電・再エネ設備の設計マニュアル全6回の構成を示した図
全6回で、既存設備につなぐまでを扱います。

製品カタログの読み方ではなく、既存の受電設備と幹線の上にどう載せるかという視点で進めます。

連載の進み方(全6回) 製品ではなく、既存設備への載せ方を扱う 1 全体像 3設備の性格の違いと、受電容量・接続点の決め方(この回) 2 EV充電設備 充電方式・容量計算・同時使用率・負荷率制御・駐車場配線 3 太陽光の系統連系 パワーコンディショナ・連系点・保護継電器・単独運転防止 4 蓄電池と自立運転 kWとkWhの違い・特定負荷と全負荷・切替時間・設置場所 5 保護と施工 両方向に流れる系統の保護協調・直流側の危険・接地とSPD 6 申請と図面化 系統連系申請・法令上の届出・単線結線図に何を描くか

ケース別|こんなとき、どうするか

ここまでの内容を、企画段階で実際に出てくる形に並べ直します。上から順に読む必要はありません。当てはまるものだけ拾ってください。

トピック⑥:ケース別|こんなとき、どうするか
ケース別|こんなとき、どうするか
CASE 1「太陽光を載せるので、EV充電器も足せますよね」と言われた
相殺できないことを、企画段階で説明する。
受電設備は発電がゼロのときにも成立する前提で決めます。加えて、発電のピークと充電のピークがずれます。
CASE 2既存建物にEV充電器を1台だけ足したいと言われた
分電盤の空きではなく、主幹と契約電力の余裕から見る。
普通充電1台(6kW)でも200Vで30A相当を占めます。駐車場までの配線ルートと距離(電圧降下)も早めに見ておきます。
CASE 3売電はしなくてよい、と言われた
「逆潮流なし」を選ぶと、協議は軽くなる。
ただし逆潮流を確実に止める仕組み(逆電力継電器など)と、その動作確認が必要です。「つながないから何もしなくてよい」ではありません。
CASE 4停電時に建物ぜんぶを使いたいと言われた
何を動かしたいのかを先に決めてから、容量を選ぶ。
多くの製品は特定負荷方式です。全負荷対応でも、蓄電池の出力(kW)を超える使い方はできません。
CASE 5補助金の締切があるので、先に機器を決めたいと言われた
受電容量の余裕と接続点の見通しだけは、先に押さえる。
機器を先に決めると検討が後追いになり、受電設備の増強が必要と分かった時点で計画が崩れます。補助金の要件と系統連系の可否は、別々に走る手続きです。

打ち合わせと、図面への記載

打ち合わせで確認すること
施主・企画と
相談の背景(BCP/補助金/脱炭素)と、優先順位
停電時に動かしたい範囲
補助金の要件と申請期限
運用・使う人と
誰の車か(社用・従業員・来客・入居者)
いつ充電するか、何時間で足りればよいか
将来何台まで増やすか、課金・認証の要否
電力会社と
事前協議の要否と、申込から連系までの期間
逆潮流を出すか、出さないか
保安・主任技術者と
出力規模による自家用電気工作物の扱いと、保安規程
建築・意匠と
屋上の荷重と防水の責任区分
駐車区画と、配線ルートのスペース
図面・書類への書き方
単線結線図
接続点、逆潮流の有無、既存幹線との関係
受電容量の検討
発電がゼロのときにも成立すること
EVは容量で持つか、制御で持つか
容量計算書
同時使用率と、その根拠となる運用の聞き取り
保護
逆電力継電器などの整定と、既存遮断器との協調
工程
連系希望日から逆算した、申込日と設計完了日
将来計画
予備の管路と盤スペース、幹線の余裕

「容量で持つか、制御で持つか」は、設備ではなく運用の判断です。聞き取りの内容を一行残しておくと、次の担当者が同じ質問から始めずに済みます。

ペン太ペン太
充電器10台なら、10台×6kWで60kWですか。
はりたはりた
それが「容量で持つ」やり方。確実だけど、受電設備の増強が必要になりやすい。
ペン太ペン太
ほかに方法があるんですか。
はりたはりた
制御で持つという手がある。建物全体の使用電力を見て、余裕ぶんを充電に配分する。ただし充電時間は保証されない。社用車で翌朝まででよいなら成立するけど、来客用には向かない。設備じゃなくて運用の話として聞き出すんだ。

まとめ

トピック⑦:まとめ
  • EV充電・太陽光・蓄電池は、相談は別々に来るが、設計者が最初に見るのは同じ単線結線図と受電容量
  • 3つは電気的な性格が違う。EVは負荷、太陽光は電源、蓄電池は時間帯で入れ替わる
  • 太陽光を載せてもEVの分は相殺できない。発電はゼロになる時間があり、需要とピークがずれる
  • 接続点を決めると手続きが決まる。低圧か高圧か、逆潮流の有無、法令上の扱い、電力会社との協議
  • EVの容量は「容量で持つ」か「制御で持つ」かの二択。どちらかは運用の聞き取りで決まる
  • 系統連系の協議期間が、そのまま工程の締切になる

よくある質問

Q1. 既存建物にEV充電器を1台だけ足したいのですが、何から確認しますか?

主幹ブレーカーの容量と、分電盤の空き回路、そして契約電力の余裕です。普通充電1台(6kW)でも、200Vで30A相当を占めます。分電盤に空きがあっても、幹線や主幹に余裕がなければ増設できません。あわせて、駐車場までの配線ルートと距離(電圧降下)も早めに見ておいてください。

Q2. 「逆潮流なし」にすると、何が楽になりますか?

系統への影響検討が軽くなり、協議期間も短くなる傾向があります。売電しないので収入はありませんが、自家消費で電気料金を下げる目的なら成立します。ただし、逆潮流を確実に止める仕組み(逆電力継電器など)と、その動作確認が必要になります。「つながないから何もしなくてよい」ではありません。

Q3. 蓄電池を入れれば、停電しても全部使えますか?

多くの製品は、あらかじめ決めた回路だけを生かす「特定負荷」方式です。全負荷に対応する製品もありますが、その場合でも蓄電池の出力(kW)を超える使い方はできません。停電時に何を動かしたいのかを先に決めて、そこから容量を選ぶのが順番です。第4回で詳しく扱います。

Q4. 補助金の申請があるので、先に機器を決めたいのですが。

気持ちは分かりますが、機器を先に決めると接続点や容量の検討が後追いになり、受電設備の増強が必要だと分かった時点で計画が崩れます。最低限、受電容量の余裕と接続点の見通しだけは先に押さえてください。補助金の要件と系統連系の可否は、別々に走る手続きです。

次回予告

トピック⑧:次回予告

第2回は「EV充電設備」です。普通充電と急速充電の使い分け、コンセント型とケーブル型、容量計算と同時使用率の置き方、負荷率制御の使いどころ、そして駐車場という屋外環境での配線・防水・防犯まで扱います。

合言葉は「台数ではなく、同時に何台使うか」。→ 第2回 EV充電設備 を公開しました。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。