【EV充電・再エネ設備の設計マニュアル①】全体像 ― 発電も充電も、最後は幹線の話になる
「駐車場にEV充電器を付けたい」「屋上に太陽光を載せたい」「BCP対策で蓄電池を置きたい」。相談は別々にやってきます。担当部署も違えば、予算の出どころも違う。
ところが設計者が最初に開く資料は、3つとも同じです。単線結線図と、受電容量の余裕。この3つはどれも、既存の受電設備と幹線の上に乗る話だからです。
合言葉は「発電も充電も、最後は幹線の話になる」。
この連載では、EV充電設備・太陽光発電・蓄電池を、それぞれの製品知識としてではなく、既存の電気設備にどう接続するかという観点で扱います。第1回は全体像です。
- EV・太陽光・蓄電池は、電気の流れ方が違う
- 太陽光を載せても、EVの分は相殺できない
- 接続点を決めると、手続きがほぼ確定する
- 逆潮流を出すか、出さないか
- 容量で持つか、制御で持つか
- この連載の全6回で扱うこと
- ケース別|こんなとき、どうするか
3つの設備は、電気の流れ方が違う
まず整理しておきたいのは、この3つが電気的にまったく別の性格を持っていることです。
- EV充電設備は、負荷。電気を消費するだけです。ただし1台6kW、急速充電なら数十kWと大きく、しかも数時間にわたって連続で使われる
- 太陽光発電は、電源。電気を供給します。出力は天候で変わり、発電する時間帯も決まっている
- 蓄電池は、両方。充電しているときは負荷、放電しているときは電源。時間帯によって役割が入れ替わります
この違いが、設計の入口を分けます。負荷なら容量を足す話、電源なら系統に流し込む話、両方なら時間軸で考える話になる。
- EVは負荷、太陽光は電源、蓄電池は時間帯で役割が入れ替わる
- 負荷なら容量を足す話、電源なら系統に流し込む話
- 蓄電池は時間軸で考える話になる
- 設計の入口が、この性格の違いで分かれる
太陽光を載せても、EVの分は相殺できない
企画段階でいちばん多い誤解がこれです。「太陽光を載せるので、その分EV充電器を足しても受電容量は変わらないはず」。
成り立ちません。理由は2つあります。
ひとつめ。太陽光の発電は、当てにできる容量ではありません。夜間は発電しません。曇れば数分の1になります。受電設備は「発電がゼロのときにも成立すること」を前提に決めるので、太陽光の出力を差し引いた容量にはできない。
ふたつめ。EV充電の需要と、太陽光の発電時間帯がずれます。事業所なら日中に発電しますが、社用車の充電は帰社後の夕方から夜間に集中する。集合住宅なら発電は日中、充電は夜間です。同時に起きていないものを相殺することはできません。
ペン太
はりた
ペン太
はりた- 太陽光の発電は、当てにできる容量ではない
- 夜間は発電せず、曇れば数分の1になる
- 発電の時間帯と充電の時間帯がずれる
- 蓄電池を入れても、ピークをずらすだけで設備容量は変わらない
つなぐ場所で、必要な手続きが変わる
次に決めるのは接続点です。ここで、その後の設計と手続きがほぼ確定します。
- 低圧で連系するか、高圧で連系するか。発電設備の出力規模と、既存の受電方式で決まる
- 逆潮流を出すか、出さないか。余った電気を系統へ流すのか、自家消費だけに留めるのか。出さない場合は逆電力継電器などで確実に止める仕組みが要る
- 電気事業法上の扱い。発電設備の出力によっては自家用電気工作物となり、保安規程と電気主任技術者が必要になる
- 電力会社との協議。系統連系は事前協議が前提。申込から連系までの期間が、工程を決める
この4つは相互に絡みます。たとえば「逆潮流なし」を選べば売電収入はなくなりますが、協議は軽くなる。「出力を50kW未満に抑える」という設計判断が、保安体制の要否を左右することもあります。技術的な最適解と、手続き上の現実解が食い違う領域です。
ペン太
はりた
ペン太
はりた- 低圧で連系するか、高圧で連系するか
- 逆潮流を出すか、出さないか。出さないなら確実に止める仕組みが要る
- 出力によっては自家用電気工作物となり、保安規程と主任技術者が必要になる
- 系統連系は事前協議が前提。申込から連系までの期間が工程を決める
「同時に使わない」を、どこまで設計に入れるか
EV充電設備の容量計算でいちばん悩むのが、ここです。
充電器を10台置くとして、10台×6kWで60kWを見込むのか。実際には全台が同時に満充電を要求することは稀ですが、では何割で見るのか。この係数の置き方で、必要な受電容量も幹線サイズも変わります。
近年は、これを設計の想定ではなく制御で解く方法が広がっています。負荷率制御(ダイナミックコントロール)といって、建物全体の使用電力を監視し、余裕のぶんだけEV充電に配分する仕組みです。契約電力を超えそうになったら充電を絞る。
- 制御を入れる → 受電容量は増やさずに台数を増やせる。ただし充電時間は保証されない
- 制御を入れない → 台数×定格で見込む。確実だが、受電設備の増強が必要になりやすい
どちらが正解かは、その駐車場の使われ方で決まります。社用車が翌朝までに満充電であればよいなら制御で十分。来客用や急速充電なら、待たせられないので容量を確保する。設備の話ではなく、運用の話として聞き出す必要があります。
- 容量で持つ:台数×定格。確実だが受電設備の増強が必要になりやすい
- 制御で持つ:負荷率制御で余裕ぶんを配分。充電時間は保証されない
- どちらかは、その駐車場の使われ方で決まる
- 企画段階で、誰の車か・いつ・何時間・将来何台・課金の要否を聞く
この連載で扱うこと
全6回で、EV充電・太陽光・蓄電池を既存設備につなぐまでを扱います。
- 第2回 EV充電設備:充電方式の選定、容量計算と同時使用率、負荷率制御、駐車場の配線と防水
- 第3回 太陽光の系統連系:パワーコンディショナ、連系点、保護継電器、単独運転防止、協議の流れ
- 第4回 蓄電池と自立運転:kWとkWhの違い、特定負荷と全負荷、切替時間、設置場所の制約
- 第5回 保護と施工:電気が両方向に流れる系統の保護協調、直流側の危険、接地とSPD
- 第6回 申請と図面化:系統連系申請、法令上の届出、単線結線図に何を描くか
製品カタログの読み方ではなく、既存の受電設備と幹線の上にどう載せるかという視点で進めます。
ケース別|こんなとき、どうするか
ここまでの内容を、企画段階で実際に出てくる形に並べ直します。上から順に読む必要はありません。当てはまるものだけ拾ってください。
打ち合わせと、図面への記載
- 施主・企画と
- 相談の背景(BCP/補助金/脱炭素)と、優先順位
- 停電時に動かしたい範囲
- 補助金の要件と申請期限
- 運用・使う人と
- 誰の車か(社用・従業員・来客・入居者)
- いつ充電するか、何時間で足りればよいか
- 将来何台まで増やすか、課金・認証の要否
- 電力会社と
- 事前協議の要否と、申込から連系までの期間
- 逆潮流を出すか、出さないか
- 保安・主任技術者と
- 出力規模による自家用電気工作物の扱いと、保安規程
- 建築・意匠と
- 屋上の荷重と防水の責任区分
- 駐車区画と、配線ルートのスペース
- 単線結線図
- 接続点、逆潮流の有無、既存幹線との関係
- 受電容量の検討
- 発電がゼロのときにも成立すること
- EVは容量で持つか、制御で持つか
- 容量計算書
- 同時使用率と、その根拠となる運用の聞き取り
- 保護
- 逆電力継電器などの整定と、既存遮断器との協調
- 工程
- 連系希望日から逆算した、申込日と設計完了日
- 将来計画
- 予備の管路と盤スペース、幹線の余裕
「容量で持つか、制御で持つか」は、設備ではなく運用の判断です。聞き取りの内容を一行残しておくと、次の担当者が同じ質問から始めずに済みます。
ペン太
はりた
ペン太
はりたまとめ
- EV充電・太陽光・蓄電池は、相談は別々に来るが、設計者が最初に見るのは同じ単線結線図と受電容量
- 3つは電気的な性格が違う。EVは負荷、太陽光は電源、蓄電池は時間帯で入れ替わる
- 太陽光を載せてもEVの分は相殺できない。発電はゼロになる時間があり、需要とピークがずれる
- 接続点を決めると手続きが決まる。低圧か高圧か、逆潮流の有無、法令上の扱い、電力会社との協議
- EVの容量は「容量で持つ」か「制御で持つ」かの二択。どちらかは運用の聞き取りで決まる
- 系統連系の協議期間が、そのまま工程の締切になる
よくある質問
Q1. 既存建物にEV充電器を1台だけ足したいのですが、何から確認しますか?
主幹ブレーカーの容量と、分電盤の空き回路、そして契約電力の余裕です。普通充電1台(6kW)でも、200Vで30A相当を占めます。分電盤に空きがあっても、幹線や主幹に余裕がなければ増設できません。あわせて、駐車場までの配線ルートと距離(電圧降下)も早めに見ておいてください。
Q2. 「逆潮流なし」にすると、何が楽になりますか?
系統への影響検討が軽くなり、協議期間も短くなる傾向があります。売電しないので収入はありませんが、自家消費で電気料金を下げる目的なら成立します。ただし、逆潮流を確実に止める仕組み(逆電力継電器など)と、その動作確認が必要になります。「つながないから何もしなくてよい」ではありません。
Q3. 蓄電池を入れれば、停電しても全部使えますか?
多くの製品は、あらかじめ決めた回路だけを生かす「特定負荷」方式です。全負荷に対応する製品もありますが、その場合でも蓄電池の出力(kW)を超える使い方はできません。停電時に何を動かしたいのかを先に決めて、そこから容量を選ぶのが順番です。第4回で詳しく扱います。
Q4. 補助金の申請があるので、先に機器を決めたいのですが。
気持ちは分かりますが、機器を先に決めると接続点や容量の検討が後追いになり、受電設備の増強が必要だと分かった時点で計画が崩れます。最低限、受電容量の余裕と接続点の見通しだけは先に押さえてください。補助金の要件と系統連系の可否は、別々に走る手続きです。
次回予告
第2回は「EV充電設備」です。普通充電と急速充電の使い分け、コンセント型とケーブル型、容量計算と同時使用率の置き方、負荷率制御の使いどころ、そして駐車場という屋外環境での配線・防水・防犯まで扱います。
合言葉は「台数ではなく、同時に何台使うか」。→ 第2回 EV充電設備 を公開しました。
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