この記事は連載「EV充電・再エネ設備の設計マニュアル」(全4回)の1本です。

「駐車場にEV充電器を付けたい」「屋上に太陽光を載せたい」「BCP対策で蓄電池を置きたい」。相談は別々にやってきます。担当部署も違えば、予算の出どころも違う。

ところが設計者が最初に開く資料は、3つとも同じです。単線結線図と、受電容量の余裕。この3つはどれも、既存の受電設備と幹線の上に乗る話だからです。

合言葉は「発電も充電も、最後は幹線の話になる」。

この連載では、EV充電設備・太陽光発電・蓄電池を、それぞれの製品知識としてではなく、既存の電気設備にどう接続するかという観点で扱います。第1回は全体像です。

3つの設備は、電気の流れ方が違う

まず整理しておきたいのは、この3つが電気的にまったく別の性格を持っていることです。

  • EV充電設備は、負荷。電気を消費するだけです。ただし1台6kW、急速充電なら数十kWと大きく、しかも数時間にわたって連続で使われる
  • 太陽光発電は、電源。電気を供給します。出力は天候で変わり、発電する時間帯も決まっている
  • 蓄電池は、両方。充電しているときは負荷、放電しているときは電源。時間帯によって役割が入れ替わります

この違いが、設計の入口を分けます。負荷なら容量を足す話、電源なら系統に流し込む話、両方なら時間軸で考える話になる。

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太陽光を載せても、EVの分は相殺できない

企画段階でいちばん多い誤解がこれです。「太陽光を載せるので、その分EV充電器を足しても受電容量は変わらないはず」。

成り立ちません。理由は2つあります。

ひとつめ。太陽光の発電は、当てにできる容量ではありません。夜間は発電しません。曇れば数分の1になります。受電設備は「発電がゼロのときにも成立すること」を前提に決めるので、太陽光の出力を差し引いた容量にはできない。

ふたつめ。EV充電の需要と、太陽光の発電時間帯がずれます。事業所なら日中に発電しますが、社用車の充電は帰社後の夕方から夜間に集中する。集合住宅なら発電は日中、充電は夜間です。同時に起きていないものを相殺することはできません。

相殺できる場合もある、ただし条件付き
蓄電池を挟んで、日中の発電を夜間の充電に回す構成なら、契約電力の低減には効きます。ただしそれは「容量が要らなくなる」のではなく「ピークの時間帯をずらしている」だけです。設備容量は変わりません。この違いを企画段階で説明できるかどうかで、後戻りの量が変わります。

つなぐ場所で、必要な手続きが変わる

次に決めるのは接続点です。ここで、その後の設計と手続きがほぼ確定します。

  • 低圧で連系するか、高圧で連系するか。発電設備の出力規模と、既存の受電方式で決まる
  • 逆潮流を出すか、出さないか。余った電気を系統へ流すのか、自家消費だけに留めるのか。出さない場合は逆電力継電器などで確実に止める仕組みが要る
  • 電気事業法上の扱い。発電設備の出力によっては自家用電気工作物となり、保安規程と電気主任技術者が必要になる
  • 電力会社との協議。系統連系は事前協議が前提。申込から連系までの期間が、工程を決める

この4つは相互に絡みます。たとえば「逆潮流なし」を選べば売電収入はなくなりますが、協議は軽くなる。「出力を50kW未満に抑える」という設計判断が、保安体制の要否を左右することもあります。技術的な最適解と、手続き上の現実解が食い違う領域です。

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「同時に使わない」を、どこまで設計に入れるか

EV充電設備の容量計算でいちばん悩むのが、ここです。

充電器を10台置くとして、10台×6kWで60kWを見込むのか。実際には全台が同時に満充電を要求することは稀ですが、では何割で見るのか。この係数の置き方で、必要な受電容量も幹線サイズも変わります

近年は、これを設計の想定ではなく制御で解く方法が広がっています。負荷率制御(ダイナミックコントロール)といって、建物全体の使用電力を監視し、余裕のぶんだけEV充電に配分する仕組みです。契約電力を超えそうになったら充電を絞る。

  • 制御を入れる → 受電容量は増やさずに台数を増やせる。ただし充電時間は保証されない
  • 制御を入れない → 台数×定格で見込む。確実だが、受電設備の増強が必要になりやすい

どちらが正解かは、その駐車場の使われ方で決まります。社用車が翌朝までに満充電であればよいなら制御で十分。来客用や急速充電なら、待たせられないので容量を確保する。設備の話ではなく、運用の話として聞き出す必要があります。

企画段階で確認しておきたい5つ
①充電するのは誰の車か(社用・従業員・来客・入居者) ②いつ充電するか(日中・夜間・24時間) ③何時間で充電できればよいか ④将来何台まで増やすか ⑤課金や認証が必要か。この5つが決まらないと、容量も配線ルートも決まりません。
× 10 × 6kW 60kW 使 使

この連載で扱うこと

全6回で、EV充電・太陽光・蓄電池を既存設備につなぐまでを扱います。

  • 第2回 EV充電設備:充電方式の選定、容量計算と同時使用率、負荷率制御、駐車場の配線と防水
  • 第3回 太陽光の系統連系:パワーコンディショナ、連系点、保護継電器、単独運転防止、協議の流れ
  • 第4回 蓄電池と自立運転:kWとkWhの違い、特定負荷と全負荷、切替時間、設置場所の制約
  • 第5回 保護と施工:電気が両方向に流れる系統の保護協調、直流側の危険、接地とSPD
  • 第6回 申請と図面化:系統連系申請、法令上の届出、単線結線図に何を描くか

製品カタログの読み方ではなく、既存の受電設備と幹線の上にどう載せるかという視点で進めます。

6 1 3 2 EV 使 3 4 kWkWh 5 調SPD 6

まとめ

  • EV充電・太陽光・蓄電池は、相談は別々に来るが、設計者が最初に見るのは同じ単線結線図と受電容量
  • 3つは電気的な性格が違う。EVは負荷、太陽光は電源、蓄電池は時間帯で入れ替わる
  • 太陽光を載せてもEVの分は相殺できない。発電はゼロになる時間があり、需要とピークがずれる
  • 接続点を決めると手続きが決まる。低圧か高圧か、逆潮流の有無、法令上の扱い、電力会社との協議
  • EVの容量は「容量で持つ」か「制御で持つ」かの二択。どちらかは運用の聞き取りで決まる
  • 系統連系の協議期間が、そのまま工程の締切になる

よくある質問

Q1. 既存建物にEV充電器を1台だけ足したいのですが、何から確認しますか?

主幹ブレーカーの容量と、分電盤の空き回路、そして契約電力の余裕です。普通充電1台(6kW)でも、200Vで30A相当を占めます。分電盤に空きがあっても、幹線や主幹に余裕がなければ増設できません。あわせて、駐車場までの配線ルートと距離(電圧降下)も早めに見ておいてください。

Q2. 「逆潮流なし」にすると、何が楽になりますか?

系統への影響検討が軽くなり、協議期間も短くなる傾向があります。売電しないので収入はありませんが、自家消費で電気料金を下げる目的なら成立します。ただし、逆潮流を確実に止める仕組み(逆電力継電器など)と、その動作確認が必要になります。「つながないから何もしなくてよい」ではありません。

Q3. 蓄電池を入れれば、停電しても全部使えますか?

多くの製品は、あらかじめ決めた回路だけを生かす「特定負荷」方式です。全負荷に対応する製品もありますが、その場合でも蓄電池の出力(kW)を超える使い方はできません。停電時に何を動かしたいのかを先に決めて、そこから容量を選ぶのが順番です。第4回で詳しく扱います。

Q4. 補助金の申請があるので、先に機器を決めたいのですが。

気持ちは分かりますが、機器を先に決めると接続点や容量の検討が後追いになり、受電設備の増強が必要だと分かった時点で計画が崩れます。最低限、受電容量の余裕と接続点の見通しだけは先に押さえてください。補助金の要件と系統連系の可否は、別々に走る手続きです。

次回予告

第2回は「EV充電設備」です。普通充電と急速充電の使い分け、コンセント型とケーブル型、容量計算と同時使用率の置き方、負荷率制御の使いどころ、そして駐車場という屋外環境での配線・防水・防犯まで扱います。

合言葉は「台数ではなく、同時に何台使うか」。→ 第2回 EV充電設備 を公開しました。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。