
PASは需要家の心臓である
PASの定格電流ってどうやって求めるの?
その他の機能ってどうやって決めてるの?
定格電流は次の要素より算出し求めたサイズの大きいほうを採用します
- 負荷電流より算出する方法
- 受電点の短絡電流により算出する方法
PASの仕様の選定方法は下記項目から確認しましょう!
定格電圧、定格電流 | ![]() |
制御装置の電源の取り方(VT内蔵の要否) | ![]() |
地絡リレーの方向性の要否 | ![]() |
LA内蔵の要否 | ![]() |
ケースの選定 | ![]() |
設置環境の確認 | ![]() |
- PASの電流値の計算方法を知りたい方
- PASの電圧の計算方法を知りたい方
- PASのVTの基準について知りたい方…など
- PASの定格電流の求め方
- PASの定格電圧の求め方
- 方向性の選定方法
- LAの選定方法
- VTの選定方法
- 一般防水・SUSの選定方法
PAS(気中負荷開閉器)の用途について


PASの役割とは?|地絡事故から配電線を守る重要な装置
高圧受電設備において重要な役割を担うPAS(気中負荷開閉器)。
名前は聞いたことがあっても、「どこに使われるの?」「何のためにあるの?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
この記事では、PASの基本的な用途と働きについて、わかりやすく解説します。
✅ PASの主な用途とは?
PASは、需要家設備で地絡事故などの電気事故が発生した際、事故の波及を防ぐために設置される装置です。
特に、キュービクル(高圧受電設備)と電力会社の配電線の間に設置され、事故電流の遮断を担当します。
⚡ なぜPASが必要なの?
通常、高圧ケーブルに地絡や短絡などの事故が発生した場合は、キュービクル側の保護装置だけでは対応できません。
その理由は次の通りです:
-
高圧ケーブル内での事故は、受電設備側では検知しづらい
-
このまま放置すると、事故が配電用変電所(電力会社側)まで波及する危険性がある
→ このような事故の波及を電力会社の供給系統に影響させないために、PASが設置されます。
🔍 PASの内部機能:SOGとの連動
PASには、**SOG(静止形地絡方向継電器)**が搭載されています。
-
SOGが地絡電流を検知すると、信号をPASに送る
-
PASはその信号を受けて、遮断器を作動させ、回路を遮断
これにより、キュービクルの手前で事故電流がストップされ、事故が配電線側に伝わるのを防ぎます。
🏢 電力会社との「責任分界点」にもなる
PASは、**電力会社との責任分界点(責任の境界)**になることが多いです。
なぜなら、PASが遮断に成功すれば、配電用変電所では遮断動作を行わずに済むからです。
☑️「PASより内側(キュービクル側)」は需要家責任
☑️「PASより外側(電柱・配電線)」は電力会社責任
✍️ まとめ:PASの役割と設置理由
内容 | 説明 |
---|---|
主な用途 | 地絡・短絡事故の遮断と波及防止 |
設置位置 | 電力会社の引込点とキュービクルの間 |
SOG機能 | 地絡電流を検知し、PASへ遮断信号を送る |
重要性 | 配電線側の広範囲停電を防止できる |
責任分界点 | 電力会社と需要家の設備境界に設置されることが多い |

PAS(気中負荷開閉器)って何の略?
Pole | 柱、ポール | ![]() |
mounted | 乗る | ![]() |
Air | 空気 | ![]() |
Insulatated | 絶縁 | |
Switch | 切り替え、開閉器 | ![]() |
PAS及び関連機器の選定【ポイント】
PASには定格電流やLA・VTなどといった関連機器の仕様を選定する必要があります。各項目には選定の基準があり設置条件によって内容が異なってきます。
選定方法をよく理解し設置状況にそぐわない仕様のものを選定しないよう注意しましょう。
定格電圧、定格電流 | ![]() |
制御装置の電源の取り方(VT内蔵の要否) | ![]() |
地絡リレーの方向性の要否 | ![]() |
LA内蔵の要否 | ![]() |
ケースの選定 | ![]() |
設置環境の確認 | ![]() |
規格容量の計算方法について

定格電圧の選定
6.6[kV]×1.2/1.1=7.2[kV]
※定格電圧の標準値は、常時の系統電圧の変動を考慮し、公称電圧の1.2/1.1倍としている。
定格電流の選定(200A・300A・400A)
- 負荷電流より算出する方法
- 受電点の短絡電流により算出する方法
PASの定格電流は、次の2つの項目より選定する必要が各々の計算結果の電流値が大きいほうに合わせてPASの定格電流を選定します。
負荷電流より算出する方法
申請建物全体の負荷電流値を算出し負荷電流以上の定格電流値の容量を選定しましょう。
I[A]={契約電力/(√3×6.6×0.9)}×1.5
- I:負荷電流
- 0.9:回路力率
- 1.5:負荷の変動率等を考慮した安全係数
※契約電力が決定していない場合、変圧器総容量から負荷電流を算出する
(最大負荷容量となるため負荷電流が大きくなるため要検討)
定格電流の計算例|契約電力から算出する場合
契約容量500[kVA]の場合・・・
I={500/(√3×6.6×0.9)}×1.5
=(500/10.2884)×1.5
=72.9[A]
定格電流の計算例(契約電力が不明な場合)
建物の最大負荷電流はトランス容量によって選定することができます。
各トランスごとの電流値を計算し合計したものが建物の最大負荷電流値になります。

- 単相変圧器一次電流=変圧器容量÷6.6kV
- 三相変圧器一次電流=変圧器容量÷√3×6.6kV
計算例
- 単相変圧器 300KVA×2台
- 三相変圧器 200kVA×3台
- 単相トランス300KVA÷6.6kV=45.5A
- 単相トランス300KVA÷6.6kV=45.5A
- 3相トランス200KVA÷(√3×6.6kV)=17.5A
- 3相トランス200KVA÷(√3×6.6kV)=17.5A
- 3相トランス200KVA÷(√3×6.6kV)=17.5A
最大負荷電流値=45.5+45.5+17.5+17.5+17.5=126A
各トランス容量から一次側電流値を計算し合計値を建物の最大負荷電流値と仮定します。

受電点の短絡電流による算出
受電点の短絡電流[kA](MVA) | PAS定格電流[A] |
8未満(100) | 200 |
8以上12.5以下(160) | 300、400 |
短絡容量は変電所が近いと大きくなる傾向にあります。
計画建物の近くに変電所・発電所ある場合、特に注意して確認しましょう。
受電点の短絡容量の確認
短絡電流を求めるために受電点の短絡容量を確認する必要があります。引込点の最寄りの電柱等に記載されている電柱番号を管轄の電力会社に問い合わせ短絡容量の確認を行いましょう。電柱番号の見分け方については各電力会社のホームページに記載されています。
電柱番号の確認
⇓
管轄の電力会社に問い合わせ
(短絡容量の聞き取り)
⇓
短絡容量により短絡電流の算出

受電点の短絡電流による定格電流の求め方
受電点の短絡電流が
- 8[kA]未満の場合 =200[A]
- 8以上12.5[kA]以下の場合 =300[A]
仮に受電点の短絡電流値が9.0[kA]の場合、
8以上12.5[kA]以下の範囲に該当するため300[A]を選定します。
計算結果を比較
上記2つの項目から値の大きいほうをPASの定格電流として選定します
- 負荷電流より算出した値(契約容量より)
72.9[A]=200[A]
- 受電点の短絡電流により算出した値
9.0[kA]=300[A]
のため、②の短絡容量より選定した300[A]を定格電流となります。
メーカーの選定方法の記載のある通りPASの定格電流値は、開閉器の定格電流若しくは適用系統短絡容量のいずれかの大きいほうを選定しましょう。
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まとめ
PASの仕様一覧
- 定格電圧、定格電流
- 制御装置の電源の取り方(VT内蔵の要否)
- 地絡リレーの方向性の要否
- LA内蔵の要否
- ケースの選定
- 設置環境の確認
定格電流の選定
- 負荷電流より算出する方法
- 受電点の短絡電流により算出する方法
負荷電流の求め方
- I={契約電力/(√3×6.6×0.9)}×1.5[A]
- I:負荷電流
- 0.9:回路力率
- 1.5:負荷の変動率等を考慮した安全係数
受電点の短絡電流による求め方
- 8[kA]未満の場合 =200[A]
- 8以上12.5[kA]以下の場合 =300[A]
今回は、PASの規格における定格電圧と定格電流の選定方法について解説しました。
定格電圧は、6.6[kV]の場合、7.2[kV]と固定ですが、
定格電流は負荷容量若しくは短絡電流値により変動するので選定には注意が必要です。
PAS選定の際は、特に定格電流に注意し選定を行うようにしましょう。