防炎規制は、消防用設備等とはまったく別の系統の規制です。根拠は消防法第8条の3で、防火管理者や統括防火管理と同じ章に置かれています。消防用設備等ではないので、既存不適格や遡及適用という考え方が入る余地がありません。既存の建物にも、そのまま適用されます。

電気設備設計者が直接カーテンを選ぶことはありませんが、この規制を知っておくと役に立つ場面があります。高さ31mを超える建築物は、用途を問わず全部が対象になるからです。事務所ビルもタワーマンションも、31mを超えれば防炎です。31mという数字は非常用進入口・非常用エレベーター・連結送水管の加圧送水装置とも関係する高さで、建物の階数と高さを最初に押さえるときに一緒に確認しておく項目になります。

この記事では、消防法第8条の3・令第4条の3・規則第4条の3から第4条の5までを条文の文言のまま整理します。あわせて、市販の解説書や販売サイトで頻出する「防炎物品」と「防炎製品」の混同を、一次資料で切り分けます。

防炎規制がかかる建物法 第8条の3第1項が直接書くもの高​層建築物= 高さ31メートルを「超える」建築物(法第8条の2第1項の定義を第8条の3にも使う)用途を問わない。事務所ビルも共同住宅も対象地​下街= 令別表第一(十六の二)項※ 令第4条の3第1項のリストに(十六の二)項は  入っていない。法の本文で読む令 第4条の3第1項が定めるもの(一)項 劇場・映画館・演芸場・観覧場/公会堂・集会場(二)項 キャバレー・遊技場・カラオケボックス等(三)項 待合・料理店/飲食店(四)項 百貨店・マーケット・物品販売店舗・展示場(五)項イ 旅館・ホテル・宿泊所(六)項 病院・診療所・助産所・福祉施設・幼稚園等(九)項イ 蒸気浴場・熱気浴場(十二)項ロ 映画スタジオ・テレビスタジオ(十六の三)項 準地​下街+ 工事中の建築物その他の工作物(十六)項=複合用途防​火対象物は、上の用途に該当する部分を「一の防炎防​火対象物とみなす」令第4条の3第2項。テナントビルでは、その部分だけを取り出して判断する(五)項ロ=寄宿舎・下宿・共同住宅 と (十二)項イ=工場 は、令のリストに入っていないただし高さ31mを超えれば「高​層建築物」として対象になる。タワーマンションのカ​ーテンが防炎になるのはこの経路一般の戸建住宅・低層アパートには防炎規制はかからないHARITA
図1:法が直接書く「高層建築物・地下街」と、令が定める用途。共同住宅は高さで入る

防炎規制がかかる建物|法が直接書くものと、令が定めるもの

消防法第8条の3第1項の書き出しはこうです。

高層建築物若しくは地下街又は劇場、キャバレー、旅館、病院その他の政令で定める防火対象物において使用する防炎対象物品(どん帳、カーテン、展示用合板その他これらに類する物品で政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)は、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならない。

つまり高層建築物と地下街は法が直接名指ししていて、それ以外は政令=令第4条の3第1項に委ねられています。この二段構えを理解しておかないと、条文を追ったときに用途リストのなかに地下街が見つからず混乱します。

高層建築物は「31mを超える」

高層建築物の定義は消防法第8条の2第1項のカッコ書きにあります。

高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう。第八条の三第一項において同じ。)

「31m以上」ではなく「31mを超える」です。ちょうど31.00mの建築物は高層建築物に当たりません。そして定義のカッコ書きに「第八条の三第一項において同じ」と明記されているので、防炎規制でも同じ定義が使われます。

高層建築物は用途を問わない

令第4条の3第1項が挙げる用途リストに、(五)項ロ=寄宿舎・下宿・共同住宅(十二)項イ=工場(十五)項=事務所も入っていません。それでも、これらの建物が高さ31mを超えれば、法第8条の3第1項の本文により高層建築物として防炎規制の対象になります

タワーマンションのカーテンやカーペットが防炎品でなければならないのは、この経路です。逆に、31m以下の共同住宅や事務所ビルには防炎規制はかかりません。一般の戸建住宅も同様です。

令第4条の3第1項の用途

用途
(一)項 劇場・映画館・演芸場・観覧場/公会堂・集会場
(二)項 キャバレー・カフェー・ナイトクラブ等/遊技場・ダンスホール/性風俗関連特殊営業を営む店舗等/カラオケボックス等
(三)項 待合・料理店等/飲食店
(四)項 百貨店・マーケット・物品販売業を営む店舗・展示場
(五)項 旅館・ホテル・宿泊所等(ロの共同住宅等は含まない
(六)項 病院・診療所・助産所/老人短期入所施設等/老人デイサービスセンター等/幼稚園・特別支援学校
(九)項 蒸気浴場・熱気浴場その他これらに類する公衆浴場(ロの一般公衆浴場は含まない
(十二)項 映画スタジオ・テレビスタジオ(イの工場・作業場は含まない
(十六の三)項 準地下街
工事中の建築物その他の工作物(総務省令で定めるものを除く)

イとロの区別が効いているところが3か所あります。(五)項はイ(旅館・ホテル)だけ、(九)項もイ(サウナ等)だけ、(十二)項はロ(スタジオ)だけです。項番号だけで判断すると外します。

複合用途は部分ごとにみなす

令第4条の3第2項です。

別表第一(十六)項に掲げる防火対象物の部分で前項の防炎防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、同項の規定の適用については、当該用途に供される一の防炎防火対象物とみなす

テナントビルであれば、飲食店の区画は(三)項ロとして防炎規制の対象、事務所の区画は対象外、というように部分ごとに切り分けて判断します。ビル全体が対象になったり、逆に全体が外れたりするわけではありません。

工事中の建築物その他の工作物

令第4条の3第1項は「工事中の建築物その他の工作物(総務省令で定めるものを除く)」と書き、規則第4条の3第1項が二重否定でその範囲を絞っています。

令第四条の三第一項の総務省令で定めるものは、次の各号に掲げるもの以外のものとする。

一 建築物(都市計画区域外のもつぱら住居の用に供するもの及びこれに附属するものを除く。)
二 プラットホームの上屋
三 貯蔵槽
四 化学工業製品製造装置
五 前二号に掲げるものに類する工作物

「除くもの=この5つ以外」なので、裏返すと防炎規制がかかる工事中の工作物は、この5つに限られます。工事現場に張る工事用シートが防炎でなければならないのは、この規定によるものです。


防炎対象物品は8つだけ

防​炎対象物品は8つ。それ以外は対象外防​炎対象物品(令第4条の3第3項)1カ​ーテン2布製のブ​ラインド3暗​幕4じ​ゆうたん等(規則第4条の3第2項で7類型)5展示用の合板6ど​ん帳その他舞台において使用する幕7舞台において使用する大道具用の合板8工​事用シート条文に書かれていない=規制の対象外×寝具(布団・毛布・シーツ・枕カバー)×衣類・エプロン・寝間着×テーブルクロス・のれん×いす張り生地・家具×壁装材(クロス)・展示用以外のパネル令第4条の3第3項は限定列挙「その他これらに類するもの」という受け皿はない「防​炎製品」は消防法令の用語ではない法・令・規則の条文に一度も現れない。(公財)日本防炎協会が独自に運用している任意の認定制度で、寝具や衣類などが対象消防法が義務づけているのは「防​炎物品」のほう。協議や仕様書ではこの2語を混ぜない防​炎物品 = 防​炎対象物品又はその材料で、政令で定める基準以上の防​炎性能を有するもの(法第8条の3第2項のカッコ書き)「防​炎対象物品」は規制の対象になる物のこと。性能を満たしたものが「防​炎物品」HARITA
図2:条文は8つの限定列挙。寝具や衣類は消防法の防炎規制の対象ではない

令第4条の3第3項の条文です。

法第八条の三第一項の政令で定める物品は、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゆうたん等(じゆうたん、毛せんその他の床敷物で総務省令で定めるものをいう。次項において同じ。)、展示用の合板、どん帳その他舞台において使用する幕及び舞台において使用する大道具用の合板並びに工事用シートとする。

限定列挙です。「その他これらに類するもの」という受け皿の文言がありません。したがって寝具・衣類・テーブルクロス・のれん・いす張り生地・家具は、消防法の防炎規制の対象外です。

じゆうたん等の7類型

「じゆうたん等」の中身は規則第4条の3第2項が7つ挙げています。

内容
第1号 じゆうたん(織りカーペット。だん通を除く
第2号 毛せん(フェルトカーペット)
第3号 タフテッドカーペット、ニッテッドカーペット、フックドラッグ、接着カーペット及びニードルパンチカーペット
第4号 ござ
第5号 人工芝
第6号 合成樹脂製床シート
第7号 前各号以外の床敷物のうち、毛皮製床敷物、毛製だん通及びこれらに類するもの以外のもの

注目したいのがだん通の扱いです。第1号のカッコ書きで「だん通を除く」と明記され、第7号でも「毛皮製床敷物、毛製だん通及びこれらに類するもの以外のもの」と、二重に除外されています。手織りの高級絨毯であるだん通と毛皮製の敷物は、防炎規制の対象になりません。

逆に、ござ・人工芝・合成樹脂製床シート(塩ビシート)は「じゆうたん等」に含まれます。カーペットだけの話ではありません。


防炎性能の基準|令が枠、規則が数値

防​炎性能の数値物品の区分残炎時間残じん時間炭化面積炭化長接炎回数薄手布1㎡当たり450g以下の布3秒5秒30c㎡(20cm)(3回)厚手布薄手布以外の布5秒20秒40c㎡(20cm)(3回)じ​ゆうたん等規則第4条の3第2項の7類型20秒10cm合板展示用・舞台の大道具用10秒30秒50c㎡どの項目が適用されるかは、物品の性状で変わる(令第4条の3第4項の柱書)炎を接した場合に溶融する性状の物品(じ​ゆうたん等を除く)→ 第1号〜第5号のすべてじ​ゆうたん等→ 第1号(残炎時間)と第4号(炭化長)だけその他の物品→ 第1号〜第3号(残炎・残じん・炭化面積)令が定めるのは上限の枠(残炎20秒・残じん30秒・炭化面積50c㎡・炭化長20cm・接炎3回以上)で、実数は規則第4条の3第3項表の( )は、溶融する性状の物品にだけ適用される値HARITA
図3:数値は規則第4条の3第3項。物品の性状で適用される項目が変わる

令第4条の3第4項は、5つの指標について上限の枠を示し、実際の数値を総務省令に委ねる書き方をしています。

指標 定義(条文) 令が示す枠
第1号 残炎時間 着炎後バーナーを取り去つてから炎を上げて燃える状態がやむまでの経過時間 20秒を超えない範囲内
第2号 残じん時間 着炎後バーナーを取り去つてから炎を上げずに燃える状態がやむまでの経過時間 30秒を超えない範囲内
第3号 炭化面積 着炎後燃える状態がやむまでの時間内において炭化する面積 50c㎡を超えない範囲内
第4号 炭化長 着炎後燃える状態がやむまでの時間内において炭化する長さの最大値 20cmを超えない範囲内
第5号 接炎回数 溶融し尽くすまでに必要な炎を接する回数 3回以上の回数

第5号だけ向きが逆で、「3回以上」でなければなりません。溶けて落ちる材料は、何度炎を当てても燃え広がらないことを求める指標だからです。

実数は規則第4条の3第3項です。

区分 残炎時間 残じん時間 炭化面積 炭化長 接炎回数
薄手布(1㎡当たり450g以下) 3秒 5秒 30c㎡ 20cm 3回
厚手布(薄手布以外) 5秒 20秒 40c㎡ 20cm 3回
じゆうたん等 20秒 10cm
合板(展示用・舞台の大道具用) 10秒 30秒 50c㎡

どの指標が適用されるかは物品の性状で変わる

令第4条の3第4項の柱書がこう書き分けています。

  • 炎を接した場合に溶融する性状の物品(じゆうたん等を除く)→ 第1号から第5号まですべて
  • じゆうたん等 → 第1号(残炎時間)と第4号(炭化長)だけ
  • その他の物品 → 第1号から第3号まで(残炎・残じん・炭化面積)

ポリエステルなど溶ける素材のカーテンだけが接炎回数の試験を受ける、という構造です。すべての防炎物品が5項目すべてを満たしているわけではありません。

試験方法

測定の技術上の基準は規則第4条の3の第4項から第7項に分かれています。

対象 バーナー 試験体 加熱
第4項 布類(じゆうたん等・合板を除く) 薄手布はミクロバーナー(炎の長さ45mm)/厚手布はメッケルバーナー(65mm) 2㎡以上の布から無作為に切り取った縦35cm×横25cm、3体 薄手布1分間/厚手布2分間
第5項 じゆうたん等 エアーミックスバーナー(ガス圧4kPa、炎の長さ24mm) 1㎡以上から縦40cm×横22cm、6体 30秒間
第6項 合板 メッケルバーナー(65mm) 1.6㎡以上から縦29cm×横19cm、3体 2分間
第7項 接炎回数 ミクロバーナー(45mm)+試験体支持コイル 幅10cm・質量1gに丸めたもの、5体 下端から9cmまで溶融し尽くすまで繰り返す

実務でよく「45度法」と呼ばれますが、規則第4条の3の条文に「45度」という語は一度も出てきません。角度は別図第二の試験体支持枠の形状で規定されています。呼び方としては通用しますが、条文の用語ではないことは意識しておくとよい点です。

工事用シートだけの前処理

規則第4条の3第4項第3号ロにこうあります。「工事用シートその他屋外で使用するものにあつては、ハの処理を施す前に温度五十度プラスマイナス二度の温水中に三十分間浸したものであること」。屋外で雨に打たれることを想定して、防炎薬剤が流れ落ちた後でも性能が出るかを見る前処理です。屋内用のカーテンにはこの処理がありません。屋内用の防炎カーテンを屋外の仮設に転用しても、条文が想定している性能にはなりません。


防炎表示|付けられるのは「消防庁長官の登録を受けた者」だけ

防​炎表示のしくみと、罰則がある条項防​炎表示が付くまで防​炎対象物品 又は その材料登​録確認機関の確認消​防庁長官の登録を受けた法人ラベルに機関名を記載自ら確認(自己確認)登​録表示者が自分で確認するラベルに自らの名称と自己確認の旨防​炎表示を付けられるのは 登​録表示者 だけ= 消​防庁長官の登録を受けた者(規則第4条の4第1項第1号)ラベルの記載事項(規則 別表第一の二の二)・「防炎」の文字(赤色)・消防庁登録者番号(黒色)・登​録確認機関名(黒色)/自己確認のときは自らの名称現場側の義務と罰則処理・作製をさせたとき「防​炎処理品」「防​炎作製品」の文字処理・作製した者の氏名又は名称処理・作製した年月(規則第4条の4第9項)販売・陳列の制限表示又は指​定表示が付いていないものを「防​炎物品として」販売し、又は陳列してはならない(第4項)罰金があるのは第3項だけ紛らわしい表示の禁止に違反すると法第44条第3号・両罰規定あり防炎規制は消​防用設備等の規定ではないので、法第17条の2の5の遡及の議論とは無関係法第8条の3は防火管理と同じ章にあり、既存の建物にもそのまま適用される。「既存不適格」という扱いはない第1項(使用義務)・第4項(販売制限)・第5項(明示義務)の違反には、法第44条に対応する号がないHARITA
図4:表示を付けられるのは消防庁長官の登録を受けた者だけ。罰金があるのは第3項違反のみ

法第8条の3第2項は、こう書いています。

防炎対象物品又はその材料で前項の防炎性能を有するもの(第四項において「防炎物品」という。)には、総務省令で定めるところにより、前項の防炎性能を有するものである旨の表示を付することができる

「付さなければならない」ではなく「付することができる」です。表示制度そのものは任意の位置づけになっています。ただし第4項が「第二項の表示又は指定表示が付されているものでなければ、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列してはならない」と定めているため、流通の段階で実質的に表示が必要になります。

注意したいのは第4項の書き方です。禁じられているのは「防炎物品として」の販売であって、防炎対象物品そのもの(普通のカーテン)の販売が禁じられているわけではありません。

表示を付せる者

規則第4条の4第1項がこう定めています。

一 防炎表示を付する者は、消防庁長官の登録を受けた者であること。
二 防炎表示は、別表第一の二の二に定める様式により行うこと。
三 防炎表示は、縫付、ちよう付、下げ札等の方法により、防炎物品ごとに、見やすい箇所に行なうこと。

よく見かける「試験機関でテストを受けて合格すると表示ラベルを付けられる」という説明は、正確ではありません。表示を付けられるのは消防庁長官の登録を受けた者(登録表示者)であって、試験機関ではありません

性能の確認については、規則第4条の5が2通りを認めています。

方法 内容 ラベルの記載
登録確認機関の確認 消防庁長官の登録を受けた法人が確認する 当該登録確認機関の名称を記載
自己確認 登録表示者が自ら確認する 自らの名称+防炎性能を自ら確認した旨を記載

登録確認機関の確認を受けた場合でも、機関名に代えて自らの名称と自己確認の旨を記載することは妨げられません(同条第1項ただし書)。登録確認機関の確認は必須ではありません。

ラベルの記載事項は規則別表第一の二の二の備考にあり、地は白、「防炎」は、「消防庁登録者番号」と「登録確認機関名」は、その他は、横線は黒と決まっています。

現場で処理・作製したとき

法第8条の3第5項は、防火対象物の関係者に対する義務です。既製の防炎物品を買ってくるのではなく、現場で防炎処理をさせたり、防炎表示のある生地からカーテンを作らせたりした場合に、その旨を明らかにしておかなければなりません。

規則第4条の4第9項が具体的な記載事項を定めています。

第1号 「防炎処理品」又は「防炎作製品」の文字
第2号 処理をし、又は作製した者の氏名又は名称
第3号 処理をし、又は作製した年月

生地の状態で防炎表示が付いていても、それを縫製してカーテンにした時点で「防炎作製品」の表示が別途必要になる、という構造です。テナント工事で既製品以外を使う場合は、ここが検査の指摘事項になりやすい部分です。


「防炎物品」と「防炎製品」は別のもの

ここが実務でいちばん混乱するところです。

防炎物品 防炎製品
根拠 消防法第8条の3第2項(条文上の用語) 条文に存在しない。(公財)日本防炎協会の任意の認定制度
対象 カーテン・布製ブラインド・暗幕・じゆうたん等・展示用合板・どん帳等・大道具用合板・工事用シートの8つ 寝具・衣類・エプロン・テーブルクロス・自動車用シートなど、防炎対象物品以外の繊維製品
性質 防炎防火対象物で使用する場合は法律上の義務 火災予防に有効なものとして使用が推奨されるもの
ラベル 「防炎」の文字+消防庁登録者番号 協会独自の認定ラベル

消防法の条文(法・令・規則)を全部見ても、「防炎製品」という語は一度も出てきません。条文上の用語は「防炎対象物品」「防炎物品」「防炎表示」「指定表示」「防炎処理品」「防炎作製品」「防炎防火対象物」「登録表示者」「登録確認機関」です。

仕様書や消防協議の資料で「防炎製品を使用のこと」と書くと、法的な根拠が曖昧になります。義務として書くなら「防炎物品(消防法第8条の3)」、推奨として書くなら「防炎製品」と、書き分けておくのが安全です。

罰則はどこにあるか

消防法第44条は「三十万円以下の罰金又は拘留」を定める条文で、その第3号に第8条の3が現れます。

三 第八条の二の二第三項(…)又は第八条の三第三項の規定に違反した者

第8条の3第3項は「何人も、…前項の表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならない」という規定です。つまり罰金の対象になるのは、紛らわしい防炎表示を付けた場合だけです。第45条の両罰規定にも第44条第3号が挙がっているので、法人にも罰金が科されます。

内容 罰則
第1項 防炎対象物品は防炎性能を有するものでなければならない(使用義務) 法第44条に対応する号なし
第2項 防炎表示を付することができる
第3項 紛らわしい表示の禁止 法第44条第3号(30万円以下の罰金又は拘留)+両罰
第4項 表示のないものを防炎物品として販売・陳列してはならない 法第44条に対応する号なし
第5項 処理・作製をさせたときの明示義務 法第44条に対応する号なし

では第1項違反はどうなるか

防炎規制専用の措置命令規定は、法第8条の3にも令第4条の3にもありません。実際の是正は、一般規定である法第5条の3第1項(火災の予防に危険であると認める物件の所有者等に対する措置命令)や、立入検査に基づく指導によることになります。命令に従わない場合は、その命令違反として罰則がかかる建て付けです。

「防炎カーテンを使わないと即罰金」ではありませんが、命令の対象にはなります。

よくある誤りを条文で確認する

よく見かける記述 条文で確認すると
高層建築物は高さ31m以上 法第8条の2第1項「高さ三十一メートルを超える建築物」
「防炎製品」も消防法の義務 「防炎製品」は条文に存在しない。義務がかかるのは「防炎物品」
寝具や衣類も防炎規制の対象 令第4条の3第3項は限定列挙で8つのみ。寝具・衣類は入っていない
じゆうたん等=カーペット全般 規則第4条の3第2項の7類型。だん通と毛皮製床敷物は除外、ござ・人工芝・合成樹脂製床シートは含まれる
共同住宅は防炎規制の対象外 令のリストに(五)項ロはないが、高さ31m超なら高層建築物として対象
試験機関の合格で防炎表示が付く 表示を付せるのは消防庁長官の登録を受けた者(規則第4条の4第1項第1号)。性能の確認は登録確認機関でも自己確認でもよい
ラベルのないものは販売できない 禁じられているのは「防炎物品として」の販売・陳列(法第8条の3第4項)
令第4条の3第2項が工事中の建築物の規定 工事中の工作物は第1項の後段。第2項は(十六)項複合用途のみなし規定。令第4条の3は全5項
防炎規制は既存遡及される そもそも消防用設備等の規定ではないので、法第17条の2の5の遡及の枠組みとは無関係。既存不適格という扱いがない
すべての防炎物品が5項目の試験に合格している じゆうたん等は残炎時間と炭化長の2項目だけ。接炎回数は溶融する性状の物品のみ
「45度法」は条文用語 規則第4条の3に「45度」の語はない。条文はミクロバーナー・メッケルバーナー・エアーミックスバーナーと書く

確認できなかったこととして書いておきます。規則第4条の3の別図第一〜第七(燃焼試験箱・試験体支持枠の寸法と傾斜角度)と、別表第一の二の二の様式図そのものは、条文データからは図として取得できませんでした。「45度」がどの図でどう規定されているかは、原典の図面で確認する必要があります。また、規則第4条の4第4項が委任している「登録の基準」(消防庁長官が定めるもの)の内容も未確認です。

内装制限との違い

防炎規制と混同されやすいのが、建築基準法の内装制限です。

防炎規制 内装制限
根拠 消防法第8条の3 建築基準法第35条の2・建築基準法施行令第128条の3の2以下
対象 カーテン・じゆうたん等の持ち込まれる物品 壁・天井の内装材(建築物の一部)
性能の呼び方 防炎性能 不燃材料・準不燃材料・難燃材料
じゆうたん等が対象 床は内装制限の対象外
時点 使用している間ずっと 建築確認・完了検査

内装制限は建築物を構成する部分にかかる規制なので、カーテンやじゅうたん、家具は対象になりません。腰壁より下(床から1.2m以下の部分)や、幅木・回り縁・窓枠・窓台も対象外です。建築物に固定されているものが内装制限、持ち込まれるものが防炎規制、という切り分けで覚えると整理しやすくなります。

設計・施工で気をつけるところ

31mという高さを最初に確認する

高さ31mを超えるかどうかは、防炎規制のほかにも次の判断に効いてきます。建築基準法の非常用進入口(31mを超える階には不要)、非常用エレベーター(高さ31m超で必要)、そして連結送水管の加圧送水装置(階数11以上かつ高さ70m超)。階数と高さを最初に押さえておくと、複数の規制の要否が同時に決まります。連結送水管側は連結送水管と連結散水設備にまとめました。

テナント工事では部分ごとに判断する

(十六)項の複合用途では、令第4条の3第2項により該当用途部分を一の防炎防火対象物とみなします。同じビルでも、飲食店区画は対象、事務所区画は対象外という状態が普通に起こります。31mを超えていればビル全体が対象になるので、まず高さを確認してから用途を見る、という順序が確実です。

工事用シートは屋外前処理の有無で違う

工事用シートは規則第4条の3第4項第3号ロにより、温水浸漬の前処理をしたうえで試験されます。屋内用の防炎カーテン生地を仮設の間仕切りに転用する場合、条文が想定している屋外性能は担保されません。仮設計画で防炎シートを指定するときは、防炎表示の種別まで確認しておく価値があります。

検査での指摘は「作製品」表示が多い

既製の防炎カーテンを買えば防炎表示が付いてきますが、生地から現場で縫製した場合は、法第8条の3第5項・規則第4条の4第9項により「防炎作製品」の表示(作製者の氏名または名称・作製年月を含む)が別途必要です。内装業者との取り合いで抜けやすい部分なので、竣工前に現物を確認しておくと安心です。

まとめ

防炎規制の対象になる建物は、法が直接名指しする高層建築物(高さ31mを超える建築物)と地下街、令第4条の3第1項が挙げる9つの用途、そして工事中の建築物その他の工作物です。共同住宅・事務所・工場は用途リストに入っていませんが、31mを超えれば高層建築物として全部が対象になります。

対象になる物品は8つの限定列挙。カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゆうたん等、展示用の合板、どん帳その他舞台で使用する幕、舞台の大道具用合板、工事用シート。寝具も衣類も家具も入っていません。

そして「防炎製品」は消防法の用語ではありません。義務がかかるのは「防炎物品」です。防炎表示を付けられるのは消防庁長官の登録を受けた者だけで、性能の確認は登録確認機関でも自己確認でもかまいません。

罰金の対象になるのは第3項(紛らわしい表示の禁止)の違反だけで、使用義務そのものには直接の罰則規定がなく、一般の措置命令によることになります。

参考条文

  • 消防法 第5条の3第1項(措置命令)
  • 消防法 第8条の2第1項(高層建築物・地下街の定義)
  • 消防法 第8条の3(防炎規制)第1項〜第5項
  • 消防法 第44条第3号・第45条(罰則・両罰規定)
  • 消防法施行令 第4条の3(防炎防火対象物・防炎対象物品・防炎性能の基準)第1項〜第5項
  • 消防法施行令 別表第一
  • 消防法施行規則 第4条の3(防炎性能の基準の数値等)第1項〜第7項
  • 消防法施行規則 第4条の4(防炎表示等)第1項〜第9項
  • 消防法施行規則 第4条の5(防炎性能の確認)
  • 消防法施行規則 別表第一の二の二(防炎表示の様式)
  • 建築基準法 第35条の2、建築基準法施行令 第128条の3の2以下(内装制限)
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