消防用設備等の要否を判断するとき、最初に決めなければならないのが「どこからどこまでを1つと数えるか」です。これを設置単位といいます。延べ面積や階数や収容人員の判定は、すべてこの単位の上に乗っています。単位を1つ間違えると、そこから先の判断が全部ずれます。

原則は「棟」です。ただし例外が5つあり、そのうち3つは1棟を分ける方向、2つは2棟をまとめる方向に働きます。さらに令和6年4月1日から令第8条に第2号が新設され、渡り廊下等の壁等で区画された場合も別の防火対象物とみなせるようになりました。建築基準法の別棟みなし規定の創設に対応したもので、2024年3月以前に書かれた資料には載っていません。

この記事では、法第17条第1項・令第2条・令第8条・令第9条・令第9条の2・令第19条第2項・令第27条第2項と、規則第5条の2・第5条の3・第13条第1項第2号を条文の文言のまま整理します。

設置単位の原則は「棟」、例外が5つ原則|消​防用設備等の設置単位は「棟」であり、敷地ではない法第17条第1項は「防​火対象物」と書くだけ。棟単位という運用は昭和50年3月5日 消防安第26号による令第8条1棟を分ける開口部のない耐​火構造の床・壁/渡​り廊下等の壁等で区画された部分は、それぞれ別の防​火対象物とみなす令第9条1棟を用途で分ける(十六)項の各用途部分は、その用途に供される一の防​火対象物とみなす(かっこ書きの除外あり)令第9条の2地​下街に取り込む地​下街と一体をなすと指定された地階は、4つの規定の適用について地​下街の部分とみなす令第19条第2項2棟をまとめる屋​外消火栓設備。同一敷地内で1階3m以下・2階5m以下の建築物は一の建築物とみなす令第27条第2項2棟をまとめる消​防用水。同じ距離要件に加え、床​面積を基準面積で除した商の和が1以上のとき一の建築物とみなす令第2条(同一敷地内の二以上の防​火対象物を一とみなす)は、法第8条第1項=防​火管理者の規定消​防用設備等(法第17条)には効かない。ここを取り違えると設計が変わるHARITA
図1:棟単位が原則。分ける例外が3つ、まとめる例外が2つ

原則は棟単位。ただし条文には「棟」と書いていない

消防法第17条第1項は、設置義務の対象を「防火対象物」とだけ書いています。

学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設…について…政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。

「棟」という言葉は出てきません。棟単位という運用の根拠は、昭和50年3月5日 消防安第26号「消防用設備等の設置単位について」という通知です。その第1にこうあります。

消防用設備等の設置単位は、建築物である防火対象物については、特段の規定(例 消防法施行令第8条、第9条、第9条の2、第19条第2項、第27条第2項)のない限り、棟であり、敷地ではないこと。

通知が自ら「特段の規定」として5つの条文を挙げているので、この5つを押さえれば設置単位の全体像がつかめます。

令第2条を消防用設備等に使ってはいけない

令第2条はこう書いています。

同一敷地内に管理について権原を有する者が同一の者である別表第一に掲げる防火対象物が二以上あるときは、それらの防火対象物は、法第八条第一項の規定の適用については、一の防火対象物とみなす。

「法第八条第一項」=防火管理者の規定です。消防用設備等(法第17条)には効きません。同一敷地内に同一管理者の建物が2棟あるとき、防火管理者は1人でよくても、消防用設備等は棟ごとに判定します。

消防用設備等の側で敷地単位になるのは、屋外消火栓設備(令第19条第2項)と消防用水(令第27条第2項)の2つだけです。防火管理者の要否は防火管理者・統括防火管理者・防災管理者・自衛消防組織にまとめました。

令第8条|1棟を分ける区画

令8区画は2種類になった第1号(従来からあるもの)開口部のない耐​火構造の床又は壁細目は規則第5条の2(もとは通知の内容が省令に格上げ)第2号(令和6年4月1日施行の新設)渡​り廊下等の壁等で、防火上有効な措置細目は規則第5条の3。建築基準法の別棟みなし規定に対応第1号の構造要件|規則第5条の2の4つの号構造鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造その他これらに類する堅ろうで、かつ容易に変更できない構造であること耐火性能建築基準法施行令第107条第1号の表にかかわらず、通常の火災による火熱が2時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形・溶融・破壊その他の損傷を生じないこと突き出し両端又は上端は、外壁又は屋根から50cm以上突き出していること。ただし壁等及びこれに接する外壁・屋根の幅3.6m以上の部分を耐​火構造とし、開口部がないか、防​火戸を設けて開口部相互間を90cm以上離す場合を除く配管配管を貫通させないこと。ただし給​排水管で、呼び径200mm以下、貫通部内部の断面積が直径300mmの円の面積以下、隙間を不​燃材料で埋めて煙を有効に遮る等の条件を満たすものを除くHARITA
図2:令和6年4月1日から第2号が加わった。第4号の「配管を貫通させない」が電気設備に効く

令和6年4月1日施行の現行条文です。

防火対象物が次に掲げる当該防火対象物の部分で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす

一 開口部のない耐火構造(建築基準法第二条第七号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)の床又は壁
二 床、壁その他の建築物の部分又は建築基準法第二条第九号の二ロに規定する防火設備(防火戸その他の総務省令で定めるものに限る。)のうち、防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたもの(前号に掲げるものを除く。)

この節の規定の適用については」という限定が付いています。「この節」は消防法施行令第2章第三節 設置及び維持の技術上の基準(第8条〜第33条の2)で、消火設備から消火活動上必要な施設まで全部を含みます。逆に言えば、この節の外にある規定——防火管理者(法第8条)、防火対象物点検(令第4条の2の2)、防炎規制(法第8条の3)などには令8区画は効きません

第1号の構造要件は省令に格上げされた

かつては通知(平成7年3月31日 消防予第53号ほか)で運用されていた令8区画の構造要件が、現在は規則第5条の2に置かれています。

要件
第1号 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造その他これらに類する堅ろうで、かつ、容易に変更できない構造であること
第2号 建築基準法施行令第107条第1号の表の規定にかかわらず、通常の火災による火熱が2時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形・溶融・破壊その他の損傷を生じないこと
第3号 両端又は上端は、防火対象物の外壁又は屋根から50cm以上突き出していること。ただし、耐火構造の壁等及びこれに接する外壁・屋根の幅3.6m以上の部分を耐火構造とし、イ 開口部が設けられていないこと、またはロ 開口部に防火戸が設けられ、壁等を隔てた開口部相互間の距離が90cm以上離れていること
第4号 配管を貫通させないこと。ただし、イ 原則として給排水管、ロ 呼び径200mm以下、ハ 貫通部内部の断面積が直径300mmの円の面積以下、ニ 貫通部相互間の距離、ホ 隙間を不燃材料で埋めて煙を有効に遮ること、ヘ 壁等と一体として第2号の性能を有すること、ト 表面に可燃物が接触しない措置を満たすものを除く

電気設備の設計者にとって決定的なのが第4号です。原則は「配管を貫通させない」で、ただし書で認められるのも「原則として給排水管」に限られます。電線管やケーブルラックを令8区画に通すことは、原則としてできません。幹線ルートを引く前に令8区画の位置を確認しておかないと、後から大きな手戻りになります。

令8区画と共同住宅の共住区画は要件が違います。何を通せるかの違いは令8区画と共住区画の違いで整理しました。

第2号|令和6年4月1日に新設された

第2号は建築基準法の別棟みなし規定の創設(令和6年4月施行)に対応して、令和6年政令第7号(令和6年1月17日公布)で新設されました。細目は規則第5条の3です。

第1項 令第8条第2号の総務省令で定める防火設備は、防火戸とする
第2項第1号 渡り廊下又は建築基準法施行令第128条の7第2項に規定する室(廊下、階段その他の通路、便所その他これらに類するものに限る)を構成する壁等について、イ 防火戸は閉鎖した場合に防火上支障のない遮煙性能を有すること、ロ 区画された部分のそれぞれの避難階以外の階に、避難階又は地上に通ずる直通階段が設けられていること
第2項第2号 渡り廊下等の壁等に類するものとして消防庁長官が定める壁等は、消防庁長官が定める基準による

第1号が「開口部のない」区画だったのに対し、第2号は防火戸という開口部があっても、遮煙性能と両側の避難経路が確保されていれば別の防火対象物とみなすという考え方です。従来の令8区画の常識とは前提が違うので、既存の設計テキストの記述をそのまま当てはめないよう注意が必要です。

渡り廊下で接続された建物の扱い

もともと渡り廊下・地下連絡路・洞道で接続された建築物は、昭和50年 消防安第26号の第2により、原則として一棟として扱ったうえで、一定要件を満たせば別棟とされていました。渡り廊下なら「通行又は運搬の用途のみに供され、可燃性物品等の存置その他通行上の支障がない状態」であること、幅員が接続される建築物の主要構造部が木造なら3m未満・その他なら6m未満であることなどです。地下連絡路と洞道については「当該地下連絡路の両端の出入口の部分を除き、開口部のない耐火構造の床又は壁で区画されていること」が求められます。

令和6年の改正では、これに加えて令和6年3月29日 消防予第155号が、渡り廊下等の床面積を「別とみなされる防火対象物の延べ面積に応じて按分し、それぞれの防火対象物に帰属させる」こと、渡り廊下における消防用設備等は「延べ面積が大なる防火対象物に適用される技術基準に適合させる」ことを示しています。


令第9条|1棟を用途で分ける

令9|用途で分ける設備・棟で見る設備(十六)項の各用途部分は「当該用途に供される一の防​火対象物とみなす」(令第9条)ただし、かっこ書きで除外された規定は棟全体で判断する。除外されるのは次の7設備の特定の号ス​プリンクラー設備令第12条第1項第3号、第10号〜第12号階数11以上/特定用途階・地階・無​窓階ほか自​動火災報知設備令第21条第1項第3号、第7号、第10号、第14号300㎡以上/特定一階段等/11階以上ほかガ​ス漏れ火災警報設備令第21条の2第1項第5号漏​電火災警報器令第22条第1項第6号、第7号非​常警報設備令第24条第2項第2号、第3項第2号・第3号非常ベル等と放送設備が必要になる規模の判定避​難器具令第25条第1項第5号直​通階段が2以上ない階で収​容人員10人以上誘​導灯・誘​導標識令第26条(条ごと全部)誘​導灯は棟全体で判断する令第9条は(十六)項だけの規定。(十六の二)項=地​下街、(十六の三)項=準地​下街には適用されない用途側も「同表各項((十六)項から(二十)項までを除く。)」と限定されている地​下街は用途ごとに分けず、地​下街全体を一の防​火対象物として扱うHARITA
図3:用途ごとに分けるのが原則。ただしこの7設備の特定の号は棟全体で判断する

複合用途防火対象物では、用途ごとに別の防火対象物として扱うのが原則です。

別表第一(十六)項に掲げる防火対象物の部分で、同表各項((十六)項から(二十)項までを除く。)の防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、この節(…除外規定…)の規定の適用については、当該用途に供される一の防火対象物とみなす

雑居ビルの中に飲食店・物販店・事務所があれば、それぞれを(三)項ロ・(四)項・(十五)項の別々の防火対象物として、面積を分けて判定します。

かっこ書きで除外される規定

ただし、令第9条のかっこ書きが除外している規定は、用途で分けずに棟全体で判断します。現行の除外規定は次のとおりです。

設備 除外される規定
スプリンクラー設備 令第12条第1項第3号、第10号〜第12号
自動火災報知設備 令第21条第1項第3号、第7号、第10号、第14号
ガス漏れ火災警報設備 令第21条の2第1項第5号
漏電火災警報器 令第22条第1項第6号、第7号
非常警報設備 令第24条第2項第2号並びに第3項第2号及び第3号
避難器具 令第25条第1項第5号
誘導灯・誘導標識 令第26条(条ごと全部)

自動火災報知設備の除外規定を「第3号及び第10号から第12号まで」と書いている資料がありますが、これは改正前のものです。現行は「第3号、第7号、第10号及び第14号」です。第7号は特定一階段等防火対象物の規定で、これが除外されている=特定一階段等かどうかは用途で分けずに棟全体で判定するという意味を持ちます。

避難器具の第5号(直通階段が2以上ない階で収容人員10人以上)も同じ構造です。用途ごとに分けてしまうと「その用途部分だけなら10人未満」という抜け道ができるため、棟全体で見ます。避難器具の詳細は避難器具の設置基準を参照してください。

誘導灯については令第26条が条ごと除外されています。テナントごとに分けず、建物全体の階数・用途・地階・無窓階で判断します。

地下街には令第9条が適用されない

令第9条の対象は(十六)項だけです。(十六の二)項=地下街、(十六の三)項=準地下街は対象外で、用途側も「同表各項((十六)項から(二十)項までを除く。)」と限定されています。つまり地下街は用途ごとに分けず、地下街全体を一の防火対象物として扱います


令第9条の2|地下街に取り込む特例

地下街に接続する建物の地階についての規定です。

別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ又は(十六)項イに掲げる防火対象物の地階で、同表(十六の二)項に掲げる防火対象物と一体を成すものとして消防長又は消防署長が指定したものは、第十二条第一項第六号、第二十一条第一項第三号(同表(十六の二)項に係る部分に限る。)、第二十一条の二第一項第一号及び第二十四条第三項第一号(同表(十六の二)項に係る部分に限る。)の規定の適用については、同表(十六の二)項に掲げる防火対象物の部分であるものとみなす。

ポイントが2つあります。1つは消防長又は消防署長の指定が要件であること。接続しているだけでは適用されません。もう1つはみなされるのが4つの規定に限られていることです。

規定 設備
令第12条第1項第6号 スプリンクラー設備
令第21条第1項第3号((十六の二)項に係る部分) 自動火災報知設備
令第21条の2第1項第1号 ガス漏れ火災警報設備
令第24条第3項第1号((十六の二)項に係る部分) 非常警報設備(放送設備)

「スプリンクラー設備、自動火災報知設備など」と説明されることが多い部分ですが、条文はこの4つを限定列挙しています。誘導灯や避難器具まで地下街の基準になるわけではありません。

用途判定の前段|みなし従属

みなし従属と小規模特定用途複合防​火対象物みなし従属(通知)令第1条の2第2項の条文一の用途に供される部分が、管理についての権原・利用形態その他の状況により他の用途に供される部分の従属的な部分を構成すると認められるとき→ その用途は他の用途に含まれる昭和50年4月15日 消防予第41号・消防安第41号主たる用途部分 ≧ 延​べ面積の 90%かつ 独立した他用途部分の合計 < 300㎡除外される用途(この扱いができないもの)(二)項ニ、(五)項イ、(六)項イ(1)〜(3)、(六)項ロ、(六)項ハ(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る)※ 90%も300㎡も条文には書かれていない小規模特定用途複合防​火対象物(省令)規則第13条第1項第2号のかっこ書きが定義(十六)項イのうち(一)〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イの用途部分の床​面積の合計が延​べ面積の 10分の1以下 かつ 300㎡未満この語が使われる場面ス​プリンクラー設備を要しない部分(規則13条)自​動火災報知設備の感​知器(規則23条4項1号ヘ)誘​導灯を要しない部分(規則28条の2)特定一階段等防​火対象物からの除外「90%以上」は主たる用途の側から、「10分の1以下」は特定用途の側から見た数字。向きが逆なので混同しないみなし従属は用途判定(防​火対象物が(十六)項になるかどうか)の話、小規模特定用途複合は個別設備の緩和の話前者は通知、後者は省令。根拠のレベルも違うHARITA
図4:似た数字だが、根拠も見る向きも違う2つの制度

そもそもその建物が(十六)項=複合用途防火対象物になるのかどうかを決めるのが、令第1条の2第2項の後段です。

…この場合において、当該異なる二以上の用途のうちに、一の用途で、当該一の用途に供される防火対象物の部分がその管理についての権原、利用形態その他の状況により他の用途に供される防火対象物の部分の従属的な部分を構成すると認められるものがあるときは、当該一の用途は、当該他の用途に含まれるものとする。

条文はこれだけで、具体的な数値は一切書かれていません。実務で使われる「90%」「300㎡」は、昭和50年4月15日 消防予第41号・消防安第41号「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」という通知にあります。

類型 要件
機能従属 主たる用途に機能的に従属していると認められる部分で、(ア)管理権原が同一、(イ)利用者が同一又は密接な関係、(ウ)利用時間がほぼ同一であるもの
みなし従属 主たる用途に供される部分の床面積の合計が当該防火対象物の延べ面積の90パーセント以上であり、かつ、当該主たる用途以外の独立した用途に供される部分の床面積の合計が300㎡未満である場合の、その独立した用途に供される部分

みなし従属には除外用途があります。(二)項ニ(カラオケボックス等)、(五)項イ(旅館・ホテル)、(六)項イ(1)〜(3)、(六)項ロ、(六)項ハ(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る)は、この扱いができません。就寝を伴う用途や避難が難しい用途を、面積が小さいという理由で消してしまわないための除外です。

「10%ルール」という言い方は正確ではない

通知の文言は「主たる用途に供される部分の床面積の合計が延べ面積の90パーセント以上」です。裏返せば他用途が10%以下ということになりますが、条文・通知に「10分の1以下」と書かれているのは小規模特定用途複合防火対象物のほう(規則第13条第1項第2号)です。似た数字が2か所にあり、見る向きが逆になっているため、根拠を示すときは条番号か通知番号まで書いておくのが安全です。


小規模特定用途複合防火対象物

こちらは省令の定義で、規則第13条第1項第2号のかっこ書きに置かれています。

小規模特定用途複合防火対象物(令別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物のうち、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が当該部分が存する防火対象物の延べ面積の十分の一以下であり、かつ、三百平方メートル未満であるものをいう。以下同じ。)

みなし従属が「その建物を(十六)項にするかどうか」の話であるのに対し、小規模特定用途複合防火対象物は「(十六)項イであることは前提として、個別の設備を緩和するかどうか」の話です。使われる場面は次のとおりです。

規則第13条第1項第2号 スプリンクラー設備を設置することを要しない部分(定義箇所)
規則第23条第4項第1号ヘ 自動火災報知設備の感知器。あわせて特定一階段等防火対象物からの除外もここで規定されている
規則第28条の2第1項第5号・第2項第4号 誘導灯・誘導標識を設置することを要しない部分

特定一階段等防火対象物と設置単位

特定一階段等防火対象物の実体要件は、令第4条の2の2第2号・令第21条第1項第7号・令第25条第1項第5号に同じ構造で書かれています。

…(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの

設置単位との関係で重要なのは、令第21条第1項第7号が令第9条のかっこ書きで除外されていることです。つまり特定一階段等かどうかは、用途ごとに分けずに棟全体で判定します。

規定 効果
令第4条の2の2第2号 防火対象物点検(点検資格者による点検と報告)の対象になる
令第21条第1項第7号 面積にかかわらず自動火災報知設備が必要になる
令第25条第1項第5号 収容人員10人以上で避難器具が必要になる(3階以上、(二)(三)項等は2階以上)
規則第27条第1項第1号 避難器具はバルコニー等に設ける/常時使用できる状態/一動作のいずれかに適合すること

「避難上有効な構造」は規則第4条の2の3が定めていて、建築基準法施行令第123条・第124条の避難階段(屋内に設けるものは消防庁長官が定める部分を有するものに限る)または特別避難階段です。「避難上有効な開口部」は規則第4条の2の2で、直径1m以上の円が内接する開口部、または幅75cm以上かつ高さ1.2m以上の開口部で、床面から下端まで15cm以内などの条件を満たすものです。


よくある誤りを条文で確認する

よく見かける記述 条文で確認すると
令第2条により同一敷地内の建物は消防用設備等でも一体で見る 令第2条は法第8条第1項=防火管理者の規定。消防用設備等には効かない
屋外消火栓設備の敷地単位は令第19条の2 令第19条第2項。令第19条の2という条文は存在しない
令8区画は「開口部のない耐火構造の床又は壁」だけ 令和6年4月1日から第2号(渡り廊下等の壁等)が加わり2種類になった
令8区画の構造要件は通知に書かれている 現在は規則第5条の2(第1号)と規則第5条の3(第2号)に省令化されている
令8区画は給排水管以外も条件を満たせば貫通できる 規則第5条の2第4号ただし書は「原則として給排水管」に限っている。電線管は原則不可
自動火災報知設備の令9除外は第3号と第10号〜第12号 改正前の号。現行は第3号、第7号、第10号、第14号
令第9条の2で地下街の基準になるのはスプリンクラー・自火報など 4つの限定列挙(令12条1項6号、令21条1項3号、令21条の2第1項1号、令24条3項1号)
地下街も用途ごとに令第9条で分ける 令第9条は(十六)項だけが対象。地下街・準地下街には適用されない
みなし従属の10%・300㎡は条文に書いてある 令第1条の2第2項に数値はない。昭和50年 消防予第41号・消防安第41号の通知。文言は「90パーセント以上」
令8区画があれば防火管理者も別々でよい 令第8条は「この節の規定の適用については」=令第2章第三節に限る。防火管理には効かない

確認できなかったこととして書いておきます。昭和50年 消防安第26号の第2(渡り廊下・地下連絡路・洞道の各要件)は、要点は取得できましたが番号付きの全項目を逐語で再現するには至りませんでした。渡り廊下の長さの具体数値は未確認です。また規則第5条の3第2項第2号が委任している「消防庁長官が定める基準」の告示番号も特定できていません。実際の協議では原典で確認してください。

設計の手順に落とすと

① 棟を数える

まず敷地内の建物を棟で数えます。渡り廊下・地下連絡路・洞道で接続されている場合は原則一棟なので、接続部の構造を確認します。屋外消火栓設備と消防用水だけは、この段階で敷地単位の判定(令第19条第2項・令第27条第2項)も並行して行います。

② 令8区画があるか

1棟の中に令8区画があれば、そこから先は別の防火対象物として面積・階数を数え直します。電気設備の側では、幹線・弱電の縦系統がこの区画をまたげないため、EPSの位置と本数がここで決まります。区画の位置は建築側が決めますが、影響を受けるのは設備側です。早い段階で図面上に落としておくべき情報です。

③ 複合用途なら、まずみなし従属を見る

用途が2以上あっても、機能従属またはみなし従属に該当すれば(十六)項になりません。主たる用途が90%以上かつ他用途が300㎡未満か、除外用途に当たらないかを確認します。(十六)項になったら、令第9条で用途ごとに分けたうえで、除外された7設備の特定の号だけ棟全体で判定します。

④ 特定一階段等かどうかは棟全体で

避難階以外の階に特定用途があり、直通階段が2以上ないなら、面積にかかわらず自動火災報知設備が必要になります。この判定は令第9条から除外されているので、用途ごとに分けずに棟全体で行います。小規模なテナントビルで自火報の要否が判断と食い違うときは、たいていここです。

まとめ

設置単位の原則は。条文には書かれておらず、昭和50年 消防安第26号による運用です。その通知が自ら挙げている「特段の規定」が、令第8条・令第9条・令第9条の2・令第19条第2項・令第27条第2項の5つです。

令第8条は令和6年4月1日から2種類になりました。従来の開口部のない耐火構造の床又は壁(第1号)に加えて、渡り廊下等の壁等で防火上有効な措置が講じられたもの(第2号)が別の防火対象物とみなされます。第1号の構造要件は規則第5条の2に省令化されていて、第4号の「配管を貫通させない」が電気設備の計画を左右します。

令第9条は用途ごとに分けるのが原則ですが、7設備の特定の号は棟全体で判断します。とくに自動火災報知設備の第7号(特定一階段等)と誘導灯(令第26条の全部)は見落としやすいところです。

そして令第2条を消防用設備等に使わないこと。あれは防火管理者の規定です。この一点を間違えると、設計全体がずれます。

参考条文・通知

  • 消防法 第8条第1項、第17条第1項
  • 消防法施行令 第1条の2第2項、第2条、第4条の2の2
  • 消防法施行令 第8条(通則)、第9条、第9条の2
  • 消防法施行令 第12条第1項、第19条第2項、第21条第1項、第21条の2第1項、第22条第1項、第24条、第25条第1項、第26条、第27条第2項
  • 消防法施行規則 第4条の2の2、第4条の2の3、第5条の2、第5条の3、第13条第1項第2号、第23条第4項、第27条第1項第1号、第28条の2
  • 昭和50年3月5日 消防安第26号「消防用設備等の設置単位について」
  • 昭和50年4月15日 消防予第41号・消防安第41号「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」
  • 平成7年3月31日 消防予第53号「令8区画及び共住区画の構造並びに当該区画を貫通する配管等の取扱いについて」
  • 令和6年1月17日 消防予第2号/令和6年3月29日 消防予第155号(令第8条改正の公布・運用)
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