建築消防|誘導灯・誘導標識の設置基準|A/B/C級の有効範囲と免除・非常電源60分
誘導灯は、電気設備設計者が図面に落とす消防用設備等のなかで、もっとも数が多く、もっとも「有効範囲」の計算がものを言う設備です。ところが実務では、A級・B級・C級の区分、有効範囲の2つのただし書、規則第28条の2の免除、非常電源20分と60分の4か所で判断が分かれます。
この記事では、消防法施行令第26条・消防法施行規則第28条〜第28条の3・平成11年消防庁告示第2号の条文にあたって、誘導灯と誘導標識の設置基準を通しで整理します。あわせて、混同されやすい建築基準法の非常用の照明装置との違いも条文レベルで並べます。
- 誘導灯・誘導標識は4種類。まず「どこに何を設けるか」を令第26条で押さえる
- A級・B級・C級——表示面の縦寸法で決まり、有効範囲が変わる
- どこに設けるか——避難口誘導灯はイ〜ニ、通路誘導灯はイ〜ハ
- 設置免除——規則第28条の2は3項構成。階段の免除を見落とさない
- 常時点灯と消灯——階段の通路誘導灯はそもそも対象外
- 非常電源は20分。60分になるのは「一部の場所」だけ
- 建築基準法の「非常用の照明装置」との違い——LEDは2ルクス
- 客席誘導灯は「客席内の通路の床面における水平面」で0.2ルクス
- 蓄光式誘導標識——中輝度と高輝度の分かれ目は100mcd/㎡
- 平成11年改正でA級・B級・C級になった
- 点検は機器点検6月のみ。総合点検はない
- 書籍・解説書で確認しておきたい点
- まとめ
誘導灯・誘導標識は4種類。まず「どこに何を設けるか」を令第26条で押さえる
誘導灯及び誘導標識の設置根拠は消防法施行令第26条です。条文は全3項で、第1項が対象、第2項が技術上の基準、第3項が誘導標識の免除規定という構成になっています。
第1項は4つの号に分かれ、第1号=避難口誘導灯、第2号=通路誘導灯、第3号=客席誘導灯、第4号=誘導標識と、種類ごとに対象が書き分けられています。
避難口誘導灯・通路誘導灯は「全部分」と「地階・無窓階・11階以上だけ」に分かれる
第1号・第2号は全く同じ書き方で、次の2つのグループに分かれます。
前段は(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項。この用途は建物全体が対象で、階を問いません。(九)項は「イ」に限定されていない点に注意してください。(九)項ロの一般公衆浴場も対象です。
後段は(五)項ロ、(七)項、(八)項、(十)項から(十五)項まで及び(十六)項ロ。こちらは地階、無窓階及び11階以上の部分だけが対象です。共同住宅・学校・図書館・事務所・工場などがここに入ります。事務所ビルの基準階に誘導灯が要らないのはこの規定によるものです。
無窓階の判定そのものは別記事で扱っています。→ 建築消防|無窓階と収容人員|消防用設備の必要量を決める2つの判定
客席誘導灯だけ対象がずれている
第3号(客席誘導灯)の条文は次のとおりです。
消防法施行令第26条第1項第3号
三 客席誘導灯 別表第一(一)項に掲げる防火対象物並びに同表(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物の部分で、同表(一)項に掲げる防火対象物の用途に供されるもの
避難口誘導灯・通路誘導灯が(十六の三)項まで列挙しているのに対し、客席誘導灯は(十六)項イと(十六の二)項までで止まっています。同じ条文の中で書き分けられているので、これは意図的な差と読むのが自然です。複合用途の劇場・映画館部分を設計するときの確認ポイントになります。
誘導標識は(一)項から(十六)項まですべて
第4号は用途を絞らず(一)項から(十六)項までのすべてが対象です。ただし第3項で、誘導灯を基準どおり設けた部分については、その有効範囲内の誘導標識を設けないことができるとされています。誘導灯を設ければ誘導標識は自動的に不要になる、というのはこの第3項が根拠です。
そして第1項にはただし書があります。「避難が容易であると認められるもので総務省令で定めるものについては、この限りでない」——これが後述の規則第28条の2(免除規定)につながります。
A級・B級・C級——表示面の縦寸法で決まり、有効範囲が変わる
誘導灯の区分は消防法施行規則第28条の3第1項に表で書かれています。区分を決めるのは表示面の縦寸法で、A級は0.4m以上、B級は0.2m以上0.4m未満、C級は0.1m以上0.2m未満です。そのうえで、区分ごとに表示面の明るさ(常用電源で点灯しているときの平均輝度×表示面の面積、単位cd)の下限が定められています。
この区分に応じて有効範囲——つまり「1台がカバーできる歩行距離」——が第2項で決まります。設計上いちばん効いてくるのがここです。
有効範囲には2つのただし書がある
第2項第1号の表(避難口誘導灯A級60m〜通路誘導灯C級10m)は多くの解説書に載っていますが、条文にはこれに続けてただし書があります。
規則第28条の3第2項第1号ただし書
ただし、当該誘導灯を容易に見とおすことができない場合又は識別することができない場合にあつては、当該誘導灯までの歩行距離が10メートル以下となる範囲とする。
通路が折れている、什器や間仕切りで視線が切れる——といった場面では、A級であっても有効範囲は一律10mまで落ちます。カタログの数値だけで台数を決めると、消防検査で指摘される典型パターンです。
もう1つが第2号の算定式で、D=k×h(Dは歩行距離m、hは表示面の縦寸法m)。kは避難口誘導灯で避難方向のシンボルなし150/あり100、通路誘導灯50です。表示面が大きい製品を使えば表の値を超える範囲を取れる、という規定です。
「BH形」「BL形」は法令用語ではない
メーカーのカタログでおなじみのB級BH形/BL形という呼び方は、規則にも告示にも出てきません。由来は規則第28条の3第4項第三号の括弧書きです。
規則第28条の3第4項第三号(要約)
次のイ又はロに掲げる防火対象物又はその部分に設置する場合には、当該誘導灯の区分がA級又はB級のもの(避難口誘導灯にあつては表示面の明るさが20以上のもの又は点滅機能を有するもの、通路誘導灯にあつては表示面の明るさが25以上のものに限る。)とすること。
イ 令別表第一(十)項、(十六の二)項又は(十六の三)項に掲げる防火対象物
ロ 令別表第一(一)項から(四)項まで若しくは(九)項イに掲げる防火対象物の階、又は同表(十六)項イに掲げる防火対象物の階のうち、同表(一)項から(四)項まで若しくは(九)項イの用途に供される部分が存する階で、その床面積が1,000㎡以上のもの
B級のうちこの明るさ要件(避難口20cd以上・通路25cd以上)を満たすものが通称BH形、満たさないものがBL形です。物販店舗や飲食店の用途がある1,000㎡以上の階、地下街、駅舎、準地下街では、C級やB級BL形は使えません。市販の解説書ではこの号が省かれていることが多いので、規模の大きい建物ではここを必ず確認してください。
なお「高輝度誘導灯」も法令上の定義語ではありません。平成11年の改正でA級・B級・C級と表示面の明るさの規制が入ったことを受け、小形・高効率の光源(当時は冷陰極管、現在はLED)を使った製品群を業界がそう呼んでいるだけです。法令で「高輝度」が定義されているのは高輝度蓄光式誘導標識(100mcd/㎡以上)だけです。
どこに設けるか——避難口誘導灯はイ〜ニ、通路誘導灯はイ〜ハ
設置箇所は規則第28条の3第3項で、各階ごとに定めるとされています。
避難口誘導灯の4か所
イとロが本来の避難口、ハとニがそこへ導くための出入口・防火戸です。ハとニにはそれぞれ除外規定があり、これが実務でよく効きます。
ハの除外は「室内の各部分から容易に避難することができるものとして消防庁長官が定める居室の出入口を除く」という括弧書きですが、規則本文には具体的な数値がありません。実体は平成11年消防庁告示第2号 第三 二にあります。
平成11年消防庁告示第2号 第三 二
規則第二十八条の三第三項第一号ハの消防庁長官が定める居室は、室内の各部分から当該居室の出入口を容易に見とおし、かつ、識別することができるもので、床面積が100㎡(主として防火対象物の関係者及び関係者に雇用されている者の使用に供するものにあつては、400㎡)以下であるものとする。
つまり、見通せる小規模な居室の出入口には避難口誘導灯が要りません。事務室のように従業員だけが使う部屋なら400㎡まで緩和されます。
ニの除外は「自動火災報知設備の感知器の作動と連動して閉鎖する防火戸に誘導標識が設けられ、かつ、当該誘導標識を識別することができる照度が確保されるように非常用の照明装置が設けられている場合」です。ここで建築基準法の非常用照明が消防法の条文に登場します。
通路誘導灯は「曲り角」+「有効範囲でつなぐ」
通路誘導灯の設置箇所は、イ曲り角、ロ避難口誘導灯の有効範囲内の箇所、ハそれ以外で廊下・通路の各部分を有効範囲に包含するために必要な箇所、の3つです。ロは「避難口誘導灯の有効範囲内にも通路誘導灯を置く」という規定で、避難口誘導灯があるから通路誘導灯を省ける、という意味ではない点に注意してください。
階段・傾斜路は1ルクス、カラオケボックス等は床面
第4項第四号は階段又は傾斜路に設ける通路誘導灯について「踏面又は表面及び踊場の中心線の照度が1ルクス以上」と定めています。表示面の明るさではなく床の照度で規定されているのが特徴です。
第4項第三号の二は、(二)項ニ(カラオケボックス等)及びその用途がある(十六)項イ・(十六の二)項・(十六の三)項の通路誘導灯を「床面又はその直近の避難上有効な箇所」に設けることを求めています。ただし書で、消防庁長官が定めるところにより蓄光式誘導標識を設けた場合は不要です。個室が並び煙が滞留しやすい用途で、床面付近の視認性を確保する趣旨の規定です。
取付け高さを定めた条文は存在しない
「避難口誘導灯は床面から1.5m以上」「通路誘導灯は1m以下」といった数値が実務で語られますが、消防法施行令第26条にも規則第28条の3にも平成11年告示第2号にも、取付け高さの規定はありません。根拠は平成11年9月21日 消防予第245号のガイドラインと、各消防本部の運用基準です。
実際、運用基準の数値は消防本部によって異なります(避難口誘導灯の下面を床から概ね1.8〜2.4mとする例、下部までを2.5m以下が望ましいとする例など)。高さは「法令の義務」ではなく「所轄の指導事項」と整理しておくと、協議のときに話が早くなります。
設置免除——規則第28条の2は3項構成。階段の免除を見落とさない
令第26条第1項ただし書を受けた免除規定が規則第28条の2です。第1項が避難口誘導灯、第2項が通路誘導灯、第3項が誘導標識と、種類ごとに独立して定められています。
見とおし+歩行距離が基本形
3項に共通する第一号は「居室の各部分から主要な避難口を容易に見とおし、かつ、識別することができる階で、歩行距離が一定以下であるもの」という形です。見とおし・識別と距離の両方が要件で、距離だけでは免除されません。
距離は種類ごとに違います。避難口誘導灯は避難階20m以下・避難階以外10m以下、通路誘導灯は避難階40m以下・避難階以外30m以下、誘導標識は避難階かどうかを問わず一律30m以下です。
ここでいう主要な避難口は、避難階(無窓階を除く)では規則第28条の3第3項第一号イの避難口(屋内から直接地上へ通ずる出入口)、避難階以外の階(地階及び無窓階を除く)では同号ロの避難口(直通階段の出入口)を指します。地階と無窓階は括弧書きで対象から外れているため、この免除は使えません。
なお通路誘導灯の第一号だけ、見とおす対象が「主要な避難口又はこれに設ける避難口誘導灯」となっています。避難口そのものが見えなくても、そこに付いた避難口誘導灯が見えればよい、という緩和です。
見落としやすい免除:階段・傾斜路の非常用照明
規則第28条の2第2項第五号
令別表第一(一)項から(十六の三)項までに掲げる防火対象物の階段又は傾斜路のうち、建築基準法施行令第百二十六条の四第一項に規定する非常用の照明装置…が設けられているもの
階段に建築基準法の非常用の照明装置があれば、階段通路誘導灯は不要です。多くの中規模以上の建物では階段に非常用照明が入りますから、この規定を知っているかどうかで階段部分の誘導灯の台数が変わります。市販の解説書ではこの号がしばしば省かれています。
高輝度蓄光式誘導標識で避難口誘導灯を省く
第1項第三号は、避難階にある居室について、①屋内から直接地上へ通ずる避難口(主としてその居室の人が使うものに限る)があり、②室内の各部分からその避難口を容易に見とおし識別でき歩行距離30m以下、③高輝度蓄光式誘導標識が消防庁長官の定めるところにより設けられている——の3つを満たせば避難口誘導灯を免除する規定です。平成21年に追加されました。
小規模特定用途複合防火対象物・区画による免除
第1項第五号・第2項第四号は小規模特定用途複合防火対象物(特定用途部分の床面積が延べ面積の10分の1以下かつ300㎡未満などの複合用途。→ 建築消防|消防用設備等の設置単位|令8区画・令9のみなし・棟単位の例外)の、地階・無窓階・11階以上の部分以外を免除しています。
第1項第四号・第四号の二は、準耐火構造の区画+内装の準不燃/難燃+開口部の面積制限+感知器連動の防火戸、といった条件を満たす(十六)項イの部分についての免除です。ホテル・病院・老人福祉施設などが入る複合用途で使われます。
誘導標識は「誘導灯があれば有効範囲内は不要」
令第26条第3項により、避難口誘導灯又は通路誘導灯を基準どおり(又はその例により)設置したときは、その誘導灯の有効範囲内の部分について誘導標識を設置しないことができます。誘導標識だけを単独で設計する場面は、実際にはこの第3項で消えていくことが多いはずです。
常時点灯と消灯——階段の通路誘導灯はそもそも対象外
誘導灯は常時点灯が原則です。根拠は規則第28条の3第4項第二号ですが、条文をよく読むと括弧書きで「階段又は傾斜路に設けるものを除く」とされています。
規則第28条の3第4項第二号
避難口誘導灯及び通路誘導灯(階段又は傾斜路に設けるものを除く。)は、常時、第一項に掲げる明るさで点灯していること。ただし、当該防火対象物が無人である場合又は次のイからハまでに掲げる場所に設置する場合であつて、自動火災報知設備の感知器の作動と連動して点灯し、かつ、当該場所の利用形態に応じて点灯するように措置されているときは、この限りでない。
イ 外光により避難口又は避難の方向が識別できる場所
ロ 利用形態により特に暗さが必要である場所
ハ 主として当該防火対象物の関係者及び関係者に雇用されている者の使用に供する場所
読み方の要点は2つです。
1つめ。「無人である場合」または「イ〜ハの場所」のどちらかに当たれば足りるのですが、いずれの場合も感知器連動点灯+利用形態に応じた点灯措置が必要です。条件を満たしただけで自由に消せるわけではありません。
2つめ。階段・傾斜路の通路誘導灯は、そもそもこの号の「常時点灯」義務の対象外です。「階段の通路誘導灯も①②の場合は消灯できる」という説明を見かけますが、条文の構造としては「除かれている」が正確です。階段の通路誘導灯には代わりに第四号(踏面等の中心線1ルクス以上)が適用されます。
点滅機能・音声誘導機能は「設けてはならない箇所」がある
点滅機能と音声誘導機能の付加は任意ですが、付ける場合の基準が第4項第六号にあります。
規則第28条の3第4項第六号
イ 前項第一号イ又はロに掲げる避難口に設置する避難口誘導灯以外の誘導灯には設けてはならないこと。
ロ 自動火災報知設備の感知器の作動と連動して起動すること。
ハ 避難口から避難する方向に設けられている自動火災報知設備の感知器が作動したときは、当該避難口に設けられた誘導灯の点滅及び音声誘導が停止すること。
イが禁止規定である点が重要です。点滅・音声を付けてよいのは、屋内から直接地上へ通ずる出入口(イ)と直通階段の出入口(ロ)に設ける避難口誘導灯だけ。廊下の途中の出入口(ハ)や防火戸(ニ)、通路誘導灯には付けられません。
ハは、火災側へ誘導しないための停止機能です。避難口の先で感知器が作動したら、その避難口の点滅・音声を止める。設計時は自動火災報知設備側の警戒区域と誘導灯の連動関係を整理しておく必要があります。→ 建築消防|非常警報設備|非常ベル・自動式サイレン・放送設備の設置基準
非常電源は20分。60分になるのは「一部の場所」だけ
誘導灯の非常電源は規則第28条の3第4項第十号です。条文は長いですが、設計に効くポイントは4つあります。
①電源方式は直交変換装置を有しない蓄電池設備。②容量は誘導灯を有効に20分間作動できる以上。③一定の防火対象物の特定の場所に設けるものは60分間。④20分を超える時間に係る容量については、直交変換装置を有する蓄電池設備・自家発電設備・燃料電池設備によることもできる。
④の書き方が要点です。最初の20分は蓄電池設備でなければならず、その先の40分だけを自家発電設備等で担保してよいという構造になっています。非常電源の種類そのものは別記事で整理しています。→ 建築消防|消防用設備の非常電源|4種類の違いと選定
60分が必要なのは建物全体ではない
60分の対象建物は平成11年消防庁告示第2号 第四で、①(一)項から(十六)項までで延べ面積50,000㎡以上、又は地階を除く階数15以上かつ延べ面積30,000㎡以上、②(十六の二)項(地下街)で延べ面積1,000㎡以上、③(十)項・(十六)項で乗降場が地階にあり消防長等が避難上必要があると認めて指定したもの、の3号構成です。
そのうえで規則第十号は、60分が必要な場所を次のように限定しています。屋内から直接地上へ通ずる出入口・直通階段の出入口に設けるもの、避難階でその出入口に通ずる廊下及び通路に設けるもの、地階にある乗降場とこれに通ずる階段・傾斜路・通路に設けるもの、そして直通階段に設けるもの。該当建物でも、居室内や一般の廊下の誘導灯まで一律60分にする必要はありません。
さらに、消防庁長官が定めるところにより蓄光式誘導標識を設けた防火対象物・部分では、通路誘導灯が60分の対象から除かれます。蓄電池容量を抑える設計上の選択肢になります。
建築基準法の「非常用の照明装置」との違い——LEDは2ルクス
誘導灯と混同されやすいのが建築基準法の非常用の照明装置です。設置根拠は建築基準法施行令第126条の4、構造は第126条の5。避難の方向を示すものではなく、停電時に床面の明るさを確保するための設備です。
照度についてよく「床面において1ルクス以上」とだけ説明されますが、これは政令の本文の話です。
照度規定の階層
建築基準法施行令第126条の5第一号イ:照明は、直接照明とし、床面において一ルクス以上の照度を確保することができるものとすること。
昭和45年建設省告示第1830号 第四:常温下で床面において水平面照度で一ルクス(蛍光灯又はLEDランプを用いる場合にあつては、二ルクス)以上を確保することができるものとすること。
政令第126条の5第一号ニが「国土交通大臣が定めた構造方法」を告示に委任しており、その告示第四で光源が蛍光灯またはLEDランプの場合は2ルクスに引き上げられています。現在の器具はほぼLEDですから、実務上は2ルクスで照度計算するのが正解です。1ルクスで計算した図面はそのままでは通りません。
予備電源は同告示第三で30分間継続点灯できることとされています。誘導灯の20分/60分とは別の数字なので、非常用照明と誘導灯を1つの盤で計画するときは要注意です。
適用除外も押さえておきましょう。第126条の4のただし書で、一戸建の住宅・長屋・共同住宅の住戸、病院の病室・下宿の宿泊室・寄宿舎の寝室、学校等、避難階とその直上階・直下階の居室で避難上支障がないものは対象外です。
そして繰り返しになりますが、非常用の照明装置は消防法側でも効いてきます。階段・傾斜路に非常用照明があれば階段の通路誘導灯が免除され(規則28条の2第2項第五号)、感知器連動の防火戸では誘導標識+非常用照明で避難口誘導灯のニが除外される——建築側の設計と消防側の設計を突き合わせる価値がある箇所です。
客席誘導灯は「客席内の通路の床面における水平面」で0.2ルクス
客席誘導灯の基準は令第26条第2項第三号で「客席に、総務省令で定めるところにより計つた客席の照度が0.2ルクス以上となるように設けること」。その測定方法を定めているのが規則第28条です。
消防法施行規則第28条(全文)
令第二十六条第二項第三号の客席誘導灯の客席における照度は、客席内の通路の床面における水平面について計るものとする。
第28条の3ではなく第28条であること、測るのは通路の床面の水平面であって座席面でも壁面でもないこと。この2点が確認ポイントです。
蓄光式誘導標識——中輝度と高輝度の分かれ目は100mcd/㎡
蓄光式誘導標識の定義は平成11年消防庁告示第2号 第二にあります。JIS Z 8716の常用光源蛍光ランプD65により照度200ルクスの外光を20分間照射し、その後20分経過した後の表示面の平均輝度で判定します。
中輝度蓄光式誘導標識は24mcd/㎡以上100mcd/㎡未満、高輝度蓄光式誘導標識は100mcd/㎡以上。単なる輝度の数字ではなく照射条件と経過時間まで含めた定義である点が重要です。
法令上、蓄光式誘導標識が使えるのは主に次の2場面で、どちらも高輝度でなければなりません。
①避難口誘導灯に代えて設ける場合(告示第三 一)。避難階の居室が対象で、規則28条の3第3項第一号イ〜ニの避難口の上部又は直近に設け、性能を保持するために必要な照度が採光又は照明により確保されている箇所に設け、まぎらわしい/遮る広告物等を設けないこと。
②通路誘導灯を補完するために設ける場合(告示第三の二)。床面又はその直近に設け、廊下・通路の各部分から歩行距離7.5m以下となる箇所と曲がり角に設けます。これを設けると、(二)項ニ等の床面設置義務(第4項第三号の二)、階段の通路誘導灯の免除に係る非常用照明の要件(第28条の2第2項第五号)、通路誘導灯の非常電源60分(第4項第十号)が、それぞれ緩和されます。
通常の(蓄光式でない)誘導標識の設置基準は規則第28条の3第5項で、避難口・階段に設けるものを除き、各階ごとに廊下・通路の各部分から歩行距離7.5m以下となる箇所と曲り角、多数の者の目に触れやすく採光が識別上十分な箇所、まぎらわしい広告物等を設けないこと、の3号構成です。
平成11年改正でA級・B級・C級になった
現在の区分は平成11年3月17日に公布された3本(政令第42号・自治省令第5号・消防庁告示第2号)によるものです。誘導灯の技術基準部分の施行は平成11年10月1日で、既存建物には従前の例によることができる経過措置が置かれました。
改正の要点は、①従来の大形・中形・小形からA級・B級・C級への変更、②表示面の縦横比の原則自由化、③有効範囲という概念の導入による設置間隔の拡大です。旧区分との対応は、A級=旧大形(40形)、B級=旧大形の小さいもの(20A形)及び旧中形(20B形)、C級=旧小形(10形)とされています。改修設計で旧図面を読むときの手がかりになります。
光点滅走行式避難誘導システムの位置づけ
光源を避難方向に沿って配置し順次点滅させることで、光が避難方向へ走って見えるようにするシステムです。音に頼らないため聴覚障害のある方に有効とされます。
位置づけについては用語の整理が要ります。令第29条の4(必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等)の認定主体は消防長又は消防署長であり、総務大臣ではありません。総務大臣の認定が出てくるのは法第17条第3項の特殊消防用設備等のルートです。「令第29条の4に基づく総務大臣の認定」という組み合わせは制度上存在しないので、解説書でこの表現を見たときはどちらのルートの話かを確認してください。
なお、この名称のシステムが消防法令上のカテゴリとして定義されている一次資料は確認できませんでした。日本照明工業会規格(JIL)由来の製品・技術の呼称として扱い、採用時は所轄消防と個別に協議するのが実務的です。
点検は機器点検6月のみ。総合点検はない
点検の期間は平成16年消防庁告示第9号で定められており、誘導灯及び誘導標識は機器点検6月の欄にのみ掲げられています。総合点検(1年)の対象ではありません。点検基準(昭和50年消防庁告示第14号)別表第16も「1 機器点検」だけで構成され、点検票にも総合点検欄がありません。
点検項目は、誘導灯が外箱・表示面(種類/視認障害等/外形/表示)、非常電源(内蔵型)、光源、点検スイッチ、ヒューズ類、結線接続、信号装置等。誘導標識は外形、視認障害等、採光又は照明、そして高輝度蓄光式誘導標識に限り「表示面の輝度」と「設置場所の照度」が加わります。蓄光式は経年で輝度が落ちるため、点検基準の側でも別扱いになっているわけです。
報告の頻度は点検とは別で、特定防火対象物は1年に1回、非特定防火対象物は3年に1回です。→ 建築消防|消防用設備等の点検・報告|機器点検6か月・総合点検1年の実務
書籍・解説書で確認しておきたい点
市販の解説書で誘導灯を読むときに、条文と突き合わせて確認しておきたい箇所を挙げます。
確認ポイント
①非常用の照明装置の照度 「床面において1ルクス以上」とだけ書かれている場合、告示1830号第四の「蛍光灯・LEDは2ルクス以上」が抜けています。LED器具が前提の現在は2ルクスで計算します。
②A級・B級BH形の義務 規則28条の3第4項第三号((十)項・(十六の二)項・(十六の三)項、1,000㎡以上の階)の記載がない解説書が多くあります。区分選定に直結する規定です。
③階段の通路誘導灯の消灯 「階段・傾斜路の通路誘導灯も無人・外光の場合は消灯できる」という説明は、条文上は「第二号の対象から除かれている」が正確です。
④点滅・音声の禁止規定 「設置が望ましい対象」だけを挙げ、第4項第六号イのイ・ロの避難口以外には設けてはならないという禁止規定に触れていないことがあります。
⑤客席誘導灯の対象 (一)項だけと読める書き方は不正確です。(十六)項イ・(十六の二)項の(一)項用途部分も対象で、(十六の三)項は含まれません。
⑥60分の対象 告示第四は3号構成で、(十六の二)項(地下街)と乗降場のある(十)項・(十六)項は「(一)項から(十六)項まで」とは別の号です。まとめて1つの枠に入れると条文構造が読めなくなります。
⑦免除規定の欠落 規則28条の2第2項第五号(階段の非常用照明)、第1項第三号(高輝度蓄光式誘導標識)、第1項第五号・第2項第四号(小規模特定用途複合防火対象物)は台数に直結しますが、省かれていることがあります。
まとめ
誘導灯の設計は、①令第26条第1項で対象を確定し、②規則第28条の2で免除を確認し、③規則第28条の3第3項で設置箇所を拾い、④同第1項・第2項で区分と有効範囲を決めて台数を詰め、⑤同第4項第三号で区分の下限を検証し、⑥同第4項第十号で非常電源容量を決める——という順序で進めると漏れが出にくくなります。
特に見落としやすいのが、階段に非常用照明があれば階段通路誘導灯が不要(規則28条の2第2項第五号)、1,000㎡以上の階等ではA級またはB級BH形以上が必要(規則28条の3第4項第三号)、有効範囲は見とおせなければ一律10m(同第2項第一号ただし書)の3つです。この3つを最初に確認するだけで、誘導灯の図面はかなり安定します。
また、取付け高さのように法令に規定がなく所轄の運用基準による事項と、告示に数値がある事項を区別しておくと、消防同意・着工届の段階での協議がスムーズになります。→ 建築消防|消防同意・着工届・設置届・消防検査|期限と対象を条文で確認
参考にした条文・告示
- 消防法施行令 第26条(誘導灯及び誘導標識に関する基準)
- 消防法施行規則 第28条(客席誘導灯の照度の測定方法)、第28条の2(誘導灯及び誘導標識を設置することを要しない防火対象物)、第28条の3(誘導灯及び誘導標識に関する基準の細目)、第31条の6(点検及び報告)
- 誘導灯及び誘導標識の基準(平成11年3月17日 消防庁告示第2号)
- 消防用設備等の点検の基準(昭和50年 消防庁告示第14号)別表第16、点検の期間(平成16年 消防庁告示第9号)
- 建築基準法施行令 第126条の4、第126条の5
- 非常用の照明装置の構造方法を定める件(昭和45年 建設省告示第1830号)
誘導灯は「カタログの有効範囲で割る」だけの設備に見えて、実際には免除規定と区分の下限規定で台数が大きく動きます。条文を一度通しで読んでおくと、以後の判断が速くなります。




