技術図書館手元開閉器の設置基準を8枚のスライドで読む内線規程3302-1の設置基準と、免除できる3つの条件を図解つきで通して確認できます。スライドを見る資料一覧を見る

手元開閉器は、電動機や加熱装置のすぐ近くに付ける、その機器だけを切るための開閉器です。設置の根拠は内線規程 3302-1 にありますが、内線規程そのものは民間規格です。そのため「付けなくても法的には問題ない」と説明されることがありますが、点検で停電させるときの施錠・表示・監視人は労働安全衛生規則 第339条の義務として別に残ります。この記事では、設置基準と省略できる3つの条件、そして省略したときに何が必要になるかを、図解で整理します。

結論

原則は機器の近くの操作しやすい位置に施設。省略できるのは3つの条件のどれかに当てはまるときだけです。

  • 根拠は内線規程 3302-1。電動機・加熱装置・電力装置には、機器の近くに開閉器を施設する
  • 求められるのは位置だけではない。充電部が露出しない/外から操作できる/最大負荷電流以上の定格の3つ
  • 省略できるのは、①機器側に相当する開閉器がある ②0.2kW・1.5kVA以下をコンセントから使う ③専用分岐回路で自動運転されるのどれか
  • 内線規程に罰則はないが、分岐回路の開閉器は電技解釈149条、停電作業の施錠・表示・監視人は安衛則339条という法令上の話
  • 省略するなら、点検のときに誰がどこで切るのかを先に決めて、図面の注記に残す
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
①〜④で付けるか省略するかが決まり、⑤〜⑥で残し方を決めます。

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手元開閉器とは ― 機器の近くで切るための開閉器

手元開閉器は、電動機や加熱装置などの機器のすぐ近くに設けて、その機器への電路を開くための開閉器です。屋上の空調室外機の横、ポンプ室の入口、厨房機器の脇などに付いている、あの小さな箱がそれにあたります。

分電盤にもブレーカはあります。それでもなぜ機器のそばにもう一つ必要なのか。理由は距離です。分電盤が階下にあると、点検のたびにそこまで往復することになり、開路した開閉器を目の前で見張れない状態が生まれます。

屋上・機械室・ピットなど、分電盤から離れた機器ほど効き目が大きくなります。
分電盤のブレーカは回路を守るもの、手元開閉器は人を守るもの、と分けて考えると整理できます。
ペン太ペン太
分電盤のブレーカを切れば済むのでは?
ハリタハリタ
電気は切れます。でも、切った状態を誰が保証するかが残ります。そこが手元開閉器の役目です。
ここまでのポイント
  • 手元開閉器は、機器のすぐ近くでその機器だけを切るための開閉器
  • 点検・清掃・部品交換のたびに使う、実務でいちばん触る開閉器
  • 分電盤が離れているほど「切ったつもり」による誤投入が起きやすい
  • 同じ回路の他の負荷を止めずに、その機器だけを停止できる

設置基準の根拠 ― 内線規程3302-1と、その前後にある法令

設置基準の本文は内線規程 3302-1 にあります。要旨は「電動機、加熱装置又は電力装置には、その機器の近くの操作しやすい位置に開閉器を施設すること」です。ただし、後で見る3つの条件に当てはまるときは省略できます。

内線規程は民間規格。その前に電技省令・解釈があり、後ろに安衛則があります。

⚠「内線規程だから法的な拘束はない」で止めない

内線規程は民間規格(JEAC 8001)で、それ自体に罰則はありません。ただし、これは「手元開閉器を付けなければ何も要らない」という意味ではありません。

分岐回路に開閉器と過電流遮断器を施設することは電技解釈149条に書かれていますし、点検で停電させるときに施錠・表示・監視人のどれかを取ることは、安衛則339条という事業者の義務です。内線規程は、その義務を現場で無理なく果たせる形に落とした基準だと考えると、位置づけが分かりやすくなります。

根拠 位置づけ 何を求めているか
電技省令 第59条 法令 電気機械器具は充電部の露出がなく、火災のおそれがある発熱がないように施設する
電技解釈 第149条 法令の解釈 低圧分岐回路には、過電流遮断器及び開閉器を施設する
内線規程 3302-1 民間規格 電動機・加熱装置・電力装置には、機器の近くの操作しやすい位置に開閉器を施設する
安衛則 第339条 法令 停電作業では、開路に用いた開閉器に施錠・表示するか、監視人を置く
解釈149条の「開閉器」は分岐回路の開閉器(分電盤側)です。手元開閉器そのものを直接定めた条文ではありません。
ペン太ペン太
設計で「付けない」と決めてもいいんですか?
ハリタハリタ
条件に合えばよいです。ただし、点検のときに誰がどこで切るのかまで決めて、図面に残しておく必要があります。
ここまでのポイント
  • 設置基準の本文は内線規程 3302-1。民間規格なので罰則そのものはない
  • 分岐回路に開閉器と過電流遮断器を置くことは電技解釈149条
  • 停電作業の施錠・表示・監視人は安衛則339条の義務として別に残る
  • 「内線規程だから任意」で止めず、法令側の義務とセットで判断する


どんな機器を選ぶか ― 種類と、求められる条件

手元開閉器に使える機器は一つではありません。箱開閉器、カバー付ナイフスイッチ、配線用遮断器や漏電遮断器、電磁開閉器などが使われます。共通しているのは「切って、その状態が外から分かる」ことです。

屋外・水気のある場所では、防雨形と漏電遮断器の組合せを検討します。

位置だけを満たせばよいわけではありません。内線規程の低圧電動機・各装置類への電路に施設する機器類では、構造と定格についても条件が示されています。

「近くにある」だけでは足りず、切った状態が外から分かることまでが条件です。

💡 電磁開閉器を手元開閉器の代わりにするときの注意

電磁開閉器(マグネットスイッチ)は運転操作と兼ねられて便利ですが、制御回路を切っただけでは主回路が生きたままです。点検のために回路を開けるなら、主回路側にも開閉器が要ります。実務では、電磁開閉器の一次側に配線用遮断器を置いた組合せが多く使われます。

出典:内線規程(JEAC 8001-2022)3302-1、電気設備に関する技術基準を定める省令 第59条、電気設備の技術基準の解釈 第149条。数値や条文番号は改定で変わることがあります。適用にあたっては最新版をご確認ください。

ここまでのポイント
  • 箱開閉器・カバー付ナイフスイッチ・MCCB・ELCB・電磁開閉器などが使える
  • 共通の条件は「切って、その状態が外から分かる」こと
  • 充電部が露出しない/外から操作できる/最大負荷電流以上の定格電流
  • 電磁開閉器だけでは主回路が残る。主回路側の開閉器とセットで考える

省略(免除)できる3つの条件

内線規程 3302-1 には、次のいずれかに該当する場合は手元開閉器を施設しなくてよい、という但し書きが付いています。

内線規程 3302-1 ただし書き(要旨)

  1. 機器に、手元開閉器に相当する適当な開閉器が取り付けてある場合
  2. 定格出力0.2kW以下の電動機、又は定格入力1.5kVA以下の加熱装置若しくは電力装置を、コンセントから使用する場合
  3. 専用の分岐回路から供給され、フロートスイッチ、圧力スイッチ、タイムスイッチなどにより自動的に操作される場合、又はこれらに類する場合で、技術的に手元開閉器を必要としないとき
どれか一つに当てはまれば省略できます。三つ全部を満たす必要はありません。

3つの条件は、ばらばらに見えて同じことを言っています。どれも「機器のそばで回路を開ける手段が、手元開閉器以外の形で用意されている」または「そもそも人がそばで操作しない」という状態です。

①は機器の中、②はプラグ、③は自動運転。開ける場所がどこにあるかの違いです。
条件 成立する理由 確認すること
① 機器側に相当開閉器 機器の中に開閉器があるので、そこで開路できる 運転スイッチではなく、回路を開けるものか
② コンセント使用 プラグを抜けば確実に開路できる 0.2kW/1.5kVA以下か。直結していないか
③ 専用分岐で自動運転 人がそばで操作しないので、手元で切る場面が生じにくい 専用の分岐回路か。点検時の切り方が決まっているか
②の数値は「定格出力0.2kW(電動機)」「定格入力1.5kVA(加熱装置・電力装置)」。単位が違うので取り違えに注意します。

⚠ ②でよくある取り違え ― kWとkVA

②の条件は、電動機は定格「出力」0.2kW以下、加熱装置・電力装置は定格「入力」1.5kVA以下です。同じ0.2kWでも、電動機なら該当し、加熱装置なら別の基準(1.5kVA)で見ることになります。さらにコンセントから使用していることが前提なので、直結配線にした時点で②では省略できません。

ペン太ペン太
③の「技術的に必要としないとき」って、誰が決めるんですか?
ハリタハリタ
設計者の判断です。だからこそ、なぜ不要と判断したのかを注記に残しておきます。
ここまでのポイント
  • 省略できるのは3条件のどれかに当てはまるときだけ
  • ①機器側に相当する開閉器がある/②0.2kW・1.5kVA以下をコンセントから使う/③専用分岐回路で自動運転
  • ②はkW(電動機の出力)とkVA(加熱・電力装置の入力)で単位が違う
  • ②はコンセント使用が前提。直結にした時点で当てはまらない
  • ③の「技術的に必要としない」は設計者の判断。根拠を残しておく


省略したら、点検のときに何が必要になるか

ここが、省略の判断でいちばん実務に効くところです。手元開閉器を省略しても、点検で停電させるときの義務は消えません。変わるのは「その義務を、どこで、誰が果たすか」です。

開路した開閉器を目の前で見張れるかどうかで、作業のしかたが変わります。

労働安全衛生規則 第339条第1項第1号は、停電作業について「開路に用いた開閉器に、作業中、施錠し、若しくは通電禁止に関する所要事項を表示し、又は監視人を置くこと」と定めています。どれを取るかは選べますが、どれも取らないという選択肢はありません。

A・Bは手元開閉器があれば機器のそばで取れます。なければCの負担が増えます。

⚠ 省略は「付けない」ではなく「別の方法で担保する」

コストや盤スペースを理由に手元開閉器を省略すること自体は、条件に合えば問題ありません。ただし省略した分は、施錠具の手配、表示札の運用、監視人の確保のどれかに置き換わります。設計の段階でそこまで決めずに省略すると、引渡し後に保守側が「切れる場所がない」と困ることになります。

出典:労働安全衛生規則 第339条(停電作業を行う場合の措置)、第329条(電気機械器具の囲い等)。条文は e-Gov 法令検索で確認できます。

ここまでのポイント
  • 手元開閉器を省略しても、停電作業の措置義務は消えない
  • 安衛則339条1項1号は、施錠・通電禁止の表示・監視人のどれかを求めている
  • 通電する前には、感電のおそれがないことと短絡接地器具の撤去を確認する(同条2項)
  • 省略するなら、施錠具・表示札・監視人のどれで担保するかを設計段階で決める

図面と現場に、何を残しておくか

手元開閉器は、系統図・機器表・盤図の3つに同じ内容で現れます。動力盤の構成を決めるときに「どの単位で切るか」を整理しておくと、手元開閉器の位置も自然に決まります。

省略したときこそ、根拠を注記に残します。改修のときに「なぜ無いのか」が分かります。
系統図 分岐回路の先に開閉器記号を入れ、機器名と回路番号を添える
機器表 形式・定格電流・極数・屋内/屋外の別を書く
盤図・平面図 取付位置と高さを示す。機器から見える位置かを確認する
注記 省略した場合は、3条件のどれで省略したかを書いておく
幹線側が決まると、分岐回路と手元開閉器の定格も決めやすくなります。負荷容量から動力盤の主幹ブレーカーを選ぶところは、ブラウザで計算できます。

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ここまでのポイント
  • 系統図・機器表・盤図の3つに、同じ内容で書く
  • 機器表には形式・定格電流・極数・屋内/屋外の別を残す
  • 省略したときは、3条件のどれで省略したかを注記に書く
  • 取扱説明書に「点検時はここで切る」と書いておくと、引渡し後に効く


よくある質問

手元開閉器とは何ですか?

電動機や加熱装置などの機器のすぐ近くに設けて、その機器への電路を開くための開閉器です。点検・清掃・部品交換のときに、機器のそばで確実に電源を切るために使います。

手元開閉器の設置基準はどこに書かれていますか?

内線規程 3302-1 です。電動機、加熱装置又は電力装置には、その機器の近くの操作しやすい位置に開閉器を施設することとされています。関連する法令としては、電技省令 第59条と電技解釈 第149条があります。

手元開閉器を付けないと法令違反になりますか?

内線規程は民間規格なので、内線規程そのものに罰則はありません。ただし、分岐回路に開閉器と過電流遮断器を施設することは電技解釈149条に定められており、点検で停電させるときの施錠・表示・監視人は労働安全衛生規則 第339条の義務です。「付けなければ何も要らない」ということにはなりません。

手元開閉器を省略できるのはどんなときですか?

次の3つのいずれかに当てはまるときです。①機器に手元開閉器に相当する適当な開閉器が取り付けてある場合、②定格出力0.2kW以下の電動機又は定格入力1.5kVA以下の加熱装置若しくは電力装置をコンセントから使用する場合、③専用の分岐回路から供給され、フロートスイッチ・圧力スイッチ・タイムスイッチなどにより自動的に操作される場合で、技術的に手元開閉器を必要としないときです。

0.2kWと1.5kVAは、どちらも同じ機器に使う数字ですか?

違います。0.2kWは電動機の定格「出力」、1.5kVAは加熱装置・電力装置の定格「入力」です。対象となる機器も単位も違うので、取り違えないように注意してください。

コンセントではなく直結にした場合も、0.2kW以下なら省略できますか?

できません。②の条件は「コンセントから使用する場合」が前提です。プラグを抜けば確実に開路できることが理由なので、直結配線にした時点でこの条件では省略できなくなります。

手元開閉器にはどんな機器を使いますか?

箱開閉器(安全開閉器)、カバー付ナイフスイッチ、配線用遮断器、漏電遮断器、電磁開閉器、小容量ならコンセントとプラグの組合せなどが使われます。屋外や水気のある場所では、防雨形と漏電遮断器の組合せを検討します。

電磁開閉器だけで手元開閉器の代わりになりますか?

なりません。電磁開閉器は運転操作と兼ねられますが、制御回路を切っただけでは主回路が生きたままです。点検のために回路を開けるなら、主回路側にも開閉器が必要です。

手元開閉器の定格電流はどう選びますか?

最大負荷電流以上の定格電流とします。電動機の場合は始動電流ではなく定格電流を基準に選び、過負荷保護を兼ねさせるなら上位の遮断器との保護協調も確認します。

手元開閉器を省略したとき、点検ではどうすればよいですか?

分電盤など開路に用いた開閉器に施錠するか、通電禁止に関する所要事項を表示するか、監視人を置きます(安衛則339条1項1号)。通電する前には、作業者に感電のおそれがないことと短絡接地器具を取り外したことを確認します(同条2項)。


まとめ ― 取り違えやすいところと、判断の順番

取り違えやすいところ 正しくは
内線規程だから、付けなくても何も要らない 分岐回路の開閉器は電技解釈149条。停電作業の施錠・表示・監視人は安衛則339条の義務
機器の近くに付けてあればよい 充電部が露出せず、外から操作でき、最大負荷電流以上の定格であること
0.2kWと1.5kVAは同じ意味 0.2kWは電動機の定格出力、1.5kVAは加熱装置・電力装置の定格入力
0.2kW以下なら直結でも省略できる コンセントから使用することが前提。直結にしたら当てはまらない
電磁開閉器があれば手元開閉器は不要 制御回路を切っても主回路は生きている。主回路側の開閉器が要る
省略すれば手間もなくなる 施錠具・表示札・監視人のどれかに置き換わる。設計段階で決めておく
3条件を全部満たさないと省略できない どれか一つに当てはまれば省略できる
「位置・構造・定格」と「省略したあとの措置」の2つを押さえれば、手元開閉器で外すことはありません。
手順 やること 見るところ
1|機器を確認 種類と定格を拾う 電動機はkW、加熱・電力装置はkVA
2|①を判定 機器側に相当する開閉器があるか 回路を開けるものか。運転スイッチではないか
3|②を判定 コンセント使用か、直結か 0.2kW/1.5kVA以下か
4|③を判定 専用分岐で自動運転か フロート・圧力・タイムスイッチ
5|措置を決める 省略するなら点検時の担保を決める 施錠・表示・監視人のどれか
6|図面に残す 位置・定格・省略の根拠を書く 系統図・機器表・盤図・注記
この6手順で、付けるか省略するかと、その残し方までが決まります。

📘 あわせて確認したいこと

この記事は、連載「幹線設備の設計マニュアル」の第5回 保護と幹線分岐の補足解説です。計画全体の流れは設計・施工マニュアル(目次)から、動力側の決め方はブレーカーとケーブルの選定でご覧いただけます。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。