(一)項は、劇場・映画館・演芸場・観覧場(イ)と、公会堂・集会場(ロ)です。設備の数量を拾う前に、どの項か・何人か・誰が管理するかが決まっていないと計画が進みません。この記事では、収容人員の算定・防火管理者の選任・既存遡及の扱いを、取り違えやすいところに絞って整理しました。設備ごとの設置基準は早見表の記事にまとめてあります。

結論

(一)項で押さえるのは0.4m30人、そして特定防火対象物の3つです。

  • 収容人員は従業者+客席。長いすは正面幅÷0.4m(切り捨て)
  • 防火管理者は収容人員30人以上で選任。延べ面積300㎡で甲種・乙種が分かれる
  • 「階数3以上かつ30人以上」は統括防火管理者の基準。防火管理者の話ではない
  • 収容人員300人以上なら防火対象物定期点検の対象になり得る
  • イもロも特定防火対象物。既存建物でも消防用設備等は現行基準に合わせる
  • 売店や食堂は従属用途か。外れると(16)項イになり、基準が変わる
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
①〜③で「どの項か・何人か」、④〜⑥で「誰が管理し、どこまで直すか」が決まります。

(一)項とは ― イは「見る」、ロは「集まる」

令別表第一の(一)項は、イが劇場・映画館・演芸場・観覧場ロが公会堂・集会場です。イは客席があって何かを見る施設、ロは人が集まって使う施設、と考えると迷いません。

イとロで設置基準の一部が変わります。まずどちらかを決めます。
野球場や体育館も、観覧席があればイに入ります。

体育館がイになるかどうかの分かれ目

体育館は公衆に観覧させるかどうかで変わります。観覧席を備えて興行を行うならイですが、小規模な選手控室しかない体育館や、事業所の体育施設で公衆に観覧させないものは(一)項に該当しません。

ロも同じ考え方で、原則として舞台と固定いすの客席があり、映画や演劇などを鑑賞しつつ、集会・会議にも多目的に使う施設が対象です。区民会館・市民会館・音楽堂・貸ホール・貸講堂などが当たります。

ここまでのポイント
  • イは劇場・映画館・演芸場・観覧場。ロは公会堂・集会場
  • 観覧席のある野球場・相撲場・競馬場・競輪場・競艇場・体育館はイ
  • 公衆に観覧させない体育施設は(一)項に該当しない
  • イもロも特定防火対象物として扱われる

用途の判定 ― 売店や食堂は別の項になるのか

ホールの中にレストランが入っている、劇場に売店がある。こうしたとき、その部分が従属用途になるか、独立した用途になるかで、建物全体が(一)項のままか(16)項イになるかが変わります。

3要件を満たせば従属用途。満たさなくても、規模が小さければみなし従属になります。

⚠ (16)項イになると、設置基準が変わる

(16)項イは特定用途を含む複合用途防火対象物です。自動火災報知設備消火器の基準が(一)項単独のときと変わるため、用途判定は設備の数量に直結します。

判定は棟ごとに、令別表第一のイ・ロ・ハ・ニの号ごとに行います。令8区画(令第8条の区画)の有無は、この判定には関係しません。消防法建築基準法で意味が違う用語はこちらの記事で整理しています。

出典:消防法施行令 第1条の2第2項、昭和50年4月15日 消防予第41号・消防安第41号「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」。運用は所轄消防本部により異なることがあります。

ここまでのポイント
  • 従属用途は、管理権原・利用者・利用時間の3つがそろうことが条件
  • みなし従属は、独立した用途部分が延べ面積の10%以下かつ300㎡未満
  • どれにも当たらなければ(16)項イの複合用途防火対象物になる
  • 判定は棟ごと。令8区画の有無は関係しない


収容人員の算定 ― (一)項は0.4mで割る

収容人員は、防火管理者の要否も、防火対象物点検の要否も決める数字です。(一)項は従業者の数に客席の人員を足す方法で算定します。

固定いすはそのまま、長いすは正面幅、立見とその他は床面積で数えます。
(一)項の長いすは0.4mで割ります。ここが他の用途と違うところです。
舞台部・客席・ロビーは、どれも主たる用途に供される部分です。

💡 「1未満の端数は切り捨て」に注意

長いす式の計算は正面幅 ÷ 0.4mで、1未満の端数は切り捨てます。正面幅3.0mの長いすなら 3.0 ÷ 0.4 = 7.5 → 7人です。これが20脚あれば140人になります。

立見席は床面積 ÷ 0.2㎡、その他の部分は床面積 ÷ 0.5㎡です。立見席のほうが除数が小さい=人数が多く出ることを覚えておくと、計画段階で「立見を取ると点検対象になる」といった判断ができます。

ペン太ペン太
収容人員って、実際に入る人数のことですか?
ハリタハリタ
いいえ、規則で決まった数え方の結果です。実人数とは別のものと考えてください。

出典:消防法施行規則 第1条の3(収容人員の算定方法)。

ここまでのポイント
  • 収容人員=従業者の数+固定いす+長いす+立見席+その他の部分
  • 長いすは正面幅÷0.4m。1未満の端数は切り捨て
  • 立見席は床面積÷0.2㎡、その他の部分は床面積÷0.5㎡
  • 実際に入る人数ではなく、規則で決まった数え方の結果

防火管理者 ― 取り違えやすい3つの制度

ここが古い資料でいちばん間違えやすいところです。「地階を除く階数が3以上で、かつ収容人員30人以上」は、防火管理者の基準ではありません。管理権原が分かれている建物に置く統括防火管理者の基準です。

(一)項の防火管理者は、階数に関係なく収容人員30人以上で必要です。

⚠ 防火管理者・統括防火管理者・防火対象物点検を分けて考える

防火管理者(法8条)は、特定用途なら収容人員30人以上で選任します。(一)項は特定用途なので、階数や面積に関係なく30人が基準です。延べ面積300㎡以上なら甲種、300㎡未満なら乙種でも構いません。

統括防火管理者(法8条の2)は、管理について権原が分かれていることが前提です。テナントが複数入っていて、地階を除く階数が3以上かつ収容人員30人以上、または高さ31mを超える高層建築物が対象になります。

防火対象物定期点検報告(法8条の2の2)は、特定防火対象物のうち収容人員300人以上のもの、または地階・3階以上に特定用途があって屋内階段が1系統しかないものが対象です。

出典:消防法 第8条・第8条の2・第8条の2の2、消防法施行令 第1条の2第3項・第3条、東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」「統括防火・防災管理制度について」「防火対象物定期点検報告制度の概要」。

ここまでのポイント
  • (一)項の防火管理者は収容人員30人以上で選任(階数・面積は関係しない)
  • 延べ面積300㎡で甲種・乙種が分かれる
  • 「階数3以上かつ30人以上」は統括防火管理者の基準。管理権原が分かれていることが前提
  • 高さ31m超の高層建築物も統括防火管理者の対象
  • 収容人員300人以上などは防火対象物定期点検報告の対象


既存遡及 ― (一)項は現行基準に合わせる

消防用設備等は、原則として既存の建物には改正前の基準が適用されます(消防法17条の2の5第1項)。ただし例外があり、特定防火対象物はその例外に当たります

(一)項は特定防火対象物。既存でも現行基準に合わせます。
①〜③はどの用途にもある例外。(一)項は④で当然に現行基準になります。

建築基準法の「既存不適格」とは扱いが違う

建築基準法では、建てたあとに基準が変わっても、増改築などをしない限り既存不適格のまま使い続けられます。

消防法も原則は同じですが、特定防火対象物だけは別扱いです。(一)項イ・ロはどちらも特定防火対象物なので、改修や用途変更がなくても、消防用設備等は現行基準に合わせることになります。改修計画では、この差が工事費に直結します。

出典:消防法 第17条の2の5、消防法施行令 第34条・第34条の4。

ここまでのポイント
  • 原則は既存不遡及。改正前の基準のままでよい
  • 例外は①従前の基準にも違反②大規模な増改築③いったん適合④特定防火対象物
  • (一)項はイもロも特定防火対象物なので、消防用設備等は現行基準
  • 消火器・避難器具・自動火災報知設備などは用途を問わず常に現行基準
  • 建築基準法の既存不適格とは扱いが違う

消火器具 ― 電気設備のある場所は別に足す

(一)項の消火器具は、イは延べ面積に関係なく全部ロは延べ面積150㎡以上で必要になります(令第10条第1項第1号・第2号)。ここに、場所ごとの付加設置が重なります。

区分 基準 根拠
(一)項イ 延べ面積に関係なく設置 令第10条第1項第1号
(一)項ロ 延べ面積150㎡以上 令第10条第1項第2号
少量危険物・指定可燃物 指定数量の5分の1以上、または危政令別表第四の数量以上を貯蔵・取扱う部分 令第10条第1項第4号
地階・無窓階・3階以上 床面積50㎡以上の階(前各号に当たらない場合) 令第10条第1項第5号
多量の火気を使用する場所 鍛造場・ボイラー室・乾燥室など。床面積25㎡ごとに能力単位1以上 規則第6条第2項
電気設備のある場所 変電設備・発電設備・蓄電池設備など。床面積100㎡以下ごとに1個 規則第6条第3項
電気設備のある場所は「面積で1個ずつ」です。能力単位ではなく個数で数えます。

💡 電気設備の場所は、電気火災に適応する消火器を選ぶ

変電室やキュービクルの置いてある部屋は、床面積100㎡以下ごとに1個の消火器具を付加します。選ぶのは電気火災(C火災)に適応するもので、水系のものは使えません。

キュービクルまわりの消火設備の考え方は少量危険物貯蔵庫と発電機の油庫でも扱っています。

出典:消防法施行令 第10条、消防法施行規則 第6条。

ここまでのポイント
  • (一)項イは延べ面積に関係なく消火器具が必要
  • (一)項ロは延べ面積150㎡以上
  • 多量の火気を使用する場所は床面積25㎡ごとに能力単位1以上
  • 変電設備・発電設備などがある場所は床面積100㎡以下ごとに1個
  • 電気設備の場所は、電気火災に適応する消火器を選ぶ


設備ごとの基準は、早見表で確認する

ここまでで用途と収容人員が決まりました。消火・警報・避難・消火活動上必要な施設・非常電源の数量は、用途と面積と階数の組合せで決まります。(一)項の設備一覧は早見表の記事にまとめてあります。

個々の設備の考え方は、スプリンクラー設備の設置基準自動火災報知設備の感知器誘導灯・誘導標識で詳しく扱っています。

ここまでのポイント
  • 用途と収容人員が決まってから、設備の数量に入る
  • (一)項の設備一覧は早見表の記事にある
  • イとロで基準が変わる設備があるので、項を確定してから引く

発注前・申請前のチェック

設備の数量を拾う前に、この8つを確認しておきます。
ここまでのポイント
  • イかロか、(16)項イにならないかを先に確定する
  • 収容人員は規則どおりに算定して、根拠を残す
  • 防火管理者・統括防火管理者・点検報告は別の制度として確認する
  • 既存建物でも消防用設備等は現行基準で検討する

よくある質問

(一)項イと(一)項ロの違いは何ですか?

イは劇場、映画館、演芸場又は観覧場で、客席があって何かを見る施設です。ロは公会堂又は集会場で、原則として舞台と固定いすの客席を有し、鑑賞とあわせて集会・会議にも多目的に使う施設です。区民会館・市民会館・音楽堂・貸ホールなどが当たります。

体育館は(一)項になりますか?

観覧席を備えて公衆に観覧させるものは(一)項イに入ります。小規模な選手控室のみを有する体育館や、事業所の体育施設で公衆に観覧させないものは(一)項に該当しません。

(一)項の収容人員はどう算定しますか?

従業者の数に客席の人員を足します。客席は、固定式のいす席はその席数、長いす式は正面幅を0.4mで割った数(1未満は切り捨て)、立見席は床面積を0.2㎡で割った数、その他の部分は床面積を0.5㎡で割った数です。

長いすの除数は0.5mではないのですか?

(一)項は0.4mです。ほかの用途では0.5mで割るものがあるため、取り違えやすいところです。消防法施行規則第1条の3の表で用途ごとに確認してください。

防火管理者は何人から必要ですか?

(一)項は特定用途なので、収容人員30人以上で選任が必要です。階数や延べ面積は要件になりません。延べ面積300㎡以上なら甲種防火管理者、300㎡未満なら乙種でも構いません。

「地階を除く階数が3以上で収容人員30人以上」という基準は何ですか?

統括防火管理者(消防法第8条の2)の基準です。管理について権原が分かれていることが前提で、防火管理者の選任基準とは別の制度です。高さ31mを超える高層建築物も対象になります。

防火対象物定期点検報告の対象になるのはどんな場合ですか?

特定防火対象物のうち、収容人員300人以上のもの、または地階もしくは3階以上の階に特定用途があり、屋内の階段が1系統しかないものが対象です。

古い劇場でも、いまの消防用設備等の基準に合わせる必要がありますか?

あります。消防法第17条の2の5は原則として既存の建物に従前の基準を認めていますが、特定防火対象物は例外です。(一)項はイもロも特定防火対象物なので、消防用設備等は現行基準に合わせることになります。

用途を問わず常に現行基準になる設備はありますか?

あります。消火器、簡易消火用具、避難器具、自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、非常警報器具・非常警報設備、誘導灯・誘導標識などです。

ホールの中にある売店や食堂は別の用途になりますか?

管理権原が同一、利用者が同一または密接な関係、利用時間がほぼ同一の3つを満たせば従属用途として(一)項に含めます。満たさなくても、独立した用途部分が延べ面積の10%以下かつ300㎡未満ならみなし従属として扱われます。どれにも当たらなければ(16)項イの複合用途防火対象物になります。


まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
防火管理者は階数3以上・30人以上で必要 それは統括防火管理者の基準。防火管理者は収容人員30人以上(階数は関係しない)
既存遡及は「イは全部、ロは150㎡以上」 それは消火器具の設置基準。(一)項はイもロも特定防火対象物なので、消防用設備等はすべて遡及適用
長いすは正面幅を0.5mで割る (一)項は0.4mで割る。1未満の端数は切り捨て
収容人員は実際に入る人数 規則第1条の3で決まった数え方の結果。実人数とは別のもの
ホール内の食堂は当然に(一)項に含まれる 従属用途の3要件かみなし従属に当てはまるかを確認する
消火器は建物単位で決めれば足りる 変電設備のある場所は床面積100㎡以下ごとに1個を付加する
消防法と建築基準法は同じ考え方 既存不適格の扱いが違う。用語の意味も違うものがある
「0.4m」「30人」「特定防火対象物」の3つを押さえれば、(一)項で外すことはありません。

📘 あわせて確認したいこと

設備ごとの数量は(一)項の消防設備 早見表に、ほかの用途は防火対象物別|消防設備の早見表にまとめています。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。