建築消防|ガス漏れ火災警報設備の設置基準|検知器は都市ガス8m・LPガス4mで決まる
ガス漏れ火災警報設備は、消防用設備等のなかでも「どの建物に必要か」がいちばん誤解されやすい設備です。都市ガスを引いていれば付くと思われがちですが、条文の対象は地下街・準地下街・特定用途の地階・温泉採取設備の4系統に限られており、しかもLPガス販売事業により販売される液化石油ガス(=いわゆるプロパン)だけを使う建物は対象外です。
設計側でもう一つ迷いやすいのが検知器の位置です。空気より軽い都市ガスは天井面の下方0.3m以内・燃焼器から水平8m以内、空気より重いLPガスは床面の上方0.3m以内・水平4m以内。数字だけなら覚えられますが、はりの扱い・吸気口の特例・設けてはならない場所まで含めると、図面上で位置を決めるには条文を一度きちんと読んでおく必要があります。
この記事では、消防法施行令第21条の2と施行規則第24条の2の2・第24条の2の3をe-Gov法令APIで確認しながら、義務判定・検知器の位置・警報装置・非常電源・配線までを電気設計の視点で整理します。市販の解説書でよく見る記述のうち、条文と食い違っている箇所も指摘します。
どんな設備か|2つの大事故が生んだ「火災前」の設備
ガス漏れ火災警報設備は、燃料用ガスの漏れや自然発生する可燃性ガスを検知して、建物の関係者に知らせる設備です。自動火災報知設備が「火災が起きたこと」を知らせるのに対し、こちらは火災・爆発が起きる前の段階で止めるための設備という点で性格が違います。
この設備が規制として整備された背景には、大きな事故が2つあります。ひとつは昭和55年(1980年)の静岡市地下街ガス爆発事故(死者15人、負傷者200人以上)。休業中の飲食店からのガス漏れ、あるいは床下に発生したメタンガスが原因といわれています。もうひとつが平成19年(2007年)の東京・渋谷の温泉採取施設爆発事故(死者3人)で、こちらは温泉の汲み上げ時に発生した天然ガスが原因とされています。
この2つの事故が、いまの条文の形をほぼそのまま説明しています。地下街・準地下街・地階が対象になっているのは前者、温泉採取設備が独立した号として入っているのは後者の結果です。
いつ義務になるか|令第21条の2第1項の5類型
設置対象は消防法施行令第21条の2第1項に5つの号として書かれています。ここは「対象になる建物」を数え上げる形なので、まずこの5つに当たるかどうかを見ます。
| 号 | 対象 | 規模要件 |
|---|---|---|
| 第1号 | 令別表第一(十六の二)項=地下街 | 延べ面積1,000㎡以上 |
| 第2号 | (十六の三)項=準地下街 | 延べ面積1,000㎡以上、かつ(一)〜(四)項・(五)項イ・(六)項・(九)項イの用途部分の床面積合計500㎡以上 |
| 第3号 | その内部に温泉の採取のための設備があるもの | 収容人員が総務省令で定める数(=1人)以上。用途・延べ面積の要件なし |
| 第4号 | (一)〜(四)項・(五)項イ・(六)項・(九)項イの地階 | 地階の床面積合計1,000㎡以上 |
| 第5号 | (十六)項イ(特定用途を含む複合用途)の地階 | 地階の床面積合計1,000㎡以上、かつ特定用途部分の床面積合計500㎡以上 |
条文の構造で注意すべき点が2つあります。ひとつは、令第21条の2は第1項と第2項の2項しかなく、第1項にただし書はありません。除外は柱書のカッコ書き「(総務省令で定めるものを除く。)」だけで行われます。もうひとつは、地上階の話がまったく出てこないことです。第4号・第5号はいずれも地階の床面積で判定します。地上部分がどれだけ大きくても、地階が1,000㎡に届かなければこの号では対象になりません。
「設置を要しないもの」は裏返しで書かれている|規則第24条の2の2
令の柱書にある「総務省令で定めるもの」の中身は、消防法施行規則第24条の2の2第1項にあります。ここは条文の書き方が独特で、実務書の説明と読み方が逆になっているので注意が必要です。
令第二十一条の二第一項の総務省令で定めるものは、同項に規定する防火対象物又はその部分のうち、次に掲げるもの以外のものとする。
一 燃料用ガス(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律第二条第三項に規定する液化石油ガス販売事業によりその販売がされる液化石油ガスを除く。以下同じ。)が使用されるもの
二 その内部に、第三項に掲げる温泉の採取のための設備(…)が設置されているもの
三 可燃性ガスが自然発生するおそれがあるとして消防長又は消防署長が指定するもの消防法施行規則第24条の2の2第1項
つまり、①燃料用ガスが使われている、②温泉採取設備がある、③消防長等の指定がある——この3つのいずれにも当たらない建物が「設置を要しないもの」として令の対象から外れるという構造です。多くの解説書は「燃料用ガス以外のものが使用されるものは免除」というように免除側から書きます。結論は同じですが条文の向きは逆なので、根拠を示すときは気をつけてください。
LPガスだけの建物は対象外になる
この号でいちばん実務に効くのが、第1号のカッコ書きです。「燃料用ガス」から、液化石油ガス販売事業により販売される液化石油ガス(=一般的なLPガス)が明示的に除かれています。
結果として、LPガスだけを使っている建物は、地下街でも地階1,000㎡超でも、ガス漏れ火災警報設備の設置義務が生じません。都市ガスの導管が引き込まれていない物件でこの設備を計上していたら、根拠を確認し直す価値があります。逆に、都市ガスとLPガスが混在する建物では、都市ガス側を対象に検知器を配置することになります。
カートリッジ式コンロ・FF式燃焼機器の扱い
- カートリッジ式ガスボンベ内蔵のガスコンロが使われる部分は、液化石油ガスが使用されているものに該当するため設置免除として扱われます
- 密閉式バーナー(FF式・バランス形)の燃焼機器が使われる部分も設置免除として扱われます。燃焼用の空気を屋外から取り、排気も屋外に出す構造で、室内にガスが漏れる経路がないためです
いずれも運用上の取扱いです。所轄消防本部の判断を確認してください。
温泉採取設備は別ルール|収容人員1人で対象になる
令第21条の2第1項第3号の温泉採取設備は、他の号とまったく性格が違います。用途の限定も延べ面積の要件もなく、収容人員が総務省令で定める数以上であれば対象で、その数は規則第24条の2の2第2項で1人と定められています。事実上、温泉採取設備があればほぼ必ず対象になるということです。
対象となる設備の範囲も規則で特定されています。規則第24条の2の2第3項は、温泉法施行規則第6条の3第3項第5号イに規定する温泉井戸、ガス分離設備及びガス排出口並びにこれらの間の配管(可燃性天然ガスが滞留するおそれのない場所に設けられるものを除く)としています。つまり掘削から分離・排出までの一連の設備が対象で、浴槽まわりの配管は含まれません。
除外もあります。温泉法第14条の5第1項の確認を受けた者が、当該確認に係る温泉の採取の場所で温泉を採取するための設備は対象外です。温泉法側の可燃性天然ガス安全対策の確認を受けていれば、消防法側の設備は求めないという整理になっています。
この一連の規定は、平成20年(2008年)7月2日公布の政令第215号・総務省令第78号・消防庁告示第8号によって整備されたものです。渋谷の事故を受けた温泉法改正と対になっています。
警戒区域|「複数階」ではなく「二の階」
警戒区域は、ガス漏れの発生した区域を他と区別して識別できる最小単位の区域です。令第21条の2第2項第1号・第2号が原則を、規則第24条の2の2第4項・第5項が例外を定めています。
| 項目 | 原則(令第21条の2第2項) | 例外(規則第24条の2の2) |
|---|---|---|
| 階のまたぎ | 防火対象物の2以上の階にわたらないこと | 面積が500㎡以下であり、かつ二の階にわたる場合(第4項) |
| 面積 | 一の警戒区域の面積は600㎡以下 | 面積が1,000㎡以下であり、かつ当該警戒区域内のガス漏れ表示灯を通路の中央から容易に見通すことができる場合(第5項) |
実務書でよく見る記述との相違点を2つ。
- 階のまたぎの例外を「複数階にまたがって設定できる」と書いている解説がありますが、規則第24条の2の2第4項の文言は「二の階にわたる場合」です。3層にまたがる警戒区域は、この例外では認められません。
- 面積の例外は「警報装置を見通せる場合」と書かれることがありますが、条文が指しているのは警報装置一般ではなくガス漏れ表示灯(規則第24条の2の3第1項第4号ロに定めるもの)です。音声警報装置のスピーカーが見えていても要件を満たしません。
検知器の設置位置|都市ガスは天井付近8m、LPガスは床付近4m
ここが設計上いちばん手を動かす部分です。規則第24条の2の3第1項第1号は、検知器を天井の室内に面する部分(天井がない場合は上階の床の下面。以下「天井面等」)又は壁面の点検に便利な場所に設けたうえで、ガスの性状に応じてイ(比重1未満)とロ(比重1超)に分けて位置を指定しています。
イ|空気に対する比重が1未満(都市ガス等)
- 燃焼器又は貫通部から水平距離8m以内。ただし天井面等が0.6m以上突出したはり等で区画されている場合は、当該はり等より燃焼器側又は貫通部側に設ける
- 燃焼器等が使用され、又は貫通部が存する室の天井面等の付近に吸気口がある場合は、はり等で区画されていない吸気口のうち燃焼器等又は貫通部から最も近いものの付近に設ける
- 検知器の下端は、天井面等の下方0.3m以内の位置に設ける
ロ|空気に対する比重が1を超える(LPガス等)
- 燃焼器又は貫通部から水平距離4m以内
- 検知器の上端は、床面の上方0.3m以内の位置に設ける
注意したいのは、はり0.6mの規定と吸気口の特例は「イ」にしか書かれていないことです。比重が1を超えるガスは天井付近ではなく床付近にたまるため、天井のはりや吸気口による扱いの分岐が条文上そもそも不要という整理です。
貫通部という言葉に注意
条文は「燃焼器又は貫通部から」という書き方をしています。貫通部とは、燃料用ガスを供給する導管が防火対象物又はその部分の外壁を貫通する場所のことです。屋内に燃焼器がなくても、導管が外壁を貫通していればその付近が起点になります。テナント区画に引き込む導管がある建物では、燃焼器の位置だけを見ていると検知器を1台落とします。
検知器を設けてはならない場所
第1号のただし書は、次の場所に設けてはならないとしています。誤報の原因になる場所と、ガスが届かない場所です。
- 出入口の付近で外部の気流がひんぱんに流通する場所
- 換気口の空気の吹き出し口から1.5m以内の場所
- ガス燃焼機器の廃ガスに触れやすい場所
- その他ガス漏れの発生を有効に検知することができない場所
実務では、換気口1.5mの制約と水平8m(4m)の制約がぶつかることがよくあります。厨房のように燃焼器と換気設備が近接する空間では、平面図に「8mの円」と「吹き出し口からの1.5mの円」を両方描いて、成立する範囲を先に押さえておくのが確実です。
受信機・中継器・警報装置|どこに何を置くか
ガス漏れ火災警報設備は、検知器がガスを検知して信号を出し、中継器を介して(または直接)受信機が受け、受信機が警報装置を鳴らすという流れで動きます。自動火災報知設備と構成はよく似ていますが、細部の要件は別物です。
受信機|防災センター等に置く/2台以上なら相互通話設備
受信機の要件は規則第24条の2の3第1項第3号のイ〜ヘにあります。押さえておきたいのは次の点です。
- 検知器又は中継器の作動と連動して作動した警戒区域を表示できること
- 貫通部に設ける検知器に係る警戒区域は、他と区別して表示できること
- 操作スイッチは床面から0.8m(いすに座って操作するものは0.6m)以上1.5m以下の箇所
- 一の防火対象物に2以上の受信機を設けるときは、それらの場所相互で同時に通話できる設備を設けること
- 防災センター等に設けること
受信機の型式には、ガス漏れ信号だけを受けるG型のほか、自動火災報知設備のP型・R型の機能を併せ持つGP型・GR型があります。自火報と一体の盤にするかどうかは、防災センターのレイアウトと更新計画の話になります。総合操作盤が必要な規模の建物では、規則第24条の2の3第1項第10号が規則第12条第1項第8号を準用しているため、ガス漏れ火災警報設備も総合操作盤に載せることになります。
条文の細かい点ですが、受信機の要件を定める第3号は「第一号イ(イ)又は同号ロ(イ)に定めるところにより検知器を設ける場合」という限定付きです。つまり燃焼器・貫通部を起点に検知器を置くケースが前提で、温泉採取設備だけを対象に検知器を設ける場合は、受信機の設置そのものが求められません。この場合は検知器のガス濃度指示装置を防災センター等に置く形になります。
中継器|「回線数5以下」なら不要
中継器は、受信機から検知器に至る配線の導通を受信機側で確認できない場合に、回線ごとに導通を確認できるよう受信機と検知器の間に設けます。ただし受信機に接続することができる回線の数が5以下のものは不要です。設置場所は点検に便利で、防火上有効な措置を講じた箇所とされています。
警報装置|dBが決まっているのは検知区域警報装置だけ
警報装置は3種類あり、それぞれ求められるものが違います。図3にまとめたとおりですが、音圧の数値(70デシベル)が条文に書かれているのは検知区域警報装置だけです。音声警報装置は「他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取ることができること」という定性的な要件にとどまります。
ガス漏れ表示灯は「前方3m離れた地点で点灯していることを明確に識別できる」ことが要件で、これは前述の警戒区域1,000㎡緩和の条件(通路の中央から容易に見通せる)とセットで効いてきます。同一警戒区域内に複数の店舗がある場合、どの店舗でガス漏れが起きているかを確認できるよう各店舗ごとに表示灯を設けるのが実務上の考え方です。
電源・非常電源|「2回線を10分間」が基本形
市販の解説書ではあっさり流されがちですが、電気設計としてはここがいちばん具体的な作業になります。規則第24条の2の3第1項第6号(常用電源)と第7号(非常電源)を見ます。
常用電源
- 電源は、蓄電池又は交流低圧屋内幹線から、他の配線を分岐させずにとること
- 電源の開閉器には、ガス漏れ火災警報設備用のものである旨を表示すること
「他の配線を分岐させずに」というのは、専用回路にせよという意味です。分電盤の回路表と現物の表示を突き合わせる竣工検査でよく指摘が出るところなので、盤図の段階で回路名と表示を確定させておきます。
非常電源
第7号イの文言はこうなっています。
直交変換装置を有しない蓄電池設備によるものとし、その容量は、二回線を十分間有効に作動させ、同時にその他の回線を十分間監視状態にすることができる容量以上であること。ただし、二回線を一分間有効に作動させ、同時にその他の回線を一分間監視状態にすることができる容量以上の容量を有する予備電源又は直交変換装置を有しない蓄電池設備を設ける場合は、直交変換装置を有する蓄電池設備、自家発電設備又は燃料電池設備によることができる。
消防法施行規則第24条の2の3第1項第7号イ
整理するとこうなります。
| 構成 | 要求される容量 |
|---|---|
| 原則:直交変換装置を有しない蓄電池設備 | 2回線を10分間作動+その他の回線を10分間監視 |
| 例外:直交変換装置を有する蓄電池設備/自家発電設備/燃料電池設備 | これらに加えて、2回線を1分間作動+その他の回線を1分間監視できる予備電源等を設けること |
自家発電設備だけで非常電源を成立させることはできません。発電機が立ち上がるまでの1分間を埋める予備電源等が必ず要るという構造です。自動火災報知設備の非常電源(規則第24条第4号)とは要求が異なるので、両方を同じ蓄電池で賄う計画にするときは容量計算を分けて確認してください。消防用設備等の非常電源の全体像は消防用設備の非常電源|4種類の違いと選び方で整理しています。
配線・絶縁抵抗・遅延時間
配線(第5号)
- 常時開路式の検知器の信号回路は、容易に導通試験ができるよう回路の末端に終端器を設け、一回線に一の検知器を接続する場合を除き送り配線にすること
- 用いてはならない回路方式:接地電極に常時直流電流を流す回路方式/検知器・中継器の回路とガス漏れ火災警報設備以外の設備の回路が同一の配線を共用する回路方式(ガス漏れ信号の伝達に影響を及ぼさないものを除く)
絶縁抵抗(第5号ロ)
| 測定箇所 | 測定電圧 | 基準値 |
|---|---|---|
| 電源回路と大地の間/電源回路の配線相互の間(対地電圧150V以下) | 直流500V | 0.1MΩ以上 |
| 同上(対地電圧150V超) | 直流500V | 0.2MΩ以上 |
| 検知器回路・附属装置回路と大地の間/それぞれの配線相互の間 | 直流500V | 一の警戒区域ごとに0.1MΩ以上 |
遅延時間と誤報防止(第8号・第9号)
検知器の標準遅延時間と受信機の標準遅延時間の合計が60秒以内であることが求められます。また、次のいずれかが生じたときに受信機がガス漏れ表示をしてはならない、という規定もあります。
- 配線の一線に地絡が生じたとき
- 開閉器の開閉等により回路の電圧又は電流に変化が生じたとき
- 振動又は衝撃を受けたとき
検定の対象になるもの・ならないもの
ここは誤解が多いところです。消防法第21条の2の検定制度の対象品目は消防法施行令第37条に12号で列挙されており、ガス漏れ火災警報設備に関係するのは第5号と第6号です。
| 機器 | 検定の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| ガス漏れ火災警報設備に使用する受信機 | 検定対象(型式承認+型式適合検定) | 令第37条第6号 |
| ガス漏れ火災警報設備に使用する中継器 | 検定対象 | 令第37条第5号 |
| ガス漏れ検知器 | 検定対象ではない | 令第37条の12号に含まれていない |
検知器および「液化石油ガスを検知対象とするガス漏れ火災警報設備に使用する中継器・受信機」は、規則第24条の2の3第2項により消防庁長官が定める基準に適合するものとされ、その基準が昭和56年消防庁告示第2号「ガス漏れ検知器並びに液化石油ガスを検知対象とするガス漏れ火災警報設備に使用する中継器及び受信機の基準」です。
混同しやすい点として、消防法第21条の2(検定)と消防法施行令第21条の2(ガス漏れ火災警報設備)は無関係な別条文です。番号が同じなので、書類で根拠を書くときは「法」か「令」かを必ず添えてください。
自火報・漏電火災警報器との違い
警報系の設備は3つありますが、受け持つ場面が違います。ガス漏れ火災警報設備と漏電火災警報器は、火災そのものではなく火災の原因になるものを検知して、出火する前に止めるための設備です。一方、自動火災報知設備は火災が起きたあとの早期発見を担います。
この違いは、防災センターでの運用にも直結します。ガス漏れの警報が出たときの行動は「避難」ではなく「ガスの元栓を閉じる・火気使用を止める・換気する」であり、自火報の鳴動時とは手順がまったく異なります。受信機の表示と操作の設計、そして総合操作盤に上げる信号の切り分けは、この行動の違いを前提に考えます。
電気設計での実務ポイント
1. まず「都市ガスかLPガスか」を確認する
前述のとおりLPガスだけの建物は対象外です。設備の要否がここで決まるので、意匠・機械の担当者にガス種と引込ルートを最初に確認します。都市ガス導管の外壁貫通位置(貫通部)も同時に押さえます。
2. 検知器の位置は平面と断面の両方で決める
水平距離8m(4m)は平面の話、天井下0.3m・床上0.3mは断面の話です。加えて、はり0.6mと天井付近の吸気口は断面を見ないと判断できません。天井伏図・空調系統図・厨房機器図を並べて確認するのが結局いちばん早い進め方です。
3. 警戒区域の割り方でガス漏れ表示灯の数が変わる
600㎡を1,000㎡に緩和する条件が「ガス漏れ表示灯を通路の中央から容易に見通せること」なので、警戒区域を大きく取るなら表示灯の位置を先に決める必要があります。テナント区画が確定していない段階では、原則の600㎡で組んでおき、区画確定後に統合を検討するほうが手戻りが少なくなります。
4. 非常電源は蓄電池が前提
「2回線を10分間」という要求は自火報と数字が近いので混同されがちですが、条文は別です。自家発電設備で成立させる場合は1分間分の予備電源等が必須になるため、盤内蔵の蓄電池を持つ受信機を選定するのが素直な解になります。
5. 総合操作盤・防災センターとの関係を先に決める
受信機は防災センター等に置きます。2台以上になる場合は相互通話設備が必要です。総合操作盤が義務になる規模なら、ガス漏れ火災警報設備も総合操作盤に載ります。防災センターの盤スペースと監視点数の見積りに、この設備の分を忘れずに入れてください。
まとめ
- 設置対象は消防法施行令第21条の2第1項の5類型(地下街/準地下街/温泉採取設備/特定用途の地階/複合用途の地階)。第4号・第5号は地階の床面積で判定する
- LPガス販売事業により販売されるLPガスだけを使う建物は対象外。規則第24条の2の2第1項第1号のカッコ書きが根拠
- 規則第24条の2の2第1項は「次に掲げるもの以外のもの」という裏返しの書き方。免除側から読むと条文の向きを取り違える
- 検知器は比重1未満=水平8m以内・天井面等の下方0.3m以内、比重1超=水平4m以内・床面の上方0.3m以内。はり0.6mと吸気口の特例は比重1未満のみ
- 設けてはならない場所は外気がひんぱんに流通する出入口付近/換気口の吹き出し口から1.5m以内/廃ガスに触れやすい場所
- 警戒区域は2以上の階にわたらず600㎡以下。例外は500㎡以下かつ「二の階」、および1,000㎡以下かつガス漏れ表示灯を通路の中央から見通せる場合
- 音圧の数値が条文にあるのは検知区域警報装置(1mで70dB以上)だけ。音声警報装置はスピーカーまで水平距離25m以下
- 非常電源は直交変換装置を有しない蓄電池設備で2回線10分間が原則。自家発電設備等による場合は1分間分の予備電源等が別途必要
- 受信機・中継器は検定対象、検知器は検定対象外(昭和56年消防庁告示第2号の基準による)
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参考・根拠
- 消防法施行令 第21条の2(ガス漏れ火災警報設備に関する基準)、第37条(検定対象機械器具等の範囲) ― e-Gov法令検索
- 消防法施行規則 第24条の2の2(ガス漏れ火災警報設備の設置を要しない防火対象物等)、第24条の2の3(基準の細目)、第12条第1項第8号(総合操作盤) ― e-Gov法令検索
- 消防法 第17条の3の3(点検及び報告)、第21条の2(検定) ― e-Gov法令検索
- 昭和56年消防庁告示第2号「ガス漏れ検知器並びに液化石油ガスを検知対象とするガス漏れ火災警報設備に使用する中継器及び受信機の基準」
- 平成20年政令第215号・平成20年総務省令第78号・平成20年消防庁告示第8号(いずれも平成20年7月2日公布。温泉採取設備関係)/消防予第301号(平成20年11月14日)
- 昭和50年消防庁告示第14号(点検の基準・点検票)、平成16年消防庁告示第9号(点検の期間)
- 防災研究会AFRI『図解入門ビジネス 最新消防法と設備がよ〜くわかる本』秀和システム(2024年)
条文の引用は趣旨を要約した箇所を含みます。設計・申請にあたっては必ず最新の法令原文と所轄消防本部の運用をご確認ください。点検周期はガス漏れ火災警報設備に固有の定めはなく、一般則どおり機器点検6か月・総合点検1年です。




