「消防機関へ通報する火災報知設備」は、名前が長いわりに実務では火災通報装置という呼び方でほぼ統一されています。押しボタン一つで119番につながり、蓄積音声情報で所在地を伝えたうえで通話もできる装置です。

この設備でいちばん誤解が多いのが「電話があれば設置しなくてよい」という免除規定です。たしかに令第23条第3項にそう書かれています。

ところが同じ条文のカッコ書きで、病院・診療所・老人短期入所施設・グループホーム・ホテル旅館は、電話があっても免除されないと定められています。就寝施設と避難に介助が必要な施設は、そもそも免除の対象外という設計です。

もう一つの山場が自動火災報知設備との連動義務です。平成25年の省令改正で対象が広がり、平成30年3月末で経過措置が終わりました。連動が要る建物・要らない建物、そして連動を免れる唯一の条件を、条文で押さえておきます。

この記事では、消防法施行令第23条・施行規則第25条・平成8年消防庁告示第1号をe-Gov法令APIと消防庁の資料で確認しながら、義務判定・連動・電源・電話回線・届出までを整理します。市販の解説書でよく見る「約10km以上」「距離500m以下」といった記述が条文とどうずれているかも指摘します。

結論

火災通報装置は病院・有床診療所・グループホーム・地下街などは面積に関係なく必要です。「電話があれば免除」は(五)項イ・(六)項イ・ロ・ハには効きません。自火報との連動を省けるのは、受信機と火災通報装置の両方が常時人がいる防災センターにあるときだけです。

  • 設置義務は3類型。第1号は面積要件なし、第2号は500㎡以上、第3号は1,000㎡以上
  • 連動が要るのは(六)項イ(1)(2)・(六)項ロと、その用途部分がある複合用途・地下街等
  • 設置場所は防災センター等(常時人がいる場所)。電源は原則専用回路
  • 工事は甲種第4類の消防設備士(電源の部分を除く)、着工届は着手10日前まで
火災通報装置の設置基準の全体像:義務は3類型、電話があれば免除の例外、自火報との連動、設置場所と電源
火災通報装置の設置基準を解説。面積要件のない第1号、「電話があれば免除」の落とし穴、自火報との連動義務と特定火災通報装置まで。
技術図書館火災通報装置|電話があっても要る設置義務の3類型、「電話があれば免除」が効かない用途、自火報との連動を免れる唯一の条件この資料をスライドで見る資料一覧を見る
火災通報装置の設置基準を解説。面積要件のない第1号、「電話があれば免除」の落とし穴、自火報との連動義務と特定火災通報装置まで。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 延べ面積180㎡の認知症高齢者グループホーム。火災通報装置は要るか
  • 電話があれば免除、と聞いた。旅館・ホテルでも使えるか
  • 自火報との連動を省ける建物は、どんな条件を満たしたときか
ひっかけ注意
火災通報装置って、電話があれば要らないんですよね?
半分正しい。令第23条第3項に免除はあるけど、条文のカッコ書きで外されている用途がある。旅館・ホテル、病院、グループホーム、デイサービスあたりは免除されない。 しかも設置義務・免除の対象外・連動義務で、対象になる用途が1段ずつずれている。ここを一枚の表で押さえておくと、判定を間違えない。

2種類あるが、実質は「火災通報装置」の一択

トピック1:2種類あるが、実質は一択

消防法施行令第23条の「消防機関へ通報する火災報知設備」には、条文上2つの種類があります。

  • 火災通報装置:一の押しボタンの操作等により消防機関に通報することができる装置(電話回線を使用するものに限る)
  • M型発信機による設備:手動でM型発信機を操作し、消防機関に設置されたM型受信機に信号を送るもの

M型のMはMunicipal Type(公的所有)の頭文字です。

かつて街頭に設けられていた火災報知機の押しボタンがこれで、公設だったことからこう呼ばれました。東京消防庁は昭和49年(1974年)にM型発信機を廃止しており、全国的にもほとんど残っていません。したがって、現在の設計で扱うのは事実上すべて火災通報装置です。

設置義務|第1号は面積要件がない

トピック2:義務がかかる3類型

令第23条第1項は、対象を3つの号に分けています。ポイントは第1号に面積要件がないことです。

火災通報装置が義務になる3類型第1号面積要件なし(六)項イ(1)〜(3) 病院・有床診療所・入所施設のある助産所(六)項ロ 老人短期入所施設・認知症高齢者グループホーム等(十六の二)項 地下街 / (十六の三)項 準地下街第2号延べ面積 500㎡ 以上(一)項 劇場等 (二)項 キャバレー等 (四)項 百貨店・店舗等(五)項イ 旅館・ホテル (六)項イ(4) 無床診療所・助産所(六)項ハ 老人デイサービス等 (六)項ニ 幼稚園・特別支援学校(十二)項 工場・作業場・映画スタジオ (十七)項 重要文化財等第3号延べ面積 1,000㎡ 以上(三)項 飲食店・料理店 (五)項ロ 共同住宅・寄宿舎等(七)項 学校 (八)項 図書館・博物館 (九)項 公衆浴場等(十)項 駅等 (十一)項 神社・寺院 (十三)〜(十五)項 車庫・倉庫・事務所等第1号は面積要件がない。就寝施設で避難に介助を要する用途は、規模にかかわらず火災通報装置が必要令第23条第1項ただし書により、消防機関から著しく離れた場所その他総務省令で定める場所にあるものは除かれるHARITA
図1:消防法施行令第23条第1項が定める3類型。第1号は面積要件なしで義務がかかる

第1号に入っているのは、就寝を伴い、かつ避難に介助が必要になりやすい用途です。病院・有床診療所((六)項イ(1)〜(3))、老人短期入所施設や認知症高齢者グループホーム((六)項ロ)、そして地下街・準地下街。

これらは延べ面積が何㎡であっても設置義務がかかります。小規模なグループホームで「面積が小さいから不要では」と考えるのは誤りです。

ここまでのポイント
  • 第1号は面積要件なし=(六)項イ(1)〜(3)、(六)項ロ、(十六の二)項・(十六の三)項
  • 第2号は延べ面積500㎡以上=(一)(二)(四)項、(五)項イ、(六)項イ(4) ほか
  • 就寝を伴い、避難に介助が必要になりやすい用途が第1号。小規模でも義務がかかる

「電話があれば免除」の落とし穴

トピック3:「電話があれば免除」の例外

令第23条第3項には、次の免除規定があります。

第一項各号に掲げる防火対象物(同項第一号に掲げる防火対象物で別表第一(六)項イ(1)から(3)まで及びロに掲げるもの並びに第一項第二号に掲げる防火対象物で同表(五)項イ並びに(六)項イ(4)及びハに掲げるものを除く。)に消防機関へ常時通報することができる電話を設置したときは、第一項の規定にかかわらず、同項の火災報知設備を設置しないことができる。

消防法施行令第23条第3項

長いカッコ書きが免除の対象外を指定しています。整理すると次のとおりです。

「電話があれば免除」が効かない用途電話があれば免除される・(六)項ニ 幼稚園・特別支援学校・(十六の二)項 地下街・(十六の三)項 準地下街・(一)(二)(三)(四)項・(五)項ロ 共同住宅・寄宿舎等・(七)〜(十五)項、(十七)項 など消防機関へ常時通報することができる電話を設置すれば、設置しないことができる令第23条第3項電話があっても免除されない(五)項イ旅館・ホテル・宿泊所(六)項イ(1)〜(4)病院・診療所・助産所(無床診療所を含む)(六)項ロ老人短期入所施設・認知症高齢者グループホーム等(六)項ハ老人デイサービス・保育所等就寝施設と、避難に介助を要する人がいる施設は、電話の有無にかかわらず火災通報装置が必要HARITA
図2:令第23条第3項の免除規定。カッコ書きで(五)項イ・(六)項イ・ロ・ハが除かれている

市販の解説書でよく見る記述との相違点:免除の対象外を「(五)項イ、(六)項イ、(六)項ロ」と3つだけ挙げている解説を見かけますが、条文には(六)項ハ(老人デイサービス・保育所等)も含まれています。

逆に(六)項ニ(幼稚園・特別支援学校)は免除の対象です。(六)項の中でイ・ロ・ハとニで扱いが分かれている点に注意してください。

「消防機関から著しく離れた/近い」場所の免除

令第23条第1項ただし書には、もう一つの免除があります。「消防機関から著しく離れた場所その他総務省令で定める場所にある防火対象物」は対象外というものです。この「総務省令で定める場所」の中身が規則第25条第1項です。

防火対象物免除される場所
(六)項イ(1)・(2)、(十六)項イ、(十六の二)項、(十六の三)項
(複合用途等は(六)項イ(1)(2)の用途部分があるものに限る)
消防機関が存する建築物内
上記以外の防火対象物消防機関からの歩行距離が500メートル以下である場所

ここも実務書の記述とずれやすい箇所です。

  • 「消防機関から著しく離れた場所=約10km以上」という説明をよく見ますが、10kmという数値は令にも規則にも書かれていません。令第23条第1項ただし書の「著しく離れた場所」は数値で定義されておらず、運用上の目安として扱われている数字です。
  • 「消防機関からの距離500m以下」ではなく、条文は「歩行距離が五百メートル以下」です。直線距離ではありません。
  • そして重要なのが、病院・有床診療所((六)項イ(1)(2))等はこの500mルールが使えないことです。これらは「消防機関が存する建築物内」でなければ免除されません。事実上ほぼ免除されないということです。
ここまでのポイント
  • 令第23条第3項=消防機関へ常時通報できる電話があれば設置しないことができる
  • ただし長いカッコ書きで(五)項イ・(六)項イ・ロ・ハが除かれている((六)項ニは免除の対象)
  • 令第23条第1項ただし書+規則第25条第1項に、消防機関が存する建築物内/歩行距離500m以下の免除もある

火災通報装置の構成と動作

トピック4:構成と動作

平成8年消防庁告示第1号は、火災通報装置を次のように定義しています。

火災が発生した場合において、手動起動装置を操作すること又は自動火災報知設備の感知器の作動と連動することにより、電話回線を使用して消防機関を呼び出し、蓄積音声情報により通報するとともに、通話を行うことができる装置をいう。

平成8年2月16日 消防庁告示第1号「火災通報装置の基準」第二第一号

火災通報装置の構成と動作手動起動装置押しボタン1つで通報を開始自動火災報知設備感知器の作動と連動して起動遠隔起動装置宿直室等の別の場所から起動火災通報装置防災センター等(常時人がいる場所)に設置① 消防機関を呼び出す② 蓄積音声情報で通報 (一区切り30秒以内)③ そのまま通話ができる予備電源:待機60分ののち 10分以上の通報が可能電話回線消防機関(119番)火災通報装置は消防庁長官が定める基準(平成8年消防庁告示第1号)に適合するものであること電話回線は機能に支障を生ずるおそれのないものを使用し、他の機器等の通信の影響を受けない部分に接続する(六)項イ(1)〜(3)・ロで延べ面積500㎡未満のものには、ハンズフリー通話機能をもつ「特定火災通報装置」があるHARITA
図3:手動起動装置・自火報連動・遠隔起動装置のいずれかで起動し、蓄積音声情報で通報したのち通話する

動作の流れは、起動 → 119番発信 → 蓄積音声情報の送出 → 通話、という順序です。蓄積音声情報にはあらかじめ火災である旨と所在地・建物名・電話番号が記録されており、一区切りの蓄積音声情報は30秒以内とされています。通報後はそのまま消防機関と通話できるため、状況を補足できます。

予備電源は待機状態を60分間継続した後において、10分間以上火災通報を行うことができる容量が求められます。119番の発信方式は、10パルス毎秒もしくは20パルス毎秒のダイヤルパルス、又は押しボタンダイヤル信号のいずれかで送出できることとされています。

特定火災通報装置

告示には特定火災通報装置という区分もあります。スピーカーとマイクを使い、送受話器を取り上げずに通話できる「ハンズフリー通話機能」をもつ火災通報装置のうち、(六)項イ(1)〜(3)及びロで延べ面積500㎡未満のものに設けるものを指します。

小規模な社会福祉施設では夜勤者が1人ということもあり、受話器を持ったままでは初期対応ができません。そうした現場の事情を踏まえた区分です。

ここまでのポイント
  • 起動は手動起動装置・自火報連動・遠隔起動装置のいずれか
  • 電話回線で消防機関を呼び出し、蓄積音声情報で通報したうえで通話まで行う
  • 定義は平成8年消防庁告示第1号

設置場所は「防災センター等」

トピック5:置ける場所

規則第25条第2項第1号は、火災通報装置を防災センター等に設置しなければならないとしています。この「防災センター等」は規則第12条第1項第8号の定義を借りており、防災センター、中央管理室、守衛室その他これらに類する場所(常時人がいる場所に限る)を指します。

小規模な施設に防災センターはありませんが、守衛室その他これらに類する場所が含まれているので、宿直室や事務室などで成立します。ただしカッコ書きの「常時人がいる場所に限る」は外せません。無人になる時間帯がある部屋には置けない、という条件です。

防災センターと中央管理室の違いについては防災センターと中央管理室の違いで整理しています。

自動火災報知設備との連動|対象と、免れる唯一の条件

トピック6:自火報との連動

この設備でいちばん重要な規定が、規則第25条第3項第5号です。

令別表第一(六)項イ(1)及び(2)並びにロ、(十六)項イ、(十六の二)項並びに(十六の三)項に掲げる防火対象物(…)に設ける火災通報装置にあつては、自動火災報知設備の感知器の作動と連動して起動すること。ただし、自動火災報知設備の受信機及び火災通報装置が防災センター(常時人がいるものに限る。)に設置されるものにあつては、この限りでない。

消防法施行規則第25条第3項第5号

自動火災報知設備との連動義務感知器の作動と連動して起動すること(六)項イ(1)・(2)病院・有床診療所(避難に患者の介助が必要なもの)(六)項ロ老人短期入所施設・認知症高齢者グループホーム等(十六)項イ・(十六の二)項・(十六の三)項上記の用途に供される部分が存するものに限る連動が不要になる唯一の条件防災センター(常時人がいるものに限る)自動火災報知設備の受信機+火災通報装置この2つがそろって防災センターにあるときに限り、連動しなくてよい片方でも防災センターの外にあれば連動が必要規則第25条第3項第5号ただし書「防災センター等」ではなく「防災センター」である点に注意(六)項イ(3)・(4)は火災通報装置の設置義務はあるが、連動義務の対象ではないHARITA
図4:連動義務の対象と、連動しなくてよい唯一の条件

ただし書の読み方に注意が必要です。連動を免れる条件は「自火報の受信機」と「火災通報装置」の両方が、常時人がいる防災センターに設置されていることです。片方だけが防災センターにあっても駄目ですし、そもそも防災センターがない建物では使えません。

自火報受信機と火災通報装置の置き場所で連動の要否が変わることを、両方が常時人がいる防災センターにあれば連動不要、片方が別の部屋なら連動が必要、両方が守衛室でも条文上は連動が必要という3つの場合に切り替えて示した動く図解
動く図解:連動を省けるのは、両方が常時人がいる防災センターにあるときだけです。

条文はただし書で「防災センター等」ではなく「防災センター(常時人がいるものに限る。)」と書いています。設置場所の規定(第2項第1号)が「防災センター等」=守衛室その他を含むのに対し、連動免除のただし書は防災センターに限定されている、という読み方が素直です。

守衛室しかない建物では連動が必要になる、ということになります。実際の運用は所轄消防本部に確認してください。

(六)項イ(3)・(4)は連動義務の対象ではない

連動が義務なのは(六)項イ(1)と(2)、そして(六)項ロです。(六)項イ(3)(その他の病院・有床診療所・入所施設のある助産所)と(六)項イ(4)(無床診療所・助産所)は、火災通報装置の設置義務はあるが連動義務はありません。

設置義務と連動義務で対象範囲が1段ずれているので、区分の判定を間違えると余分な工事を計上したり、逆に足りなかったりします。

グループホーム180㎡、ホテル800㎡、幼稚園600㎡、事務所1,200㎡の4つの例について、設置義務・電話による免除・自火報との連動の3つの判定が順に出ていく動く図解
動く図解:同じ「要る」でも、電話による免除と連動の判定は用途ごとに分かれます。
用途設置義務電話があれば免除自火報との連動
(六)項イ(1)(2) 病院・有床診療所(避難に介助が必要)第1号|面積要件なし免除されない必要
(六)項イ(3) その他の病院・有床診療所等第1号|面積要件なし免除されない不要
(六)項ロ 老人短期入所施設・グループホーム等第1号|面積要件なし免除されない必要
(十六の二)項 地下街/(十六の三)項 準地下街第1号|面積要件なし免除される必要※
(五)項イ 旅館・ホテル第2号|500㎡以上免除されない不要
(六)項イ(4) 無床診療所・助産所第2号|500㎡以上免除されない不要
(六)項ハ 老人デイサービス等第2号|500㎡以上免除されない不要
(六)項ニ 幼稚園・特別支援学校第2号|500㎡以上免除される不要

※(十六)項イ・(十六の二)項・(十六の三)項の連動義務は、(六)項イ(1)(2)・(六)項ロの用途に供される部分が存するものに限られます。

ここまでのポイント
  • 連動義務の対象は(六)項イ(1)(2)・(六)項ロ、(十六)項イ・(十六の二)項・(十六の三)項
  • 連動を免れるのは自火報の受信機と火災通報装置の両方が防災センター(常時人がいるもの)にあるときだけ
  • (六)項イ(3)・(4)は設置義務はあるが連動義務はない。設置義務と連動義務で対象が1段ずれる

電源と電話回線

トピック7:電源と電話回線

電源|原則は専用回路、小規模施設には緩和がある

規則第25条第3項第4号イは、電源を蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとることとしています。他の消防用設備等と同じ専用回路の要求です。ロで電源の開閉器及び配線の接続部に「火災通報装置用のものである旨」を表示することも求められます。

ただしイにはただし書があり、(六)項イ(1)〜(3)及びロで延べ面積500㎡未満のものについては、分電盤との間に開閉器が設けられていない配線からとられており、かつ配線の接続部が振動や衝撃で容易に緩まないように措置されている場合は専用回路でなくてよいとされています。

これは平成20年12月26日の総務省令第155号による緩和で、既存の小規模なグループホームなどに後付けする際、専用回路の新設が現実的でないケースを想定したものです。新築設計では素直に専用回路を組むのが本筋ですが、改修案件でこのただし書を使う場合は、接続部の措置を施工要領で明確にしておいてください。

電話回線|「支障を生じない部分に接続する」

規則第25条第3項の第2号と第3号が電話回線の要求です。

  • 第2号:火災通報装置の機能に支障を生ずるおそれのない電話回線を使用すること
  • 第3号:その電話回線のうち、当該電話回線を適切に使用することができ、かつ他の機器等が行う通信の影響により火災通報装置の機能に支障を生ずるおそれのない部分に接続すること

条文は回線の種別を名指ししていません。だからこそ、IP電話やひかり電話に接続してよいかは、この2つの号を満たすかどうかで判断されることになります。

多くの消防本部の審査基準では、IP電話回線に接続する場合の条件として「新型火災通報装置又は特定火災通報装置であること」「119番通報が可能な電話回線であること」「火災通報装置が支障なく優先して起動すること」といった項目を挙げています。

また、NTT固定電話のIP網移行にあたっては、令和元年12月23日付で消防予第274号・消防情第138号「NTT固定電話のIP網移行に伴い発生する事象への対応について」が発出されています。

一部の火災通報装置で消防機関からの折り返しの連絡が正常に受けられなくなる事象が判明したというもので、既存建物の改修や設備更新の相談を受けたときに知っておくべき論点です。

電話回線の引込・PBXの構成は、電気設計の担当範囲から外れて情報通信側の話になりがちです。しかし火災通報装置の成立可否が回線構成に依存する以上、PBXの手前で分岐するのか、専用回線を引くのかを早い段階で決めておく必要があります。

ビジネスホンの内線側にぶら下げると第3号の「他の機器等が行う通信の影響」に抵触しやすいので、要注意です。

火災通報装置まわりの接続イメージ
図5:火災通報装置まわりの接続イメージ。連動・電話回線・電源はそれぞれ別の号が定めている
ここまでのポイント
  • 電源は蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとる(規則第25条第3項第4号イ)
  • 開閉器と配線の接続部に火災通報装置用である旨を表示(同号ロ)
  • (六)項イ(1)〜(3)・ロで延べ面積500㎡未満には、専用回路によらなくてよいただし書がある

消防設備士|第4類・甲種の工事対象(電源部分を除く)

トピック8:資格と着工届

消防法施行令第36条の2第1項第10号に「消防機関へ通報する火災報知設備」が掲げられています。したがって設置工事は甲種消防設備士の独占業務です。ただし柱書のカッコ書きで電源の部分は除かれます。

類別は規則第33条の3により第4類(自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備又は消防機関へ通報する火災報知設備)です。整備は甲種・乙種いずれの第4類でも行えます。

設備消防設備士類着工届
自動火災報知設備必要(電源部分を除く)第4類必要
ガス漏れ火災警報設備必要(電源部分を除く)第4類必要
消防機関へ通報する火災報知設備必要(電源部分を除く)第4類必要
非常コンセント設備不要―不要
無線通信補助設備不要―不要

前の記事で扱った非常コンセント設備・無線通信補助設備とは扱いが正反対です。火災通報装置は甲種第4類の消防設備士による工事+着工届(着手10日前まで)が必要なので、工程を組むときは10日前ルールを織り込んでください。

この設備は「火災のたびに基準が変わってきた」設備

トピック9:基準が変わってきた背景

火災通報装置の規定は、大きな火災のたびに強化されてきました。年表として押さえておくと、既存建物の改修相談で「いつの基準の建物か」を判断しやすくなります。

改正内容公布/施行
平成19年政令第179号
平成19年総務省令第66号
設置対象に(六)項ロ(老人短期入所施設・認知症高齢者グループホーム等)を追加。背景は平成18年1月の長崎県大村市のグループホーム火災公布 平成19年6月13日
施行 平成21年4月1日
(経過措置 平成24年3月31日まで)
平成20年総務省令第155号
平成20年消防庁告示第29号
小規模な(六)項イ・ロの施設について電源の専用回路規定を緩和するただし書を追加公布 平成20年12月26日
平成25年総務省令第126号(六)項ロ等について自動火災報知設備との連動を義務化。背景は平成25年2月の長崎市の認知症高齢者グループホーム火災施行 平成27年4月1日
(経過措置 平成30年3月31日まで)
平成26年政令第333号
平成26年総務省令第80号
平成26年消防庁告示第24〜26号
令別表第一(六)項イを(1)〜(4)に細分化。病院・有床診療所を面積要件なしの第1号へ、無床診療所を500㎡以上の第2号へ。連動義務の対象に(六)項イ(1)(2)を追加。背景は平成25年10月の福岡市の有床診療所火災公布 平成26年10月16日
施行 平成28年4月1日

※ 平成25年総務省令第126号の公布日と、これを公布した消防庁通知の番号は一次資料で特定できませんでした。施行日・経過措置期限は複数の消防本部の公表資料で一致しています。

経過措置が平成30年3月31日で終わっている点は実務上とくに重要です。それ以前に竣工した(六)項ロの建物で連動改修が済んでいないケースがまだ残っており、改修設計の相談として出てきます。

電気設計での実務ポイント

トピック10:図面に落とすときの5点

1. 用途区分の判定を最初に確定させる

この設備は令別表第一の細かい区分(とくに(六)項イの(1)〜(4))で扱いが変わります。設置義務の有無、面積要件、電話による免除の可否、連動義務の有無——すべてがここで決まります。医療系・福祉系の建物では、施主・所轄消防と用途区分の認識をそろえるところから始めてください。

2. 自火報の受信機と火災通報装置の設置場所をセットで決める

連動免除の条件が「受信機と火災通報装置の両方が常時人がいる防災センターにあること」なので、この2つを離して配置すると連動配線が必要になります。逆に、同じ部屋にまとめれば連動配線を省ける可能性があります。平面計画の段階で判断すべき事項です。

3. 連動配線の仕様を早めに確認する

連動が必要な場合、自火報受信機から火災通報装置への起動信号線が発生します。既設の受信機に連動出力の空き接点があるかどうかで、受信機の改造・更新まで話が広がることがあります。改修案件では既設受信機の型式と出力仕様の確認を最初のチェック項目に入れてください。

4. 電話回線の構成を情報通信側と早期に調整する

PBXの内線側にぶら下げると規則第25条第3項第3号に抵触しやすくなります。専用回線を引くのか、局線を分岐するのか、IP網でよいのかを、電話設備の設計者と早い段階で詰めておくのが安全です。

5. 甲種第4類と着工届の10日前ルール

工事は甲種第4類の消防設備士が行い、着工届は着手の10日前までです。自動火災報知設備と同じ扱いなので、通常はまとめて届出することになります。

ひっかけ注意
設計でいちばん最初に決めることは?
用途区分。(六)項イの(1)〜(4)のどれかで、設置義務も連動義務も変わる。そのうえで自火報の受信機と火災通報装置をどこに置くかをセットで決める。この2つで工事の中身がほぼ決まる。

まとめ

トピック11:ここまでの整理
  • 条文上は火災通報装置とM型発信機による設備の2種類だが、M型はほぼ廃止済みで実質は火災通報装置
  • 設置対象は令第23条第1項の3類型。第1号((六)項イ(1)〜(3)・ロ、地下街・準地下街)は面積要件なし
  • 「電話があれば免除」(令第23条第3項)は、(五)項イ・(六)項イ(1)〜(4)・(六)項ロ・(六)項ハには適用されない。(六)項ニは免除対象
  • 「消防機関から著しく離れた場所=約10km」は条文の数値ではない。規則第25条第1項の免除は「歩行距離500m以下」で、(六)項イ(1)(2)等は「消防機関が存する建築物内」でなければ免除されない
  • 自火報連動が義務なのは(六)項イ(1)(2)・(六)項ロと、それらの用途部分がある(十六)項イ・(十六の二)項・(十六の三)項。(六)項イ(3)(4)は連動義務の対象外
  • 連動を免れるのは自火報受信機と火災通報装置の両方が常時人がいる防災センターにある場合だけ
  • 設置場所は防災センター等(常時人がいる場所に限る)。守衛室や宿直室でも成立しうる
  • 電源は原則専用回路。小規模な(六)項イ(1)〜(3)・ロ(500㎡未満)には緩和のただし書がある
  • 蓄積音声情報は一区切り30秒以内、予備電源は待機60分+通報10分以上
  • 工事は甲種第4類の消防設備士(電源の部分を除く)、着工届は着手10日前まで

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トピック12:あわせて読みたい

参考・根拠

トピック13:根拠にした条文
  • 消防法施行令 第23条(消防機関へ通報する火災報知設備)、第36条の2(消防設備士でなければ行つてはならない工事又は整備) ― e-Gov法令検索
  • 消防法施行規則 第25条(基準の細目)、第12条第1項第8号(防災センター等の定義)、第33条の3(免状の種類に応ずる工事又は整備の種類) ― e-Gov法令検索
  • 平成8年2月16日 消防庁告示第1号「火災通報装置の基準」(平成20年告示第29号・平成26年告示第24号・平成28年告示第6号による改正を含む)
  • 消防予第230号(平成19年6月13日)/消防予第344号(平成20年12月26日)/消防予第412号(平成26年10月16日)
  • 消防予第274号・消防情第138号(令和元年12月23日)「NTT固定電話のIP網移行に伴い発生する事象への対応について」
  • 平成26年版消防白書(福岡市の有床診療所火災を踏まえた対策)
  • 防災研究会AFRI『図解入門ビジネス 最新消防法と設備がよ〜くわかる本』秀和システム(2024年)

条文の引用は趣旨を要約した箇所を含みます。告示第三(構造及び機能)の各号は本文の逐語をすべて確認できていないため、数値は確認できた範囲で記載しています。設計・申請にあたっては必ず最新の法令原文と所轄消防本部の運用をご確認ください。

よくある質問

電話があれば火災通報装置は設置しなくてよいですか?

令第23条第3項の免除規定がありますが、(五)項イ(旅館・ホテル)、(六)項イ(1)〜(4)(病院・診療所・助産所)、(六)項ロ(グループホーム等)、(六)項ハ(老人デイサービス・保育所等)は、電話があっても免除されません。(六)項ニ(幼稚園等)は免除の対象です。

小規模なグループホームにも火災通報装置は必要ですか?

必要です。(六)項ロは令第23条第1項第1号に入っており、延べ面積の要件がありません。延べ面積500㎡未満の(六)項イ(1)〜(3)・ロには、ハンズフリーで通話できる特定火災通報装置の区分があります。

自動火災報知設備との連動はどんな建物で必要ですか?

(六)項イ(1)(2)、(六)項ロと、それらの用途部分がある(十六)項イ・(十六の二)項・(十六の三)項です。(六)項イ(3)(4)は設置義務はあっても連動義務はありません。

連動を省けるのはどんな場合ですか?

自動火災報知設備の受信機と火災通報装置の両方が、常時人がいる防災センターに設置されている場合だけです(規則第25条第3項第5号ただし書)。条文は「防災センター等」ではなく「防災センター」と書いているため、守衛室しかない建物では連動が必要と読むのが素直です。所轄の運用も確認します。

火災通報装置の工事に消防設備士は必要ですか?

必要です。消防機関へ通報する火災報知設備は令第36条の2第1項に掲げられているので、甲種第4類の消防設備士の工事対象(電源の部分を除く)で、着工届は着手の10日前までです。

建築消防|消防法と電気設備の記事一覧
全体のまとめは 建築消防|消防法と電気設備のまとめ、設計手順は 消防設備編(全6回) にあります。
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。