技術図書館総合操作盤の義務|規模だけでは決まらないイ・ロは無条件、ハは指定されて初めて義務。17設備への準用構造と、告示が定める5つの構成要素この資料をスライドで見る資料一覧を見る

総合操作盤は、防災センターに置かれる「消防用設備等をまとめて監視・操作する盤」です。ところが実務では、どの建物に義務があるのかを即答できる人が意外と少ない。「大規模建築物なら必要」という漠然とした理解のまま、防災センターの盤リストに載ったり載らなかったりします。

根拠は消防法施行規則第12条第1項第8号のたった一つの号ですが、その中はイ・ロ・ハの3区分に分かれていて、イとロは無条件で義務、ハは消防長又は消防署長が指定して初めて義務という、性格のまったく違う2種類の規定が同居しています。ここを読み違えると、必要な建物に入れ忘れるか、不要な建物に数百万円の盤を計上するかのどちらかになります。

この記事では、条文と2本の告示(平成16年消防庁告示第7号・第8号)を一次資料で確認しながら、義務判定・盤の構成要件・電気設計上の要点を整理します。あわせて、実務で広く語られているけれど告示の条文には書かれていない事項(UPS・耐火配線・防災要員3名など)も、出典の階層を分けて示します。

結論

総合操作盤の根拠は消防法施行規則第12条第1項第8号。イ・ロは規模に該当した時点で義務、ハは消防長・消防署長の指定を受けて初めて義務です。置き場所は常時人がいる防災センター等に限られます。

  • イ=延べ50,000㎡以上、または15階以上かつ30,000㎡以上。ロ=地下街1,000㎡以上
  • ハ=11階以上かつ10,000㎡以上など3区分。所轄の指定の運用を設計初期に確認
  • 他の16設備が準用し、合計17設備が対象。盤の基準は告示第7号、設置方法は告示第8号
  • 予備電源「概ね2時間」は通知(消防予第93号)。根拠は階層で持つ
この記事の全体像:総合操作盤はいつ義務になるか。規則第12条第1項第8号のイ・ロ・ハ、17設備の準用、2本の告示、出典の階層
総合操作盤が義務になる条件を規則12条1項8号のイ・ロ・ハから整理。17設備への準用構造、2つの告示による基準、設置場所の要件まで。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 11階建て・延べ面積10,000㎡のビルに、総合操作盤の義務はありますか
  • 予備電源「2時間」は、どの文書に書かれていますか
  • 総合操作盤を、無人の電気室に置けますか
ペン太ペン太
11階建てで10,000㎡を超えたので、総合操作盤は義務ですね。
ハリタハリタ
それは「ハ」の規模要件だよ。ハは消防長又は消防署長の指定があって、初めて義務になる。
ペン太ペン太
じゃあ指定がなければ不要?
ハリタハリタ
条文上はそう。ただ多くの消防本部は運用基準を出して実際に指定している。所轄に確認するのが正解だよ。

総合操作盤とは何か|「盤」ではなく「監視・操作の集約点」

トピック1

総合操作盤は、建物内の消防用設備等の作動状態を一箇所に集めて表示し、そこから操作できるようにした設備です。名前が「盤」なので受信機の親玉のようなイメージを持たれがちですが、条文上の位置づけはもう少し広く、表示・操作・制御・記録を一体として備えた「監視操作システム」に近いものです。

根拠条文は消防法施行規則第12条第1項第8号です。この号はもともと屋内消火栓設備の設置・維持に関する技術上の基準の細目の中にありますが、後述するとおり他の16設備がこの号を準用しているため、実質的には消防用設備全体に共通する規定として機能しています。

条文の骨格(規則第12条第1項第8号)

次のいずれかに該当する防火対象物に屋内消火栓設備を設置するときは、その操作回路の配線等を、防災センター、中央管理室、守衛室その他これらに類する場所(常時人がいる場所に限る。以下「防災センター等」という。)に設ける総合操作盤から遠隔操作でき、かつ作動状態を監視できるものとすること。

※ 条文の趣旨を要約したものです。正確な文言はe-Gov法令検索で確認してください。

ここで押さえておきたいのは、条文が定めているのは「総合操作盤という物を置け」ではなく「防災センター等から遠隔操作・監視できるようにせよ」という機能要件だという点です。そのための手段として総合操作盤が指定されている、という順序になっています。

設置場所の要件は「常時人がいる場所に限る」

設置場所として挙げられているのは、防災センター・中央管理室・守衛室その他これらに類する場所です。ただしカッコ書きで「常時人がいる場所に限る」と限定されており、ここが実務上いちばん効いてきます。

つまり、電気室やEPSの奥、あるいは無人の機械室に総合操作盤を置くことは条文上認められません。逆に言えば、総合操作盤を設ける建物には必然的に常時有人の監視場所を設計しなければならないということです。24時間有人でない建物で総合操作盤の義務がかかった場合、警備体制の見直しまで含めた話になります。

なお、防災センターと中央管理室は法律上まったく別の根拠に基づく部屋で、それぞれ求められる要件が違います。この違いについては防災センターと中央管理室の違いで整理していますので、あわせてご覧ください。

いつ義務になるか|イ・ロは無条件、ハは指定制

トピック2

規則第12条第1項第8号の対象は、イ・ロ・ハの3区分で書かれています。この3つは並列に見えますが、イとロは規模に該当した時点で義務、ハは規模に該当したうえで消防長又は消防署長の指定を受けて初めて義務という、まったく性格の違う規定です。

設置義務は「無条件」と「指定制」の2種類イ・ロ = 無条件で義務イ(イ)延べ面積 50,000㎡ 以上(用途を問わない)イ(ロ)地階を除く階数 15以上 かつ延べ面積 30,000㎡ 以上ロ延べ面積 1,000㎡ 以上の地下街ハ = 消防長・消防署長が指定ハ(イ)11階以上 かつ延べ面積 10,000㎡ 以上ハ(ロ)5階以上 かつ 延べ面積20,000㎡以上の特​定防火対象物ハ(ハ)地階の床面積の合計が5,000㎡ 以上ハは規模要件を満たしても、消防長又は消防署長の指定を受けて初めて義務になる(指定は自治体ごとに告示)HARITA
図1:設置義務はイ・ロ(無条件)とハ(消防長・消防署長の指定制)に分かれる

イ・ロ|規模に該当すればその時点で義務

イ(イ)は延べ面積50,000㎡以上。用途の限定がないので、事務所ビルでも工場でも倉庫でも、この面積を超えれば対象です。イ(ロ)は地階を除く階数が15以上で、かつ延べ面積30,000㎡以上。

高層かつ大規模という二重の要件です。ロは延べ面積1,000㎡以上の地下街で、これは面積の桁が二つ違うことからも分かるとおり、地下街の避難困難性を踏まえた別枠の基準です。

この3つに当たる建物は、所轄消防本部の判断を待つまでもなく設計初期から総合操作盤を織り込む必要があります。

ハ|「規模要件+指定」の二段構え

一方のハは、条文上「消防長又は消防署長が指定するもの」という条件が付いています。規模要件は次の3つです。

  • ハ(イ) 地階を除く階数が11以上で、かつ延べ面積10,000㎡以上のもの
  • ハ(ロ) 地階を除く階数が5以上で、かつ延べ面積20,000㎡以上の特定防火対象物
  • ハ(ハ) 地階の床面積の合計が5,000㎡以上のもの

ここを「11階建て・10,000㎡を超えたら自動的に義務」と読んでしまうのが、実務でいちばん多い誤解です。条文は指定を義務発生の要件として明示しているため、規模に該当していても指定がなければ設置義務は生じません。

総合操作盤の義務判定として、イ・ロに該当すれば無条件で義務、該当しなければハの規模要件を見て、ハに該当する場合は消防長・消防署長の指定があれば義務、指定がなければ条文上は不要という流れを、12階・延べ12,000㎡の事務所ビルを例にたどった動く図解
動く図解:ハは規模だけでは決まらず、指定を受けて初めて義務になります。

とはいえ「指定されないから不要」と決め打ちするのも危険です。多くの消防本部は指定に関する告示や運用基準を公表しており、実際に対象建物を個別に指定しています。

設計段階では、所轄消防本部の指定の運用を確認するのが正解です。確認しないまま「ハだから不要」と判断して後から指定が入ると、防災センターのレイアウトから電源容量まで手戻りになります。

設計初期に確認すべき3点

  • イ・ロに該当していないか(面積・階数を先に確認する)
  • ハに該当する場合、所轄消防本部が指定を行う運用かどうか
  • 指定される場合、常時有人の防災センター等を確保できる計画になっているか
ここまでのポイント
  • イ=延べ面積50,000㎡以上(用途の限定なし)、または地階を除く階数15以上かつ延べ面積30,000㎡以上。ロ=延べ面積1,000㎡以上の地下街。
  • ハは規模要件(11階以上かつ10,000㎡以上/5階以上かつ20,000㎡以上の特定防火対象物/地階の床面積5,000㎡以上)に該当し、かつ消防長又は消防署長の指定を受けて初めて義務。
  • 「規模に該当=自動的に義務」ではない。ただし多くの消防本部が指定の運用基準を公表しているので、所轄の運用を確認するのが正解。

なぜ屋内消火栓の規定が全設備に効くのか|17設備の準用構造

トピック3

総合操作盤の根拠が「規則第12条第1項第8号」だと聞くと、屋内消火栓設備だけの話に見えます。実際には、他の16設備がそれぞれの技術基準の中でこの号を準用しているため、結果として消火・警報・避難・消火活動用の主要設備がすべて総合操作盤の対象になります。

総​合操作盤に集約される17設備総​合操作盤(防​災センター等に設置)消火設備・屋​内消火栓設備・ス​プリンクラー設備・水​噴霧消火設備・泡​消火設備・不​活性ガス消火設備・ハ​ロゲン化物消火設備・粉​末消火設備・屋​外消火栓設備8設備警報設備・自​動火災報知設備・ガ​ス漏れ火災警報設備・非​常警報設備3設備避難設備・誘​導灯1設備消火活動上必要な施設・排​煙設備・連​結散水設備・連​結送水管・非​常コンセント設備・無​線通信補助設備5設備これら17設備は、それぞれの技術基準の中で規則第12条第1項第8号を準用しているHARITA
図2:規則第12条第1項第8号を準用する17設備。総合操作盤はこれらを一箇所で監視・操作する

準用の条番号は次のとおりです。設計図書や消防協議で「どの条文で総合操作盤に載せているのか」を問われたときは、この対応表を持っていると話が早く済みます。

設備準用の根拠(消防法施行規則)
屋内消火栓設備第12条第1項第8号(本体規定)
スプリンクラー設備第14条第1項第12号
水噴霧消火設備第16条第3項第6号
泡消火設備第18条第15号
不活性ガス消火設備第19条第5項第23号
ハロゲン化物消火設備第20条第4項第17号
粉末消火設備第21条第4項第19号
屋外消火栓設備第22条第11号
自動火災報知設備第24条第9号
ガス漏れ火災警報設備第24条の2の3第10号
非常警報設備第25条の2第6号
誘導灯第28条の3第4項第12号
排煙設備第30条第10号
連結散水設備第30条の3第5号
連結送水管第31条第9号
非常コンセント設備第31条の2第10号
無線通信補助設備第31条の2の2第9号

この構造は、消防法の排煙設備を扱ったときにも触れたパターンです。消防法施行規則は、共通する要件を代表設備(多くは屋内消火栓設備)の条文に書いておき、他の設備から準用する書き方を多用します。条文を追うときは「準用先を必ず開く」のが鉄則です。

ここまでのポイント
  • 本体規定は規則第12条第1項第8号(屋内消火栓設備)。他の16設備がこれを準用し、合計17設備が対象になる。
  • 消防法施行規則は、共通要件を代表設備の条文に書いて他から準用する書き方を多用する。準用先を必ず開く。

総合操作盤は「上乗せ」だけではない|個別設備の要件が外れるただし書

トピック4

総合操作盤というと、義務が増える方向の話だと思われがちです。しかし条文を追うと、総合操作盤があることを条件に、個別設備側の要件を外すただし書がいくつも置かれていることが分かります。

代表例が、開放型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備の起動装置に関する規則第14条第1項第8号です。原則として自動火災報知設備の感知器の作動と連動して一斉開放弁を開く自動式の起動装置が求められますが、そのイ(イ)には次のただし書が付いています。

ただし、総合操作盤が設けられており、かつ、火災時に直ちに手動式の起動装置により加圧送水装置及び一斉開放弁を起動させることができる場合にあつては、この限りでない。

消防法施行規則第14条第1項第8号イ(イ)ただし書

趣旨は明快です。常時人がいる防災センター等から即座に手動起動できる体制があるなら、感知器連動の自動起動を強制しなくてよいという考え方です。総合操作盤という「装置」ではなく、その背後にある「常時有人の監視・操作体制」を評価している規定だと読めます。

電気設計の立場では、これは総合操作盤を入れることで自火報側の連動回路が1系統減る可能性があるということを意味します。逆に、総合操作盤を前提に自動起動を省いた設計にしたのに、後から総合操作盤が計画から落ちると連動回路を復活させなければなりません。設備間の依存関係として押さえておく価値があります。

総合操作盤の基準は「2本の告示」で決まる

トピック5

規則第12条第1項第8号は「総合操作盤」という言葉を使うだけで、その中身は規定していません。実体的な基準は、平成16年5月31日付の消防庁告示2本に置かれています。ここを分けて理解していないと、審査で指摘されたときに根拠を辿れません。

文書内容性格
平成16年消防庁告示第7号総合操作盤の基準(盤そのものの構造・機能・電源・配線)告示(法的拘束力あり)
平成16年消防庁告示第8号総合操作盤の設置方法(設置場所の区分と要件)告示(法的拘束力あり)
消防予第93号(平成16年5月31日)上記2告示の運用について定めた通知通知(行政内部の運用指針)

実務でよく引用される数値のいくつかは、告示ではなくこの消防予第93号(通知)や自治体の審査基準に書かれています。「告示に書いてある」と言い切ると出典を示せなくなるので、あとの章で切り分けて整理します。

告示第7号|盤に求められる5つの構成要素

トピック6

告示第7号は、総合操作盤の構成を表示部、操作部、制御部、記録部及び附属設備の5要素で組み立てています。

メーカーのカタログでは「防災CPU」「防災表示モニタ」「防災グラフィックパネル」「防災プリンタ」といった商品名で並んでいますが、告示上の枠組みはこの5つです。審査で問われるのは商品名ではなく、5要素の機能を満たしているかです。

告示第7号が求める総​合操作盤の構成総​合操作盤 = 表示部・操作部・制御部・記録部・附属設備の5要素表示部消​防用設備等の作動・故障・電源の状態を表示する操作部遠隔での起動・停止などの操作を行うスイッチ類制御部表示部・操作部の信号を処理し各設備との入出力を担う記録部発生した事象を発生時刻とともに記録する附属設備上記の機能を補完するために付置される機器電源予​備電源又は非​常電源を附置。最大負荷に連続して耐える容量配線十分な電​流容量を有し、かつ、接続が的確であること※「無​停電電源装置(UPS)」「耐火配線」は告示第7号の本文にある用語ではないHARITA
図3:平成16年消防庁告示第7号が定める総合操作盤の5要素と、電源・配線の要件

表示部・操作部|「見える」と「動かせる」を分けて考える

表示部は、消防用設備等の作動状態・故障・電源の状況を表示する部分です。実機ではグラフィックパネルや液晶モニタが担います。操作部は、そこから遠隔で起動・停止などの操作を行う部分です。

設計上の落とし穴は、表示だけできて操作ができない設備を作ってしまうことです。規則第12条第1項第8号は「遠隔操作により起動することができ、かつ、作動状態を監視することができる」という言い方をしており、監視と操作の両方を求めています。

監視信号だけ盤に上げて操作回路を上げ忘れる、というのはケーブル本数の見積り段階で起きやすいミスです。

制御部・記録部|記録は「事象+時刻」がセット

制御部は表示部・操作部と各設備の間の信号処理を担う中核です。記録部は発生した事象を記録する部分で、実務ではプリンタや電子的なログ保存で実現されます。

ここで重要なのは、記録は「何が起きたか」だけでなく「いつ起きたか」とセットで残す必要があるという点です。火災後の原因調査で価値を持つのは時刻付きのログなので、時刻同期の仕様は早い段階で決めておきます。

電源と配線|告示の文言はシンプル

電源については、告示第7号は「予備電源又は非常電源が附置されていること」および「電源部は最大負荷に連続して耐えられる容量であること」という趣旨の定めを置いています。配線については「十分な電流容量を有し、かつ、接続が的確であること」という趣旨の規定です。

この2つは、条文としてはかなり抽象度が高い書き方です。だからこそ、実務では通知や自治体の審査基準が具体化を担っており、その分「どこまでが法令上の義務か」が見えにくくなっています。

ここまでのポイント
  • 告示第7号の構成は表示部・操作部・制御部・記録部・附属設備の5要素。審査で問われるのは商品名ではなく機能。
  • 条文は監視と操作の両方を求めている。監視信号だけ上げて操作回路を上げ忘れるのが、見積り段階で起きやすいミス。
  • 記録は「何が起きたか」+「いつ起きたか」。時刻同期の仕様は早い段階で決める。
  • 電源は「予備電源又は非常電源が附置されていること」「最大負荷に連続して耐えられる容量」という抽象度の高い書き方。

告示第8号|監視場所は4区分で設計する

トピック7

もう1本の告示第8号は、設置方法を定めています。ここで押さえておきたいのが、監視を行う場所を防災監視場所・副防災監視場所・監視場所・遠隔監視場所の4区分で整理していることです。

告示第8号が定める監視場所の4区分防災監視場所総​合操作盤を設置し、防火対象物全体の消​防用設備等を監視・操作する場所。規則にいう「防​災センター等」監視範囲:建物全体副防災監視場所防災監視場所を補完する場所。防災監視場所と同等の監視・操作ができるようにする監視範囲:建物全体監視場所防火対象物の一部について監視・操作を行う場所。ゾーンを分けた分割監視に用いる監視範囲:建物の一部遠隔監視場所防火対象物の外部に置かれ、遠隔で監視を行う場所。警備会社の監視センター等が該当監視範囲:建物の外総​合操作盤を置くのは「防災監視場所」。他の3区分は補完・分割・外部監視の位置づけ※4区分の正確な定義と要件は平成16年消防庁告示第8号によるHARITA
図4:告示第8号は防災監視場所・副防災監視場所・監視場所・遠隔監視場所の4区分を定める

総合操作盤そのものを置くのは防災監視場所です。副防災監視場所は防災監視場所を補完する位置づけ、監視場所は建物の一部を受け持つ位置づけ、遠隔監視場所は建物の外から監視する位置づけになります。

この区分が設計で効いてくるのは、大規模な複合施設や複数棟の敷地で「どこに何を置くか」を決めるときです。棟ごとに監視場所を設け、全体を防災監視場所で束ねる、という構成が取れるのは、告示がこの階層を用意しているからです。

逆に、階層の定義を無視して「防災センターが2つある」ような計画にすると、どちらが法令上の防災監視場所なのかが説明できなくなります。

遠隔監視場所を計画に入れるときの注意

警備会社の監視センターなどを遠隔監視場所として位置づけても、建物側の「常時人がいる防災センター等」が不要になるわけではありません。規則第12条第1項第8号のカッコ書きは、あくまで総合操作盤を設ける場所に対する要件です。遠隔監視は付加であって代替ではない、と整理しておくと計画がぶれません。

ここまでのポイント
  • 告示第8号は監視を行う場所を防災監視場所・副防災監視場所・監視場所・遠隔監視場所の4区分で整理している。
  • 総合操作盤そのものを置くのは防災監視場所。棟ごとに監視場所を設け、全体を防災監視場所で束ねる構成が取れる。
  • 遠隔監視は付加であって代替ではない。警備会社の監視センターを置いても、建物側の常時有人の防災センター等は必要。

よく言われるが「告示の条文ではない」こと

トピック8

総合操作盤まわりには、実務で定着しているものの出典が告示ではない説明がいくつもあります。悪い情報というわけではなく、通知や自治体審査基準に基づく合理的な運用であることが多いのですが、根拠の階層を取り違えると、他の自治体で通用しなかったり、逆に必要な確認を飛ばしたりします。

よく言われること実際の出典
総合操作盤にはUPS(無停電電源装置)を設ける告示第7号の本文に「無停電電源装置」の語はない。告示の要求は「予備電源又は非常電源が附置されていること」。UPSはCPUやモニタを瞬断で落とさないための実務上の選択
予備電源の容量は2時間「概ね2時間以上」は消防予第93号(通知)による。告示の明文ではない
総合操作盤の配線は耐火配線・耐熱配線告示第7号の文言は「十分な電流容量を有し、接続が的確であること」まで。耐火・耐熱の具体的要求は自治体の審査基準等による(ただし個別設備側の非常電源回路等には別途、規則第12条第1項第4号・第5号の耐火・耐熱要求がかかる)
総合操作盤=GR型受信機告示第7号に「受信機」の語はない。実機では自動火災報知設備の受信機と一体で構成されることが多いが、法令上は別概念
防災要員は3名以上消防庁の火災予防条例(例)に防災要員の規定はない。各自治体の火災予防条例(東京都火災予防条例等)による。東京消防庁の3名配置は審査基準上の指導であって法令上の義務ではない

ここで「告示に書いていない=やらなくてよい」と読むのは誤りです。実際の協議では通知や審査基準に沿った仕様を求められます。伝えたいのは、根拠を階層で持っておくと、自治体が変わったときに何を再確認すべきかが分かるということです。

ここまでのポイント
  • UPS・耐火配線・受信機という語は、告示第7号の本文にない。
  • 予備電源「概ね2時間以上」は消防予第93号(通知)。告示の明文ではない。
  • 防災要員3名は各自治体の火災予防条例・審査基準の話。消防法・施行令・施行規則には出てこない。
  • 「告示にない=やらなくてよい」ではない。根拠を階層で持つと、自治体が変わったときに何を再確認すべきかが分かる。

防災要員は「消防法」ではなく「自治体の火災予防条例」の話

トピック9

総合操作盤とセットでよく出てくるのが「防災要員」です。防災センターに常駐して監視・操作にあたる人員のことですが、この言葉は消防法・施行令・施行規則には出てきません。消防庁が示している火災予防条例(例)にも該当する規定は見当たりません。

根拠は各自治体の火災予防条例です。たとえば東京都火災予防条例では第55条の2の2および第62条の4第1項が、横浜市では火災予防施行規程第9条第1項が関係します。

よく聞く「防災センター要員は3名以上」という数字は、東京消防庁の審査基準上の指導として示されているもので、条例が数値を義務づけているわけではありません。

設計者としての実務的な扱い

  • 建物所在地の火災予防条例を必ず確認する(都道府県・市町村ごとに違う)
  • 人員数は「指導」であることが多いので、発注者に説明するときは条例上の義務と運用上の指導を分けて伝える
  • 防災センター要員講習の修了者を要求されるケースがあるため、竣工後の運営体制も早めに施主と共有する

電気設計そのものとは離れますが、防災センターの机の数・モニタの台数・盤の操作面のレイアウトは要員数で決まります。人員の前提が変わると盤の並べ方が変わるので、設備側からも確認しておく価値があります。

電気設計での実務ポイント

トピック10

1. 電源|「予備電源又は非常電源」をどちらで取るか決める

告示は予備電源と非常電源を「又は」でつないでいます。盤内蔵の予備電源で成立させるのか、非常電源(非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備)から供給するのかで、幹線計画も盤の大きさも変わります。

総合操作盤は自家発電設備の起動より先に立ち上がっていないと初動が取れないため、実務では非常電源からの供給に加えて盤内にUPSを持たせる構成が多く採られます。前述のとおりUPSは告示の明文ではありませんが、機能上は合理的な選択です。

2. 容量|「最大負荷に連続して耐えられる容量」の見積り

総合操作盤の負荷は、盤自身の表示・制御機器だけではありません。各設備への操作出力、表示灯、プリンタ、そして将来増設分が乗ります。竣工後にテナント工事で監視点数が増えるのはよくある話なので、増設余地を初期から見込んでおくのが安全です。

3. 配線|監視と操作は本数が違う

監視だけなら接点1点で済む設備でも、操作を伴うと起動・停止・応答確認で複数点になります。図2で挙げた17設備すべてについて、監視点数と操作点数を洗い出す表を早い段階で作るのが結局いちばん早い進め方です。

総合操作盤と消防用設備の間の配線として、監視だけなら作動状態の表示の1点で済むが、操作も行うと起動・停止・応答確認が加わって点数が増えることを示した動く図解
動く図解:監視だけなら1点。操作が加わると、起動・停止・応答確認で点数が増えます。

ケーブルルートも、防災センターに向かって集中するため、EPSやピットの断面が足りるかを平面計画の段階で確認します。

4. スペース|盤の前面だけでなく背面と搬入経路

総合操作盤は据置形の大型盤になることが多く、防災センターの中で最も場所を取る機器のひとつです。前面の操作スペース、背面の保守スペース、そして搬入経路と搬入時期を建築側と早めに詰めておかないと、内装が仕上がってから入らないという事態になります。

5. 連動|他設備との依存関係を一覧化する

総合操作盤があることで個別設備側の要件が外れるただし書があることは前述のとおりです。逆方向の依存もあります。

排煙設備の手動起動装置や、非常電源の切替、防火戸・防火シャッターの状態表示など、総合操作盤に集まる信号は設備をまたぎます。設備間の依存関係表を1枚作っておくと、仕様変更が入ったときに影響範囲をすぐ追えます。

ここまでのポイント
  • 電源は予備電源で成立させるか、非常電源から供給するかを先に決める。実務では非常電源+盤内UPSの構成が多い。
  • 容量は盤自身だけでなく、操作出力・表示灯・プリンタ・将来増設分まで見込む。
  • 17設備すべての監視点数と操作点数を洗い出す表を早い段階で作る。EPS・ピットの断面も平面計画の段階で確認。
  • 据置形の大型盤になるので、前面・背面のスペースと搬入経路を建築側と早めに詰める。

消防用設備等の外側|防災設備・一般設備をどこまで載せるか

トピック11

図2で挙げた17設備は、法令が総合操作盤に載せることを求めている範囲です。ただし実際の総合操作盤には、それ以外の設備も接続されるのが普通です。

区分主な対象載せる根拠
消防用設備等図2の17設備規則第12条第1項第8号および各設備の準用規定
防災設備等防火戸・防火シャッター、非常用エレベーター、非常放送、緊急ガス遮断弁、非常用進入口、避難器具の状態表示 など建築基準法や条例、または施設運用上の要求
一般設備等受変電設備・自家発電設備の監視、空調、給排水、防犯・入退室、エレベーター監視 など施主・運営側の要求(法令上の義務ではない)

ここで判断が要るのは、どこまでを総合操作盤に取り込み、どこからを中央監視装置(BAS)側に持たせるかです。消防用設備等は総合操作盤側に持たせるのが原則ですが、一般設備まで取り込むと盤が大きくなり、更新周期の異なる設備が同居して改修が難しくなります。

実務では、消防用設備等+防災設備等を総合操作盤に、一般設備等を中央監視装置に置き、両者の間を必要な信号だけで結ぶという切り分けが扱いやすい構成です。ただし防災センターの運用者から見ると画面が2系統になるので、運用要件との折り合いは施主と早めに詰めます。

ここまでのポイント
  • 法令が求めるのは17設備。実際の盤には防災設備等・一般設備等も接続される。
  • 扱いやすい切り分けは、消防用設備等+防災設備等を総合操作盤に、一般設備等を中央監視装置(BAS)に。
  • 一般設備まで取り込むと盤が大きくなり、更新周期の異なる設備が同居して改修が難しくなる。
ペン太ペン太
予備電源は2時間ですよね。告示にそう書いてあると聞きました。
ハリタハリタ
告示の文言は「予備電源又は非常電源が附置されていること」まで。「概ね2時間以上」は消防予第93号の通知だよ。根拠は階層で持っておくといい。

まとめ

トピック12

この設備でつまずくのは、条文が難しいからではありません。義務が二段構えになっていることと、実務で語られる数字の出典が告示ではないこと。この2つを分けて持てば、迷いはほとんど消えます。

義務は二段構え ― まずイ・ロ、次にハ

  1. イ・ロに当たるか → 当たればその時点で義務。イ=延べ面積50,000㎡以上、または地階を除く階数15以上かつ延べ面積30,000㎡以上。ロ=延べ面積1,000㎡以上の地下街
  2. ハの規模要件に当たるか → 11階以上かつ10,000㎡以上/5階以上かつ20,000㎡以上の特定防火対象物/地階の床面積5,000㎡以上
  3. ハなら、所轄の指定の運用を確認する → 指定を受けて初めて義務。ただし「指定されないから不要」と決め打ちしない

設置場所には「常時人がいる場所に限る」という限定が付きます。無人の電気室等には置けません。

根拠は、階層で持つ

文書性格そこに書かれていること
消防法施行規則
第12条第1項第8号
法令(義務が発生する)イ・ロ・ハの対象。防災センター等(常時人がいる場所に限る)に設ける総合操作盤から遠隔操作でき、作動状態を監視できること
平成16年
消防庁告示第7号
告示(法的拘束力あり)盤の基準。表示部・操作部・制御部・記録部・附属設備の5要素、予備電源又は非常電源の附置、最大負荷に耐える容量
平成16年
消防庁告示第8号
告示(法的拘束力あり)設置方法。防災監視場所・副防災監視場所・監視場所・遠隔監視場所の4区分
消防予第93号通知(行政内部の運用指針)予備電源は概ね2時間以上など、告示の具体化
自治体の審査基準
火災予防条例
指導・条例(自治体ごとに違う)耐火配線の具体的要求、防災要員3名(東京消防庁の審査基準上の指導)など

「告示に書いていない=やらなくてよい」ではありません。実際の協議では通知や審査基準に沿った仕様を求められます。階層で持っておく意味は、自治体が変わったときに、何を再確認すべきかが分かることにあります。

図面と盤リストに効くこと

  • 本体規定は規則第12条第1項第8号だが、他の16設備が準用している。合計17設備が総合操作盤の対象
  • 告示第7号の構成は表示部・操作部・制御部・記録部・附属設備の5要素。条文は監視と操作の両方を求める ― 監視信号だけ上げて操作回路を落とさない
  • 告示第8号は防災監視場所・副防災監視場所・監視場所・遠隔監視場所の4区分。遠隔監視は付加であって代替ではない
  • 電源は「予備電源又は非常電源が附置されていること」。どちらで取るかで幹線計画も盤の大きさも変わる
  • 17設備の監視点数と操作点数の一覧、据置形大型盤の前面・背面スペースと搬入経路を早い段階で押さえる

最後に、依存関係をもう一度

総合操作盤は義務が増える方向の話だと思われがちですが、総合操作盤があることを条件に個別設備側の要件が外れるただし書もあります。開放型スプリンクラーヘッドの起動装置がその代表例です。

逆に言えば、総合操作盤を前提に自動起動を省いた設計にしたのに、後から盤が計画から落ちると連動回路を復活させることになります。設備間の依存関係は、1枚の表にして持っておいてください。

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トピック13

参考・根拠

トピック14
  • 消防法施行規則 第12条第1項第8号(総合操作盤・防災センター等)/同第14条第1項第8号(開放型スプリンクラーヘッドの起動装置のただし書)/同第12条第1項第4号・第5号(非常電源回路の耐火・耐熱配線)ほか、図2の各準用規定 ― e-Gov法令検索
  • 平成16年5月31日 消防庁告示第7号「総合操作盤の基準」
  • 平成16年5月31日 消防庁告示第8号「総合操作盤の設置方法」
  • 平成16年5月31日 消防予第93号「総合操作盤の基準等の運用について」
  • 東京都火災予防条例 第55条の2の2、第62条の4第1項(防災センター・防災要員)
  • 横浜市 火災予防施行規程 第9条第1項
  • 防災研究会AFRI『図解入門ビジネス 最新消防法と設備がよ〜くわかる本』秀和システム(2024年)

条文の引用は趣旨を要約した箇所を含みます。設計・申請にあたっては必ず最新の法令原文と所轄消防本部の運用をご確認ください。告示第7号・第8号および消防予第93号の本文は消防庁の通知集で確認できます。

よくある質問

総合操作盤はどんな建物に義務がありますか?

消防法施行規則第12条第1項第8号のイ・ロに当たる建物(延べ面積50,000㎡以上、地階を除く階数15以上かつ延べ面積30,000㎡以上、延べ面積1,000㎡以上の地下街)は、その時点で義務です。ハ(11階以上かつ10,000㎡以上など)は、消防長又は消防署長の指定を受けて初めて義務になります。

11階建て・延べ10,000㎡を超えたら、総合操作盤は必ず必要ですか?

それはハの規模要件で、指定がなければ条文上の義務は生じません。ただし多くの消防本部が指定の運用基準を公表して実際に指定しているので、設計初期に所轄の運用を確認するのが確実です。

総合操作盤は電気室に置けますか?

置けません。設置場所は防災センター・中央管理室・守衛室その他これらに類する場所で、「常時人がいる場所に限る」とされています。

総合操作盤の予備電源は2時間と告示に書いてありますか?

告示第7号の要求は「予備電源又は非常電源が附置されていること」と「最大負荷に連続して耐えられる容量」です。「概ね2時間以上」は消防予第93号(通知)によるもので、告示の明文ではありません。

総合操作盤の対象になる設備はいくつありますか?

屋内消火栓設備を定める規則第12条第1項第8号を、スプリンクラー設備・自動火災報知設備・排煙設備など16設備が準用しているため、合計17設備が対象です。

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全体のまとめは 建築消防|消防法と電気設備のまとめ、設計手順は 消防設備編(全6回) にあります。
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。