マンションの消防設備には2つのルートがあります。令別表第1(5)項ロとして通常どおり設計するか、特定共同住宅等として「共同住宅用」の設備に置き換えるか。どちらを選ぶかで、盤も感知器も配線も、まるごと別物になります。

消火器具、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、自動火災報知設備、非常警報設備、避難器具、誘導灯、誘導標識、連結送水管、非常コンセント設備。この並びが、そっくり「共同住宅用」に置き換わります。しかも置き換えの中身は構造類型と階数で変わります。開放型なら屋内消火栓も誘導灯も要らないのに、二方向避難型では両方とも要る。この記事は、その分かれ目を条文の表から読み解いて早見表にしたものです。

マンションの消防設備には、2つのルートがある令別表ルート消防​法施行令 別表第1(5)項ロ消火器具屋内消火栓設備スプリンクラー設備自動火災報知設備非常警報設備・避難器具誘導灯及び誘導標識連結送水管・非常コンセント省令40号ルート特定共同住宅等(共住省令)住宅用消火器及び消火器具共同住宅用スプリンクラー設備共同住宅用自動火災報知設備 (又は住戸用自火報  +共同住宅用非常警報設備)共同住宅用連結送水管共同住宅用非常​コンセント設備代えて用いる位置・構造・設備の基準に適合すれば、右のルートを選べる(義務ではない)HARITA
図1|特定共同住宅等の基準に適合すれば、通常の消防用設備等に代えて「共同住宅用」の設備を使える。使うかどうかは選択で、義務ではない。

特定共同住宅等とは何か

特定共同住宅等は、平成17年総務省令第40号(略称:共住省令)が定める共同住宅の区分です。位置・構造・設備が一定の基準に適合するものについて、通常用いられる消防用設備等に代えて「必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等」を設置できます。

もともとは消防庁の通知(特例基準)として運用されていたものが、通知では法的拘束力がない・消防機関ごとに運用がばらつくといった問題から、平成17年に省令として法制化されました。以後、特例申請ではなく法令の適用として扱われます。

性能は3つに分けて考える

  • 初期拡大抑制性能(第3条)… 消火器具・屋内消火栓・スプリンクラー・自火報など
  • 避難安全支援性能(第4条)… 自火報・非常警報・避難器具・誘導灯など
  • 消火活動支援性能(第5条)… 連結送水管・非常コンセント設備

それぞれの条に「上欄=特定共同住宅等の種類(構造類型と階数)/中欄=通常用いられる消防用設備等/下欄=代えて用いる設備等」という表が置かれています。この省令に別表はありません。表は条文の中にあります。

注意点として、この置き換えは義務ではなく選択です。基準に適合していても、通常の令別表ルートで設計して構いません。ただし選んだ以上は、位置・構造の要件(主要構造部が耐火構造、共用部分の内装が準不燃、住戸等間が開口部のない耐火構造で区画されていること等)を満たし続ける必要があります。

4つの構造類型

位置・構造の基準をクリアしたあと、次に判定するのが構造類型です。基準は平成17年消防庁告示第3号(構造類型告示)に定められています。

構造類型 内容
二方向避難型 すべての住戸・共用室・管理人室から、避難階または地上に通ずる2以上の異なった避難経路を確保しているもの
開放型 すべての住戸等の主たる出入口が開放型廊下または開放型階段に面し、火災時の煙を有効に排出できるもの
二方向避難・開放型 上の2つの要件を両方満たすもの
その他 上のいずれにも該当しない特定共同住宅等

避難経路として数えられるのは廊下・階段のほか、避難上有効なバルコニー等です。直接外気に開放されていること、転落防止上有効な高さの手すりを有し幅員が確保されていること、隣接住戸のバルコニーまたは階段室に接続していること。この3つを満たして初めて経路として数えられます。


早見表① 初期拡大抑制性能(第3条第1項)

条文の表を、そのまま読める形に組み替えたものです。下欄の「共同住宅用自火報又は住戸用自火報+共同住宅用非常警報設備」という択一が使えるのは、低層側だけです。

構造類型 地階を除く階数 代えて用いる設備等
二方向避難型 5以下 住宅用消火器及び消火器具/共同住宅用SP/共同住宅用自火報 又は 住戸用自火報+共同住宅用非常警報設備
10以下(=6〜10) 住宅用消火器及び消火器具/共同住宅用SP/共同住宅用自火報
11以上 住宅用消火器及び消火器具/共同住宅用SP/共同住宅用自火報
開放型 5以下 住宅用消火器及び消火器具/共同住宅用SP/共同住宅用自火報 又は 住戸用自火報+共同住宅用非常警報設備
6以上 住宅用消火器及び消火器具/共同住宅用SP/共同住宅用自火報
二方向避難・開放型 10以下 住宅用消火器及び消火器具/共同住宅用SP/共同住宅用自火報 又は 住戸用自火報+共同住宅用非常警報設備
11以上 住宅用消火器及び消火器具/共同住宅用SP/共同住宅用自火報
その他 10以下 住宅用消火器及び消火器具/共同住宅用SP/共同住宅用自火報
11以上 住宅用消火器及び消火器具/共同住宅用SP/共同住宅用自火報

条文の階数欄は「五以下」「十以下」「十一以上」と書かれています。二方向避難型の2行目は原文どおりなら「十以下」ですが、1行目に「五以下」があるため、実務上は6〜10階として読みます。

住戸用自火報+共同住宅用非常警報設備という選択肢は、二方向避難型・開放型なら5階以下、二方向避難・開放型なら10階以下でしか使えません。そして「その他」では、どの階数でも使えません。11階建て以上のマンションでは、実質的に共同住宅用自火報の一択になります。

共同住宅用スプリンクラー設備が要るのはどこか

表の下欄には全類型でSPが並びますが、実際に設置が要る階は第3条第3項第2号イが別に定めています。

共同住宅用SPの設置対象(第3条第3項第2号イ)

  • (イ)特定共同住宅等の11階以上の階及び特定住戸利用施設(10階以下の階に存するものに限る)
  • (ロ)住戸利用施設の床面積の合計が3,000㎡以上のもののうち、当該部分が存する階
  • (ハ)住戸利用施設の床面積の合計が3,000㎡未満のもののうち、当該部分の床面積が、地階・無窓階で1,000㎡以上、4〜10階で1,500㎡以上の階

ヘッドは住戸・共用室・管理人室の居室および4㎡以上の収納室の天井に設置。水源4㎥以上、4個同時放水で放水圧力0.1MPa以上・放水量50L/min以上。

つまり福祉施設等を含まない普通のマンションなら、共同住宅用SPが要るのは11階以上の階ということになります。


早見表② 避難安全支援性能(第4条第1項)― 誘導灯が消える類型がある

ここがこの記事でいちばん設計に効く部分です。第4条の表は、中欄(通常用いられる消防用設備等)に何が入るかを見ます。中欄に入った設備は、下欄の設備を設ければ設置しなくてよい、という意味だからです。

構造類型 階数 中欄に入る設備(=代替される) 下欄(設ける設備)
二方向避難型 5以下 自火報/非常警報器具又は非常警報設備/避難器具 共同住宅用自火報 又は 住戸用自火報+共同住宅用非常警報設備
6以上 自火報/非常警報器具又は非常警報設備/避難器具 共同住宅用自火報
開放型 5以下 自火報/非常警報器具又は非常警報設備/避難器具/誘導灯及び誘導標識 共同住宅用自火報 又は 住戸用自火報+共同住宅用非常警報設備
6以上 自火報/非常警報器具又は非常警報設備/避難器具/誘導灯及び誘導標識 共同住宅用自火報
二方向避難・開放型 10以下 自火報/非常警報器具又は非常警報設備/避難器具/誘導灯及び誘導標識 共同住宅用自火報 又は 住戸用自火報+共同住宅用非常警報設備
11以上 自火報/非常警報器具又は非常警報設備/避難器具/誘導灯及び誘導標識 共同住宅用自火報
その他 すべて 自火報/非常警報器具又は非常警報設備/避難器具 共同住宅用自火報

誘導灯及び誘導標識が中欄に入るのは、開放型と二方向避難・開放型だけです。二方向避難型と「その他」では中欄に入りませんから、誘導灯は通常どおり令第26条で設計します。開放型系では、共同住宅用自火報を設ければ誘導灯・誘導標識を設置しなくてよいことになります。

屋内消火栓も同じ読み方です。第3条第1項の中欄を見ると、開放型・二方向避難・開放型では「屋内消火栓設備」に括弧書きの限定がありません。全部が代替対象です。一方の二方向避難型・その他では「第3項第2号イ(ロ)及び(ハ)に掲げる階及び部分に設置するものに限る」という括弧が付いていて、その限定の外側は通常どおり屋内消火栓が必要になります。

開放型かどうかで、屋内消火栓と誘導灯が丸ごと消える構造類型屋内消火栓設備誘導灯・誘導標識二方向避難型通常どおり必要通常どおり必要開放型不要(代替される)不要(代替される)二方向避難・開放型不要(代替される)不要(代替される)その他通常どおり必要通常どおり必要※二方向避難型・その他でも、屋内消火栓は共同住宅用スプリンクラー設備を設ける階・部分については代替される根拠:省令40号 第3条第1項・第4条第1項の表(中欄に入るかどうかで決まる)HARITA
図2|省令40号の表は「中欄(通常用いられる消防用設備等)に何が入るか」で読む。開放型と二方向避難・開放型だけ、屋内消火栓と誘導灯・誘導標識が中欄に入る=代替される。


早見表③ 消火活動支援性能(第5条)― 階段室型限定

第5条だけは構造類型・階数による区分がありません。かわりに適用対象が「住戸・共用室・管理人室の主たる出入口が階段室等に面する特定共同住宅等」=階段室型に限定されています。廊下型では使えません。

設備 設置階 設置場所 歩行距離
共同住宅用連結送水管の放水口 3階及びそこから上方に数えた3階以内ごと 階段室等または非常用エレベーターの乗降ロビー等ごと 各部分から一の放水口まで50m以下
共同住宅用非常コンセント 11階及びそこから上方に数えた3階以内ごと 階段室等または非常用エレベーターの乗降ロビー等ごと 各部分から一の非常コンセントまで50m以下

電気設備設計として、どこが変わるか

ここまでは要否の話でした。ここからは、実際に共同住宅用自動火災報知設備を選んだときに、警戒区域の取り方と感知器を設ける範囲が通常の自火報とどう違うかを見ます。倉庫・機械室や開放廊下の扱いまで含めて、拾いの数が変わります。

警戒区域も感知器の範囲も、通常の自火報とは違う通常の自動火災報知設備600㎡以下一辺 50m 以下2以上の階にわたらない感知器は原則として全域に必要共同住宅用自動火災報知設備1,500㎡以下一辺 50m 以下(廊下型は 100m 以下)2以上の階にわたらない感知器の範囲は下の4か所だけ共同住宅用自火報の感知器を設ける部分住戸・共用室・管理人室の居室4㎡以上の収納室4㎡以上の倉庫・機械室等直接外気に開放されていない共用部分= 開放廊下・開放階段には感知器を設けないHARITA
図3|警戒区域は600㎡から1,500㎡へ広がり、廊下型なら一辺100mまで取れる。感知器は開放廊下には設けない。盤の回線数も感知器数も、通常の自火報とはまったく別の数字になる。

警戒区域が600㎡から1,500㎡になる

通常の自動火災報知設備は、一の警戒区域の面積が600㎡以下、一辺の長さが50m以下(光電式分離型感知器を設ける場合は100m以下)です。これに対して共同住宅用自火報は1,500㎡以下。しかも住戸等の主たる出入口が階段室等以外の廊下等の通路に面する特定共同住宅等(=廊下型)に設置する場合に限り、一辺の長さを100m以下にできます。

2以上の階にわたらないという原則は同じです。ただ、面積の枠が2.5倍に広がるということは、受信機の回線数が変わるということです。基本設計の段階で回線数を積んでおかないと、盤のサイズもEPSの取り合いも合わなくなります。

感知器は開放廊下に要らない

共同住宅用自火報の感知器を設けるのは、条文で次の3つに限定されています。

  • 住戸・共用室・管理人室の居室及び収納室(室の面積が4㎡以上のもの)
  • 倉庫(4㎡以上)・機械室その他これらに類する室
  • 直接外気に開放されていない共用部分

3つ目が効きます。開放廊下・開放階段には感知器を設けません。通常の自火報の感覚で共用部に感知器を並べると、要らないものを拾うことになります。逆に、内廊下型なら共用部にも感知器が要るので、拾いの数がまったく変わります。

共同住宅用SPを入れた部分は、自火報を省ける

第4条第5項に規定があります。住戸・共用室・管理人室(住戸利用施設にあるものを除く)に共同住宅用スプリンクラー設備を技術基準に従って設置したときに限り、その有効範囲内の部分について共同住宅用自火報または住戸用自火報を設置しないことができます。11階以上でSPを入れる階の感知器計画は、この規定を前提に組みます。

住戸用自火報を選ぶなら、共用部の警報設備をセットで考える

住戸用自火報は住戸等および共用部分に設置します。警戒区域と感知器の考え方は共同住宅用自火報と同じ規定を準用します。組み合わせる共同住宅用非常警報設備は、直接外気に開放されていない共用部分以外の共用部分に設置することができるという書き方になっています。

そして戸外表示器。共同住宅用自火報・住戸用自火報のいずれも、住戸内の感知器の機能異常を住戸の外から確認できることが要件になっており、その表示器の基準が平成18年消防庁告示第20号です。玄関脇に何を付けるかは、インターホンの子機や集合玄関機との納まりに直結します。意匠と早めにすり合わせておく項目です。

非常電源は通常の自火報と同じ

共同住宅用自火報の非常電源は、消防法施行規則第24条第4号の規定の例によります。特別な緩和はありません。


市販の解説書と条文が食い違っていた点

この記事は書籍の解説から入りましたが、条文で裏を取る過程で食い違いが見つかりました。同じ勘違いをしないように残しておきます。

  • 「住宅用自動火災報知設備」は誤り。正しくは住戸用自動火災報知設備です。省令第2条の定義用語も、平成18年消防庁告示第19号の題名も「住戸用」。同じ省令の中に「住宅用消火器」があるので混ざりやすいところですが、別物です。
  • 共同住宅用SP・共同住宅用自火報・住戸用自火報・戸外表示器の告示は平成18年。告示第17号〜第20号を「平成17年」と書いている資料がありますが、平成17年告示は第2号〜第4号(位置・構造、構造類型、区画貫通)で、第17号以降は平成18年5月30日告示・平成19年4月1日施行です。
  • 誘導灯は全類型で必要、ではありません。第4条第1項の中欄に誘導灯及び誘導標識が入るのは開放型と二方向避難・開放型だけです。

設計時のチェックリスト

  1. 省令40号ルートを使うのか、使わないのかを最初に決める。義務ではないので、使わない判断もあり得ます。
  2. 位置・構造の基準に適合しているかを建築側と確認する。主要構造部が耐火構造、共用部分の内装が準不燃、住戸等間が開口部のない耐火構造で区画されていること。区画を貫通する配管等の条件(呼び径200mm以下、貫通用開口部は直径300mm相当以下)は電気側の宿題です。
  3. 構造類型を確定する。開放型かどうかで屋内消火栓と誘導灯が丸ごと変わります。ここが未確定のまま設備数量を出さないこと。
  4. 階数区分を確認する。住戸用自火報+共同住宅用非常警報設備が使えるのは低層側だけ。11階以上は共同住宅用自火報の一択です。
  5. 警戒区域を1,500㎡(廊下型は一辺100m)で組み直す。600㎡で組んだ回線数のまま持っていくと過大になります。
  6. 感知器の範囲を「直接外気に開放されていない共用部分」で切る。開放廊下は拾わない。内廊下は拾う。
  7. 戸外表示器の納まりを意匠・インターホンとすり合わせる。玄関脇は取り合いが混みます。
  8. 階段室型なら第5条を確認する。共同住宅用連結送水管は3階から3階以内ごと、共同住宅用非常コンセントは11階から3階以内ごと。廊下型では使えません。

まとめ

特定共同住宅等の設備は、構造類型と階数の2つで決まります。開放型と二方向避難・開放型では屋内消火栓と誘導灯・誘導標識が代替され、二方向避難型と「その他」では通常どおり必要。住戸用自火報という選択肢が使えるのは低層側だけで、11階以上は共同住宅用自火報の一択です。

電気設備として大きいのは、警戒区域が600㎡から1,500㎡になることと、開放廊下に感知器が要らないことの2つです。どちらも回線数と数量に直結します。構造類型が固まる前に盤の仕様を出すと、必ず作り直しになります。

参考・根拠

  • 平成17年総務省令第40号「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」第2条・第3条・第4条・第5条(e-Gov法令検索)
  • 平成17年消防庁告示第2号(特定共同住宅等の位置、構造及び設備を定める件)/第3号(構造類型)/第4号(区画貫通部の耐火性能)
  • 平成18年消防庁告示第17号(共同住宅用スプリンクラー設備)/第18号(共同住宅用自動火災報知設備)/第19号(住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備)/第20号(戸外表示器の基準)
  • 消防法施行令 第21条、消防法施行規則 第23条・第24条

省令40号は令和7年10月1日付けで改正されていますが、改正内容は他法の項ずれに対応する技術的なもので、設備基準の実質的な変更はありません。とはいえ法令は改正されることがあります。実際の設計にあたっては、必ず最新の条文と所轄消防本部の運用をご確認ください。

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