図面の特記仕様や海外製の機器の説明書に出てくる「TN-S方式」「TT方式」「IT方式」。用語集では一言で説明されますが、文字が何を表すのか、方式で何が変わるのか、日本の建物はどれなのかまでは分かりにくい言葉です。この記事は、この3つだけにしぼって説明します。

ペン太ペン太
図面に「TN-S方式」って書いてあったんですけど、どういう意味ですか?
ハリタハリタ
接地のつなぎ方の名前だよ。文字ごとに意味があるから、読み方さえ分かればすぐ分かるんだ。
はじめての方へ:まず言葉の意味
ひとことで言うと
「接地方式」は、電源(変圧器)と機器の外箱を、大地や線でどうつなぐかの決め方。TT・TN-S・ITなどの文字で表します。
読み方
せっちほうしき/ティーエヌエス・ティーティー・アイティー方式/とうごうせっち
どこで出てくる?
設計図の特記仕様や接地系統図、海外製の機器や盤の説明書、病院やデータセンターの電気設備。

結論

接地方式は、電源の接地(1文字目)と機器の外箱の接地(2文字目)の組み合わせを文字で表したものです。漏電したときの電流の帰り道が、TTは大地、TN-Sは保護線、ITは帰り道なしと変わるので、守り方も変わります。日本の住宅の多くはTT方式です。

  • 1文字目は電源、2文字目は機器、3文字目は中性線と保護線
  • TTは電流が小さいので、漏電遮断器で切る
  • TN-Sは保護線を通るので、電流が大きくブレーカーで切れる
  • ITは1回の漏電では止めず、絶縁監視で知らせる
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。

この記事に出てくる言葉

読む前に、意味をざっと押さえておくと分かりやすくなります。

言葉 読み方 やさしい説明
接地(アース) せっち 電気設備を大地(地面)とつなぐこと。
変圧器 へんあつき 電圧を変える機器。電柱の上の灰色の筒もその1つ。
中性点 ちゅうせいてん 変圧器の低圧側で、大地との電圧がほぼ0Vになる点。ここを接地する。
外箱 そとばこ 機器の金属のケース。ふだんは電気が来ていない部分。
保護線(PE) ほごせん 機器の外箱と電源の接地点をつなぐ、漏電用の帰り道の線。
B種接地・D種接地 ビーしゅ・ディーしゅ B種は変圧器の低圧側の接地。D種は300V以下の機器の外箱などの接地。
漏電遮断器 ろうでんしゃだんき 小さな漏れを見つけて電気を切る装置。漏電ブレーカーとも呼ぶ。
等電位ボンディング とうでんいぼんでぃんぐ 建物の金属どうしを線でつなぎ、電圧の差をなくすこと。
先に理解しておきたいこと

「接地方式」を理解するために、土台になる考え方を3つだけ押さえておきましょう。

1

接地には「電源側」と「機器側」の2つがある

変圧器の中性点を大地につなぐのが電源側の接地(系統接地)、機器の金属の外箱を大地につなぐのが機器側の接地(機器接地)です。接地方式は、この2つの組み合わせ方の名前です。

2

漏れた電気は、電源へ帰ろうとする

機器で漏電すると、電気は外箱から接地をたどって、最後は変圧器の接地点へ帰ります。帰り道がなければ、ほとんど流れません。

3

帰り道の抵抗で、電流の大きさが決まる

電流は、電圧÷抵抗で決まります。地面を通る帰り道は抵抗が大きいので電流は小さく、銅の線を通る帰り道は抵抗が小さいので電流は大きくなります。

TN-S・TT・ITの文字の読み方 ― 1文字目は電源、2文字目は機器

ペン太ペン太
TとかNとか、アルファベットが多くて混乱します…
ハリタハリタ
1文字目は電源、2文字目は機器の外箱、3文字目は線の分け方。この順番だけ覚えればいいよ。

接地方式は、国際規格(IEC 60364)の分け方で、文字を並べて表します。1文字目は電源(変圧器)の接地、2文字目は機器の外箱の接地、TN方式だけにある3文字目は、中性線と保護線の分け方です。

1文字目電源の接地
2文字目機器の外箱の接地
3文字目中性線と保護線
例TT・TN-S・IT
文字の位置 文字 意味
1文字目(電源) T 変圧器の中性点などを、大地へ直接つなぐ
1文字目(電源) I 大地へつながない(または大きな抵抗を通してつなぐ)
2文字目(機器) T 機器の外箱を、その場で大地へつなぐ
2文字目(機器) N 機器の外箱を、線(保護線)で電源の接地点へつなぐ
3文字目(線) S/C Sは中性線と保護線を別々の線に、Cは1本で兼ねる

1文字目は、変圧器の側の接地なので系統接地の話、2文字目は、機器の外箱の接地なので機器接地の話です。用語集にある「系統接地・機器接地」は、ちょうどこの2つの文字に当たります。

たとえるなら
接地方式は、家の「雨水の流し方」のようなもの
屋根の雨水を、その場の地面にしみこませるか(TT)、とい(雨どい)でまとめて決まった排水口へ流すか(TN)、そもそも外に出さずにためておくか(IT)。どこへどう流すかを先に決めておくのが接地方式です。
ここに注意!
「TT方式の2つめのTは、電源とつながっている」ではありません。
2文字目のTは、機器の外箱を「その場で」大地へつなぐという意味です。電源の接地点と線でつなぐのは、2文字目がNのTN方式です。
ここまでのポイント
  • 1文字目は電源(系統接地)、2文字目は機器(機器接地)
  • Tは大地へ直接、Iはつながない、Nは線で電源へ
  • 3文字目のSは別々、Cは兼用


方式で何が変わる? ― 漏電した電流の帰り道

ペン太ペン太
どの方式でも、漏電したらブレーカーが落ちるんじゃないんですか?
ハリタハリタ
電流がどこを通って帰るかで、大きさがぜんぜん違うんだ。だから切る装置も方式で変わるのさ。

方式のちがいがいちばんはっきり出るのは、機器で漏電したときです。漏れた電流は、外箱から接地をたどって変圧器へ帰ろうとします。その帰り道が、方式によってちがいます。

TT大地を通る→小さい
TN-S保護線を通る→大きい
IT帰り道がない
守り方切る装置が変わる
方式 漏電した電流の帰り道 電流 守り方
TT 機器の接地 → 大地 → 変圧器の接地 小さい 漏電遮断器で切る
TN-S 機器の外箱 → 保護線 → 変圧器の接地点 大きい ブレーカー(過電流)でも切れる
IT 帰り道がない(電線の静電容量の分だけ) とても小さい 止めずに使い、絶縁監視で知らせる

ITは、1回目の漏電では電気を止めずに使い続けられるのが強みです。ただし、別の線でもう1回漏電すると大きな電流が流れるので、1回目の漏電を絶縁監視装置ですぐ知らせて、直しておく必要があります。

たとえるなら
TTとTN-Sの違いは、「地面の道」と「専用の道」
同じ場所へ帰るにも、ぬかるんだ地面を歩くと時間がかかり、舗装された専用の道なら一気に帰れます。大地を通るTTは電流が小さく、保護線という専用の道を通るTN-Sは電流が大きくなります。
ここに注意!
「接地してあれば、漏電したらブレーカーが落ちる」とは限りません。
TT方式では、漏電の電流が大地を通るので小さく、配線用遮断器(過電流のブレーカー)は動かないことがよくあります。漏電を切るのは漏電遮断器の役目です。
ここまでのポイント
  • TTは大地を通るので、電流が小さい
  • TN-Sは保護線を通るので、電流が大きい
  • ITは1回目の漏電では止めず、絶縁監視で知らせる


日本の建物はどの方式? ― 住宅はTT、手術室はIT、そして統合接地

ペン太ペン太
じゃあ、ぼくの家はどの方式なんですか?
ハリタハリタ
日本の住宅は、ほとんどがTT方式だよ。だから分電盤に漏電遮断器が入っているんだ。

日本の住宅の多くはTT方式です。電柱の変圧器のB種接地は電力会社が、家の機器のD種接地は家の側で、それぞれ別の接地極に施します。帰り道に大地が入るので、漏電の電流は小さくなります。

住宅TT方式
計算例100V÷100Ω=1A
手術室IT方式
建物統合接地

たとえば、帰り道の抵抗が合わせて100Ωなら、100V÷100Ω=1Aです。これでは20Aの配線用遮断器は切れません。そこで、小さな漏れを見つけて切る漏電遮断器を分電盤に入れます。なお、D種接地の抵抗値は100Ω以下で、0.5秒以内に切る漏電遮断器があれば500Ω以下でよいことになっています。

病院の手術室などでは、1回の漏電で電気が止まると命に関わるので、絶縁変圧器を使って接地しない回路(IT方式、非接地配線方式)にし、絶縁監視装置で漏電を知らせます(医用接地の設計)。

建物では、A種〜D種の接地や避雷設備の接地を、建物の鉄骨などの共用の接地極にまとめる統合接地も使われます。建物の鉄骨などを共用の接地極に使うときは、金属体どうしをつなぎ、等電位ボンディングを施すことが求められます(電技解釈 第18条)。分けるか、まとめるかの考え方は接地・雷保護の設計マニュアル③ 接地の共用と分離で説明しています。

ここに注意!
「接地は、分けるほど安全」ではありません。
接地極を別々にすると、雷や地絡のときに接地どうしのあいだに電位差が生まれ、機器をこわしたり感電の原因になったりします。いまの建物では、統合接地と等電位ボンディングで電位をそろえる考え方が広がっています。
ここまでのポイント
  • 日本の住宅の多くはTT方式。だから漏電遮断器が要る
  • 手術室などは、止めないためにIT方式(非接地配線方式)
  • 建物では、統合接地と等電位ボンディングで電位をそろえる


まとめ|結論

結論

接地方式は、1文字目が電源の接地、2文字目が機器の外箱の接地を表します。漏電したときの電流の帰り道が、TTは大地、TN-Sは保護線、ITは帰り道なしと変わるので、守り方も変わります。日本の住宅の多くはTT方式で、だから漏電遮断器で守ります。

図面で接地方式を確かめるときは、この順で見ます。

  1. 変圧器の中性点が接地されているか(1文字目がTかIか)
  2. 機器の外箱が、その場の接地か、保護線で電源へつながるか(2文字目がTかNか)
  3. 保護線が中性線と別か(Sか、Cか)
  4. 方式に合った保護(漏電遮断器・ブレーカー・絶縁監視)が入っているか

よくある質問

接地方式(TN-S・TT・IT方式)とは何ですか?

電源(変圧器)の接地と、機器の外箱の接地を、どうつなぐかで分けた呼び方です。国際規格(IEC 60364)の分け方で、TT・TN-S・ITなどの文字で表します。

T・N・I・S・Cの文字は、何を表していますか?

1文字目は電源で、Tは大地へ直接つなぐ、Iはつながない(または大きな抵抗を通す)。2文字目は機器の外箱で、Tはその場で大地へつなぐ、Nは線で電源の接地点へつなぐ。3文字目は中性線と保護線で、Sは別々の線、Cは1本で兼ねる、という意味です。

日本の住宅は、どの接地方式ですか?

多くはTT方式です。電柱の変圧器のB種接地は電力会社が、家の機器のD種接地は家の側で、それぞれ別の接地極に施します。

TT方式では、なぜ漏電遮断器が必要なのですか?

漏電したときの電流が、大地を通って帰るので小さくなるからです。たとえば帰り道の抵抗が合わせて100Ωなら、100V÷100Ω=1Aで、20Aの配線用遮断器は切れません。この小さな漏れを見つけて切るのが漏電遮断器です。

統合接地とは何ですか?

A種〜D種の接地や避雷設備の接地を、建物の鉄骨などの共用の接地極にまとめる方法です。接地どうしの電位差をなくせます。建物の鉄骨などを共用の接地極に使うときは、金属体どうしをつなぎ、等電位ボンディングを施します(電技解釈 第18条)。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。