電技解釈や内線規程、電気工事士の試験で必ず出てくる「展開した場所」「点検できる隠ぺい場所」「点検できない隠ぺい場所」。言葉は似ていますが、どの区分になるかで使える工事の種類が変わります。この記事では、3つの場所の定義、見分け方、場所ごとに使える工事の代表例を説明します。

ペン太ペン太
図面の特記に「点検できない隠ぺい場所」ってあるんですけど、どこのことですか?
ハリタハリタ
コンクリートの床や壁の中みたいに、壊さないと近づけない場所のことだよ。
はじめての方へ:まず言葉の意味
壁の表面に見えている配線は展開した場所、点検口から近づける天井裏は点検できる隠ぺい場所、コンクリートの床の中のように壊さないと近づけない場所は点検できない隠ぺい場所、という3つの区分を3コマで示す動く図解
ひとことで言うと
「展開した場所」は電線や配管が見えている露出の場所、「隠ぺい場所」は天井・壁・床の中などに隠れた場所です。隠ぺい場所は、点検口などから近づける「点検できる隠ぺい場所」と、壊さないと近づけない「点検できない隠ぺい場所」に分かれます。
読み方
てんかいしたばしょ/いんぺいばしょ
どこで出てくる?
屋内配線の工事の種類の選び方、電技解釈第156条の表、図面の特記仕様、電気工事士試験の施設場所と工事の種類の問題。

結論

電気設備を施設する場所は、展開した場所(見えている)・点検できる隠ぺい場所(点検口などから近づける)・点検できない隠ぺい場所(壊さないと近づけない)の3つに分かれます。見分け方は「隠れているか」「壊さずに近づけるか」の2つの質問です。点検できない隠ぺい場所では、がいし引き・ダクト類・金属線ぴなどは使えず、管やケーブルの工事に限られます。

  • 定義は電技解釈第1条第二十九号〜第三十一号
  • 天井裏は、点検口があれば点検できる、なければ点検できない
  • 押入れ・戸棚は、点検できる隠ぺい場所
  • 使える工事は、場所・湿気・電圧の組み合わせで決まる
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。

この記事に出てくる言葉

読む前に、意味をざっと押さえておくと分かりやすくなります。

言葉 読み方 やさしい説明
展開した場所 てんかいしたばしょ 隠ぺい場所以外の場所。電線や配管が見えている露出の場所。
隠ぺい場所 いんぺいばしょ 天井・壁・床の中など、電気設備が隠れている場所。
点検できる隠ぺい場所 てんけんできるいんぺいばしょ 点検口のある天井裏・戸棚・押入れなど、容易に近づける隠ぺい場所。
点検できない隠ぺい場所 てんけんできないいんぺいばしょ 天井ふところ・壁内・コンクリート床内など、壊さないと近づけない場所。
天井ふところ てんじょうふところ 天井板と上の階の床のあいだのすき間。
点検口 てんけんこう 天井や壁に設ける、開け閉めできる小さなふた。
露出配線 ろしゅつはいせん 壁や天井の表面に、見えるように施設した配線。
乾燥した場所 かんそうしたばしょ 湿気の多い場所・水気のある場所以外の、ふつうの屋内の場所。
先に理解しておきたいこと

「展開した場所・隠ぺい場所」を理解するために、土台になる考え方を3つだけ押さえておきましょう。

1

電線は、年月がたつと傷んだり緩んだりする

電線の被覆の傷みや接続部の緩みは、点検で見つけて直します。点検できる場所なら、あとからでも見つけられます。

2

点検できない場所では、最初から丈夫に守る

壊さないと近づけない場所では、傷みを見つけられません。そのため、電線を管やケーブルでしっかり守る工事に限られます。

3

使える工事は「場所×湿気×電圧」で決まる

低圧屋内配線の工事の種類は、場所の区分に加えて、乾燥・湿気・水気と、300V以下か超えるかの組み合わせで決まります。

3つの場所の定義

ペン太ペン太
天井裏は、どっちになるんですか?
ハリタハリタ
点検口があれば「点検できる隠ぺい場所」、なければ「点検できない隠ぺい場所」さ。ふたがあるかで決まるんだ。

3つの場所は、電技解釈第1条の用語の定義に書かれています。

区分 電技解釈第1条の定義 例
点検できない隠ぺい場所(第二十九号) 天井ふところ、壁内又はコンクリート床内等、工作物を破壊しなければ電気設備に接近し、又は電気設備を点検できない場所 コンクリートの床・壁の中、点検口のない二重天井
点検できる隠ぺい場所(第三十号) 点検口がある天井裏、戸棚又は押入れ等、容易に電気設備に接近し、又は電気設備を点検できる隠ぺい場所 点検口のある天井裏、押入れ、戸棚
展開した場所(第三十一号) 点検できない隠ぺい場所及び点検できる隠ぺい場所以外の場所 壁や天井の表面(露出)、電気室の中
展開見えている
点検できる点検口・押入れ
点検できないコンクリート内
定義電技解釈1条

「展開した場所」は、隠ぺい場所以外のすべての場所、という決め方になっています。まず隠ぺい場所かどうかを考え、そうでなければ展開した場所です。天井や壁、床をつくる部分は「造営材」と呼ばれます。

たとえるなら
3つの場所は、家の中の「物の置き場所」
机の上に出ている物(展開した場所)はすぐ見えます。押入れの中の物(点検できる隠ぺい場所)は、ふすまを開ければ見えます。壁に塗り込めた物(点検できない隠ぺい場所)は、壁を壊さないと取り出せません。電線も同じで、取り出しにくい場所ほど、最初から丈夫に守っておく必要があります。
ここに注意!
「天井裏はいつも点検できる隠ぺい場所」とは限りません。
点検口があって容易に近づけるなら点検できる隠ぺい場所ですが、点検口のない二重天井の中(天井ふところ)は、点検できない隠ぺい場所です。同じ天井裏でも、点検口の有無で区分が変わります。
ここまでのポイント
  • 点検できない:壊さないと近づけない(壁内・コンクリート内)
  • 点検できる:点検口・戸棚・押入れから近づける
  • 展開した場所:それ以外(見えている場所)


見分け方 ― 2つの質問

ペン太ペン太
区別すると、何が変わるんですか?
ハリタハリタ
使える工事の種類が変わるんだ。点検できない場所では、ダクト類や金属線ぴは使えないよ。

迷ったときは、2つの質問に順に答えます。1つ目は「電線は隠れているか」、2つ目は「壊さずに近づけるか」です。

Q1隠れている?
いいえ展開した場所
Q2壊さず近づける?
いいえ点検できない

同じ天井裏でも、点検口があるかどうかで区分が変わります。図面の特記に「点検できない隠ぺい場所」と書かれていたら、点検口がない、またはコンクリートに埋め込む部分を指していると読みます。

たとえるなら
見分け方は、「ふたがあるか」
箱の中身を確かめるとき、ふたがあれば開けて見られます。ふたのない密閉の箱は、壊さないと中を見られません。点検口は、天井裏の「ふた」です。
ここに注意!
「押入れは見えないから、点検できない場所」ではありません。
押入れや戸棚は、戸を開ければ容易に近づけるので、点検できる隠ぺい場所です。電技解釈の定義にも、押入れと戸棚が例として書かれています。
ここまでのポイント
  • Q1:隠れていなければ展開した場所
  • Q2:壊さずに近づければ点検できる隠ぺい場所
  • 壊さないと近づけなければ点検できない隠ぺい場所

場所で変わる、使える工事

ペン太ペン太
じゃあ、どこでも使える工事はありますか?
ハリタハリタ
合成樹脂管、金属管、金属可とう電線管、ケーブル工事は、乾燥した場所なら3つとも使えるよ。

低圧屋内配線の工事の種類は、電技解釈第156条の表で、場所の区分ごとに決められています。乾燥した場所・300V以下で比べると、管とケーブルの工事はどこでも使えますが、ダクト類や金属線ぴ、がいし引きは、点検できない隠ぺい場所では使えません。

管・ケーブルどこでもOK
がいし引き点検できない×
ダクト類点検できない×
線ぴ点検できない×
工事の種類 展開 点検できる 点検できない
合成樹脂管・金属管・金属可とう電線管 ○ ○ ○
ケーブル工事 ○ ○ ○
がいし引き工事 ○ ○ ×
金属ダクト・バスダクト工事 ○ ○ ×
金属線ぴ工事 ○ ○ ×
ライティングダクト工事 ○ ○ ×

表は乾燥した場所・300V以下の代表例です。床に施設する平形保護層配線のように、特定の場所だけで使える工事もあります。各工事の決まりは金属線ぴ工事、ライティングダクト工事、ケーブル工事、平形保護層配線の記事で説明しています。

ここに注意!
「乾燥した場所でOKなら、どこでもOK」ではありません。
同じ点検できる隠ぺい場所でも、湿気の多い場所や水気のある場所、300Vを超える電圧では、使える工事がさらに減ります。場所の区分と、湿気・電圧の条件をセットで確かめます。
ここまでのポイント
  • 管とケーブルの工事は、3つの場所すべてで使える
  • ダクト類・金属線ぴ・がいし引きは、点検できない場所では使えない
  • 湿気・水気・300V超では、さらに条件が変わる


まとめ|結論

結論

展開した場所は見えている場所、点検できる隠ぺい場所は点検口などから近づける場所、点検できない隠ぺい場所は壊さないと近づけない場所です。点検できない場所では傷みを見つけられないため、管やケーブルで電線を守る工事に限られます。

工事の種類を選ぶときは、この順で確かめます。

  1. 配線する場所は、隠れているか(展開した場所か)
  2. 隠れているなら、壊さずに近づけるか(点検口の有無)
  3. 乾燥した場所か、湿気の多い場所・水気のある場所か
  4. 使用電圧は300V以下か、300Vを超えるか
  5. 電技解釈第156条の表で、その組み合わせで使える工事か

よくある質問

展開した場所とは何ですか?

電技解釈第1条で「点検できない隠ぺい場所及び点検できる隠ぺい場所以外の場所」と定義されています。電線や配管が隠れずに見えている、露出の場所のことです。

点検できる隠ぺい場所とは、どんな場所ですか?

点検口がある天井裏、戸棚、押入れなど、隠れてはいるものの、容易に電気設備に近づいたり点検したりできる場所です。

点検できない隠ぺい場所とは、どんな場所ですか?

天井ふところ、壁内、コンクリート床内など、工作物を壊さなければ電気設備に近づいたり点検したりできない場所です。点検口のない二重天井の中もこれに当たります。

なぜ場所を区別するのですか?

場所によって、使える工事の種類が変わるからです。点検できない場所では、あとから傷みや緩みを見つけられないので、管やケーブルで電線をしっかり守る工事に限られます。

点検できない隠ぺい場所で使えない工事には、どんなものがありますか?

乾燥した場所・300V以下の場合で、がいし引き工事、金属ダクト工事、バスダクト工事、金属線ぴ工事、ライティングダクト工事などは使えません。合成樹脂管、金属管、金属可とう電線管、ケーブル工事は使えます。くわしくは電技解釈第156条の表で確かめます。

次に読むならこれCT比の決め方と計算|受電点・変圧器一次側・二次側の電流計に付けるCTの早見表と過電流強度受変電設備の設計
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。