技術図書館幹線サイズの選定手順|許容電流で決めて電圧降下で確かめる7ステップの全体像と、電動機の有無で変わる係数(1.25倍・1.1倍)を全7枚のスライドで整理この資料をスライドで見る資料一覧を見る

この記事は、連載「幹線設備の設計マニュアル」第3回 幹線サイズの選定 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。

幹線は、建物の「幹線道路」です。受変電設備から各階の盤まで、電気という車をまとめて運びます。細すぎれば渋滞して熱を持ち、長すぎれば先で力尽きる(電圧が下がる)。だから太さは、許容電流で決めて、電圧降下で確かめるのが基本です。この記事では、その決め方を5つのステップに分けて、たとえと図でひとつずつ確かめます。電動機の1.25倍・1.1倍や、分岐した細い幹線の遮断器の決まりまで、つまずきやすい所もまとめて押さえます。

電線の太さ=車線の数、電流=車の量、許容電流=渋滞で熱くならない上限、電圧降下=長い道での疲れ。この4つの言葉で幹線の話はほぼ読めます。

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この記事で読めるようになる用語:幹線需要率許容電流電圧降下こう長

まず地図を持つ ― 幹線サイズは5ステップで決まる

幹線サイズの決め方は、道路づくりの手順とそっくりです。どれだけ車が通るか調べ(負荷を集める)車線の数を決め(許容電流)道の条件で割り引き(補正)遠くまで届くか確かめ(電圧降下)、最後に枝道の関所を決める(分岐の保護)

5つのステップの全体像。サイズを決める主役は許容電流、長い幹線では電圧降下が効いてきます。2つの答えのうち太いほうを採ります。
ひとことで言うと:「許容電流で仮に決める → 補正する → 電圧降下で確かめる → 太いほうを採る」。

ステップ1 負荷を集める ― 「全員が同時には使わない」を計算に入れる

最初にやるのは、その幹線にぶら下がる負荷を集めて電流に直すことです。機器の表示はkWが多いので、力率で割ってkVAにし、電源方式の式で電流を出します。

電源方式 電流の出し方 例(10kVA)
単相2線式 I = S ÷ V 200Vなら 50A
単相3線式 I = S ÷(2 × 100) 釣り合っていれば 50A
三相3線式 I = S ÷(√3 × V) 200Vなら 約28.9A
S:皮相電力[VA](kVA=kW÷力率)、V:線間電圧[V]。
たとえるなら
マンションの全戸が、同じ瞬間にエアコンもIHも全開にすることは、まずありません。
機器を全部足した電流で道路を作ると、毎日ガラガラの8車線道路になってしまいます。実際に同時に使われる割合が需要率です。
機器を全部足すと100Aでも、同時に使うのが6割なら60Aを基準に選べる、という考え方です(数字は例)。

電技解釈 第148条も、需要率や力率がわかっているときは、それで修正した負荷電流で幹線を選んでよいとしています。集合住宅のように同じ負荷がたくさんある幹線では、戸数に応じた需要率を使います。詳しくは集合住宅の幹線需要率で扱っています。

ここまでのポイント
  • kW → kVA(力率で割る)→ 電流の順に直す
  • 単相・三相で電流の式が違う
  • 需要率・力率がわかれば、修正した負荷電流で選べる(第148条)


ステップ2 許容電流 ― 電動機は「発進」で大食いする

幹線の許容電流(IW)は、つながる負荷の電流の合計以上にします。ここでひと工夫いるのが電動機です。

たとえるなら
電動機は、重い荷物を積んだトラックの発進に似ています。
止まっているポンプやファンを回し始める瞬間は、アクセル全開でふだんの何倍もの電流を食います。だから、電動機の電流(IM)がそれ以外(IH)より大きい幹線だけ、IMに係数をかけて余裕を持たせます
起動の瞬間はふだんの何倍もの電流が流れます。IMがIHより大きい幹線では、IMが50A以下なら1.25倍、50A超なら1.1倍をかけます。
IMがIH以下なら合計のまま。IMがIHより大きく50A以下なら1.25倍、50Aを超えれば1.1倍をIMにかけます。
条件 幹線の許容電流
IM ≦ IH IW ≧ IM + IH
IM > IH、IM ≦ 50A IW ≧ 1.25IM + IH
IM > IH、IM > 50A IW ≧ 1.1IM + IH
電技解釈 第148条をもとに作成。

幹線を守る遮断器(IB)は、ふつうは幹線の許容電流以下です。ただし電動機を含む幹線では、起動のたびに遮断器が落ちては困るので、3IM+IH2.5IWの小さいほう以下まで上げられます(第148条)。

電動機40A・その他20Aなら、許容電流は70A以上。遮断器は140Aと175Aの小さいほう、140A以下で選びます。

許容電流による選び方の細かい手順は許容電流によるケーブルサイズ選定方法で扱っています。

ここまでのポイント
  • IM ≦ IH なら IW ≧ IM+IH(係数なし)
  • IM > IH で50A以下なら 1.25倍、50A超なら 1.1倍
  • 遮断器は 3IM+IH と 2.5IW の小さいほう以下
  • 例:IM 40A・IH 20A → IW 70A以上、遮断器140A以下


ステップ3 補正 ― 電線は「熱」でバテる

カタログの許容電流は、決められた条件(周囲温度や敷設のしかた)での値です。電線の限界を決めているのはなので、熱がこもる場所では流せる量が下がります。

たとえるなら
同じ人でも、風通しのよい日陰と、真夏の満員電車では、バテるまでの時間がまるで違います。
電線も同じで、何本も束ねたり、暑い機械室や天井内を通したりすると、熱が逃げずに早く限界に来ます。
風通しのよい場所が基準。束ねる・暑い場所を通すと、同じ電線でも流せる電流が下がります。
  • 敷設方法:気中、ラック、管路、地中埋設で熱の逃げ方が違います。経路の途中で条件が変わるときは、いちばん厳しい区間で決めるのが基本です。道路でいえば、いちばん狭い区間がその道の実力です。
  • 周囲温度:暑い場所では温度の補正係数で許容電流を下げます。係数は電線の種類(許される温度)で違うので、表で確かめます。
  • 条数:ラックや管に何本もまとめると、低減率をかけます。

補正の考え方は内線規程の許容電流電流減少係数で確かめられます。

ここまでのポイント
  • 許容電流を決めているのは熱
  • 補正後の許容電流で比べる
  • 経路の途中で条件が変わるなら、いちばん厳しい区間で決める
  • 周囲温度の係数は電線の種類で違う

ステップ4 電圧降下 ― 長いホースは先で勢いが落ちる

たとえるなら
庭の水まきで、ホースを長くつなぐほど、先から出る水はちょろちょろになります。
電線にも抵抗があるので、長いほど、たくさん流すほど、先端の電圧が下がります。太いホース(太い電線)にすれば勢いは戻ります。
長さLと電流Iが大きいほど電圧は下がり、太さAが大きいほど下がりにくくなります。式の形そのものです。

どこまで下がってよいかは、内線規程1310節でこう長ごとに決まっています。

こう長60m以下は、幹線2%・分岐回路2%が基本(構内の変圧器から供給する幹線は3%)。60mを超えると、合計で緩和されます。

こう長は幹線だけの長さではなく、変圧器の二次側(または引込線取付点)から最遠端の負荷までです。60mを超えるときは、合計の値を幹線と分岐回路にどう配分するか、先に決めておきます。

許される電圧降下 e[V]が決まったら、式を逆にして必要な断面積を出します。

電源方式 必要な断面積 A[mm²]
単相2線式 35.6 × L × I ÷(1000 × e)
単相3線式・三相4線式 17.8 × L × I ÷(1000 × e)
三相3線式 30.8 × L × I ÷(1000 × e)
L:こう長[m]、I:電流[A]、e:許される電圧降下[V]。銅線の簡易式。
三相3線200V・100m・30Aは15.4mm²で22sq。単相3線は100Vで見るので3%は3V、17.8mm²で22sq。短い分岐回路は最小太さで決まります。
ひっかけ注意
単相3線式の「3%」は、200Vの3%(6V)ではありません。
単相3線式の式(係数17.8)は、電圧線と中性線の間の電圧降下を出す式です。だから基準は100V、3%なら3Vです。6Vで計算すると、必要な断面積を半分に見誤り、1サイズ以上細い電線を選んでしまいます。

式の成り立ちは簡略計算式(直流式)の根拠、許容値は電圧降下(1310節)の許容値で詳しく扱っています。

ここまでのポイント
  • 長さと電流が大きいほど下がり、太いほど下がりにくい
  • こう長60m以下は幹線2%(構内の変圧器なら3%)が基本
  • こう長は変圧器の二次側から最遠端の負荷まで
  • 単相3線式のeは100V基準


ステップ5 分岐した細い幹線 ― 枝道に関所は要るか

たとえるなら
太い本線から細い枝道が分かれるとき、ふつうは枝道の入口に関所(遮断器)を置きます。
ただし、枝道がそこそこ太い、または短くて危なくない場合は、本線の関所で守りきれるので、枝道の関所を省略できます。その線引きが55%・35%・3mの3つです。
細い幹線の許容電流が太い幹線の遮断器の55%以上なら長さの制限なし。8m以下なら35%以上。3m以下なら負荷側に他の幹線を接続しないこと。
条件 細い幹線の許容電流 IW 長さ
太い幹線の遮断器 IB の55%以上 制限なし
IB の35%以上 8m以下
制限なし(負荷側に他の幹線を接続しない) 3m以下
電技解釈 第148条をもとに作成。どれにも当たらなければ、分岐点から3m以下の箇所に遮断器を施設します。
ひっかけ注意
③は「末端に負荷がない」ではありません。
3m以下で省略できるのは、細い幹線の負荷側に、さらに他の幹線を接続しないとき。枝道の先にさらに枝道を伸ばすなら、関所が必要です。

計算の手順は分岐した細い幹線の過電流遮断器で扱っています。

ここまでのポイント
  • 原則は分岐点から3m以下に遮断器
  • 55%以上なら長さの制限なし
  • 8m以下なら35%以上
  • 3m以下なら、負荷側に他の幹線を接続しないこと

おまけ 幹線の材料 ― 一般道・高速道路・避難路

材料 道路でいうと 向いている使い方
CVTケーブル 一般道 一般の動力・電灯の幹線。いちばん使う基本形
バスダクト 高速道路 大電流の幹線、高層の縦幹線。太いケーブルを何条も並べるより納まりがよいとき
耐火ケーブル 火事でも通れる避難路 消防用設備・非常電源の幹線。消防法の基準に合うものを使う
電源方式(単相2線・単相3線・三相3線・三相4線)で電流の式と電圧降下の係数が変わるので、材料より先に電源方式を確認します。
ここまでのポイント
  • 一般の幹線はCVT
  • 大電流・縦幹線はバスダクトも候補
  • 非常電源の幹線は耐火ケーブル


よくある質問

幹線サイズは何で決まりますか?

許容電流と電圧降下の2つです。許容電流で仮に決め、補正し、こう長で電圧降下を確かめて、太いほうを採ります。

電動機を含む幹線の係数は?

電動機の電流の合計(IM)がそれ以外(IH)より大きいとき、IMが50A以下なら1.25倍、50Aを超えれば1.1倍をIMにかけます(電技解釈 第148条)。IMがIH以下なら係数はかけません。

幹線の遮断器はどこまで大きくできますか?

ふつうは幹線の許容電流以下です。電動機を含む幹線は、3IM+IHと2.5IWの小さいほう以下まで上げられます。

電圧降下はどこまで許されますか?

こう長60m以下なら、幹線・分岐回路それぞれ2%以下が基本で、構内の変圧器から供給する幹線は3%以下にできます。60mを超えると、幹線と分岐回路の合計で緩和されます。

単相3線式の電圧降下は何Vで見ますか?

電圧線と中性線の間、つまり100Vで見ます。3%なら3Vです。

分岐した細い幹線に遮断器は必ず要りますか?

細い幹線の許容電流が太い幹線の遮断器の55%以上、8m以下で35%以上、3m以下で負荷側に他の幹線を接続しない、のどれかなら省略できます。

kWからkVAへはどう換算しますか?

kVA = kW ÷ 力率 です。そのあと、電源方式の式で電流に直します。

まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
電動機があれば必ず1.25倍 IMがIHより大きいときだけ。50A超は1.1倍
許容電流は表の値のまま 敷設方法・周囲温度・条数で補正する
単相3線の3%は6V 電圧線と中性線の間で3V
こう長は幹線の長さ 変圧器二次側から最遠端の負荷まで
3m以下は末端に負荷がなければ省略 負荷側に他の幹線を接続しなければ省略
道路で言えば「車の量で車線を決め、道の条件で割り引き、遠くまで届くか確かめ、枝道の関所を決める」。この順で取り違えを防げます。
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。