幹線設備の設計|幹線サイズの選定手順と計算方法について詳しく解説
幹線は、建物の「幹線道路」です。受変電設備から各階の盤まで、電気という車をまとめて運びます。細すぎれば渋滞して熱を持ち、長すぎれば先で力尽きる(電圧が下がる)。だから太さは、許容電流で決めて、電圧降下で確かめるのが基本です。この記事では、その決め方を5つのステップに分けて、たとえと図でひとつずつ確かめます。電動機の1.25倍・1.1倍や、分岐した細い幹線の遮断器の決まりまで、つまずきやすい所もまとめて押さえます。
- 幹線サイズはどんな順番で決める?
- 負荷から電流をどう出す?需要率って何?
- 電動機があると、なぜ1.25倍・1.1倍?
- 同じ電線でも、置き場所で流せる量が変わるのはなぜ?
- 電圧降下はどう確かめる?
- 分岐した細い幹線に遮断器は要る?
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まず地図を持つ ― 幹線サイズは5ステップで決まる
幹線サイズの決め方は、道路づくりの手順とそっくりです。どれだけ車が通るか調べ(負荷を集める)、車線の数を決め(許容電流)、道の条件で割り引き(補正)、遠くまで届くか確かめ(電圧降下)、最後に枝道の関所を決める(分岐の保護)。
ステップ1 負荷を集める ― 「全員が同時には使わない」を計算に入れる
最初にやるのは、その幹線にぶら下がる負荷を集めて電流に直すことです。機器の表示はkWが多いので、力率で割ってkVAにし、電源方式の式で電流を出します。
| 電源方式 | 電流の出し方 | 例(10kVA) |
|---|---|---|
| 単相2線式 | I = S ÷ V | 200Vなら 50A |
| 単相3線式 | I = S ÷(2 × 100) | 釣り合っていれば 50A |
| 三相3線式 | I = S ÷(√3 × V) | 200Vなら 約28.9A |
電技解釈 第148条も、需要率や力率がわかっているときは、それで修正した負荷電流で幹線を選んでよいとしています。集合住宅のように同じ負荷がたくさんある幹線では、戸数に応じた需要率を使います。詳しくは集合住宅の幹線需要率で扱っています。
- kW → kVA(力率で割る)→ 電流の順に直す
- 単相・三相で電流の式が違う
- 需要率・力率がわかれば、修正した負荷電流で選べる(第148条)
ステップ2 許容電流 ― 電動機は「発進」で大食いする
幹線の許容電流(IW)は、つながる負荷の電流の合計以上にします。ここでひと工夫いるのが電動機です。
| 条件 | 幹線の許容電流 |
|---|---|
| IM ≦ IH | IW ≧ IM + IH |
| IM > IH、IM ≦ 50A | IW ≧ 1.25IM + IH |
| IM > IH、IM > 50A | IW ≧ 1.1IM + IH |
幹線を守る遮断器(IB)は、ふつうは幹線の許容電流以下です。ただし電動機を含む幹線では、起動のたびに遮断器が落ちては困るので、3IM+IHと2.5IWの小さいほう以下まで上げられます(第148条)。
許容電流による選び方の細かい手順は許容電流によるケーブルサイズ選定方法で扱っています。
- IM ≦ IH なら IW ≧ IM+IH(係数なし)
- IM > IH で50A以下なら 1.25倍、50A超なら 1.1倍
- 遮断器は 3IM+IH と 2.5IW の小さいほう以下
- 例:IM 40A・IH 20A → IW 70A以上、遮断器140A以下
ステップ3 補正 ― 電線は「熱」でバテる
カタログの許容電流は、決められた条件(周囲温度や敷設のしかた)での値です。電線の限界を決めているのは熱なので、熱がこもる場所では流せる量が下がります。
- 敷設方法:気中、ラック、管路、地中埋設で熱の逃げ方が違います。経路の途中で条件が変わるときは、いちばん厳しい区間で決めるのが基本です。道路でいえば、いちばん狭い区間がその道の実力です。
- 周囲温度:暑い場所では温度の補正係数で許容電流を下げます。係数は電線の種類(許される温度)で違うので、表で確かめます。
- 条数:ラックや管に何本もまとめると、低減率をかけます。
補正の考え方は内線規程の許容電流と電流減少係数で確かめられます。
- 許容電流を決めているのは熱
- 補正後の許容電流で比べる
- 経路の途中で条件が変わるなら、いちばん厳しい区間で決める
- 周囲温度の係数は電線の種類で違う
ステップ4 電圧降下 ― 長いホースは先で勢いが落ちる
どこまで下がってよいかは、内線規程1310節でこう長ごとに決まっています。
こう長は幹線だけの長さではなく、変圧器の二次側(または引込線取付点)から最遠端の負荷までです。60mを超えるときは、合計の値を幹線と分岐回路にどう配分するか、先に決めておきます。
許される電圧降下 e[V]が決まったら、式を逆にして必要な断面積を出します。
| 電源方式 | 必要な断面積 A[mm²] |
|---|---|
| 単相2線式 | 35.6 × L × I ÷(1000 × e) |
| 単相3線式・三相4線式 | 17.8 × L × I ÷(1000 × e) |
| 三相3線式 | 30.8 × L × I ÷(1000 × e) |
式の成り立ちは簡略計算式(直流式)の根拠、許容値は電圧降下(1310節)の許容値で詳しく扱っています。
- 長さと電流が大きいほど下がり、太いほど下がりにくい
- こう長60m以下は幹線2%(構内の変圧器なら3%)が基本
- こう長は変圧器の二次側から最遠端の負荷まで
- 単相3線式のeは100V基準
ステップ5 分岐した細い幹線 ― 枝道に関所は要るか
| 条件 | 細い幹線の許容電流 IW | 長さ |
|---|---|---|
| ① | 太い幹線の遮断器 IB の55%以上 | 制限なし |
| ② | IB の35%以上 | 8m以下 |
| ③ | 制限なし(負荷側に他の幹線を接続しない) | 3m以下 |
計算の手順は分岐した細い幹線の過電流遮断器で扱っています。
- 原則は分岐点から3m以下に遮断器
- 55%以上なら長さの制限なし
- 8m以下なら35%以上
- 3m以下なら、負荷側に他の幹線を接続しないこと
おまけ 幹線の材料 ― 一般道・高速道路・避難路
| 材料 | 道路でいうと | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| CVTケーブル | 一般道 | 一般の動力・電灯の幹線。いちばん使う基本形 |
| バスダクト | 高速道路 | 大電流の幹線、高層の縦幹線。太いケーブルを何条も並べるより納まりがよいとき |
| 耐火ケーブル | 火事でも通れる避難路 | 消防用設備・非常電源の幹線。消防法の基準に合うものを使う |
- 一般の幹線はCVT
- 大電流・縦幹線はバスダクトも候補
- 非常電源の幹線は耐火ケーブル
よくある質問
幹線サイズは何で決まりますか?
許容電流と電圧降下の2つです。許容電流で仮に決め、補正し、こう長で電圧降下を確かめて、太いほうを採ります。
電動機を含む幹線の係数は?
電動機の電流の合計(IM)がそれ以外(IH)より大きいとき、IMが50A以下なら1.25倍、50Aを超えれば1.1倍をIMにかけます(電技解釈 第148条)。IMがIH以下なら係数はかけません。
幹線の遮断器はどこまで大きくできますか?
ふつうは幹線の許容電流以下です。電動機を含む幹線は、3IM+IHと2.5IWの小さいほう以下まで上げられます。
電圧降下はどこまで許されますか?
こう長60m以下なら、幹線・分岐回路それぞれ2%以下が基本で、構内の変圧器から供給する幹線は3%以下にできます。60mを超えると、幹線と分岐回路の合計で緩和されます。
単相3線式の電圧降下は何Vで見ますか?
電圧線と中性線の間、つまり100Vで見ます。3%なら3Vです。
分岐した細い幹線に遮断器は必ず要りますか?
細い幹線の許容電流が太い幹線の遮断器の55%以上、8m以下で35%以上、3m以下で負荷側に他の幹線を接続しない、のどれかなら省略できます。
kWからkVAへはどう換算しますか?
kVA = kW ÷ 力率 です。そのあと、電源方式の式で電流に直します。
まとめ ― 取り違えやすいところ
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| 電動機があれば必ず1.25倍 | IMがIHより大きいときだけ。50A超は1.1倍 |
| 許容電流は表の値のまま | 敷設方法・周囲温度・条数で補正する |
| 単相3線の3%は6V | 電圧線と中性線の間で3V |
| こう長は幹線の長さ | 変圧器二次側から最遠端の負荷まで |
| 3m以下は末端に負荷がなければ省略 | 負荷側に他の幹線を接続しなければ省略 |
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