この記事は、連載「引込・受電設備の設計マニュアル」の 第4回 責任分界点とPAS・UGS の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
技術図書館VCT|取付場所はキュービクル内だけではないVTが6,600Vを110Vに、CTが大電流を5Aに変換する。置き場所を先に決めないと、盤の寸法が動くこの資料をスライドで見る資料一覧を見る

キュービクルの図面に出てくる「VCT」。電気代を計るための機械で、本体は電力会社のものです。だから設計者が選ぶ機械ではありませんが、どこに置くかを先に決めておかないと、キュービクルの大きさや配管があとから動きます。この記事では、VCTの役割を「縮尺」のたとえでつかみ、だれが何を用意するのか、どこに付けるのかを、図で順に確かめます。

①VCTは電気代を計るために高圧を縮める機械、②本体は電力会社のもので、場所や配線は建物側で用意、③付ける場所は区分開閉器とCBの間です。
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

先に言葉をそろえる

言葉 ひとことで言うと
VCT 電力需給用計器用変成器。電気代を計るために、VTとCTを1つの箱に入れたもの
VT 計器用変圧器。高い電圧を、計器で扱える110Vに下げる
CT 変流器。大きな電流を、計器で扱える5Aに下げる
変成(へんせい) 電圧や電流を、比例したまま小さくすること
取引用計器 電気代の計算に使う電力量計。電力会社のもの
区分開閉器(PAS) 電力会社と建物の境目に付ける開閉器
VCTは、地域や会社によってMOF(メタリングアウトフィット)と呼ばれることもあります。

VCTの役割 ― 電気代を正しく計るための「縮尺係」

高圧で受電する建物には、6,600Vの電気が入ってきます。電流も数十〜数百Aになります。電気代を決める電力量計に、この電気をそのまま入れることはできません。計器が大きく高価になるうえ、危険だからです。

たとえるなら
VCTは、地図の「縮尺」のようなものです。
実物の町(6,600Vや50A)をそのまま紙に描くことはできないので、たとえば60分の1に縮めて地図(計器)に描きます。縮め方が決まっているので、地図上の長さに縮尺を掛ければ、実際の距離がわかります。VCTも、電圧と電流を決まった比率で縮めて、計器が読める大きさにしています。
VTが電圧を6,600Vから110Vへ、CTが電流を50Aから5Aへ縮めます。電力量計の読みに「乗率」(例:60×10=600倍)を掛けると、実際に使った電力量になります。

VCTの中には、2つの変成器が入っています。

  • VT(計器用変圧器):電圧を6,600Vから110Vに下げます(60分の1)
  • CT(変流器):電流を、契約電力に合わせた値(例:50A)から5Aに下げます(例:10分の1)

電力量計は、この110V・5Aで電力量を数えます。実際の電力量は、計器の読み×乗率で求めます。乗率はVTの比とCTの比を掛けた値で、上の例なら60×10=600倍。計器が1kWh進んだら、建物では600kWh使った、という計算です。この値をもとに電気代が請求されます。

つまりVCTの役割は、電力会社とお客さまの「取引」を正しく計ることです。電気代を公平に計るための機械なので、計量法の検定を受けたものを電力会社が取り付け、封印して、決まった時期に取り替えます。

ここまでのポイント
  • VCTは、電気代を計るために高圧の電圧・電流を縮める機械
  • VTが6,600V→110V、CTが契約に合わせた電流→5A
  • 実際の電力量=計器の読み×乗率(VT比×CT比)
  • 取引に使うので、電力会社が検定品を付けて封印する


建物側のVT・CTとは、何がちがう?

VCTは電気代を計る専用で、電力会社のもの。継電器や電圧計・電流計に使うVT・CTは、建物側でキュービクルに別に付けます。

キュービクルには、VCTのほかにもVT・CTが入っています。名前は似ていますが、役割も持ち主もちがいます。

  • VCT:電力会社のもの。電気代を計る電力量計だけにつながります
  • 建物側のVT・CT:建物(お客さま)のもの。事故を見つける継電器(OCRなど)や、盤の電圧計・電流計につながります
ひっかけ注意
VCTの二次側に、建物の計器や継電器をつながない。
VCTは取引用で、電力会社が封印しています。電圧計や継電器が要るときは、建物側で別のVT・CTを付けます。単線結線図でも、VCTと建物側のVT・CTは別の機器として描きます。

建物側のCTの選び方は変流器(CT)の選定ポイントで扱っています。VT・CTの一般的な説明は、日本配電制御システム工業会の計器用変成器(VT・CT)の話も参考になります。

ここまでのポイント
  • VCTは電力会社の取引用。建物側のVT・CTは保護・計測用
  • VCTに建物の計器や継電器はつながない

だれが何を用意する?

VCT本体と電力量計は電力会社が用意して取り付けます。建物側は、それを付けるための場所と道具立てを用意します。

用意するもの だれが ポイント
VCT本体 電力会社 契約電力に合わせて電力会社が選ぶ
電力量計 電力会社 取引用。封印される
取付スペース 建物側 キュービクルの区画、柱、架台など
一次側の配線 建物側 高圧の電線でVCTにつなぐ
計器箱・配管 建物側 電力量計を入れる箱と、VCTからの配線ルート
北陸電力の高圧受電設備規程 付録(第6章)の例。細部は電力会社の規定で確かめます。
たとえるなら
ガスや水道のメーターと同じ関係です。
メーター本体は事業者のもので、取り付けも取り替えも事業者がします。でも、メーターを付ける場所や、検針員が見に来られる通り道は、建物側で用意しておく必要があります。VCTも同じです。
ここまでのポイント
  • VCT本体と電力量計は電力会社が用意して取り付ける
  • 取付スペース・一次側の配線・計器箱と配管は建物側


どこに付ける? ― 位置と3つの取付場所

VCTは、区分開閉器(PAS)の負荷側から、受電用遮断器(CB)の電源側までの間に付けます。建物に入る電気をまるごと計るためです。

回路の中の位置は決まっています。区分開閉器の負荷側から、受電用遮断器の電源側までの間です。建物に入ってくる電気を、まるごと計るために入口に置きます。

実際に取り付ける場所は、次の3つから選びます。

キュービクル内がいちばん多い取付場所です。構内柱(引込柱)に付ければキュービクルを小さくでき、受電室や架台に置く方法もあります。
取付場所 盤の区画 気をつけること
キュービクル内 要る 図面にVCTの区画を描き、盤の寸法に見込む
構内柱(引込柱) 要らない 地域によって多い(九州管内など)。塩害地域は屋内が望ましい
受電室・架台 要らない 架台の費用と、点検・取替の足場を考える
どの場所でも、電力会社が取り替えに来られる通路とスペースが必要です。
ひっかけ注意
「VCTは電力会社のものだから、場所はあとで」は危険。
キュービクル内に付けるなら、VCTの区画ぶん盤が大きくなり、基礎や搬入経路まで変わります。構内柱に付けるなら、柱の強さや高さの検討が要ります。取付場所は計画の最初に電力会社と協議して決めます。

VCTは、検定の有効期間に合わせて電力会社が取り替えます。そのため規定では、取り替えのための搬入通路が将来も確保でき、保守点検と取替工事が安全にできる場所に置くこと、区分開閉器とVCTの間は吊り替えに支障のない間隔をとることが求められています(北陸電力の規定の例)。

ここまでのポイント
  • 位置は、区分開閉器の負荷側〜受電用遮断器の電源側
  • 取付場所は、キュービクル内・構内柱・受電室や架台の3つ
  • キュービクル内ならVCTの区画を盤の寸法に見込む
  • 将来の取替のための通路と間隔を残す

設計の進め方 ― 置き場所を最初に決める

①電力会社と取付位置を協議し、②盤や受電室の寸法に反映、③計器箱の位置と配管を決め、④取替の通路を確保します。
  1. 電力会社と取付位置を協議する:キュービクル内か、構内柱か、受電室か。地域の慣例もここで確かめます。
  2. 寸法に反映する:キュービクル内ならVCTの区画を、柱なら柱の強さと取付高さを見込みます。
  3. 計器箱の位置と配管を決める:電力量計は検針しやすい高さに置きます(北陸電力の例では、屋外は地上、屋内は床上1.8〜2.2m)。
  4. 取替の通路を確保する:将来の取替工事のために、搬入の道と作業スペースを残します。
ひとことで言うと:「VCTは電力会社の“はかり”。選ぶのではなく、置き場所を最初に決めて、場所と通路を用意する」。

VCTの先にある受電用遮断器(CB)の役割と選び方は高圧交流遮断器(CB)の使用用途と選定方法で扱っています。


よくある質問

VCTとは何ですか?

電力需給用計器用変成器のことです。電気代を計るために、高圧の電圧と電流をVT・CTで小さくして、電力会社の電力量計に送る機械です。

VCTはだれのものですか?

電力会社のものです。電力会社が契約電力に合わせて選び、取り付け、封印し、検定の期間に合わせて取り替えます。建物側は取付スペースや配線、計器箱を用意します。

VCTの二次側に、建物の電流計や継電器をつないでよいですか?

いいえ。VCTは取引用の専用品です。建物側の計器や継電器には、キュービクルに別のVT・CTを付けます。

VCTはどこに付けますか?

回路では、区分開閉器の負荷側から受電用遮断器の電源側までの間です。取付場所はキュービクル内・構内柱・受電室や架台で、電力会社と協議して決めます。

乗率とは何ですか?

電力量計の読みを実際の電力量に直すための倍率で、VTの比とCTの比を掛けた値です。6,600V/110V(60倍)と50A/5A(10倍)なら600倍です。

まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
VCTは設計者が選ぶ 電力会社が選んで取り付ける
VCTで電圧計・継電器も動かす 建物側で別のVT・CTを付ける
計器の読みがそのまま電力量 読み×乗率(VT比×CT比)
取付場所はキュービクル内だけ 構内柱・受電室や架台もある
場所はあとで決めればよい 最初に協議。盤の寸法が変わる
「VCTは電力会社のはかり。置き場所を最初に決めて、場所と通路を用意する」で取り違えを防げます。
📘 体系的に学びたい方へ
このテーマは、連載「高圧受変電設備の設計マニュアル(全14回+資料編)」で、単線結線図の読み方・書き方とあわせて基礎から解説しています。
関連する回:④ 引込部 ― 責任分界点とPAS・UGS / ⑦ 計器用変成器と計器
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。