引込設備の設計|VCTの設置基準と設置場所の検討方法について詳しく解説
キュービクルの図面に出てくる「VCT」。電気代を計るための機械で、本体は電力会社のものです。だから設計者が選ぶ機械ではありませんが、どこに置くかを先に決めておかないと、キュービクルの大きさや配管があとから動きます。この記事では、VCTの役割を「縮尺」のたとえでつかみ、だれが何を用意するのか、どこに付けるのかを、図で順に確かめます。
先に言葉をそろえる
| 言葉 | ひとことで言うと |
|---|---|
| VCT | 電力需給用計器用変成器。電気代を計るために、VTとCTを1つの箱に入れたもの |
| VT | 計器用変圧器。高い電圧を、計器で扱える110Vに下げる |
| CT | 変流器。大きな電流を、計器で扱える5Aに下げる |
| 変成(へんせい) | 電圧や電流を、比例したまま小さくすること |
| 取引用計器 | 電気代の計算に使う電力量計。電力会社のもの |
| 区分開閉器(PAS) | 電力会社と建物の境目に付ける開閉器 |
VCTの役割 ― 電気代を正しく計るための「縮尺係」
高圧で受電する建物には、6,600Vの電気が入ってきます。電流も数十〜数百Aになります。電気代を決める電力量計に、この電気をそのまま入れることはできません。計器が大きく高価になるうえ、危険だからです。
VCTの中には、2つの変成器が入っています。
- VT(計器用変圧器):電圧を6,600Vから110Vに下げます(60分の1)
- CT(変流器):電流を、契約電力に合わせた値(例:50A)から5Aに下げます(例:10分の1)
電力量計は、この110V・5Aで電力量を数えます。実際の電力量は、計器の読み×乗率で求めます。乗率はVTの比とCTの比を掛けた値で、上の例なら60×10=600倍。計器が1kWh進んだら、建物では600kWh使った、という計算です。この値をもとに電気代が請求されます。
つまりVCTの役割は、電力会社とお客さまの「取引」を正しく計ることです。電気代を公平に計るための機械なので、計量法の検定を受けたものを電力会社が取り付け、封印して、決まった時期に取り替えます。
- VCTは、電気代を計るために高圧の電圧・電流を縮める機械
- VTが6,600V→110V、CTが契約に合わせた電流→5A
- 実際の電力量=計器の読み×乗率(VT比×CT比)
- 取引に使うので、電力会社が検定品を付けて封印する
建物側のVT・CTとは、何がちがう?
キュービクルには、VCTのほかにもVT・CTが入っています。名前は似ていますが、役割も持ち主もちがいます。
- VCT:電力会社のもの。電気代を計る電力量計だけにつながります
- 建物側のVT・CT:建物(お客さま)のもの。事故を見つける継電器(OCRなど)や、盤の電圧計・電流計につながります
建物側のCTの選び方は変流器(CT)の選定ポイントで扱っています。VT・CTの一般的な説明は、日本配電制御システム工業会の計器用変成器(VT・CT)の話も参考になります。
- VCTは電力会社の取引用。建物側のVT・CTは保護・計測用
- VCTに建物の計器や継電器はつながない
だれが何を用意する?
VCT本体と電力量計は電力会社が用意して取り付けます。建物側は、それを付けるための場所と道具立てを用意します。
| 用意するもの | だれが | ポイント |
|---|---|---|
| VCT本体 | 電力会社 | 契約電力に合わせて電力会社が選ぶ |
| 電力量計 | 電力会社 | 取引用。封印される |
| 取付スペース | 建物側 | キュービクルの区画、柱、架台など |
| 一次側の配線 | 建物側 | 高圧の電線でVCTにつなぐ |
| 計器箱・配管 | 建物側 | 電力量計を入れる箱と、VCTからの配線ルート |
- VCT本体と電力量計は電力会社が用意して取り付ける
- 取付スペース・一次側の配線・計器箱と配管は建物側
どこに付ける? ― 位置と3つの取付場所
回路の中の位置は決まっています。区分開閉器の負荷側から、受電用遮断器の電源側までの間です。建物に入ってくる電気を、まるごと計るために入口に置きます。
実際に取り付ける場所は、次の3つから選びます。
| 取付場所 | 盤の区画 | 気をつけること |
|---|---|---|
| キュービクル内 | 要る | 図面にVCTの区画を描き、盤の寸法に見込む |
| 構内柱(引込柱) | 要らない | 地域によって多い(九州管内など)。塩害地域は屋内が望ましい |
| 受電室・架台 | 要らない | 架台の費用と、点検・取替の足場を考える |
VCTは、検定の有効期間に合わせて電力会社が取り替えます。そのため規定では、取り替えのための搬入通路が将来も確保でき、保守点検と取替工事が安全にできる場所に置くこと、区分開閉器とVCTの間は吊り替えに支障のない間隔をとることが求められています(北陸電力の規定の例)。
- 位置は、区分開閉器の負荷側〜受電用遮断器の電源側
- 取付場所は、キュービクル内・構内柱・受電室や架台の3つ
- キュービクル内ならVCTの区画を盤の寸法に見込む
- 将来の取替のための通路と間隔を残す
設計の進め方 ― 置き場所を最初に決める
- 電力会社と取付位置を協議する:キュービクル内か、構内柱か、受電室か。地域の慣例もここで確かめます。
- 寸法に反映する:キュービクル内ならVCTの区画を、柱なら柱の強さと取付高さを見込みます。
- 計器箱の位置と配管を決める:電力量計は検針しやすい高さに置きます(北陸電力の例では、屋外は地上、屋内は床上1.8〜2.2m)。
- 取替の通路を確保する:将来の取替工事のために、搬入の道と作業スペースを残します。
VCTの先にある受電用遮断器(CB)の役割と選び方は高圧交流遮断器(CB)の使用用途と選定方法で扱っています。
よくある質問
VCTとは何ですか?
電力需給用計器用変成器のことです。電気代を計るために、高圧の電圧と電流をVT・CTで小さくして、電力会社の電力量計に送る機械です。
VCTはだれのものですか?
電力会社のものです。電力会社が契約電力に合わせて選び、取り付け、封印し、検定の期間に合わせて取り替えます。建物側は取付スペースや配線、計器箱を用意します。
VCTの二次側に、建物の電流計や継電器をつないでよいですか?
いいえ。VCTは取引用の専用品です。建物側の計器や継電器には、キュービクルに別のVT・CTを付けます。
VCTはどこに付けますか?
回路では、区分開閉器の負荷側から受電用遮断器の電源側までの間です。取付場所はキュービクル内・構内柱・受電室や架台で、電力会社と協議して決めます。
乗率とは何ですか?
電力量計の読みを実際の電力量に直すための倍率で、VTの比とCTの比を掛けた値です。6,600V/110V(60倍)と50A/5A(10倍)なら600倍です。
まとめ ― 取り違えやすいところ
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| VCTは設計者が選ぶ | 電力会社が選んで取り付ける |
| VCTで電圧計・継電器も動かす | 建物側で別のVT・CTを付ける |
| 計器の読みがそのまま電力量 | 読み×乗率(VT比×CT比) |
| 取付場所はキュービクル内だけ | 構内柱・受電室や架台もある |
| 場所はあとで決めればよい | 最初に協議。盤の寸法が変わる |
関連する回:④ 引込部 ― 責任分界点とPAS・UGS / ⑦ 計器用変成器と計器
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