こんにちは、HARITAの設計室です。第7回は計器用変成器――VT・CT・ZCT・ZPDの4つを扱います。
単線結線図の受電部にごちゃっと並んでいる小さな丸。あれの正体がこれです。6,600Vや数百Aをそのまま計器に入れることはできないので、いったん「扱える大きさ」に落とす。それが変成器の仕事です。
VTとCTとZCT…名前が似すぎてて、毎回どれがどれだか分からなくなります。
第3回の分解ルールを使えばいい。V=Voltage(電圧)、C=Current(電流)、Z=Zero-phase(零相)。あとは「何を測るために付いてるか」で並べれば、もう混ざらないよ。
なぜ「変成器」が必要なのか ― 目的は2つ
変成器が果たす2つの役割
① 大きさを縮める…6,600V → 110V、150A → 5A。市販の計器や継電器が扱える範囲に落とす
② 高圧と切り離す(絶縁)…盤の扉を開けて計器に触れても、高圧の充電部とはつながっていない状態にする
①だけなら抵抗で分圧すればいいのですが、それでは②が成り立ちません。変成器は「測るための機器」であると同時に「人を守るための機器」でもあるのです。
4つの変成器を1枚で整理する
📐 どこに付いて、何を取り出すか
VT(計器用変圧器)
母線 ─┬─┬─
│ │
◎◎ VT×2
│ │(V結線)
110V ▼
電圧計・UVR へ
電圧を落とす。6,600V→110V。母線に並列に付く。V結線(2台)で三相電圧が測れる。
CT(変流器)
│主回路
● CT 150/5A
│ (貫通形)
▼
5A → 電流計・OCR へ
電流を落とす。150A→5A。電線をくぐらせる(直列)形。OCRの目になる。
ZCT(零相変流器)
┌───────┐
│ ⊚ 3線一括 │ ZCT
└───────┘
▼
零相電流 → GR/DGR
地絡電流だけ取り出す。3線をまとめて貫通させ、ベクトル和を見る。正常時はゼロ。
ZPD(零相電圧検出装置)
母線 ─┬─
╪ コンデンサ形
╪ 分圧器
┴
零相電圧 → DGR
零相電圧を取り出す。ZCTの電流と組んで、DGRが地絡の方向を判別できるようにする。
覚え方:電圧を見たいものは母線に並列(VT・ZPD)、電流を見たいものは電路に直列・貫通(CT・ZCT)。図面上の付き方が違うので、形で見分けられます。
| 記号 |
代表的な定格 |
つながる先 |
絶対にやってはいけないこと |
| VT |
6,600 / 110V |
電圧計・力率計・UVR・OVR |
二次側を短絡する(大電流が流れて焼損) |
| CT |
150 / 5A(比は物件次第) |
電流計・電力計・OCR |
二次側を開放する(高電圧が発生して危険) |
| ZCT |
零相一次電流 200mA |
GR・DGR |
3線のうち1本を通し忘れる(誤検出) |
| ZPD |
コンデンサ形分圧器 |
DGR(方向判別) |
DGRとの組合せを間違える(メーカー指定) |
CT二次開放が厳禁な理由
受変電で最も有名な禁止事項です。理由を理屈で押さえておきましょう。
⚡ CTの二次側を開放すると、高電圧が発生する
CTは
一次電流の大きさが先に決まっている変成器です。主回路に150A流れていれば、CTは二次側に5Aを流そうとします。
ところが二次側が開放されていると、電流を流す先がありません。すると鉄心の磁束が飽和するほど増え、
二次巻線に非常に高い電圧(条件によっては数kV)が現れます。
結果として起こること:
・感電…端子に触れれば命に関わる
・絶縁破壊…CTそのものが焼損する
・保護の喪失…OCRが電流を見られなくなる
だからCTの二次側は、計器を外すときも必ず短絡してから行います。試験用端子(短絡端子)が付いているのは、このためです。
VTは逆 ― 二次「短絡」が厳禁
VTは
電圧が先に決まっている変成器です。二次側を短絡すると大電流が流れ、VTが焼損します。
この事故が高圧側に波及しないよう、
VTの一次側には限流ヒューズ(VTヒューズ)が入っています。図面に小さなヒューズ記号が2つ描かれていたら、それです。
CTは開放厳禁、VTは短絡厳禁。「電流源のCT、電圧源のVT」と覚えると混ざりません。
CTは開けちゃダメ、VTは短絡しちゃダメ…逆に覚えそうです。
「やりたいことを邪魔すると壊れる」と考えるといいよ。CTは電流を流したい→止めると暴れる。VTは電圧を保ちたい→短絡すると暴れる。それだけ。
なぜCTは2個で足りるのか
単線結線図に「CT×2」と書かれているのを見て、「三相なのに2個?」と思ったことはありませんか。
三相3線式では、3つの電流の和がゼロになる
三相3線式(非接地)では、3線の電流のベクトル和は理論上ゼロです。
Ia + Ib + Ic = 0
つまり2相の電流が分かれば、残り1相は計算で求まります。だからCTは2個(V結線)で三相分の情報が得られるのです。VTがV結線で2台なのも同じ理屈です。
もちろん3個入れる構成もありますが、経済性から2個が標準になっています。
ちなみにZCTはこの「和がゼロ」を逆手に取った機器です。3線をまとめて貫通させると正常時は磁束が打ち消し合ってゼロ。地絡して大地へ電流が漏れると和がゼロでなくなり、その差=零相電流だけが取り出せます。
計器 ― A・V・AS・VSの読み方
変成器の二次側につながるのが計器類です。図面では小さな丸に文字が入った記号で描かれます。
受電盤に並ぶ計器
A…電流計(Ammeter)
V…電圧計(Voltmeter)
AS…電流計切換スイッチ(Ammeter change-over Switch)
VS…電圧計切換スイッチ
W…電力計、
PF計…力率計、
Hz…周波数計
なぜ切換スイッチがあるのか。各相に電流計を3個並べれば見やすいのですが、盤面のスペースと費用がかさみます。そこで計器は1個にして、ASで見る相を切り換えるのが一般的な構成です。
点検で「R相・S相・T相を順に読む」のは、このスイッチを回しているわけです。
単線結線図では、こう描かれる
計器用変成器まわりの記載要素
VT…変圧比(6600/110V)、個数(VT×2)、一次ヒューズの有無
CT…変流比(150/5A)、個数(CT×2)、負担(40VA など)、確度階級
ZCT…零相一次電流(200mA)、貫通形か分割形か
ZPD…組み合わせるDGRの形式
極性…K・L(一次)、k・l(二次)。三線結線図では向きが重要になる
「負担(VA)」は、その変成器につないでよい機器の総量です。計器を後から追加すると負担オーバーで確度が落ちるため、増設時は必ず確認してください。
新人がやりがちなミス 3選
① CTの二次を外したまま送電する
試験や計器交換のあと、短絡端子を戻し忘れるのが典型例です。作業前後で必ず指差し確認を。「開放のまま送電=高電圧発生」と体で覚えてください。
ZCTは何を貫通させるかがすべてです。ケーブルのシールド接地線をZCTの内側から戻すか外側から戻すかで、検出値が変わります。施工要領どおりに通してください。誤ると地絡を検出できない、あるいは誤動作するという致命的な結果になります。
③ 変流比を確認せずに電流計の指示を信じる
電流計の目盛はそのCTの変流比に合わせて作られています。CTだけ交換して計器をそのままにすると、表示がまるごとずれます。更新工事ではCTと計器はセットで確認してください。
まとめ
第7回のまとめ
・変成器の目的は①大きさを縮める ②高圧から絶縁するの2つ
・VT=電圧を落とす(母線に並列)、CT=電流を落とす(電路に直列)
・ZCT=零相電流、ZPD=零相電圧。この2つでDGRが地絡の方向を判別する
・CTは二次開放が厳禁(高電圧発生)、VTは二次短絡が厳禁(大電流)
・三相3線は電流のベクトル和がゼロ。だからCTは2個で足りる
・計器はASやVSで相を切り換えて読む
・図面では変圧比・変流比・個数・負担を必ず確認する
よくある質問
Q. VTとPTは違うものですか?
同じものです。Voltage Transformer と Potential Transformer の違いで、古い図面ほどPT表記が多く見られます。第3回でも触れたとおり、1枚の図面の中で表記が統一されているかを確認してください。
Q. 取引用のVCTと、盤内のVT・CTはどう違うのですか?
目的が違います。VCTは電気料金の根拠になる計量専用で、電力会社の支給・封印(第5回)。盤内のVT・CTは運転管理と保護のためのもので、需要家が選定します。確度階級もVCTのほうが厳しく作られています。
Q. ZPDがない図面がありますが、地絡は検出できるのですか?
できます。ZCTだけならGR(無方向)として動作します。ただし方向は判別できないため、構外事故でのもらい事故を防げません(第4回)。ZPDがあるかどうかは、GRかDGRかを見分ける手がかりにもなります。
Q. CTの「負担」とは何ですか?
二次側につないでよい機器の容量(VA)です。計器や継電器、そして二次配線そのものも負担になります。負担を超えると変流比の精度が落ち、計測値がずれ、保護の整定も狂います。計器を追加するときに見落としやすいポイントです。
次回予告
参考:高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/JIS C 1731 計器用変成器/JIS C 4601 高圧受電用地絡継電装置/電気設備の技術基準の解釈
次に読むならこれ【コンセント設備の設計マニュアル⑥・最終回】図面化と拾い・積算 ― 「あとで拾える図面」で締めくくる設計マニュアル
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