このシリーズでは、自動火災報知設備(自火報)の信号で動く設備を1つずつ見てきました。非常放送、排煙、防火戸、空調、エレベーター、電気錠、火災通報、発電機、消火ポンプ。これらが本当に連動して動くかを確かめるのが連動試験、点検のあいだ一時的に切り離すのが連動停止です。シリーズの最後となるこの記事では、連動表の作り方、竣工前の総合連動試験、点検のときの連動停止と戻し忘れの防ぎ方を、図で1つずつ丁寧に解説します。

結論

連動は、連動表で決め、総合連動試験で確かめ、点検では止めて、試して、必ず戻す。戻し忘れは、本当の火災で設備が動かないことに直結します。

  • 連動表に、信号・動く設備・範囲・担当を1行ずつ書く
  • 竣工前に、関係する業者がそろって総合連動試験を行う
  • 点検の前に連動回路を遮断し、終了後に復元する(自火報の点検要領)
  • 受信機のスイッチ注意灯の消灯と、戻した記録で戻し忘れを防ぐ
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
連動表で決め、連動試験で確かめ、点検のときは連動を停止し、終わったら復旧するという流れと、自火報の信号で動く8つの設備を示した全体像
「決める・試す・止める・戻す」のサイクルで、連動を守ります。

連動表 ― すべての連動の「楽譜」

3階の感知器が作動したときに、非常放送・排煙設備・防火戸・空調とSD・エレベーター・電気錠・発電機・移報がどう動き、どの範囲で、どの業者が担当するかを一覧にした連動表の例
連動表の例。1行ごとに「何が、どこで、どう動くか」を書きます。

連動表(インターロック表)は、たとえるならオーケストラの楽譜です。指揮者(自火報の火災の信号)が合図を出したとき、どのパートが、どこで、何を演奏するかが書いてあります。楽譜がなければ、それぞれの演奏者はうまくそろいません。

書くこと 内容
信号 どの信号で動かすか 感知器の第一報、火災の確認後、発信機、流水検知装置の作動など
動く設備 連動する設備の名前 非常放送、排煙、防火戸、空調、エレベーター、電気錠など
動き 何をするか 放送、開放、閉鎖、停止、解錠、管制運転など
範囲 どこで動くか 出火階と直上階、防煙区画、系統、全館など
担当 誰の工事範囲か 電気、機械、建築、昇降機、セキュリティ、警備会社など
一般的な連動表の項目の例

ポイントは、担当の欄です。連動の多くは、電気と機械、建築とセキュリティなど、業者の境目にあります。「相手がやるだろう」をなくすために、1行ずつ担当を決めておきます。

📘 このシリーズの記事

全体のまとめは「建築消防|自動火災報知設備と他設備の連動|非常放送・排煙・防火戸・空調・エレベーター・非常用発電機の発停」にあります。

ここまでのポイント
  • 連動表は、すべての連動の「楽譜」
  • 信号・動く設備・動き・範囲・担当を1行ずつ書く
  • 業者の境目は、担当の欄で抜けを防ぐ


総合連動試験 ― 全部つないで、通しで試す

3階の感知器を作動させると、非常放送・排煙設備・防火戸・空調・エレベーター・電気錠・火災通報と移報・発電機が順に動き、1つずつ確認の印が付いていく様子を示した動く図解
動く図解:1つの感知器で、連動表のすべての行が動くかを確かめます。

竣工前の総合連動試験は、たとえるなら本番前の通しリハーサルです。それぞれの設備が単体で動いても、つないだときに動くとは限りません。信号の電圧が合っていない、配線が1本抜けている、設定の範囲が違う、といった問題は、全部をつないで初めて見つかります。

  1. 単体試験:自火報、放送、排煙、防火戸など、それぞれの設備が単独で正しく動くか
  2. 連動試験:自火報の信号で、相手の設備が動くかを設備ごとに確かめる
  3. 総合連動試験:感知器を作動させて、連動表のすべての行が同時に正しく動くか。停電時の動きもあわせて確かめる
  4. 消防検査:消防の立ち会いのもとで、設備と連動を確認してもらう
ペン太ペン太
総合連動試験って、電気の業者だけでやればいいんじゃないですか?
ハリタハリタ
それだと、たとえば空調が止まったかどうかは、機械の業者に見てもらわないと判断できません。エレベーターは昇降機の業者、電気錠はセキュリティの業者。連動表の担当欄に書いた業者が全員そろって立ち会うのが基本です。
ここまでのポイント
  • 単体 → 連動 → 総合連動 → 消防検査の順に進める
  • 総合連動試験は、全部つないだ「通しリハーサル」
  • 連動表の担当欄の業者が全員そろって立ち会う

点検のときの連動停止 ― 止めて、試して、戻す

受信機で放送・防排煙・空調とエレベーター・移報の連動スイッチを停止にするとスイッチ注意灯が点滅し、感知器の試験を行ったあと連動を戻すと注意灯が消える流れを示した動く図解
動く図解:連動を止めると注意灯が点滅し、戻すと消えます。

定期点検では、感知器を1つずつ作動させて試します。そのたびに放送が流れ、防火戸が閉まり、エレベーターが止まっては、建物を使う人に大きな迷惑がかかります。そこで、自火報の点検要領では、点検開始前にほかの設備(消火設備、放送設備、防排煙設備など)との連動回路を遮断し、点検終了後にこれらを復元することとしています。

連動停止は、工事のときにブレーカーに下げる「作業中・投入禁止」の札に似ています。札を下げて安全に作業し、終わったら必ず札を外して元に戻す。この「外す」を忘れると、次に本当に必要なときに動きません。

ここまでのポイント
  • 点検の前に、ほかの設備との連動回路を遮断する
  • 感知器を試験しても、放送や防火戸が動かない状態にする
  • 点検が終わったら、すべての連動を復元する


戻し忘れを防ぐ ― 注意灯・チェックリスト・記録

点検のあとに確認する10項目として、受信機のスイッチ、非常放送、排煙設備、防火戸・シャッター、空調とSD、エレベーター、電気錠とゲート、火災通報と移報、消火ポンプ、記録を並べたチェックリスト
点検が終わったら、この10項目を1つずつ確かめます。

戻し忘れを防ぐしかけは、3つあります。

しかけ 内容
スイッチ注意灯 受信機には、定位置に自動で戻らないスイッチが定位置にないとき、注意灯が点滅して知らせるしくみがある。点検の最後に消灯を確認する
チェックリスト 連動表の行ごとに、戻したかを1つずつ確かめる。受信機の外で止めたもの(ポンプの起動回路、制御弁、火災通報装置の連動停止スイッチなど)も忘れずに
記録 止めた時刻、戻した時刻、戻した人を書き残す。引き継ぎのときの確認にも使う
受信機の規格、自火報の点検要領などをもとに作成

⚠️ 受信機の外で止めたものに注意

スイッチ注意灯が見張れるのは、受信機のスイッチだけです。火災通報装置の連動停止スイッチ、消火ポンプの起動回路、スプリンクラーの制御弁、警備会社への移報の停止などは、それぞれの場所で戻す必要があります。点検の資格や範囲については「建築消防|消防設備士と消防設備点検資格者|自火報の電源工事は誰がやるのか」で整理しています。

ここまでのポイント
  • 受信機のスイッチ注意灯の消灯を確認
  • 受信機の外で止めたものは、チェックリストで1つずつ
  • 止めた・戻した時刻と人を記録に残す

事前の連絡 ― 点検の前に誰に知らせるか

連動停止をしていても、点検には建物じゅうの人と設備がかかわります。点検の前に、次の相手に知らせておきます。

相手 知らせること 理由
建物の利用者・テナント 点検の日時、ベルや放送が鳴ることがある 本当の火災と間違えて混乱しないように
警備会社 点検の日時、移報を止めること 誤って出動しないように
消防本部 火災通報装置の試験を行う場合の日時と方法 119番の試験通報を受けてもらうため
エレベーターの保守会社 管制運転の試験の有無 復帰の操作に立ち会ってもらうため
建物の管理者 空調・電気錠・停電試験などの影響 業務や防犯への影響を調整するため
一般的な点検の準備の例
ここまでのポイント
  • 利用者・警備会社・消防本部・昇降機の保守会社・管理者に知らせる
  • 火災通報装置の試験は、消防本部と事前に調整
  • 停電試験や電気錠の解錠は、管理者と影響を調整


点検と報告の周期 ― 6か月・1年・報告

自火報の機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごと、点検結果の報告は特定防火対象物で1年ごと、それ以外で3年ごとであることを示した図
点検と報告の周期。総合点検では、予備電源での総合作動も確かめます。
区分 周期 主な内容
機器点検 6か月ごと 外観と機能の確認、感知器の作動試験、表示と音響の確認など
総合点検 1年ごと 同時作動(任意の5回線)、地区音響装置の音圧、常用電源を切って予備電源で動かす総合作動など
報告 特定防火対象物:1年ごと
それ以外:3年ごと
点検結果を消防長または消防署長へ報告する(消防法第17条の3の3)
消防用設備等の点検基準・点検要領をもとに作成

点検のたびに「止める → 試す → 戻す」をくり返し、連動表と照らし合わせて記録を残す。これが、自火報とほかの設備の連動を、竣工の日から何十年も守り続ける方法です。

ここまでのポイント
  • 機器点検は6か月、総合点検は1年ごと
  • 報告は特定防火対象物で1年、それ以外で3年ごと
  • 点検のたびに「止める → 試す → 戻す」を記録とともに

よくある質問

連動表(インターロック表)とは何ですか?

自火報のどの信号で、どの設備が、どの範囲で、どう動くかを一覧にした表です。非常放送・排煙・防火戸・空調・エレベーター・電気錠・移報などを1つの表にまとめ、担当する業者も書いておきます。設計・施工・試験・点検のすべてで使う、連動の「楽譜」のようなものです。

総合連動試験では何をしますか?

実際に感知器や発信機を作動させて、連動表どおりにすべての設備が動くかを確かめます。電気・機械・建築・昇降機・セキュリティなど、関係する業者がそろって立ち会い、連動表の行を1つずつ確認して記録します。停電時の動きもあわせて確かめます。

点検のとき、連動を止めるのはなぜですか?

感知器を作動させるたびに、放送が流れたり、防火戸が閉まったり、排煙口が開いたりすると、建物の利用者に迷惑がかかり、設備を傷めることもあるからです。自火報の点検要領でも、点検開始前にほかの設備との連動回路を遮断し、点検終了後に復元することとしています。

連動を止めたまま戻し忘れるとどうなりますか?

本当の火災のときに、放送が流れない、排煙口が開かない、119番されないといった重大な事態になります。受信機には、定位置にないスイッチがあるとスイッチ注意灯が点滅して知らせるしくみがあります。点検の最後に注意灯の消灯を確認し、戻した項目を記録に残します。

自火報の点検と報告の周期は?

機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごとに行います。点検結果の報告は、特定防火対象物では1年ごと、それ以外では3年ごとに、消防長または消防署長へ行います(消防法第17条の3の3)。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。