こんにちは、HARITAの設計室です。連載「幹線設備の設計マニュアル」第4回は電圧降下の検証第3回で仮決めしたサイズが、そのこう長に耐えられるかを確かめます。

この検証でつまずく人の多くは、計算式ではなくこう長の取り方で間違えています。今回の合言葉は「こう長は図面で決まる。計算の前にルートを見る」

今回の全体像 ― なぜ電圧が下がるのか

電線にも抵抗がある、だから下がる分電盤電線の抵抗末端の負荷こう長 L100V97V流れる途中で、電線自身が電圧を食べていく電流 I大きいほど降下が大きいこう長 L長いほど降下が大きい断面積 A細いほど降下が大きい降下は「電流 × こう長 ÷ 断面積」でおおむね決まるHARITAの設計室

電線にも抵抗があります。電流が流れれば、その抵抗のぶんだけ電圧が消費されます。だから盤の出口では100Vでも、長い距離の先では97Vになる。これが電圧降下です。

効いてくるのは3つ。電流が大きいほど、こう長が長いほど、断面積が細いほど降下は大きくなります。式の形はいくつかありますが、比例関係はこの3つで押さえておけば実務では困りません。

電圧が下がると何が困るか。機器は定格電圧の前後で動くように作られていて、下がりすぎると本来の性能が出ません。照明編の第5回でも触れたとおり、LEDではちらつきや不点灯という形で現れます。動力機器では始動トルクが落ち、モータが起動しないこともあります。

① 許容範囲 ― こう長で段階的に変わる

では、どこまでの降下なら許されるのか。ここで大事なのが、許容値はひとつの数字ではないということです。こう長の区分によって段階的に変わります。

許容範囲はこう長で段階的に変わる〜60m厳しい短いほど基準は厳しい〜120mやや緩む中規模の建物はここが多い〜200mさらに緩む大規模・棟別の供給200m超いちばん緩い敷地の広い施設具体の%は供給形態で異なる。必ず内線規程の該当条項で確認するHARITAの設計室

考え方はシンプルで、長い建物ではどうしても降下するので、そのぶん基準が緩められているのです。逆に短いこう長では厳しい値が求められます。

具体的な%は、供給形態(電気事業者から低圧で受けるのか、自家用で受変電を持つのか)によっても変わります。ここは数字を暗記するところではなく、案件ごとに内線規程の該当条項を開くところです。区分と数値、判定の考え方は 電圧降下の許容範囲は何%?幹線サイズの選定方法と計算例 に計算例つきでまとめてあります。

② こう長は「図面の直線距離」ではない

計算そのものより間違えやすいのがここです。こう長とはケーブルが実際に通る長さであって、平面図の上で盤と盤を結んだ直線の長さではありません。

こう長は「図面の直線距離」ではない3F2F1F受電EPS3F盤図面上の直線実際に通る経路立ち上がりは効く階を上がるぶんも、こう長迂回と余長も足す梁・ダクトを避けた分は実長EPSの位置がすべて第1回の系統計画に戻る話計算の前にルートを見る。こう長は図面で決まっているHARITAの設計室

受電盤からEPSまで水平に走り、EPSを立ち上がり、その階で水平に走って盤に入る。この立ち上がりぶんも、当然こう長です。さらに梁やダクトを避けた迂回、盤内の余長も積み上がります。

つまり、電圧降下は第1回の系統計画で半分決まっているということです。EPSの位置、盤の位置、ラックのルート。計算して足りなかったときに最初に疑うべきは、太さではなくルートを短くできないかです。ラックの経路と幅は ケーブルラックのサイズ選定方法 もあわせてご覧ください。

③ 足りないときの3つの打ち手

ルートをどうしても短くできない場合、取れる手は3つです。

足りないときの3つの打ち手1電線を太くする断面積Aを大きくする素直だが、長いと材料費が跳ねる2系統を分ける1本あたりの電流Iを減らす盤が増えるがルートも短くできる3電圧を上げる200V・400V配電にする同じ電力なら電流が減る。機器側の確認が要るまず疑うのは「太さ」ではなく「ルート」。短くできないか先に考えるHARITAの設計室

太くするのがいちばん素直ですが、こう長が長いほど材料費がそのまま効きます。しかも第3回で書いたとおり、太くすると曲げ半径・端子・ラック幅・管サイズまで連鎖します。

系統を分けると1本あたりの電流が減り、同時にルートも短くできることが多いので、実は効きが良い手です。ただし盤が増えます。電圧を上げるのは、同じ電力なら電流が反比例して減るので効果が大きい方法です。ただし機器側が対応しているかの確認が要ります。

④ 検証の進め方

検証はこの順番で進める① 仮サイズで計算する第3回で決めたサイズを入れる② 許容範囲と比べるこう長の区分に対応する値で判定③ NGならルートを疑う短くできないか。EPSは動かせないか④ それでもNGなら太くする/分ける/電圧を上げるコストと納まりで選ぶ⑤ サイズを確定する許容電流と電圧降下、両方を満たして確定許容電流と電圧降下、両方を満たしてはじめて「確定」HARITAの設計室

手計算でも出せますが、条件を変えながら何度も試すなら、セコサポの 電圧降下計算ツール が早いです。「1サイズ細くしたらどうなるか」「回路を2つに分けたらどうか」を数十秒で試せると、判断の質そのものが上がります

ここまで終えて、ようやくケーブルサイズが確定します。許容電流と電圧降下、両方を満たしてはじめて「決まった」と言えます。

まとめ

  • 電圧降下は「電流 × こう長 ÷ 断面積」でおおむね決まる
  • 許容範囲はこう長の区分で段階的に変わる。%は案件ごとに原典で確認する
  • こう長は実際に通る長さ。立ち上がり・迂回・余長まで含める
  • 足りないときは、まずルートを短くできないかを疑う
  • 次の手は 太くする/系統を分ける/電圧を上げる の3つ
  • 許容電流と電圧降下の両方を満たして、サイズが確定する

よくある質問

Q1. こう長は、どこからどこまでを取るのですか?
A. 判定に使う区間は基準の側で決まっていて、供給の起点から最も遠い負荷までを見ます。設計者が勝手に短い区間で切って良いものではありません。区間の取り方に迷ったら、原典の定義を読み直してください。ここを間違えると、計算自体は正しくても判定が間違います。

Q2. 実際の建物では、こう長にどのくらい余裕を見ますか?
A. 施工段階でルートが変わることは普通にあります。梁を避け、他設備をかわし、結果として図面より長くなる。設計時点で拾った長さぴったりで成立させると、現場で足りなくなります。ルートが確定していない段階ほど、長めに見ておくのが安全です。

Q3. 電圧降下がわずかに超えたときは、どうしますか?
A. 「わずかだから」で通してはいけません。ただし、いきなり太くする前に確認したいことがあります。需要率の見込みは妥当か、こう長は過大に拾っていないか、区間の取り方は正しいか。前提を見直すと収まることは珍しくありません。それでも超えるなら、3つの打ち手から選びます。

次回予告

第5回は「保護と幹線分岐」。決まったケーブルを、どのブレーカーで守るか。そして幹線から分岐するときのルール ― 分岐点からの距離によって保護装置を省略できる条件まで扱います。連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

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