技術図書館リアクトルの設置基準を7枚のスライドで読む義務化の経緯とL=〇%の決め方、許容電流種別・定格電圧と容量の式まで確認できます。スライドを見る資料一覧を見る

高圧受電設備の図面でコンデンサの上に描かれている四角、あれが直列リアクトルです。付けるかどうかは、いまはもう選べません。規程の改定で勧告から義務的事項に引き上げられているためです。したがって設計で決めるのは「付けるか」ではなく、L値・許容電流種別・定格電圧・定格容量の4つになります。

結論

直列リアクトルは高調波の拡大を防ぐためと、投入時の突入電流を抑えるための機器です。どちらもコンデンサ単体では成立しません。

  • コンデンサに直列リアクトルを施設することは、規程上義務的事項
  • リアクトルがないと、電源側のインダクタンスとコンデンサが並列共振して高調波が拡大する
  • L値は共振次数 n = √(100 ÷ L)で決まる。6%なら約4.08次、13%なら約2.77次
  • 第5調波対策なら6%、第3調波が問題になるなら13%
  • 許容電流種別はⅠが120%・第5調波35%Ⅱが130%・55%
  • 高圧配電系統に直接つながる設備は種別Ⅱ特別高圧受電は種別Ⅰ
  • 定格電圧=(回路電圧÷√3)× L ÷(100−L)。6600V・6%で243V
  • 定格容量=コンデンサ容量 × L ÷(100−L)。100kvarで6.38kvar
  • リアクトルの分だけコンデンサの定格電圧も上がる(6%で7020V、13%で7590V)
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
①は判断の余地がありません。迷うのは②と③だけです。

まず結論 ― 決めるのは「付けるか」ではなく「どの仕様か」

直列リアクトルの検討でつまずく理由は、設置の可否と仕様の選定が、ひとつの話として語られていることにあります。この2つは性質がまったく違います。

設置の可否には判断の余地がありません。規程の改定で、コンデンサ回路に直列リアクトルを施設することは勧告から義務的事項に引き上げられています。一方で仕様のほうは、系統に流れている高調波の量によって変わります。ここだけが設計の判断です。

この2つのために付けます。どちらもコンデンサ単体では解決しません。
決めること 判断の余地 決め手
付けるかどうか ない 規程上の義務的事項
L値(6%・13%) ある どの次数の高調波が問題か
許容電流種別(Ⅰ・Ⅱ) ある 受電の系統(高圧か特別高圧か)
定格電圧 ない 回路電圧とL値から計算する
定格容量 ない コンデンサ容量とL値から計算する
迷うのは真ん中の2つだけです。上下は決まった手順で出ます。

なお、この記事は仕様をどう決めるかに絞ります。6%と13%という数字そのものの成り立ちは6%・13%の意味って何?で、受変電設備全体のなかでの位置づけは高圧受変電設備の設計マニュアル⑪ 力率改善設備で扱っています。

ここまでのポイント
  • 直列リアクトルの施設は規程上の義務的事項。付けるかどうかは選べない
  • 設計で決めるのはL値・許容電流種別・定格電圧・定格容量の4つ
  • 判断が要るのはL値と許容電流種別の2つだけ
  • 定格電圧と定格容量は、回路電圧・コンデンサ容量とL値から計算で出る

なぜ要るのか ― コンデンサだけだと高調波が拡大する

進相コンデンサは力率を改善する機器です。ところがコンデンサを回路に入れると、高調波に対しては別の顔を見せます。コンデンサのリアクタンスは周波数に反比例して小さくなるため、高調波にとっては通りやすい道になります。

問題はそこから先です。電源側(変圧器や配電線)のインダクタンスとコンデンサが並列共振の回路を作ってしまうため、共振点に近い次数の高調波が拡大して電源側へ流れ出します。負荷が出しただけの高調波が、設備を通ることで増えてしまう状態です。

リアクトルは高調波を消しません。共振で拡大するのを止める装置です。

⚠ 「うちは高調波を出す負荷がないから不要」は成り立たない

拡大するのは自分の設備が出した高調波だけではありません。配電系統には他の需要家が出した高調波も流れています。コンデンサだけを置くと、そちらを引き込んで拡大させる側に回ることがあります。

高調波ひずみが大きいときにコンデンサ設備を投入すると、リアクトルのリアクタンス低下によって高調波引込現象が起きることがあり、設備の異常過熱や異常音、破損につながると報告されています。

ペン太ペン太
高調波を出す機械がなければ、リアクトルは要らないんじゃないですか。
ハリタハリタ
高調波は系統の側にもあります。コンデンサだけ置くと、それを引き込む側になります。

出典:一般社団法人 日本電機工業会「知っておきたい 高圧進相コンデンサ設備の正しい取扱い」。

ここまでのポイント
  • コンデンサのリアクタンスは周波数に反比例するので、高調波には通りやすい
  • 電源側のインダクタンスとコンデンサが並列共振の回路を作る
  • 共振点付近の高調波は拡大して電源側へ流れ出す
  • リアクトルは高調波を消すのではなく、拡大を止める
  • 自分の設備が高調波を出していなくても、系統側の高調波を引き込むことがある


設置基準 ― 勧告から義務的事項へ

直列リアクトルは、以前は「付けたほうがよい」という位置づけでした。既設のキュービクルを開けたときにリアクトルが入っていないことがあるのは、そのためです。現在は扱いが変わっています。

規程での位置づけ

JIS C 4902:2010(高圧及び特別高圧進相コンデンサ並びに附属機器)
コンデンサには直列リアクトルを取り付けて使用することを原則としています。

高圧受電設備規程・内線規程
コンデンサ回路への直列リアクトルの施設は、内線規程(JEAC8001-2016)と高圧受電設備規程(JEAC8011-2014)の改定で、勧告から義務的事項に引き上げられました。リアクタンスは原則としてコンデンサリアクタンスの6%又は13%とされています。

よくある質問 答え
既設で付いていないものは違反か さかのぼって適用されるものではない。ただし更新時には施設する
小容量のコンデンサでも必要か 容量による除外の規定はない。原則として施設する
低圧の進相コンデンサはどうか この規定は高圧・特別高圧の話。低圧は別の考え方になる
高調波が少ない系統なら省略できるか 突入電流の抑制という目的が残るため、省略の理由にならない
「義務的事項」は規程上の位置づけです。法令の罰則とは別のものとして読みます。

実務では更新のタイミングが分かれ目になります。コンデンサを新しくするときにリアクトルが付いていなければ、リアクトルを追加するか、リアクトル付きの設備に入れ替えるかを検討することになります。このとき開閉装置の選定も一緒に見直しが必要です(コンデンサの開閉器仕様と容量の選定方法)。

出典:JIS C 4902-1・JIS C 4902-2:2010、内線規程(JEAC8001-2016)、高圧受電設備規程(JEAC8011-2014)。

ここまでのポイント
  • JIS C 4902では、コンデンサに直列リアクトルを取り付けることを原則としている
  • 内線規程2016年版・高圧受電設備規程2014年版の改定で、勧告から義務的事項になった
  • リアクタンスは原則として6%又は13%
  • 既設でも、更新するときには施設する
  • 容量が小さいことは省略の理由にならない


L値の決め方 ― 6%が標準、13%はどんなとき

L値は感覚で決める数字ではありません。どの次数の高調波に対して回路を誘導性にしたいかで決まります。

共振する次数は式で出る

コンデンサのリアクタンスXcとリアクトルのリアクタンスXlが等しくなる次数が共振点です。Xl=Xc×L/100 を代入すると、共振次数nは次のようになります。

n = √(100 ÷ L)

L=6%なら n≒4.08、L=13%なら n≒2.77 です。この次数より上では回路が誘導性になり、共振で拡大しなくなります。

対象の次数より共振次数が下にあることが条件です。だから5次なら6%、3次なら13%になります。
特に指定がなければ6%です。13%は第3調波が問題になる系統だけです。

逆に言えば、第5調波に対して誘導性にするにはL>4%、第3調波ならL>11.1%が必要です。4%や11.1%ちょうどでは共振点そのものに乗ってしまうため、余裕を見た標準値として6%と13%が用意されています。

L値 共振次数 誘導性になる次数 選ぶ場面
6 % 約4.08次 5次以上 標準。特に指定がなければこちら
13 % 約2.77次 3次以上 第3調波が問題になる系統
4 % 5.00次 第5調波と共振するため使えない
13%はコンデンサの端子電圧がより上がるため、コンデンサ側の定格も変わります。

💡 13%を選ぶのはどんなときか

第3調波は単相負荷や三相4線式中性線に集まりやすい性質があります。一般の三相3線式の高圧受電では、第3調波は変圧器のΔ結線で循環するため系統へ出にくく、問題になるのは第5調波が中心です。だから標準は6%になります。

13%を検討するのは、系統の測定で第3調波の含有率が高いことがわかっている場合や、電力会社・需要家側の設備条件から指定がある場合です。「念のため13%」は選び方として成立しません。端子電圧も定格容量も上がり、費用も設置スペースも増えるためです。

ペン太ペン太
迷ったら大きいほうの13%にしておけば安全ですか。
ハリタハリタ
いいえ。13%は第3調波向けです。根拠がないのに選ぶと、費用も寸法も無駄に増えます。

出典:日本電気技術者協会「進相コンデンサ回路に直列リアクトルを設置する目的」ほか。

ここまでのポイント
  • 共振次数は n = √(100 ÷ L) で決まる
  • 6%なら約4.08次、13%なら約2.77次
  • 第5調波に対して誘導性にするにはL>4%、第3調波ならL>11.1%
  • 余裕を見た標準値が6%と13%
  • 一般の高圧受電は第5調波が中心なので6%が標準
  • 13%は第3調波の含有率が高いことがわかっている場合に選ぶ


許容電流種別ⅠとⅡ ― どこまで高調波に耐えるか

リアクトルには高調波を含んだ状態でどこまで流せるかという区分があります。これが許容電流種別です。L値とは別の軸なので、6%でも13%でもⅠとⅡの両方があります。

コンデンサよりリアクトルのほうが先に限界に達します。
種別 最大許容電流 第5調波の含有率 主な適用
定格電流の120 % 35 %以下 主として特別高圧受電設備
定格電流の130 % 55 %以下 主として高圧配電系統に直接つながる設備
値は基本波電流に対する比率です。高圧受電なら原則として種別Ⅱを選びます。

高圧配電系統に直接つながる設備のほうが厳しい条件を要求されるのは、高圧配電系統のほうが高調波の影響を受けやすいためです。特別高圧で受電する設備は、変圧器を何段か介するぶん高調波の流入が抑えられます。

⚠ 先に限界が来るのはリアクトル側

コンデンサ自身も最大許容電流が定格電流の130%と定められていますが、第5調波だけで考えると基本波電流に対して83%程度まで許容できる計算になります。一方でリアクトルは35%(種別Ⅰ)または55%(種別Ⅱ)までです。

つまり設備として持つかどうかは、リアクトル側で決まります。コンデンサの仕様だけを見て判断すると、リアクトルの限界を見落とします。

許容値を超えると、異常過熱や異常音が生じ、最終的には機器の故障につながります。高調波の実測値がある場合は、設計の段階で種別の妥当性を確認しておくのが確実です。

出典:JIS C 4902-2:2010、メーカーカタログ(高圧進相コンデンサ用直列リアクトル)。

ここまでのポイント
  • 許容電流種別は、高調波を含んだ状態でどこまで流せるかの区分
  • 種別Ⅰは定格電流の120%、第5調波の含有率35%以下
  • 種別Ⅱは定格電流の130%、第5調波の含有率55%以下
  • 高圧配電系統に直接つながる設備は種別Ⅱ、特別高圧受電は種別Ⅰ
  • コンデンサより先にリアクトルが限界に達する


定格電圧と定格容量 ― コンデンサ側の電圧も上がる

ここからは計算です。リアクトルを入れるとリアクトルの分だけ電圧が分担され、その反動でコンデンサの端子電圧が上がります。この2つをセットで出します。

6600V回路なのにコンデンサが7020V。誤記ではありません。

直列リアクトルの定格電圧

定格電圧 =(回路電圧 ÷ √3)× L ÷(100 − L)

6600V回路・L=6%なら
(6600 ÷ √3)× 6 ÷ 94 = 3810.5 × 0.0638 ≒ 243 [V]

相電圧に対する値です。三相3線式なので、線間電圧を√3で割ってから計算します。

直列リアクトルの定格容量

定格容量 = コンデンサ定格容量 × L ÷(100 − L)

コンデンサ100kvar・L=6%なら
100 × 6 ÷ 94 ≒ 6.38 [kvar]

「6%」という呼び方に対して6.38kvarになるのは、分母が100ではなく(100−L)だからです。13%なら14.9kvarになります。

リアクトルの分だけ端子電圧が上がるので、コンデンサの定格も上がります。

コンデンサ側の定格電圧は、回路電圧 ÷(1 − L/100)で決まります。6600V回路なら6%で7020V、13%で7590Vです。これはJIS品として標準化されている値なので、L値とセットで発注することになります。リアクトルだけ13%に変えてコンデンサをそのままにすると、コンデンサが過電圧になります。

回路電圧 L リアクトル定格電圧 コンデンサ定格電圧
6600 V 6 % 243 V 7020 V
6600 V 13 % 570 V 7590 V
3300 V 6 % 122 V 3510 V
3300 V 13 % 285 V 3790 V
6600V・6%の243V、3300V・6%の122Vはカタログの標準値です。13%の値は同じ式から出しています。

コンデンサ容量そのものの決め方や換算は資料|進相コンデンサの定格容量の求め方にまとめています。また、コンデンサ回路には放電装置も必要です(放電コイルと放電抵抗の違いと選定方法)。

出典:東芝産業機器システム・ニチコン・三菱電機の各カタログ、JEMA資料。

ここまでのポイント
  • 定格電圧 =(回路電圧÷√3)× L ÷(100−L)。6600V・6%で243V
  • 定格容量 = コンデンサ容量 × L ÷(100−L)。100kvarで6.38kvar
  • 分母が(100−L)なので、6%でも6.38kvarになる
  • コンデンサの定格電圧は 回路電圧 ÷(1−L/100)。6600Vなら7020V・7590V
  • L値を変えるときは、コンデンサ側の定格電圧も一緒に変える

もうひとつの役目 ― 投入時の突入電流

直列リアクトルの目的は高調波対策だけではありません。コンデンサを投入した瞬間の突入電流を抑えるのも、もとからの目的です。

コンデンサは電圧が急に加わると、充電のために短時間だけ大きな電流を引き込みます。この電流を制限するものが回路にないと、開閉装置の接点が消耗し、近くの機器が誤動作する原因になります。

抑えるのは副産物ではなく、もとからの目的のひとつです。

直列リアクトルを入れると、突入電流はコンデンサ定格電流の5倍程度まで抑えられるとされています。共振次数 n≒4.08 が、そのまま抑制の目安になっていると考えると理解しやすい数字です。

💡 開閉装置の選定と合わせて考える

突入電流が抑えられることを前提に、コンデンサ回路の開閉装置が選ばれています。そのためリアクトルを省略すると、開閉装置の条件も変わります

開閉装置そのものの選び方はコンデンサの開閉器仕様と容量の選定方法、遮断器を使う場合の考え方は高圧交流遮断器CBの使用用途と選定方法をご覧ください。

出典:日本電気技術者協会「進相コンデンサ回路に直列リアクトルを設置する目的」。

ここまでのポイント
  • コンデンサは投入した瞬間に、充電のための大きな電流を引き込む
  • 抑えるものがないと開閉装置の消耗や近くの機器の誤動作につながる
  • 直列リアクトルで定格電流の5倍程度まで抑えられる
  • 開閉装置は突入電流が抑えられている前提で選ばれている

直列リアクトルと分路リアクトルは別物

「リアクトル」という言葉は、受変電設備では2つの機器を指します。直列リアクトル(SR)と分路リアクトル(ShR)です。つなぎ方も目的も違うので、図面を読むときに取り違えないようにします。

高圧受電設備の図面で「リアクトル」とあれば、ほぼ直列リアクトルです。
直列リアクトル SR 分路リアクトル ShR
目的 高調波の拡大防止と突入電流の抑制 軽負荷時の進み力率と電圧上昇の抑制
つなぎ方 コンデンサと直列 系統に並列
容量の表し方 コンデンサ容量に対する%(6・13) kvar で表す
主な設置場所 高圧受電設備のコンデンサ回路 特別高圧や長距離ケーブルの系統
単線結線図 コンデンサの上に直列に描かれる 母線から分岐して単独で描かれる
一般的な高圧受電のキュービクルに分路リアクトルが入ることはほとんどありません。
ペン太ペン太
分路リアクトルは、力率を悪くする機器ということですか。
ハリタハリタ
進みすぎた力率を戻す機器です。夜間や休日にケーブルの充電電流で進み力率になる系統で使います。
ここまでのポイント
  • 直列リアクトルはコンデンサと直列、分路リアクトルは系統に並列
  • 直列リアクトルは高調波の拡大防止と突入電流の抑制
  • 分路リアクトルは軽負荷時の進み力率と電圧上昇の抑制
  • 容量の表し方も違う(%とkvar)
  • 高圧受電のキュービクルで「リアクトル」といえば、ほぼ直列リアクトル

選定例と、図面に残すこと

いちばん多い形で、最初から最後まで通してみます。6.6kV受電、コンデンサ100kvar、高調波が特に多いという情報はない、という条件です。

②と③以外は計算と組み合わせです。
手順 判断 結果
① 付けるか 規程上の義務的事項 付ける
② L値 第3調波が問題という情報がない 6 %
③ 許容電流種別 高圧配電系統に直接つながる 種別Ⅱ(130 %)
④ 定格電圧 (6600÷√3)× 6 ÷ 94 243 V
⑤ 定格容量 100 × 6 ÷ 94 6.38 kvar
⑥ コンデンサ 6%用の定格電圧に合わせる 7020 V・100 kvar
⑦ 開閉装置 コンデンサ回路用として選定 別途検討
⑧ 放電装置 コンデンサ側に必要 別途検討
④〜⑥は計算と組み合わせなので、迷うところがありません。

図面と機器表に残す3つ

数年後に改修を担当する人が、同じ検討をやり直さずに済むようにします。

一.L値 単線結線図に「SR 6%」と書く。13%を選んだ場合はとくに。
二.定格電圧と定格容量 機器表に243V・6.38kvarと書く。
三.許容電流種別 仕様書に種別Ⅱと明記する。種別は外観からわからないため、書いていないと更新時に追えません。

受変電設備の設計手順全体は【設計まとめ】受変電設備の設計手順に、連載としての流れは高圧受変電設備の設計マニュアルにまとめています。

ここまでのポイント
  • 迷うのはL値と許容電流種別の2つだけ
  • 定格電圧と定格容量は式から出る
  • コンデンサ側の定格電圧をL値に合わせる
  • 開閉装置と放電装置は別途検討する
  • 図面にL値、機器表に定格、仕様書に許容電流種別を残す

よくある質問

直列リアクトルの設置は義務ですか?

規程上は義務的事項です。内線規程(JEAC8001-2016)と高圧受電設備規程(JEAC8011-2014)の改定で、コンデンサ回路への直列リアクトルの施設が勧告から義務的事項に引き上げられました。JIS C 4902:2010でも、コンデンサには直列リアクトルを取り付けて使用することを原則としています。

既設でリアクトルが付いていませんが、違反になりますか?

さかのぼって適用されるものではありません。ただし更新のときには施設することになります。コンデンサを取り替える計画があるなら、そのタイミングでリアクトル付きの設備にするのが一般的です。

リアクトルを付けないとどうなりますか?

電源側のインダクタンスとコンデンサが並列共振して、高調波が拡大して電源側へ流れ出す可能性があります。また投入時の突入電流を抑えるものがなくなるため、開閉装置の消耗や近くの機器の誤動作につながります。

L値は何%を選べばよいですか?

特に指定がなければ6%です。第3調波の含有率が高いことがわかっている系統では13%を選びます。根拠なく13%を選ぶと、コンデンサの定格電圧も費用も設置スペースも増えます。

6%と13%の数字はどこから来ているのですか?

共振次数 n = √(100 ÷ L)から来ています。第5調波に対して誘導性にするにはL>4%、第3調波ならL>11.1%が必要で、余裕を見た標準値が6%と13%です。

4%や8%のリアクトルは使えないのですか?

4%は第5調波とちょうど共振するため使えません。8%は計算上は成り立ちますが標準品がなく、特注になります。実務では6%か13%から選びます。

許容電流種別ⅠとⅡはどう使い分けますか?

種別Ⅰは主として特別高圧受電設備、種別Ⅱは主として高圧配電系統に直接つながる設備に適用します。一般の高圧受電なら種別Ⅱです。

種別ⅠとⅡの数値の違いは何ですか?

最大許容電流が種別Ⅰは定格電流の120%、種別Ⅱは130%です。第5調波の含有率は種別Ⅰが35%以下、種別Ⅱが55%以下で、どちらも基本波電流に対する比率です。

リアクトルとコンデンサでは、どちらが先に限界に達しますか?

リアクトルです。コンデンサは第5調波だけで考えると基本波電流に対して83%程度まで許容できますが、リアクトルは35%(Ⅰ)または55%(Ⅱ)までです。設備として持つかどうかはリアクトル側で決まります。

直列リアクトルの定格電圧はどう計算しますか?

(回路電圧 ÷ √3)× L ÷(100 − L)です。6600V回路でL=6%なら(6600÷√3)×6÷94≒243Vになります。

直列リアクトルの定格容量はどう計算しますか?

コンデンサ定格容量 × L ÷(100 − L)です。100kvarでL=6%なら100×6÷94≒6.38kvarになります。分母が100ではなく(100−L)なので、6%でも6.38kvarになります。

6600Vの回路なのに、コンデンサの定格電圧が7020Vなのはなぜですか?

直列リアクトルを入れるとコンデンサの端子電圧が上がるためです。回路電圧 ÷(1 − L/100)で、6600÷0.94≒7020Vになります。13%なら7590Vです。誤記ではありません。

リアクトルだけ13%に変えてもよいですか?

いけません。コンデンサの定格電圧も7020Vから7590Vに変える必要があります。リアクトルだけ変えるとコンデンサが過電圧になります。L値はコンデンサとセットで決めます。

突入電流はどれくらい抑えられますか?

直列リアクトルを設置することで、コンデンサ定格電流の5倍程度まで抑制されるとされています。

直列リアクトルと分路リアクトルの違いは何ですか?

直列リアクトルはコンデンサと直列に入れて高調波の拡大防止と突入電流の抑制を行います。分路リアクトルは系統に並列に入れて、軽負荷時の進み力率と電圧上昇を抑えます。容量の表し方も%とkvarで違います。

高調波を出す負荷がない建物でも必要ですか?

必要です。配電系統には他の需要家が出した高調波も流れており、コンデンサだけを置くとそれを引き込んで拡大させる側に回ることがあります。突入電流の抑制という目的も残ります。

リアクトルから異常音がします。

高調波ひずみが大きいときにコンデンサ設備を投入すると、リアクトルのリアクタンス低下によって高調波引込現象が生じ、異常過熱や異常音が出ることがあります。設備の破損につながるため、系統の高調波の測定を含めて確認が必要です。

リアクトルは屋外に設置できますか?

屋内外兼用の製品が一般的です。ただし標高や周囲温度の条件がカタログに定められているので、設置環境と照らして確認します。

コンデンサ回路には他に何が必要ですか?

開閉装置と放電装置です。放電装置には放電コイルと放電抵抗があり、目的が違います。開閉装置はコンデンサ回路用として選定します。

設計で最終的に決めるのは何ですか?

L値、許容電流種別、定格電圧、定格容量の4つです。このうち判断が要るのはL値と許容電流種別だけで、あとの2つは計算で出ます。

まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
直列リアクトルの設置は勧告のまま 規程の改定で義務的事項に引き上げられている
高調波を出す負荷がなければ不要 系統側の高調波を引き込んで拡大させる側になる
リアクトルは高調波を消す装置 共振で拡大するのを止める装置。消しはしない
L値はどの現場でも同じ 第5調波が中心なら6%、第3調波が問題なら13%
迷ったら13%にしておけば安全 13%は第3調波向け。根拠がなければ6%
4%のリアクトルでもよい 第5調波とちょうど共振するため使えない
許容電流種別はどちらでもよい 高圧配電系統は種別Ⅱ、特別高圧受電は種別Ⅰ
種別Ⅰのほうが性能が高い 種別Ⅱのほうが高調波に対する許容が大きい
限界が先に来るのはコンデンサ リアクトル側。設備の可否はリアクトルで決まる
6%なら容量もコンデンサの6% 分母が(100−L)なので100kvarで6.38kvar
コンデンサの7020Vは誤記 リアクトルの分だけ端子電圧が上がるための定格
L値はリアクトルだけの話 コンデンサの定格電圧も変わる。セットで決める
リアクトルといえば1種類 直列リアクトルと分路リアクトルは別物
既設が未設置なら今後も不要 更新時には施設する
リアクトルを決めれば設計は終わり 開閉装置と放電装置の検討が残る
「付けるかどうか」は決まっています。設計が決めるのはL値と許容電流種別の2つです。
手順 やること 見るところ
1|前提の確認 施設は義務的事項であることを確認する JEAC8011・JEAC8001
2|高調波の把握 系統に多いのが第5調波か第3調波かを確認する 測定値・系統の構成
3|L値を決める 第5調波中心なら6%、第3調波なら13% n = √(100÷L)
4|許容電流種別 高圧配電系統なら種別Ⅱ JIS C 4902-2
5|定格電圧 (回路電圧÷√3)× L ÷(100−L) 6600V・6%で243V
6|定格容量 コンデンサ容量 × L ÷(100−L) 100kvarで6.38kvar
7|コンデンサ側 L値に合う定格電圧を選ぶ 7020V・7590V
8|周辺機器 開閉装置と放電装置を決める 別記事で解説
この8手順で、単線結線図と機器表に書けるところまで決まります。

📘 あわせて確認したいこと

6%・13%という数字の成り立ちは6%・13%の意味って何?で、受変電設備全体のなかでの位置づけは高圧受変電設備の設計マニュアル⑪ 力率改善設備で扱っています。連載の最初から読む場合は第1回 高圧受変電設備とは何かからどうぞ。

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この記事を書いた人:ハリタ

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電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。