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泡だらけのビールを頼むと、中身は少ないのに大きなジョッキが要ります。電気も同じで、モーターがたくさん回る建物では、仕事をしない「泡」の電気が電線の中を行ったり来たりしています。この泡を消して、同じ仕事を小さな電流でこなせるようにするのがSC(進相コンデンサ)、そのSCを安全に使うための相棒がSR(直列リアクトル)です。第9回は、単線結線図の右下に並ぶこの2つの読み方です。

結論

SCは無効電力を打ち消して力率を上げる機器で、図面では必ず開閉器→SR→SCの順に描かれます。SRは6%が標準で、突入電流を抑え、高調波を拡大させない役目を持ちます。

  • 力率を上げると同じ仕事で電流が減る
  • 力率85%をこえると基本料金が割引になる
  • SRを省くと突入電流と高調波で困る
  • 軽負荷時はAPFR(55)でSCを切る
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
モーターの多い工場で受電点の力率が0.80、同じ100kWに125kVA分の電流が流れているところにSCを投入すると力率0.95、105kVAに減る場面から、ジョッキのビールと泡で有効電力・無効電力・皮相電力を表すたとえ、開閉器→SR 6%→SCの順の記号とSRのあるなしでの突入電流の波形、第5調波でSR 6%なら0.30がSCの0.20を上回り高調波を拡大しない理由とAPFRによる自動制御を示す動く図解
約50秒でくり返します。使っている場面から、力率、SR、6%の順に見ます。

SCを入れると、同じ仕事で電流が減る

モーターや変圧器のようにコイルを持つ機器は、仕事をしない電気(無効電力)を行ったり来たりさせます。そのぶん電線に流れる電流が増え、力率が下がります。SCは、コイルとは逆向きの無効電力をつくって、これを打ち消します。

力率 100kWの仕事に必要な量 電流
1.00 100kVA 基準
0.95 約105kVA 約1.05倍
0.80 125kVA 1.25倍
0.60 約167kVA 約1.67倍
電流が増えると、太い電線や大きな変圧器が要り、損失(電流の2乗)も増えます。
読み方のコツ:高圧の電気料金には、力率による基本料金の割引・割増があります。一般に力率85%が基準で、上回れば割引、下回れば割増です。割引は基本料金に毎月かかり続けるので、SCの効果は金額で説明できます。電気料金の計量については第3回で見ています。
ここまでのポイント
  • コイルの負荷は力率を下げる
  • SCが無効電力を打ち消す
  • 85%をこえると割引

力率はジョッキのビールで考える

電気の3つの量は、ビールジョッキにたとえるとわかりやすくなります。

ジョッキ 電気 単位 意味
ビール 有効電力P kW 実際に仕事をする分
泡 無効電力Q kvar コイルが磁界をつくるために往復する分
ジョッキ全体 皮相電力S kVA 電線に実際に流れる分
力率=P÷S(ビール÷ジョッキ全体)です。

SCは泡を消す役です。泡が減ればジョッキ全体が小さくなり、電線や変圧器の負担が軽くなります。SCの容量は「Qc=P×(tanθ₁−tanθ₂)」で求めます。たとえば100kWの負荷で力率を0.80から0.95に上げるなら、約42kvarです。kWやkVAの関係は新人講座 第3回(電力・電力量・力率)でもくわしく扱っています。

ここまでのポイント
  • ビールがkW
  • 泡がkvar
  • ジョッキ全体がkVA


図面は「開閉器→SR→SC」の順

単線結線図では、高圧母線から枝分かれして、開閉器、SR、SCの順に上から並びます。SRは必ずSCの電源側に描かれます。

図面の表記 読み方
LBS+PF、またはVMC SCの開閉器。自動で入り切りするならVMC
コイルの形と「SR 6%」 直列リアクトル。%はSCに対するリアクタンスの割合
平行な2本線と「SC 100kvar」 進相コンデンサ。容量はkvarで書く
SCが2群・3群に分かれている 負荷に合わせて段階的に入り切りするため
「55」やAPFR 自動力率調整装置
数値は記載例です。
読み方のコツ:SCは電圧をかけた瞬間、ほぼ短絡したような状態になり、定格の何十倍もの突入電流が流れます。SRはこの立ち上がりを抑えるブレーキです。開閉器の選び方はコンデンサの開閉器仕様と容量の選定方法で扱っています。
ここまでのポイント
  • 開閉器→SR→SC
  • SRは必ず電源側
  • 群分けは段階投入のため

SRが6%なのは、高調波を拡大させないため

インバータやUPSなどからは、基本波の整数倍の周波数を持つ高調波が出ます。いちばん多いのが第5調波です。第n調波では、SRのリアクタンスはn倍、SCのリアクタンスは1/n倍になります。

SR 第5調波でのSR 第5調波でのSC 回路のふるまい
3% 0.03×5=0.15 1÷5=0.20 容量性のまま。高調波を拡大するおそれ
6%(標準) 0.06×5=0.30 1÷5=0.20 誘導性。高調波を拡大しない
13% 0.13×5=0.65 1÷5=0.20 第3調波でも誘導性。第3調波が多い設備向け
SCの基本波のリアクタンスを1とした値です。6%の共振点は約4.08次で、第5調波より下に来ます。

もう1つの注意は、SCの入れっぱなしです。夜間や休日など負荷が軽いときに入れたままにすると、打ち消す相手の無効電力が減っているので、進み力率になって電圧が上がります。そのためAPFR(器具番号55)が力率を見て、VMCでSCを群ごとに入り切りします。高調波の基本は高調波ってなに?発生原因と対策内容、設計の考え方は設計マニュアル⑪ 力率改善設備で扱っています。

ここまでのポイント
  • 第5調波でSRが勝つ
  • 共振点は約4.08次
  • 軽負荷時はSCを切る


間違えやすいところ

よくある読み違い

  1. SRを「おまけ」と読む:SRがないと突入電流と高調波で困ります。SCとセットの部品です。
  2. SRとSCの順番を気にしない:SRは必ずSCの電源側です。
  3. 3%と6%を同じと思う:3%では第5調波で容量性のままです。
  4. SCは大きいほどよいと思う:入れすぎると軽負荷時に進み力率になり、電圧が上がります。
  5. kvarとkVAを混同する:SCの容量はkvar(無効電力)で書きます。

次回は、変圧器の二次側から先の低圧配電(MCCB・ELCB)の読み方です。変圧器バンクは第8回、全体の流れは第1回で見ています。

ここまでのポイント
  • SRは必須
  • SRは電源側
  • 6%が標準

よくある質問

SCとSRは何の略ですか?

SCは進相コンデンサ(Static Capacitor)、SRは直列リアクトル(Series Reactor)です。単線結線図では、SCは平行な2本線、SRはコイルの形で描かれ、たいてい高圧母線の右下にまとめて並んでいます。

コンデンサを付けると、なぜ電気代が下がるのですか?

高圧の電気料金には力率による基本料金の割引・割増があり、一般に力率85%を基準に、上回ると割引、下回ると割増になります。SCで力率を上げると、この割引が基本料金に毎月かかり続けます。

力率とは何ですか?

電線に流れている電気のうち、実際に仕事に使われている割合です。ビールジョッキでたとえると、ジョッキ全体が皮相電力(kVA)、ビールが有効電力(kW)、泡が無効電力(kvar)で、力率はビール÷ジョッキ全体です。

SRを省いてはいけないのはなぜですか?

SRがないと、SCを投入するたびに大きな突入電流が流れて開閉器が傷みます。さらに、インバータなどから出る高調波をSCが拡大してしまうおそれがあります。SRは、SCを使うための必須の部品です。

SRはなぜ6%なのですか?

6%にすると、第5調波でSRのリアクタンス(0.30)がSCのリアクタンス(0.20)より大きくなり、回路が誘導性になって高調波を拡大しません。3%では0.15でSCに負けて容量性のままになります。第3調波が多い設備では13%を使います。

SCは入れっぱなしでよいですか?

夜間や休日など負荷が軽いときに入れたままにすると、進み力率になって電圧が上がります。軽負荷時はSCを切るのが原則で、APFR(自動力率調整装置、器具番号55)とVMCで群ごとに自動で入り切りします。

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。