この記事は、連載幹線設備の設計マニュアル」第5回 保護と幹線分岐 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。

動力盤ブレーカー、何Aにすればいいの?」「電線の許容電流より大きい遮断器が付いているけど、大丈夫?」――幹線の過電流遮断器は、幹線(電線)を守るために付けます。だから基本はIB ≦ IWです。ただし電動機があると、始動電流のために少し大きくしてよいルールがあります。ここでは電技解釈 第148条の考え方に沿って、記号の意味から、電動機がない場合・ある場合(パターンA・B)、100Aを超えるときの扱い、幹線の許容電流の決め方、選んだあとの確認まで、計算例で順に確かめます。

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電動機の有無、どちらが小さいか、100Aを超えるか。3つの質問の順に答えると、遮断器の定格が決まります。
幹線を先に決め、電動機の有無で式を使い分け、標準定格にして確かめます。

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遮断器は幹線を守るためにある ― 基本は IB ≦ IW

幹線の過電流遮断器は、その先の幹線(電線)を過電流から守るために付けます。電線は、流せる電流(許容電流)を超えると熱で絶縁が傷みます。そうなる前に遮断器が切れるよう、遮断器の定格電流 IB は、幹線の許容電流 IW 以下にするのが基本です(電技解釈 第148条)。

電線が熱で傷む前に、遮断器が電流を止める。だから IB ≦ IW が基本です。

ここで言う「幹線の許容電流」は、ケーブルの種類と太さだけで決まる値ではありません。周囲温度や、同じ管・ラックに入る条数による低減をかけた後の値です。遮断器を選ぶ前に、まず幹線の IW を確定させます。

ペン太ペン太
過電流遮断器の定格って、負荷電流よりちょっと大きめを選べばいいんですよね?
ハリタハリタ
負荷電流で落ちないことも大事ですが、上限は幹線の許容電流で決まります。遮断器は電線を守るためのものだからです。
ここまでのポイント
  • 過電流遮断器は幹線(電線)を守るためにある
  • 基本は IB ≦ IW(電技解釈 第148条)
  • IW は布設条件で低減した後の値
  • 遮断器より先に、幹線の IW を決める

記号の意味 ― IB・IW・IM・IH

計算で使う記号は4つです。IBが決めたい遮断器の定格電流、IWが幹線の許容電流。負荷は電動機等(IM)その他(IH)の2つに分け、それぞれ定格電流の合計で扱います。

負荷を「電動機等」と「その他」に分け、それぞれの定格電流の合計で扱います。

「電動機等」は、電動機のように始動電流が大きい機器のことです。ポンプ・送風機・空調機の圧縮機などが入ります。照明・ヒーター・コンセントなどは「その他」です。インバータで始動する機器は始動電流が小さくなりますが、分け方は設計の方針としてそろえておきます。

記号 意味
IB 過電流遮断器の定格電流 125A・200A など
IW 幹線の許容電流(低減後) 76A・110A など
ΣIM 電動機等の定格電流の合計 ポンプ・送風機・圧縮機
ΣIH その他の機器の定格電流の合計 照明・ヒーター・コンセント
出典:電気設備の技術基準の解釈 第148条をもとに作成
ここまでのポイント
  • IB=遮断器の定格電流、IW=幹線の許容電流
  • 負荷は電動機等(ΣIM)とその他(ΣIH)に分ける
  • どちらも定格電流の合計で扱う
  • 電動機等=始動電流が大きい機器


電動機がない場合 ― 負荷電流 ≦ IB ≦ IW

電動機等がつながらない幹線は、IB ≦ IWだけで決まります。実際には、ふだんの負荷電流で落ちないことも必要なので、負荷電流 ≦ IB ≦ IWになる標準定格を選びます。

負荷電流60A・IW 76Aなら、その間にある標準定格の75Aを選びます。

配線用遮断器の定格電流は、15・20・30・40・50・60・75・100・125・150・175・200・225A…のように、とびとびの標準定格です。負荷電流と IW の間に標準定格がなければ、幹線を1サイズ太くすることを考えます。遮断器を IW より大きくして合わせるのは、電動機がない幹線ではできません。

ここまでのポイント
  • 電動機がなければ IB ≦ IW
  • 負荷電流で落ちない値にする(負荷電流 ≦ IB)
  • 標準定格から選ぶ(例:60A ≦ 75A ≦ 76A)
  • 間に標準定格がなければ幹線を太くする

電動機があると大きくできる理由 ― 始動電流と役割分担

電動機は、回り始めの数秒間に定格の数倍の始動電流が流れます(直入れ始動で5〜8倍程度)。IB ≦ IW のままだと、始動のたびに遮断器が働いて、電動機を回せないことがあります。

始動電流は数秒で定格電流に戻ります。この一瞬で遮断器が落ちないようにしたい。

そこで電技解釈 第148条は、電動機等がつながる幹線に限って、IW より大きい IB を認めています。成り立つのは、役割分担があるからです。遮断器は短絡から電線を守り、長く続く過負荷はサーマルリレーなど電動機側の保護装置が見ます。

短絡保護は遮断器、過負荷保護はサーマル。役割を分けているので、遮断器を大きくできます。

動力の分岐回路での考え方は動力設備の設計マニュアル④ ブレーカーとケーブルの選定で詳しく扱っています。

ここまでのポイント
  • 電動機は始動の数秒間、定格の数倍の電流が流れる
  • IB ≦ IW のままだと始動で落ちることがある
  • 電動機等がつながる幹線に限り、IW より大きい IB を認める
  • 短絡は遮断器、過負荷は電動機側の保護装置が見る


パターンA ― 3ΣIM+ΣIH が 2.5IW 以下のとき

電動機等があるときは、まず2つの値を出して比べます。3ΣIM+ΣIH(電動機の合計の3倍+その他)と、2.5IW(幹線の許容電流の2.5倍)です。遮断器の上限は、この2つの小さいほうになります。

係数が出てくるのは2か所だけ。1.25倍・1.1倍は電線を決めるとき、3倍・2.5倍は電動機等があるときの上限を出すときです。

この記事の例(電動機40A・その他20A・IW 76A)で、実際に2つの上限を並べてみます。

負荷電流60Aが下限、①140Aと②190Aが上限の候補。小さい140A以下で、標準定格の125Aを選びます。
3は電動機の始動の一瞬を通すための割増し、2.5は電線が短時間なら耐えられる範囲。根拠は電技解釈 第148条です。
3を掛けるのは電動機等の合計(ΣIM)だけ。その他の負荷(ΣIH)はそのまま足し、2.5は幹線の許容電流(IW)に掛けます。

ここで迷いやすいのが、どの値に、どの係数を掛けるかです。3を掛けるのは電動機等の合計(ΣIM)だけで、始動電流の分を見込むためです。その他の負荷(ΣIH)は始動電流がないのでそのまま足します2.5は幹線の許容電流(IW)に掛けます。電線が短時間なら耐えられる範囲として置いた上限です。つまり、3は負荷の側、2.5は電線の側に掛ける係数です。

2つを比べて、小さいほうが上限。電動機が小さければ 3ΣIM+ΣIH が上限になります。

3ΣIM+ΣIH のほうが小さい(2.5IW 以下)ときがパターンAです。上限は IB ≦ 3ΣIM+ΣIH。電動機40A・その他20A・IW 76A なら、3×40+20=140A と 2.5×76=190A を比べて、140A が上限です。

140A ≦ 190A なのでパターンA。140A以下の標準定格として125Aを選びます。

140A は上限なので、その値以下から選びます。負荷電流(60A)で落ちないことを確かめて、標準定格の125Aとします。始動が軽い機器なら、もっと小さい定格でも足ります(9章で確かめます)。

ここまでのポイント
  • 3ΣIM+ΣIH と 2.5IW を出して比べる
  • 3ΣIM+ΣIH ≦ 2.5IW ならパターンA
  • 上限は IB ≦ 3ΣIM+ΣIH
  • 例:140A ≦ 190A → 125A


パターンB ― 3ΣIM+ΣIH が 2.5IW を超えるとき

3ΣIM+ΣIH のほうが大きい(2.5IW を超える)ときがパターンBです。このときは、幹線を守れる限界として IB ≦ 2.5IW が上限になります。電動機が大きい割に、幹線が細いときに起こります。

なぜ電線側のほうが小さくなるのか。2つの上限を、電動機の大きさを横軸にして並べると分かります。

電線側の上限(2.5IW)は幹線の太さで決まり動きません。電動機が大きくなると負荷側が追い越し、電線側が上限になります。
215A > 212.5A なのでパターンB。212.5A以下の標準定格として200Aを選びます。

電動機70A・その他5A・IW 85A なら、3×70+5=215A、2.5×85=212.5A で、212.5A が上限です。IW が100A以下なので、標準定格は切り下げて200Aにします。始動で落ちる心配があるなら、遮断器を上げるのではなく幹線を太くして IW を上げるのが筋です。

ペン太ペン太
パターンBで遮断器が小さくなりすぎたら、ワンサイズ上げればいいですか?
ハリタハリタ
上限を超えるので上げられません。上げたいなら幹線を太くしてIWを上げる。遮断器は電線に合わせて決まるものです。
ここまでのポイント
  • 3ΣIM+ΣIH > 2.5IW ならパターンB
  • 上限は IB ≦ 2.5IW
  • 例:215A > 212.5A → 200A(IW 100A以下は切り下げ)
  • 足りなければ幹線を太くして IW を上げる

IWが100Aを超えるとき ― 直近上位の標準定格まで

電動機等がつながる幹線で、IW が100Aを超え、パターンA・Bで出した値が標準定格に当てはまらないときは、その値の直近上位の標準定格を選べます(電技解釈 第148条)。太い幹線では標準定格の間隔が広いためです。

IW 110A・計算値275Aなら、直近上位の300Aを選べます。

電動機90A・その他10A・IW 110A なら、3×90+10=280A、2.5×110=275A で、パターンBの275Aが上限です。275Aは標準定格にないので、IW が100Aを超えていることから直近上位の300Aまで選べます。IW が100A以下なら、この扱いはなく、切り下げて選びます。

条件 計算値が標準定格にないとき
IW ≦ 100A 計算値以下の標準定格(切り下げ)
IW > 100A(電動機等あり) 直近上位の標準定格まで選べる
出典:電気設備の技術基準の解釈 第148条をもとに作成
ここまでのポイント
  • IW が100Aを超えるときの特例
  • 計算値が標準定格にないなら直近上位まで
  • 例:275A → 300A
  • IW 100A以下は切り下げて選ぶ


幹線の許容電流を先に決める ― 1.25倍と1.1倍

ここまでの計算は、IW が決まっていることが前提でした。幹線の許容電流は、原則としてつながる機器の定格電流の合計以上です。ただし電動機等の合計がその他の合計より大きいときは、電動機の分に余裕をみて次のようにします(電技解釈 第148条)。

ΣIMが50A以下なら1.25倍、50Aを超えるなら1.1倍。そのあとで遮断器を選びます。

この記事の例で確かめると、パターンAは 1.25×40+20=70A 以上が必要で、IW 76A はこれを満たします。100A超の例は 1.1×90+10=109A 以上で、IW 110A で満たします。需要率や力率が明らかなら、それで修正した値にしてもかまいません。幹線の太さの選び方は幹線サイズの選定手順、電圧降下での見直しは電圧降下による幹線サイズの選定で扱っています。

ここまでのポイント
  • IW は定格電流の合計以上が原則
  • ΣIM > ΣIH なら、ΣIM≦50Aで1.25倍・50A超で1.1倍
  • 需要率・力率が明らかなら修正してよい
  • IW を決めてから IB を選ぶ

選んだあとの確認 ― 始動・遮断容量・協調・分岐

ここまでの式で決まるのは、IB の上限です。実際の定格と遮断器の仕様は、次の4つを確かめて決めます。

式で決まるのは上限。始動・遮断容量・協調・電圧降下を確かめて決めます。

とくに見落としやすいのが遮断容量です。定格電流が合っていても、設置点の短絡電流を遮断できなければ保護になりません。盤図の「225AF/175AT 25kA」の読み方は盤図のブレーカー表記の読み方で扱っています。幹線から細い幹線を分岐するときは、分岐点に遮断器を付けるのが原則ですが、次の条件なら省略できます。

細い幹線の許容電流が電源側の遮断器の55%以上なら長さの制限なし、35%以上なら8m以下、それ以外は3m以下。

漏電遮断器が必要な場所では、過電流の保護とあわせて地絡の保護も考えます(漏電遮断器の設置基準と選定方法)。

ここまでのポイント
  • 式で決まるのは IB の上限
  • 始動で落ちないか・遮断容量・分岐側との協調・電圧降下を確かめる
  • 分岐した細い幹線は 55%/35%・8m/3m の条件で遮断器を省略できる
  • 漏電の保護もあわせて考える

よくある質問

過電流遮断器の定格電流は、どう決めますか?

幹線を保護するため、基本は幹線の許容電流以下(IB ≦ IW)にします。電動機等がつながる場合は、3ΣIM+ΣIH と 2.5IW の小さいほう以下にできます(電技解釈 第148条)。

記号 IB・IW・IM・IH の意味は?

IB は過電流遮断器の定格電流、IW は幹線の許容電流、IM は電動機等の定格電流、IH はその他の機器の定格電流です。IM と IH はそれぞれ合計で扱います。

電動機がない場合は?

負荷電流 ≦ IB ≦ IW になる標準定格を選びます。負荷電流60A・IW 76A なら75Aです。

電動機がある場合は?

3ΣIM+ΣIH と 2.5IW を比べ、小さいほうを上限にします。3ΣIM+ΣIH ≦ 2.5IW なら IB ≦ 3ΣIM+ΣIH(パターンA)、3ΣIM+ΣIH > 2.5IW なら IB ≦ 2.5IW(パターンB)です。

なぜ電動機があると、遮断器を幹線の許容電流より大きくできるのですか?

電動機の始動電流で遮断器が落ちないようにするためです。短絡から電線を守るのは遮断器、長い過負荷から電動機を守るのはサーマルリレーなど、と役割を分けているので成り立ちます。

3倍と2.5倍は、何にかける係数ですか?

3は電動機等の定格電流の合計に、2.5は幹線の許容電流にかけます。その他の負荷(ΣIH)には係数をかけず、そのまま加えます。

計算値が標準定格にないときは?

IW が100A以下なら、計算値以下の標準定格に切り下げます。電動機等がつながり IW が100Aを超えるときは、直近上位の標準定格まで選べます。

幹線の許容電流はどう決めますか?

定格電流の合計以上が原則です。電動機等の合計がその他の合計より大きいときは、ΣIM が50A以下なら 1.25ΣIM+ΣIH 以上、50Aを超えるなら 1.1ΣIM+ΣIH 以上にします。

IW は、ケーブルのカタログの値をそのまま使えばいいですか?

いいえ。周囲温度や、同じ管・ラックに入る条数による低減をかけた後の値を使います。

パターンBで遮断器が小さくなりすぎるときは?

遮断器を上限より上げることはできません。幹線を太くして IW を上げ、上限を引き上げます。

式の値ちょうどの遮断器を選ぶべきですか?

式の値は上限です。その値以下で、負荷電流で落ちず、始動電流で瞬時に引き外されない標準定格を選びます。

遮断容量も確認が必要ですか?

必要です。設置点の短絡電流以上の定格遮断容量(kA)を持つ遮断器を選びます。

分岐した幹線にも遮断器が必要ですか?

原則は必要です。細い幹線の許容電流が電源側の遮断器の定格電流の55%以上なら長さを問わず、35%以上で8m以下、または3m以下で負荷側に他の幹線をつながない場合は省略できます。

根拠はどこに書いてありますか?

電気設備の技術基準の解釈 第148条(低圧幹線の施設)です。内線規程にも同じ考え方が示されています。採用している版で確認してください。

まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
遮断器は負荷電流より少し大きければよい 上限は幹線の許容電流。基本は IB ≦ IW
電動機がなくても IW より大きくてよい 大きくできるのは電動機等がつながる幹線だけ
3倍と2.5倍は同じもの 3は ΣIM に、2.5は IW にかける
ΣIH にも係数をかける ΣIH はそのまま加える
式の値に合わせて切り上げる 上限なので切り下げ。IW 100A超だけ直近上位
パターンBなら遮断器を上げて対応 幹線を太くして IW を上げる
遮断器を先に決める 幹線(IW)を先に決める。1.25倍・1.1倍
定格電流が合えば完了 始動・遮断容量・協調・電圧降下も確かめる
「先に幹線、IBは上限、小さいほう」の3つで取り違えを防げます。
手順 やること
1|負荷を分ける 電動機等とその他に分けて合計 ΣIM・ΣIH
2|幹線を決める 許容電流(低減後)を確認 1.25倍・1.1倍
3|電動機なし 幹線以下の標準定格 IB ≦ IW
4|電動機あり 2つを比べて小さいほう以下 3ΣIM+ΣIH/2.5IW
5|標準定格 切り下げ。IW 100A超は直近上位も可 15〜400A…
6|確認 始動・遮断容量・協調・電圧降下
出典:電気設備の技術基準の解釈 第148条をもとに作成。適用にあたっては採用している版で確認してください。
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。