こんにちは、HARITAの設計室です。第2回のテーマは「図面の種類と役割」です。
前回は、高圧受変電設備が受ける/測る/守る/変える/整える/備えるの6つの役割でできていて、それがそのまま単線結線図の並びになっている、という話をしました。
ところが実務に出ると、渡される図面は単線結線図だけではありません。三線結線図、展開接続図、機器配置図、盤姿図…。同じ受変電設備なのに、なぜ何種類も図面があるのか。ここが分かると、図面を探す時間が一気に減ります。
先輩、図面フォルダを開いたら受変電だけで10枚以上あって…どれを見ればいいのか分かりません。全部同じ設備ですよね?
同じ設備を、違う質問に答えるために描き分けてるんだ。「どうつながってる?」「どう動く?」「どこに置く?」――知りたいことが違えば、見る図面も違うんだよ。
受変電設備の図面は、大きく4種類
会社によって呼び名は変わりますが、役割で分けると次の4つに整理できます。
| 図面 |
答えてくれる質問 |
わかること |
わからないこと |
単線結線図 スケルトン |
設備全体はどうつながっている? |
機器の構成と接続順序、容量・定格、負荷の振り分け、保護方式の全体像 |
相ごとの結線、制御回路の動き、実際の配置 |
三線結線図 複線接続図 |
実際の電線は何本で、どこに入る? |
相ごとの結線、CT・VTの取付位置と極性、変圧器の結線(Δ・Y・V) |
制御回路の動作順序、設備の全体像 |
展開接続図 シーケンス図 |
事故が起きたら、どう動く? |
継電器の動作から遮断器の引外しまでの流れ、表示灯・警報・インタロック |
主回路の容量、機器の外形や配置 |
機器配置図・盤姿図 外形図 |
どこに、どう置く? |
盤の寸法・重量、扉の開き、保守スペース、搬入経路、基礎とアンカー |
電気的なつながり、保護の考え方 |
📎 この4つに付いてくる書類
機器仕様書…変圧器やVCBのメーカー・形式・定格を一覧にしたもの
ケーブルリスト(電線リスト)…どの回路にどの太さのケーブルを何条使うか
保護協調図…OCRやPFの動作時間を対数グラフに重ねて、上位と下位の協調を確認する図
電力協議資料…電力会社との受電協議に出す、単線結線図と保護方式の説明資料
図面だけでは設備は完成しません。図面+書類でワンセットと考えてください。
「わからないこと」の列があるの、助かります。図面って何でも書いてあると思ってました…。
むしろ逆だよ。1枚に全部描くと誰も読めなくなるから、目的ごとに情報を捨てて描き分けてる。単線結線図が読みやすいのは、相の情報を思い切って捨てているからなんだ。
同じ受電部を、4つの図面で描き分けてみる
言葉だけだとピンと来ないので、まったく同じVCB(真空遮断器)まわりを4つの図面で描くとどうなるかを並べてみます。
📐 同じ受電部・4つの視点
① 単線結線図
6.6kV
│
DS
│
─VCB─
│
CT●──[I>]
│
母線
3本の線を1本にまとめて描く。機器の並び順と定格が読める。設備全体を1枚に収めるための図。
② 三線結線図
L1 L2 L3
│ │ │
╲ ╲ ╲ DS
│ │ │
╲ ╲ ╲ VCB
│ │ │
● │ ● CT×2
│ │ │
実際の3本の線をそのまま描く。CTが2個なのか3個なのか、どの相に入るかまで分かる。
③ 展開接続図
P ──[OCR]──(52T)── N
51
P ──[52a]──(o)───── N
表示灯
P ──[52b]──(BZ)──── N
警報
継電器が動いてから遮断器が切れるまでの流れを横に並べて描く。制御と警報はここでしか読めない。
④ 機器配置図・盤姿図
┌────┬────┬────┐
│受電│変圧│低圧│
│ 盤 │器盤│ 盤 │
└────┴────┴────┘
←─ W2400 ─→
保守スペース 前1.0m
寸法と置き場所の図。搬入経路、扉の開き、保守スペース、基礎とアンカーはここで確認する。
ポイント:4つとも同じ設備を描いています。違うのは「何を残して、何を捨てたか」。探している答えがどの図面にあるかを先に決めてから開くと、迷いません。
なぜ単線結線図が「設備の顔」なのか
4つのうち、実務でいちばん多く開かれるのが単線結線図です。理由は3つあります。
単線結線図が中心になる3つの理由
① 全体が1枚に収まる…受電から末端まで、電気の流れを目で追える唯一の図面。打合せで指をさせる。
② 決定事項がここに集まる…受電電圧、主遮断装置の形式、変圧器の容量と台数、保護方式。設計の判断は最終的にこの1枚に落ちる。
③ 対外的な基準になる…電力会社との協議、官庁への届出、見積・積算、メーカーへの引き合い。すべてこの図面を添えて話が進む。
逆に言えば、単線結線図が固まらないと、他の図面は1枚も描き始められません。第1回で「計画の中心にある」と書いたのは、こういう意味です。
図面は、工事の進行とともに姿を変える
もうひとつ、新人が混乱しやすいのが同じ名前の図面が何枚もあることです。これは「版」が違います。
| 段階 |
中身 |
誰が使うか |
| 計画・基本設計図 |
容量と方式を決めるための素案。機器の形式はまだ仮。 |
設計者、発注者との合意形成 |
| 実施設計図 |
定格・仕様を確定した図面。積算と入札の根拠になる。 |
設計者、積算担当、入札参加者 |
| 承認図(製作図) |
メーカーが実際に作るための図面。寸法・重量が実物どおりになる。 |
施工者、メーカー、設計者の承認 |
| 施工図 |
現場で納まりを決めた図面。基礎位置やケーブルルートが入る。 |
現場、他業種との調整 |
| 竣工図(完成図) |
実際にできあがった姿に直した最終版。変更点がすべて反映されている。 |
保安管理者、改修設計者、以後の全員 |
⚠ 実務でいちばん危ないのは「古い版で判断すること」
停電作業の手順を実施設計図で立て、現場に行ったら機器の構成が違っていた――受変電では実際に起きる事故です。
設備を触る判断をするときは、必ず竣工図(完成図)を使う。竣工図が見当たらなければ、まず探すところから始めてください。図面が現状と合っていないこと自体が、保安上の指摘事項になります。
図面を開いたら、まず表題欄(タイトルブロック)を見る癖をつけて。図面名・日付・版数・改訂履歴。ここを見ずに中身を読み始めるのがいちばん危ないよ。
単線結線図に必ず書かれていること
第3回から記号を扱っていきますが、その前に「1枚の中に何が書かれているか」を押さえておきましょう。読むときも、描くときも、このリストが基準になります。
単線結線図の記載項目
① 受電条件…相数・線式・電圧・周波数(例:3φ3W 6.6kV 60Hz)
② 機器の図記号…JISに基づく記号(第3回)
③ 文字記号…DS、VCB、LBS など英文名の頭文字(第3回)
④ 機器の定格…電圧・電流・遮断容量・変圧器容量・コンデンサ容量
⑤ 変成器の変流比・変圧比…CT 150/5A、VT 6600/110V など
⑥ 保護継電器と器具番号…OCR(51)、DGR(67G)、UVR(27) など
⑦ 負荷の名称…一般照明、一般
動力、非常照明 など、供給先が分かる書き方
⑧ 接地…A種・B種などの種別と施工箇所
⑨ 凡例…その図面で使う記号の一覧
⑩ 表題欄…物件名・図面名・縮尺・日付・版数・作図者
新人がやりがちなミス 3選
① 単線結線図から「電線は1本」と読んでしまう
単線結線図の1本の線は、三相なら3本の電線を表しています。ケーブルの条数や太さを拾うときは、単線結線図だけで判断せず、ケーブルリストや三線結線図と突き合わせてください。
② 「動くはず」を展開接続図で確かめない
継電器が動いても、引外し回路が組まれていなければ遮断器は切れません。動作の順序と条件は展開接続図にしか描かれていないことを覚えておいてください。
③ 保守スペースを図面で確認しない
単線結線図がどれだけ正しくても、盤の前に点検スペースがなければ設備は使えません。配置図と盤姿図は「電気の図面ではない」と軽く見ないこと。搬入経路も同じです。
まとめ
第2回のまとめ
・受変電の図面は単線結線図/三線結線図/展開接続図/配置図・盤姿図の4種類が柱
・4つは同じ設備を、違う質問に答えるために描き分けたもの
・単線結線図は全体が1枚に収まり、決定事項が集まり、対外的な基準になるから中心にある
・同じ名前の図面が複数あるのは「版」の違い。設備を触る判断は必ず竣工図で
・図面を開いたら、まず表題欄を見る
よくある質問
Q. 三線結線図は必ず作るものですか?
小規模な
キュービクルでは、メーカーの標準仕様で済むため作らないこともあります。ただし計器・継電器の結線を確認したいとき、竣工試験や更新工事のときには必要になります。「なくても回るが、あると強い図面」です。
Q. 展開接続図とシーケンス図は違うものですか?
ほぼ同義で使われます。厳密には、制御回路を電源の一方から他方へ展開して描いた図が展開接続図で、シーケンス図はもう少し広く動作順序を示す図の総称です。現場では区別せずに呼ぶことが多いので、周りの言い方に合わせて構いません。
Q. 系統図と単線結線図はどう違いますか?
単線結線図は受変電設備の中を詳しく描いた図。系統図(
幹線系統図)は、そこから先の
低圧幹線が建物のどの階のどの盤へ行くかを描いた図です。受変電の出口でバトンタッチする関係だと考えてください。
Q. 図面はどれから読み始めればいいですか?
単線結線図 →(必要に応じて)三線結線図 → 展開接続図 → 配置図、の順が基本です。全体像を先に持ってから細部へ下りると迷いません。逆に配置図から入ると、寸法は分かっても設備の意味がつかめません。
次回予告
第3回:図記号・文字記号・器具番号の読み方
いよいよ記号です。DS・VCB・LBS・PF はなぜその綴りなのか、51や52といった数字は何者なのか。凡例を見ずに図面が読めるところまで持っていきます。
参考:電気設備の技術基準の解釈/高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/内線規程 JEAC 8001/JIS C 0617 電気用図記号/JEM 1090 制御器具番号
📖次に読むならこれ【高圧受変電設備の設計マニュアル・資料編】機器別 目的早見表 ― 記号・役割・設置位置・ないとどうなるかを一覧に設計マニュアル
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