📚 この記事は連載「高圧受変電設備の設計マニュアル」(全14回)の第3回です。前回:第2回 設計図書の種類と役割/資料編:機器別 目的早見表

こんにちは、HARITAの設計室です。第3回は、いよいよ記号です。

単線結線図を初めて見た人が「暗号みたい」と感じるのは、性質のちがう3種類の記号が、同じ紙の上に混ざって書かれているからです。まずこの3つを分けて考えられるようになると、図面の見え方が一気に変わります。

ペンタ
先輩、図面に「VCB」って書いてある横に「52」って数字もあって…どっちが機器の名前なんですか?
はりた
どっちも正解。ただし見ている角度がちがうんだ。VCBは「モノの名前」、52は「役割の番号」。この違いが分かれば怖くないよ。

記号は3種類ある

受変電の図面に出てくる記号は、次の3つに分類できます。

種類 見た目 何を表すか よく使う場面 根拠
図記号 形(図) 機器の種類を、誰が見ても同じ意味に取れる形で表す すべての図面 JIS C 0617
文字記号 アルファベット
DS・VCB
機器の名前を短く表す。英文名の頭文字を大文字で並べるのが原則 単線結線図、機器表、見積 JEM 1115 ほか
制御器具番号 数字
52・51・27
機器の役割(どんな動作をするか)を1〜99の番号で表す 展開接続図、制御回路 JEM 1090
覚え方
図記号=「なにモノか」(形で分かる)
文字記号=「なんて呼ぶか」(会話と書類で使う)
器具番号=「なにをするか」(制御回路で使う)
1つの機器を、3つの角度から指しているだけです。

文字記号は「英語の頭文字」で読み解ける

文字記号は丸暗記する必要がありません。もとの英語をたどれば、初めて見る記号でも半分は意味が推測できます

記号 もとの英語 日本語名 ひとことで言うと
DS Disconnecting Switch 断路器 切って目で確認する
LBS Load Break Switch 高圧交流負荷開閉器 負荷電流なら切れる
VCB Vacuum Circuit Breaker 真空遮断器 事故電流を切る
PF Power Fuse 電力ヒューズ 溶けて切る
LA Lightning Arrester 避雷器 雷を大地へ逃がす
VT Voltage Transformer 計器用変圧器 電圧を測れる大きさに
CT Current Transformer 変流器 電流を測れる大きさに
ZCT Zero-phase-sequence CT 零相変流器 地絡電流だけを取り出す
VCT Voltage & Current Transformer 計器用変圧変流器 取引の計量用
T Transformer 変圧器 電圧を変える
SC Static Capacitor 進相コンデンサ 力率を改善する
SR Series Reactor 直列リアクトル 突入電流と高調波を抑える
OCR Over Current Relay 過電流継電器 電流が多すぎたら知らせる
DGR Directional Ground Relay 地絡方向継電器 地絡の向きまで見る
UVR Under Voltage Relay 不足電圧継電器 電圧が下がったら知らせる
MCCB Molded Case Circuit Breaker 配線用遮断器 低圧回路を守る
🔑 分解のルール(これだけで初見の記号が読める)
末尾 R=Relay(継電器)/B=Breaker(遮断器)/S=Switch(開閉器)/T=Transformer(変成器)
  O=Over(過~)/U=Under(不足~)/D=Directional(方向つき)/Z=Zero-phase(零相)/V=Vacuum(真空)またはVoltage(電圧)
たとえば OVR は Over + Voltage + Relay で「過電圧継電器」。ELCB は Earth Leakage + Circuit Breaker で「漏電遮断器」。
知らない記号に出会ったら、まずこの分解を試してください。


制御器具番号は「動作」を数字にしたもの

器具番号(制御器具番号)は、JEM 1090で決められた1〜99の番号です。機器のメーカーや形式が変わっても番号は変わらないので、誰が描いた図面でも同じ意味で読めるという強みがあります。

受変電設備で出てくるのは、実は10個ちょっとです。

番号 名称 対応する文字記号 どこで見るか
3 操作スイッチ CS 盤面の入切スイッチ
27 交流不足電圧継電器 UVR 停電検出・発電機始動
43 制御回路切換スイッチ 自動/手動の切換
51 交流過電流継電器 OCR 受電部・変圧器一次
51G 地絡過電流継電器 GR ZCTとセット
52 交流遮断器・接触器 VCB・MCCB 主遮断装置
59 交流過電圧継電器 OVR 系統連系の保護など
64 地絡過電圧継電器 OVGR 零相電圧の検出
67 交流電力方向継電器
67G=地絡方向
DGR PAS・受電部の地絡保護
84 電圧継電器 電圧監視
86 ロックアウト継電器 事故後の再投入阻止
87 差動継電器 DFR 大容量変圧器の保護
89 断路器・負荷開閉器 DS・LBS 受電部・変圧器一次
90 自動電圧調整器 AVR 発電設備など
数字のうしろに付く小さな文字(補助記号)
52a…遮断器が「入」のときに閉じる接点(a接点=主機器と同じ動き)
52b…遮断器が「入」のときに開く接点(b接点=主機器と逆の動き)
52T…遮断器の引外し(Trip)コイル
52C…遮断器の投入(Close)コイル
51G・67G…G=Ground(地絡)。地絡用であることを示す
52-1、52-2…同じ番号の機器が複数あるときの通し番号
展開接続図を読むときは、この補助記号が読めるかどうかで理解度が変わります。
ペンタ
「52a」って52番の一種かと思ってました…遮断器の接点だったんですね。
はりた
そう。52は遮断器そのもの、52aと52bはその状態を他の回路に伝える接点。表示灯が点くのも警報が鳴るのも、この接点のおかげなんだ。


図記号は「形」に意味がある

図記号は JIS C 0617(電気用図記号)で決められています。丸暗記する前に、形が何をかたどっているかを知ると忘れにくくなります。

形の意味(代表的なもの)
断路器…線が斜めに開いた形。「切り離してあることが目で見える」ことをそのまま表す
遮断器…開閉部に×や四角が付く。「切る力を持っている」ことを示す
ヒューズ…線に細長い箱。溶ける部分をかたどっている
変圧器…円が2つ重なる。一次巻線と二次巻線
CT…線を円が囲む。電線のまわりを鉄心が取り巻いている姿
コンデンサ…2本の平行線。極板そのもの
リアクトル…コイル状の線。巻線をかたどっている
接地…横線が3本、下にいくほど短い。大地を表す
⚠ 古い図面には「旧記号」が残っている
図記号は旧規格(JIS C 0301)から現行の JIS C 0617 に変わっています。竣工から年数が経った物件の図面には旧記号が使われていることがあり、同じ機器でも形が違って見えることがあります。
迷ったら図面内の凡例を確認してください。凡例は「この図面での約束事」を書いた場所です。

3つの記号は、1つの機器を3方向から指している

📐 真空遮断器を3つの記号で表すと
図記号
 │
 ┃
 ×
 ┃
 │
なにモノか
形を見れば「遮断器」だと分かる。図面のどこにあっても同じ意味。
文字記号
VCB
なんて呼ぶか
Vacuum Circuit Breaker。打合せ・見積・発注で使う「名前」。
制御器具番号
52
なにをするか
「交流を遮断する役割」の番号。制御回路では52T・52a・52bで登場。
ポイント:単線結線図では図記号+文字記号+定格、展開接続図では器具番号+補助記号。図面の種類によって、主役になる記号が変わります。

新人がやりがちなミス 3選

① 凡例を見ずに読み始める
会社や年代によって記号の書き方は少しずつ違います。凡例はその図面のルールブック。3分読むだけで、後の30分が助かります。
② VTとPTを別物だと思う
計器用変圧器は VT(Voltage Transformer)とも PT(Potential Transformer)とも書かれます。同じ機器です。古い図面ほどPT表記が多く見られます。
③ 記号だけ覚えて定格を読み飛ばす
「VCB」と読めても、その横の 7.2kV 400A 12.5kA が読めなければ設計はできません。記号は入口で、本体は定格の数字です。第5回以降で1つずつ扱います。


まとめ

第3回のまとめ
・記号は図記号(なにモノか)/文字記号(なんて呼ぶか)/器具番号(なにをするか)の3種類
・文字記号は英語の頭文字。末尾のR・B・S・Tと、頭のO・U・D・Zで分解できる
・器具番号はJEM 1090の1〜99。受変電で出てくるのは10個ちょっと
52a・52b・52T・52Cなどの補助記号が読めると、展開接続図が読める
・図記号は形に意味がある。旧記号が残る図面もあるので、迷ったら凡例
✅ 今日のチェックリスト(できたらチェック)

よくある質問

Q. 器具番号は全部覚える必要がありますか?
いりません。1〜99すべてを使う設備はほとんどなく、高圧受電設備で日常的に出てくるのは本文の表の10個ちょっとです。まず 52・51・67・27 の4つから覚えてください。
Q. GRとDGRはどう使い分けるのですか?
GR(51G)は零相電流の大きさだけで判断する簡易形、DGR(67G)はZPDの零相電圧も見て事故の方向まで判別する形です。構内のケーブルが長いとGRは不要動作しやすいため、現在はDGRが標準的に使われます。詳しくは第8回で扱います。
Q. 会社ごとに文字記号が違うのですが、どれが正しいですか?
文字記号は英文名の頭文字を並べるのが原則ですが、実務では会社やメーカーの慣習が残っています(T と Tr、VT と PT など)。1枚の図面の中で統一されていることと、凡例に書かれていることが大事で、どちらか一方だけが正しいというものではありません。

次回予告

第4回:引込部 ― 責任分界点とPAS・UGS
ここから「見方編」に入ります。図面のいちばん上、電力会社との境目には何があるのか。責任分界点、PASとUGSの使い分け、そして波及事故を出さないための考え方を扱います。

参考:JIS C 0617 電気用図記号/JEM 1090 制御器具番号/JEM 1115 配電盤・制御盤の用語及び文字記号/高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)

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