この記事は連載「幹線設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
技術図書館電圧降下の検証|こう長は図面の直線距離ではない効いてくる3つの要素、こう長に積み上がるもの、足りないときの打ち手の順番をスライドで整理しました。この資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事の全体像:電圧降下が起きる仕組み、こう長で変わる許容範囲、こう長の正しい取り方、足りないときの3つの打ち手

こんにちは、HARITAの設計室です。連載「幹線設備の設計マニュアル」第4回は電圧降下の検証第3回で仮決めしたサイズが、そのこう長に耐えられるかを確かめます。

この検証でつまずく人の多くは、計算式ではなくこう長の取り方で間違えています。今回の合言葉は「こう長は図面で決まる。計算の前にルートを見る」

この3つ、すぐ答えられますか

  • 電圧降下に効いてくる3つの要素は何ですか。
  • こう長に、立ち上がりや盤内の余長は含めますか。
  • 電圧降下が足りないとき、最初に疑うべきは何ですか。
ペン太ペン太
電圧降下の計算、式は覚えたので大丈夫です。
はりたはりた
つまずく人の多くは、計算式じゃなくてこう長の取り方で間違えているんだ。
ペン太ペン太
こう長……平面図で盤と盤を結んだ長さ、ですよね。
はりたはりた
そこが落とし穴。こう長はケーブルが実際に通る長さだ。今回の合言葉は「こう長は図面で決まる。計算の前にルートを見る」。
この記事でわかること
第3回で仮決めしたサイズが、そのこう長に耐えられるか。許容範囲の考え方、こう長の正しい取り方、足りないときの打ち手を整理します。

今回の全体像 ― なぜ電圧が下がるのか

トピック1:なぜ、電圧が下がるのか
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図1:電圧降下が起きる仕組み

電線にも抵抗があります。電流が流れれば、その抵抗のぶんだけ電圧が消費されます。だから盤の出口では100Vでも、長い距離の先では97Vになる。これが電圧降下です。

効いてくるのは3つ。電流が大きいほど、こう長が長いほど、断面積が細いほど降下は大きくなります。式の形はいくつかありますが、比例関係はこの3つで押さえておけば実務では困りません。

電圧が下がると何が困るか。機器は定格電圧の前後で動くように作られていて、下がりすぎると本来の性能が出ません。照明編の第5回でも触れたとおり、LEDではちらつきや不点灯という形で現れます。動力機器では始動トルクが落ち、モータが起動しないこともあります。

効いてくる要素どう効くか下がりすぎると
電流大きいほど、降下は大きい機器は定格電圧の前後で動くように作られているので、本来の性能が出ない
こう長長いほど、降下は大きいLEDでは、ちらつきや不点灯という形で現れる
断面積細いほど、降下は大きい動力機器では始動トルクが落ち、モータが起動しないこともある
ここまでのポイント
  • 電線にも抵抗があり、電流が流れればその抵抗のぶんだけ電圧が消費される
  • 盤の出口では100Vでも、長い距離の先では97Vになる ― これが電圧降下
  • 効いてくるのは3つ。電流が大きいほど、こう長が長いほど、断面積が細いほど降下は大きくなる
  • 式の形はいくつかあるが、この3つの比例関係を押さえておけば実務では困らない
  • 下がりすぎると本来の性能が出ない。LEDはちらつきや不点灯、動力機器は始動トルクが落ちる

① 許容範囲 ― こう長で段階的に変わる

トピック2:許容値は、ひとつではない

では、どこまでの降下なら許されるのか。ここで大事なのが、許容値はひとつの数字ではないということです。こう長の区分によって段階的に変わります。

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図2:こう長と許容範囲の関係

考え方はシンプルで、長い建物ではどうしても降下するので、そのぶん基準が緩められているのです。逆に短いこう長では厳しい値が求められます。

具体的な%は、供給形態(電気事業者から低圧で受けるのか、自家用で受変電を持つのか)によっても変わります。ここは数字を暗記するところではなく、案件ごとに内線規程の該当条項を開くところです。

区分と数値、判定の考え方は 電圧降下の許容範囲は何%?幹線サイズの選定方法と計算例 に計算例つきでまとめてあります。

ここまでのポイント
  • 許容値はひとつの数字ではない。こう長の区分によって段階的に変わる
  • 長い建物ではどうしても降下するので、そのぶん基準が緩められている。短いこう長では厳しい値が求められる
  • 具体的な%は供給形態(低圧受電か、自家用で受変電を持つか)によっても変わる
  • 数字を暗記するところではなく、案件ごとに内線規程の該当条項を開くところ

② こう長は「図面の直線距離」ではない

トピック3:直線距離では、ない

計算そのものより間違えやすいのがここです。こう長とはケーブルが実際に通る長さであって、平面図の上で盤と盤を結んだ直線の長さではありません。

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図3:こう長は経路で決まる

受電盤からEPSまで水平に走り、EPSを立ち上がり、その階で水平に走って盤に入る。この立ち上がりぶんも、当然こう長です。さらに梁やダクトを避けた迂回、盤内の余長も積み上がります。

つまり、電圧降下は第1回の系統計画で半分決まっているということです。EPSの位置、盤の位置、ラックのルート。計算して足りなかったときに最初に疑うべきは、太さではなくルートを短くできないかです。ラックの経路と幅は ケーブルラックのサイズ選定方法 もあわせてご覧ください。

作図イメージ:こう長の積み上げ方と、足りないときの3つの打ち手
図4:作図イメージ ― こう長の積み上げ方と、3つの打ち手
ここまでのポイント
  • こう長とはケーブルが実際に通る長さ。平面図で盤と盤を結んだ直線の長さではない
  • 受電盤からEPSまで水平に走り、EPSを立ち上がり、その階で水平に走って盤に入る ― この立ち上がりぶんも当然こう長
  • さらに梁やダクトを避けた迂回、盤内の余長も積み上がる
  • つまり電圧降下は、第1回の系統計画で半分決まっている。EPSの位置、盤の位置、ラックのルート
  • 計算して足りなかったとき、最初に疑うべきは太さではなくルートを短くできないか

③ 足りないときの3つの打ち手

トピック4:足りないときの、3つの手

ルートをどうしても短くできない場合、取れる手は3つです。

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図5:電圧降下が足りないときの打ち手

太くするのがいちばん素直ですが、こう長が長いほど材料費がそのまま効きます。しかも第3回で書いたとおり、太くすると曲げ半径・端子・ラック幅・管サイズまで連鎖します。

系統を分けると1本あたりの電流が減り、同時にルートも短くできることが多いので、実は効きが良い手です。ただし盤が増えます。電圧を上げるのは、同じ電力なら電流が反比例して減るので効果が大きい方法です。ただし機器側が対応しているかの確認が要ります。

ここまでのポイント
  • ルートをどうしても短くできない場合、取れる手は3つ
  • 太くする ― いちばん素直だが、こう長が長いほど材料費がそのまま効く。曲げ半径・端子・ラック幅・管サイズまで連鎖する
  • 系統を分ける ― 1本あたりの電流が減り、同時にルートも短くできることが多い。実は効きが良い手。ただし盤が増える
  • 電圧を上げる ― 同じ電力なら電流が反比例して減るので効果が大きい。ただし機器側が対応しているかの確認が要る

④ 検証の進め方

トピック5:両方を満たして、確定する
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図6:電圧降下の検証手順

手計算でも出せますが、条件を変えながら何度も試すなら、セコサポの 電圧降下計算ツール が早いです。「1サイズ細くしたらどうなるか」「回路を2つに分けたらどうか」を数十秒で試せると、判断の質そのものが上がります

ここまで終えて、ようやくケーブルサイズが確定します。許容電流と電圧降下、両方を満たしてはじめて「決まった」と言えます。

ここまでのポイント
  • 手計算でも出せるが、条件を変えながら何度も試すなら計算ツールが早い
  • 「1サイズ細くしたらどうなるか」「回路を2つに分けたらどうか」を数十秒で試せると、判断の質そのものが上がる
  • 許容電流と電圧降下、両方を満たしてはじめて「決まった」と言える
ペン太ペン太
計算したら、ぎりぎり超えてしまいました。太くするしかないですか。
はりたはりた
その前に確認したいことがある。需要率の見込みは妥当か、こう長を過大に拾っていないか、区間の取り方は正しいか。
ペン太ペン太
前提を見直す、ということですか。
はりたはりた
そう。前提を見直すと収まることは珍しくない。それでも超えるなら、3つの打ち手から選ぶ ― ただし「わずかだから」で通すのだけは、なしだ。

まとめ

トピック6:今日のまとめ

電圧降下の検証でつまずくのは、計算式ではなくこう長の取り方です。こう長は図面で決まる。計算の前にルートを見る ― 立ち上がりも迂回も余長も、すべてこう長に積み上がります。

足りないときに、何から手を付けるか

いきなり太くする前に、順番があります。ルートを疑い、前提を見直し、それから3つの打ち手です。

打ち手効き方副作用・確認すること
その前に:ルートを短くできないかEPSの位置、盤の位置、ラックのルートを見直す電圧降下は第1回の系統計画で半分決まっている
① 太くするいちばん素直こう長が長いほど材料費がそのまま効く。曲げ半径・端子・ラック幅・管サイズまで連鎖する
② 系統を分ける1本あたりの電流が減り、同時にルートも短くできることが多い盤が増える
③ 電圧を上げる同じ電力なら電流が反比例して減るので効果が大きい機器側が対応しているかの確認が要る

仕組みと、許容範囲

  • 電圧降下は「電流 × こう長 ÷ 断面積」でおおむね決まる
  • 許容範囲はこう長の区分で段階的に変わる。%は案件ごとに原典で確認する

こう長と、打ち手

  • こう長は実際に通る長さ。立ち上がり・迂回・余長まで含める
  • 足りないときは、まずルートを短くできないかを疑う
  • 次の手は 太くする/系統を分ける/電圧を上げる の3つ
  • 許容電流と電圧降下の両方を満たして、サイズが確定する

最後に ― 「わずかだから」で通さない

計算がぎりぎり超えたとき、いちばんやってはいけないのが「わずかだから」で通すことです。とはいえ、いきなり太くするのも早い。需要率の見込みは妥当か、こう長を過大に拾っていないか、区間の取り方は正しいか ― 前提を見直すと収まることは珍しくありません。

そして施工段階で、ルートは変わります。梁を避け、他設備をかわし、結果として図面より長くなる。ルートが確定していない段階ほど、長めに見ておくのが安全です。

よくある質問

トピック7:よくある質問

Q1. こう長は、どこからどこまでを取るのですか?
A. 判定に使う区間は基準の側で決まっていて、供給の起点から最も遠い負荷までを見ます。

設計者が勝手に短い区間で切って良いものではありません。区間の取り方に迷ったら、原典の定義を読み直してください。ここを間違えると、計算自体は正しくても判定が間違います。

Q2. 実際の建物では、こう長にどのくらい余裕を見ますか?
A. 施工段階でルートが変わることは普通にあります。梁を避け、他設備をかわし、結果として図面より長くなる。設計時点で拾った長さぴったりで成立させると、現場で足りなくなります。ルートが確定していない段階ほど、長めに見ておくのが安全です。

Q3. 電圧降下がわずかに超えたときは、どうしますか?
A. 「わずかだから」で通してはいけません。ただし、いきなり太くする前に確認したいことがあります。

需要率の見込みは妥当か、こう長は過大に拾っていないか、区間の取り方は正しいか。前提を見直すと収まることは珍しくありません。それでも超えるなら、3つの打ち手から選びます。

次回予告

トピック8:次回予告

第5回は「保護と幹線分岐」。決まったケーブルを、どのブレーカーで守るか。そして幹線から分岐するときのルール ― 分岐点からの距離によって保護装置を省略できる条件まで扱います。連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

→ 公開しました:第5回 保護と幹線分岐 ― ブレーカーは電線を守るためにある

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。