【EV充電・再エネ設備の設計マニュアル③】太陽光の系統連系 ― つなぐ相手は電力会社
太陽光発電の設計を「屋根にパネルを載せる工事」だと思って始めると、必ずどこかで止まります。
この工事の本質は、建物の中に発電所を作って、それを電力系統につなぐことです。つなぐ相手は施主ではありません。電力会社です。そして相手には相手の都合があり、それが工程の締切を決めます。
合言葉は「つなぐ相手は電力会社」。
ペン太
はりた
ペン太
はりたパワーコンディショナが、直流と交流の境界
太陽光発電システムの中心は、パワーコンディショナ(PCS)です。パネルが作るのは直流なので、そのままでは建物の電気設備につながりません。PCSが直流を交流に変え、系統の電圧・周波数に合わせて送り出します。
PCSが担っているのは変換だけではありません。
- 最大電力点追従(MPPT):日射に応じて、パネルから最も多く電力を取り出せる動作点を探し続ける
- 系統連系保護:系統の電圧や周波数が異常になったら、自分を切り離す
- 単独運転検出:系統が停電したことを検知して、発電を止める(後述)
- 自立運転出力:停電時に、専用のコンセントから限られた電力を取り出せる機能
つまりPCSは変換器であると同時に、保護装置でもある。この二重の役割が、系統連系の設計を理解する出発点になります。
- PCSは変換器であると同時に、保護装置でもある
- パネル容量とPCS容量は一致しない(過積載が一般的)
- 系統に出てくる最大電力はPCS容量。幹線と保護はPCS側の数字で検討する
連系点をどこに置くか
次に決めるのが連系点、つまり発電した電気を建物の電気設備のどこに合流させるかです。
- 低圧で連系する:分電盤や主幹の二次側に接続する。小規模なシステム向き。工事も協議も比較的軽い
- 高圧で連系する:受変電設備の低圧母線、あるいは高圧側に接続する。規模が大きい場合や、既に高圧受電している建物ではこちら
同時に決まるのが逆潮流の有無です。発電が消費を上回ったとき、余った電気を系統へ流すのか、流さないのか。
第1回で「接続点を決めると手続きが決まる」と書いたのは、この構造のことです。
- 連系点は低圧か高圧か。規模と既設の受電方式で決まる
- 同時に決まるのが逆潮流の有無
- 逆潮流を出すかどうかで、必要な検討と保護が変わる
単独運転を止める ― 系統連系の中心思想
系統連系の技術要件の中心にあるのが、単独運転の防止です。
こういう状況を想像してください。台風で配電線が切れ、その区間が停電した。電力会社の作業員が復旧に向かう。ところが、その区間にある建物の太陽光が発電を続けていて、切れた電線に電気を送り込んでいる。停電しているはずの電線が充電されている。
PCSはこれを2系統の方法で検出します。
- 受動的方式:系統が切れた瞬間に生じる電圧位相の跳躍や、周波数の変化を捉える。反応は速いが、負荷と発電が釣り合っていると検出しにくい
- 能動的方式:PCSが常にわずかな揺さぶり(無効電力や周波数の変動)を系統へ与え続け、その反応の変化から切り離しを判断する。釣り合っている場合でも検出できる
この2つを組み合わせて、確実に止める。だから停電したとき、太陽光が載っていても建物の電気は使えません。ここが施主の期待とずれやすい点です。停電時に使いたいなら、自立運転か、蓄電池(第4回)の話になります。
ペン太
はりた
ペン太
はりた- 系統が停電したら、発電設備も必ず止まる
- 受動的方式と能動的方式を組み合わせて検出する
- だから停電時、太陽光だけでは建物の電気は使えない
保護継電器は、何を見張っているのか
PCS内蔵の保護に加えて、規模や連系方式によっては受電設備側に保護継電器を設けます。見張っている対象で整理すると分かりやすくなります。
- 電圧を見る:過電圧(OVR)と不足電圧(UVR)。系統側の異常や、発電による電圧上昇を捉える
- 周波数を見る:過周波数(OFR)と不足周波数(UFR)。系統から切り離されたときの周波数のずれを捉える
- 電力の向きを見る:逆電力継電器(RPR)。逆潮流なしの場合の要で、系統へ向かう電力を検出して発電を止める
- 地絡を見る:高圧連系では地絡方向継電器など、既存の受電設備側の保護との協調が必要になる
- 保護継電器は「電圧・周波数・向き・地絡」で整理する
- 逆潮流なしならRPRが要になる
- 既存の受変電設備との保護協調を崩していないか必ず確認する
協議の期間が、工程の締切になる
技術的な検討がすべて終わっていても、電力会社との協議が終わらなければ連系できません。そして、この協議には時間がかかります。
おおまかな流れはこうです。
- 事前相談:計画の概要を伝え、その場所で連系できそうかを確認する
- 接続の申込み:設備仕様、単線結線図、保護継電器の整定などを添えて申し込む
- 回答・接続検討:系統への影響が検討される。工事が必要なら、その内容と費用、期間が示される
- 契約・工事・連系:合意して工事を行い、立会いのうえで連系する
注意すべきは、途中で系統側の都合により待たされる、あるいは条件が付くことがある点です。その地域の配電線にどれだけ発電設備がつながっているかによって、追加の工事が必要になることも、出力の制御が条件になることもあります。
ケース別|こんなとき、どうするか
ここまでの内容を、現場でよく出てくる相談の形にして並べます。上から順に読む必要はありません。当てはまるものだけ拾ってください。
- 技術検討が済んでも、協議が終わらなければ連系できない
- 事前相談 → 接続の申込み → 回答・接続検討 → 契約・工事・連系
- 竣工日から逆算して、いつまでに申し込むかを最初に決める
打ち合わせと、図面への記載
ケースの判断を実際に形にするのは、打ち合わせでの確認と、図面への記載です。誰と何を決め、どこに何を書くかを並べておきます。
- 電力会社と
- 事前相談:その場所で連系できそうか
- 接続の申込みに必要な書類と、回答までの期間
- 追加工事や出力制御の条件が付く可能性
- 立会いのタイミングと、連系までの手順
- 施主と
- 逆潮流を出すか、出さないか(売電の方針)
- 停電時に使いたいか(自立運転コンセント、蓄電池の要否)
- 将来の増設予定(PCS台数や連系点に効いてくる)
- 建築・構造と
- パネルとPCSの設置位置、荷重、防水の納まり
- 直流側の配線ルートと貫通位置
- 受変電・社内で
- 連系点をどこに置くか(低圧か高圧か)
- 既存の保護協調と整定を崩していないか
- 工程で
- 竣工日から逆算した申込みの締切を最初に決める
- 単線結線図
- PCS容量(パネル合計ではなく)と台数
- 連系点の位置と、逆潮流の有無
- 保護継電器の種類(OVR・UVR・OFR・UFR・RPR・地絡)
- 保護協調図・整定表
- 発電側と既存側の動作順序
- 各継電器の整定値。電力会社への提出書類にもなる
- 平面図
- パネル配置とPCSの設置位置
- 直流側の配線ルートと、開閉器の位置
- 特記仕様
- 連系区分(低圧連系/高圧連系)
- 自立運転出力の有無と、取り出せる範囲
- 力率一定制御など、系統側から求められる制御
- 電力会社への提出
- 設備仕様・単線結線図・保護継電器の整定を添えて申し込む
- 提出した版と、承諾後の版の差分を残しておく
様式は電力会社と案件によって変わります。抜けると協議が止まりやすい項目を挙げています。
ペン太
はりた
ペン太
はりたまとめ
- 太陽光の工事は「パネルを載せる工事」ではなく「系統につなぐ工事」。相手は電力会社
- PCSは変換器であると同時に保護装置。MPPT・系統連系保護・単独運転検出・自立運転出力を担う
- パネル容量とPCS容量は一致しない。電気設備側の検討はPCS容量で行う
- 連系点(低圧か高圧か)と逆潮流の有無で、必要な検討と保護が変わる
- 単独運転の防止が技術要件の中心。系統が停電したら発電も必ず止まる。だから停電時に太陽光だけでは使えない
- 保護継電器は「電圧・周波数・向き・地絡」で整理する。逆潮流なしならRPRが要
- 既存の受変電設備との保護協調を崩していないかを必ず確認する
- 協議期間が工程の締切になる。竣工日から逆算して、申込時期を最初に決める
よくある質問
Q1. 停電したとき、太陽光で建物の電気は使えますか?
そのままでは使えません。系統が停電すると、単独運転防止のためPCSが発電を停止します。使えるのは、PCSに自立運転機能がある場合に、専用のコンセントから取り出せる限られた電力(一般に1.5kW程度)だけです。停電時に通常どおり使いたいなら、蓄電池と切替の仕組みが必要になります。第4回で扱います。
Q2. 「過積載」は電気設備の設計にどう影響しますか?
パネル容量がPCS容量を上回っていても、系統側へ出てくる電力の上限はPCS容量で決まります。したがって幹線サイズ、保護、連系の検討はPCS容量で行います。ただし直流側(パネルからPCSまで)の配線と保護は、パネル側の条件で決める必要があります。交流側と直流側で見る数字が違う、という点に注意してください。
Q3. 逆潮流なしにすれば、保護継電器は不要になりますか?
逆になります。逆潮流なしの構成では、系統へ電力を流さないことを確実に保証する必要があるため、逆電力継電器などの保護が必須です。「売電しないから簡単」ではなく、「流さないことを証明する仕組みが要る」と考えてください。
Q4. 既存の高圧受電建物に後付けする場合、何がいちばん問題になりますか?
多くの場合、既存の受変電設備の保護協調と、盤内スペースです。連系用の遮断器や保護継電器を追加する場所があるか、既存の整定を見直す必要があるか。現地調査で盤の内部と既存の整定値を確認するところから始めてください。図面だけで判断すると、現物と違っていて設計変更になります。
次回予告
第4回は「蓄電池と自立運転」です。kWとkWhの違い、特定負荷と全負荷の考え方、停電時の切替時間、そして設置場所の制約。「容量はどれくらい必要ですか」という質問に、どう答えを組み立てるかを扱います。
合言葉は「容量ではなく、何を止めないか」。→ 第4回 蓄電池と自立運転 を公開しました。
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