「この建物、避雷針いるんだっけ?」――設計の最初に必ず出てくる質問です。答えは建築基準法消防法・火薬類取締法の3つの法令で決まり、キーワードは高さ20m指定数量の10倍です。ただし「20m」は塔屋まで入れて測る、煙突や広告塔などの工作物も対象になる、といった細かいルールがあります。この記事では、避雷設備が義務になる建物・工作物・施設を、条文をたどりながら一つずつ整理します。

結論

避雷設備が義務になるのは、高さ20mを超える建築物と工作物(建築基準法)指定数量の10倍以上の危険物施設(消防法)火薬庫(火薬類取締法)の3つです。

  • 高さは地盤面から。塔屋も算入する(棟飾・防火壁の突出部は算入しない)
  • 守るのは「20mを超える部分」。20mちょうどは対象外
  • 煙突・広告塔・高架水槽・鉄柱・観覧車なども 20m を超えれば対象
  • 危険物施設は製造所・一般取扱所・屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所。LPSクラスⅠが基本
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
建築基準法(高さ20mを超える建築物と工作物)、消防法(指定数量の10倍以上の危険物施設)、火薬類取締法(火薬庫)の3つを並べた図
避雷設備の設置義務は、この3つの法令のどれかから来ます。どれにも当たらなければ、義務ではなく「必要性の検討」になります。
この記事で読めるようになる用語:雷保護 受雷部 突針 回転球体法 引下げ導線 避雷導線

義務はどの法令から来る? ― 3つの法令の早見表

避雷設備の義務を決める法令は、対象ごとに分かれています。建物の高さで決まるのが建築基準法、中で扱う物で決まるのが消防法と火薬類取締法です。一つの建物が複数に当たることもあります(たとえば高さ25mの危険物の製造所)。

法令 対象 条件 構造の基準
建築基準法
第33条
建築物 高さ 20m を超える 告示(平成12年建設省告示第1425号)→ JIS Z 9290-3:2019
建築基準法
第88条(第33条を準用)
煙突・広告塔・高架水槽・鉄柱などの工作物、観覧車などの遊戯施設 高さ 20m を超える 同上
消防法
危険物の規制に関する政令
製造所・一般取扱所・屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所 指定数量の倍数が 10 以上 危険物の規制に関する規則 第13条の2の3 → JIS Z 9290-3:2019
火薬類取締法
施行規則 第24条ほか
火薬庫 火薬庫であること 施行規則 第30条 → 経済産業大臣の告示
出典:建築基準法・同施行令、危険物の規制に関する政令・規則、火薬類取締法施行規則(e-Gov法令検索)をもとに作成

建築基準法と消防法の避雷設備は、どちらも 2025年4月1日から JIS Z 9290-3:2019 に基準が切り替わりました。建築基準法は国土交通省の告示改正、消防法は危険物の規制に関する規則の改正によるものです。

ペン太ペン太
高さ20mを超えていなくても、危険物を扱っていたら避雷針がいるんですか?
ハリタハリタ
いります。消防法のほうは高さに関係ありません。平屋の倉庫でも、指定数量の10倍以上を置くなら避雷設備が必要です。建築基準法と消防法は、別々にチェックしてください。
ここまでのポイント
  • 義務は建築基準法・消防法・火薬類取締法の3系統
  • 建物の高さで決まるのが建築基準法、中身で決まるのが消防法と火薬類取締法
  • 建築基準法と消防法は 2025年4月から JIS Z 9290-3:2019


「高さ20m」はどこから測る? ― 塔屋は入れる

建築基準法第33条の条文は「高さ二十メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない」です。この「高さ」の測り方には、避雷設備ならではのルールがあります。

本体18mに塔屋4mが載った建物は22mで避雷設備が必要、本体18mに防火壁の突出部だけがある建物は18mで対象外になることを比べた図
塔屋は避雷設備の高さに入ります。棟飾や防火壁の屋上突出部は入りません。
部分 避雷設備の高さに 根拠
建物本体(地盤面から) 入れる 施行令 第2条第1項第6号
階段室・昇降機塔・装飾塔・物見塔などの塔屋 入れる(12mまで不算入の扱いは使えない) 同号ロ(法第33条の高さを算定する場合を除く)
棟飾・防火壁の屋上突出部など 入れない 同号ハ
出典:建築基準法施行令 第2条第1項第6号

ふだん建物の高さを考えるときは、建築面積の8分の1以内の塔屋は「12mまで高さに入れない」と覚えている人が多いはずです。ところが施行令のこの条文は、法第33条(避雷設備)の高さを算定する場合を除くと明記しています。本体18m・塔屋4mの建物は、避雷設備の上では22mです。

⚠️ 「20mを超える部分」を守る

施行令第129条の14は、避雷設備を「建築物の高さ二十メートルをこえる部分を雷撃から保護するように」設けるとしています。法令上の最低限は20mを超える部分ですが、実際には JIS Z 9290-3 に従って屋上の縁や突角部まで受雷部を配置するので、屋上全体を守る設計になるのが普通です。

第33条にはただし書があり、「周囲の状況によって安全上支障がない場合」は設置しなくてよいとされています。ただしこの判断は設計者だけで決めにくいので、特定行政庁や確認検査機関と事前に協議するのが基本です。

ここまでのポイント
  • 高さは地盤面から。塔屋は「12mまで不算入」が使えず、そのまま算入
  • 棟飾・防火壁の屋上突出部は算入しない
  • 法令上守るのは20mを超える部分。ただし書の適用は事前協議で


煙突や広告塔も対象になる? ― 工作物と遊戯施設

建築基準法第88条は、煙突や広告塔などの工作物に、建築物のルールの一部を準用しています。その準用リストに第33条(避雷設備)が入っているため、工作物も高さ20mを超えれば避雷設備の対象です。

煙突・広告塔・高架水槽・鉄塔・観覧車が20mの線を超えて立っている図
工作物も、高さが20mを超えれば避雷設備の対象です。
工作物の種類(施行令 第138条) 工作物として扱う高さ 避雷設備が要るのは
煙突(ストーブの煙突を除く) 6m を超えるもの 高さ 20m を超えるもの
鉄筋コンクリート造の柱・鉄柱・木柱など(旗ざおを除く) 15m を超えるもの
広告塔・広告板・装飾塔・記念塔など 4m を超えるもの
高架水槽・サイロ・物見塔など 8m を超えるもの
観光用エレベーター・エスカレーター、コースター・ウォーターシュート、観覧車・メリーゴーラウンド・飛行塔など 高さの定めなし(昇降機等) 高さ 20m を超えるもの
出典:建築基準法 第88条第1項、同施行令 第138条をもとに作成。擁壁も第138条の工作物ですが、20mを超える擁壁は通常ありません

ポイントは、表の真ん中の列(工作物として扱う高さ)と右の列(避雷設備の高さ)が別だということです。たとえば高さ10mの広告塔は工作物としての確認申請は必要ですが、避雷設備は要りません。避雷設備はあくまで20mが境目です。

ペン太ペン太
工場の敷地にある高い煙突も、建物とは別に避雷針がいるんですか?
ハリタハリタ
そうです。煙突は煙突で1つの工作物として20mを超えるかを見ます。建物の避雷設備の保護範囲に入っていれば兼ねられることもありますが、それは設計で確かめる話。まずは「敷地内の20m超のものを全部リストアップ」から始めましょう。
ここまでのポイント
  • 第88条で第33条が準用されるので、工作物も20m超で対象
  • 煙突・柱・広告塔・高架水槽・観覧車などが該当
  • 工作物として扱う高さ(4m・6m・8m・15m)と避雷設備の20mは別物


危険物施設・火薬庫はどう決まる? ― 高さではなく中身で決まる

指定数量の10倍以上で避雷設備が必要になる危険物施設として、製造所・一般取扱所・屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所を条文番号つきで並べた図
危険物施設は高さに関係なく、指定数量の10倍以上かどうかで決まります。
施設区分 条件 根拠(危険物の規制に関する政令)
製造所 指定数量の倍数が 10 以上 第9条第1項第19号
一般取扱所 同上 第19条第1項(第9条第1項を準用)
屋内貯蔵所(貯蔵倉庫) 指定数量の 10倍以上 第10条第1項第14号
屋外タンク貯蔵所 指定数量の倍数が 10 以上 第11条第1項第14号
出典:危険物の規制に関する政令(e-Gov法令検索)。いずれも「周囲の状況によって安全上支障がない場合」の例外があります

構造は危険物の規制に関する規則で JIS に従うことになっていて、2025年4月1日から JIS Z 9290-3:2019 です。JIS Z 9290-3 は、危険物施設や爆発の危険を伴う建築物等をLPSクラスⅠ(合理的な方法で守っている場合はⅡ)としています。一般の建物のクラスⅣより、回転球体の半径は 60m→20m、メッシュ幅は 20m→5m と、ぐっと細かくなります。

「指定数量の倍数」は、扱う危険物ごとの数量をそれぞれの指定数量で割って足し合わせた値です。倍数は用途や在庫計画で変わるので、設計の途中で危険物の量が増えて10倍を超え、避雷設備が後から必要になる、ということも起こります。数量は施主と消防機関に早めに確認しておきましょう。

火薬庫

火薬類取締法の施行規則は、火薬庫に避雷装置を設けることを定めています(地上式一級火薬庫なら第24条第12号)。避雷装置の位置・型式・構造・材質は第30条で経済産業大臣の告示によるとされています。建築基準法や消防法とは別の告示なので、火薬庫を扱うときは最新の告示を必ず確認してください。

📌 JIS上の「爆発の危険を伴う建築物等」

JIS Z 9290-3 は、クラスⅠを適用する「爆発の危険を伴う建築物等」として、建築基準法第27条第3項の二の建築物、消防法第10条の危険物施設、火薬類取締法第11条の火薬庫、電気設備に関する技術基準を定める省令の第68条・第69条の場所(爆発・火災のおそれのある場所)をもつ建物を挙げています。

ここまでのポイント
  • 危険物施設は「指定数量の10倍以上」で、高さに関係なく対象
  • 製造所・一般取扱所・屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所。LPSクラスⅠが基本
  • 火薬庫は火薬類取締法の避雷装置。基準は経済産業大臣の告示


義務がない建物・既存の建物は? ― 必要性の判断と改修

20m以下の建物で危険物も扱わないなら、避雷設備は法令上の義務ではありません。それでも、次のような建物では付けるかどうかを検討します。JIS Z 9290-3 は、保護のレベルを建築主・設計者が立地や用途から選ぶとしています。

検討の観点 具体例
立地・落雷の多さ 落雷の多い地域、平地の一軒家、山の上や崖の上
人が多く集まる 学校、病院、商業施設、劇場、寺院
重要な業務・設備 官庁、電話局・データセンター、銀行、大量の電子機器がある建物
文化的・経済的な価値 美術館、博物館、文化財の建物
その他 家畜を多く収容する畜舎、毒物・放射性物質を扱う建物
出典:JIS Z 9290-3:2019 附属書D(D.4.1)、JIS A 4201:2003 の解説の例示をもとに作成

また、避雷設備を付けない建物でも、電源線や通信線から入る雷サージへの対策(SPD)は別に検討が必要です。落雷で機器が壊れるのは、直撃よりもこちらのほうがずっと多いからです。

既存の建物と改修

  • 2025年4月の規格切替の経過措置は、2026年3月31日までに工事に着手した建物まで。それ以降に着工する建物は JIS Z 9290-3 で設計する
  • 旧JISで作られた既存の避雷設備が、切替だけで直ちに違法になるわけではない
  • ただし増築や大規模な修繕・模様替えのときは、現行の規格への適合が求められることがある。改修計画では早めに確認する
  • 増築で高さが20mを超える、塔屋を増設する、危険物の量が10倍を超える――といった変更で、新たに義務が発生することにも注意

✅ 設計の最初に確認すること

  1. 建物の高さ(塔屋込み、地盤面から)は 20m を超えるか
  2. 敷地内に 20m を超える工作物(煙突・鉄塔・広告塔・高架水槽など)はあるか
  3. 危険物を扱うか。扱うなら指定数量の倍数はいくつか、施設区分は何か
  4. 火薬庫はあるか
  5. 義務がない場合も、立地・用途・重要度から付けるべきか
ここまでのポイント
  • 義務がなくても、落雷の多い地域や重要な建物では設置を検討
  • 直撃がなくても雷サージ対策(SPD)は別に要る
  • 増築・塔屋増設・危険物の増量で、新たに義務が発生することがある

よくある質問

高さ20mちょうどの建物に避雷設備は必要ですか?

建築基準法第33条は「高さ20mをこえる建築物」が対象なので、20mちょうどは義務の対象外です。ただし、避雷設備の高さは塔屋(階段室・昇降機塔など)まで含めて地盤面から測るため、本体が20m未満でも塔屋を足して20mを超えれば対象になります。

塔屋は高さに算入しないのではありませんか?

建築基準法施行令第2条第1項第6号ロで、建築面積の8分の1以内の塔屋は12mまで高さに算入しない決まりがありますが、法第33条(避雷設備)の高さを算定する場合はこの扱いから除外されています。避雷設備では塔屋も高さに入れます。棟飾や防火壁の屋上突出部は、避雷設備でも高さに入れません。

20mを超える建物は、建物全体を避雷設備で守る必要がありますか?

建築基準法施行令第129条の14では、避雷設備は建築物の高さ20mを超える部分を雷撃から保護するように設けることになっています。法令上の最低限は20mを超える部分です。実際の設計では JIS Z 9290-3 に沿って屋上の縁や角を含めて受雷部を配置します。

煙突や広告塔にも避雷設備は必要ですか?

必要な場合があります。建築基準法第88条で、煙突・広告塔・高架水槽・物見塔・鉄柱などの工作物や、観覧車などの遊戯施設にも第33条が準用されるため、高さ20mを超えれば避雷設備の対象になります。

危険物施設ならすべて避雷設備が必要ですか?

危険物の規制に関する政令で避雷設備を求めているのは、指定数量の倍数が10以上の製造所・一般取扱所・屋内貯蔵所(貯蔵倉庫)・屋外タンク貯蔵所などです。10倍未満や、これ以外の施設区分では、この規定による義務はありません。周囲の状況によって安全上支障がない場合の例外もあり、判断は所轄の消防機関と協議します。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。