変圧器の過負荷運転ってなに?
変圧器容量以上の過負荷運転は可能です。
- 連続的に過負荷にする場合の最高許容負荷
冷却方式 | 最高許容負荷[ % ] |
自冷式 | 125 |
しかし運転に当たっては下記の点について考慮しましょう
- 電気学会の『変圧器運転指針』を確認する
- 変圧器メーカーの機器仕様を確認する
- 受変電設備を作図中の方
- 変圧器の過負荷運転について調べている方
- 過負荷運転とは何か
- 過負荷運転可能時間
- 過負荷運転可能容量
- 変圧器容量の検討方法
変圧器の過負荷運転の指針
- 変圧器の過負荷運転の指針については電気学会の『油入変圧器運転指針』『乾式変圧器運転指針』に記載されています
- 変圧器メーカーの過負荷運転の記述にも過負荷運転の条件については電気学会の『変圧器過負荷運転指針』を参照するように書かれています。
本指針は、昭和に作成されているため現行機種との性能が異なる場合がありますが、過負荷運転における他の記述がないため過負荷運転においては本指針に準ずるものとしています
過負荷運転の条件
- 周囲温度低下の場合
- 温度上昇試験記録が規定温度上昇値に達しなかった場合
- 短時間過負荷運転の場合
- 負荷率が低下した場合
- 冷却方式を変えた場合
- 種々の条件が重なった場合
このうち、実際の過負荷運転時に考慮するべき3つの項目を重点的に解説します
- 周囲温度低下の場合
- 温度上昇試験記録が規定温度上昇値に達しなかった場合
- 短時間過負荷運転の場合
過負荷運転時はこの3つを考慮し検討するようにしましょう。
最終的な判断として
- 種々の条件が重なった場合に移ります
周囲温度低下による条件
- 周囲最高温度を30℃とする
- 30℃より1℃下がるごとに0.8%の過負荷運転が可能
- 下限は0℃とし0℃以下は対象外となる
周囲温度10℃の場合、変圧器は
0.8×(30℃ー10℃)=16%
の過負荷運転が可能ということになります
温度低下時の過負荷運転ができない場合
温度低下による抵抗損減少の効果よりも
油の粘性増大による放熱効率の低下が大きくなるので
媒体の温度が0℃以下に下がるとそれ以上の過負荷運転はできないものと考える。
温度上昇試験による条件
- 規定の温度上昇限度より試験値が5℃低い場合
- その差1℃ごとに1%の過負荷運転が可能
- 過負荷許容値は5%の余裕を見込む
巻線平均温度上昇試験値が45℃の場合、規定上昇限度を55℃とすると
変圧器は1×(55‐5‐45)=5%
の過負荷運転が可能ということになります
短時間の過負荷運転による条件
- 24時間以内におきる1回の短時間過負荷に対して適用
- 過負荷前の負荷は過負荷前の2時間平均か、24時間の平均(過負荷時間を除く)いずれかの大きいほうをとる
- 油入変圧器の定格出力の倍数
時間[ h ] | 過負荷前の負荷[ % ] | ||
90 | 70 | 50 | |
定格出力の倍数[ 倍 ] | |||
1/2(30分) | 1.47 | 1.5 | 1.5 |
1 | 1.33 | 1.39 | 1.45 |
2 | 1.2 | 1.25 | 1.29 |
4 | 1.1 | 1.14 | 1.15 |
100kVAの変圧器を8~10時間過負荷運転したいがよいか?原則として出来ません。(電気学会発行の『変圧器過負荷運転指針』をご参照ください)
50%出力で連続運転後、113%8時間が限度となります出典:(過負荷運転 | 保守・サービス | 東芝産業機器システム株式会社 )より
過負荷前の負荷率が70%、過負荷時間が2時間の場合
定格出力の1.25倍
の過負荷運転が可能ということになります
負荷率の低下による条件
- 24時間以内の時間周期にて適用
- 周期内の負荷率が90%より低くなった場合とする
- 90%との差1%毎に下記表の数値だけ過負荷可能
- 負荷率低下による過負荷
冷却方式 | 定格出力に対する増加の割合 | 最高[ % ]注1) |
自冷式 | 0.5 | 20 |
注1)負荷率50%に相当するもので、負荷率50%以下に下がってもこれ以上過負荷させることはできない
冷却方式を変えた場合の条件(参考)
- 変圧器温度を物理的に下げる
- 変圧器にファンを取り付ける
これはあくまでも理論上の検討であり、変圧器の構造、種類によって異なるため指針としては考慮していない
種々の条件が重なった場合の条件 ☜条件の総括
- 周囲温度低下による過負荷
- 温度上昇試験記録による過負荷
- 短時間過負荷運転による過負荷
は各々の過負荷率を加算してもよいことになっています
しかし連続的に過負荷運転する場合は、次の表の値以上の過負荷ならないようにしましょう
- 連続的に過負荷にする場合の最高許容負荷
冷却方式 | 最高許容負荷[ % ] |
自冷式 | 125 |
- 短時間過負荷にする場合の最高許容負荷
時間[ h ] | 過負荷前の負荷[ % ] | ||
90 | 70 | 50 | |
定格出力の倍数[ 倍 ] | |||
1/2(30分) | 1.47 | 1.5 | 1.5 |
1 | 1.33 | 1.39 | 1.45 |
2 | 1.2 | 1.25 | 1.29 |
4 | 1.1 | 1.14 | 1.15 |
短時間の過負荷の場合過負荷前の負荷50%で30分使用の定格出力×150%が最大許容負荷となります
- 連続運転時 :125%
- 短時間運転時 :115~150%
過負荷運転容量の計算例
- 油入変圧器 :自冷式
- 周囲温度最高 :20℃
- 温度上昇試験記録 :48℃
- 負荷率 :90%
- 過負荷運転時間 :2時間
- 周囲温度低下による過負荷
0.8×(30‐20)=8%
- 温度上昇試験記録による過負荷
1.0×(55‐5ー48)=2%
- 短時間過負荷
20%
時間[ h ] | 過負荷前の負荷[ % ] | ||
90 | 70 | 50 | |
定格出力の倍数[ 倍 ] | |||
1/2(30分) | 1.47 | 1.5 | 1.5 |
1 | 1.33 | 1.39 | 1.45 |
2 | 1.2 | 1.25 | 1.29 |
4 | 1.1 | 1.14 | 1.15 |
上記過負荷率を加算する
8+2+20=30[%]
- 過負荷率130%
- 連続過負荷時間2時間
が可能ということになります
過負荷運転率検討時の注意点とその理由
- 指針の発表から歳月が空きすぎている
- 周囲温度低下に伴う検討は対象外とした方がよい
- 連続過負荷運転を抑える方向で検討する
- 今回の電気学会の指針は資料が古いものであり、特に近年の平均気温の上昇により周囲温度低下による負荷率の検討はむしろ地域・設置場所によっては上がる可能性は大きい
- 極力連続運転をせずに短時間の過負荷運転を協議すべきである
- 目安として短時間運転時は表の値110%~150%、連続的に使用する場合は125%
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まとめ
過負荷運転に考慮する条件
- 周囲温度低下の場合
- 温度上昇試験記録が規定温度上昇値に達しなかった場合
- 短時間過負荷運転の場合
周囲温度による条件
- 周囲最高温度を30℃とする
- 30℃より1℃下がるごとに0.8%の過負荷運転が可能
- 下限は0℃とし0℃以下は対象外となる
温度上昇試験による条件
- 規定の温度上昇限度より試験値が5℃低い場合
- その差1℃ごとに1%の過負荷運転が可能
- 過負荷許容値は5%の余裕を見込む
短時間の過負荷運転による条件
- 24時間以内におきる1回の短時間過負荷に対して適用
- 過負荷前の負荷は過負荷前の2時間平均か、24時間の平均(過負荷時間を除く)いずれかの大きいほうをとる
- 連続的に過負荷にする場合の最高許容負荷
冷却方式 | 最高許容負荷[ % ] |
自冷式 | 125 |
- 短時間過負荷にする場合の最高許容負荷
時間[ h ] | 過負荷前の負荷[ % ] | ||
90 | 70 | 50 | |
定格出力の倍数[ 倍 ] | |||
1/2(30分) | 1.47 | 1.5 | 1.5 |
1 | 1.33 | 1.39 | 1.45 |
2 | 1.2 | 1.25 | 1.29 |
4 | 1.1 | 1.14 | 1.15 |
短時間の過負荷の場合過負荷前の負荷50%で30分使用の定格出力×150%が最大許容負荷となります