【照明設備の設計マニュアル②】照度計算と器具配置 ― 光束法・逐点法・格子配置
こんにちは、HARITAの設計室です。連載「照明設備の設計マニュアル」第2回は照度計算と器具配置。第1回で「どこを何ルクスにするか」が決まりました。今回は、その目標を実際の台数と位置に変換します。
今回の合言葉は「台数は式が決め、位置は天井が決める」。何台必要かは計算で出ますが、どこに置けるかは天井の事情で決まります。この2つは別の仕事です。
今回の全体像 ― 3つの道具を使い分ける
3つは競合する方法ではなく、役割が違う道具です。光束法でおおよその台数を出し、格子配置で並べ、気になる点を逐点法で確かめる。この順番が実務の流れです。
① 光束法 ― 必要台数を出す
光束法は、部屋全体の平均照度から必要な器具の台数を出す方法です。式はひとつだけ覚えれば足ります。
分子が「その部屋に必要な光の総量」、分母が「器具1台が実際に作業面へ届ける光」。割り算の意味を言葉にすると、そのまま日本語になります。
つまずきやすいのは照明率Uです。器具が出した光のうち、どれだけが作業面に届くかを表す値で、部屋の形(室指数)と天井・壁・床の反射率から、器具メーカーの表を引いて求めます。細長い部屋や天井の高い部屋ほど、光は壁に吸われて届きにくくなる ― これが室指数の正体です。
保守率Mは第1回で触れたとおり、清浄な屋内のLEDなら0.7前後が目安。UとMを1.0のまま計算すると、必要台数が3割ほど足りなくなります。
② 逐点法 ― 一点の明るさを確かめる
光束法は平均の話です。「部屋の平均は750lxですが、あの隅は400lxです」ということが普通に起こります。特定の一点が気になるとき ― 受付カウンター、機械の操作盤、高天井の作業台 ― に使うのが逐点法です。
考え方はシンプルで、照度は光源からの距離の2乗に反比例し、光が斜めから当たるほど弱くなるというものです。だから真下がいちばん明るく、横にずれると急に落ちます。高天井ほど、この落ち方が効いてきます。
この「1台がどこまで照らせるか」を円で捉える考え方は 照度計算の「照度範囲の円」とは?逐点法の基本 で図解しています。円の重なりで面をつくる、という感覚がつかめると配置が速くなります。
③ 格子配置 ― 間隔を最大化して均斉度を保つ
台数が出たら、次は並べ方です。ここで効くのが格子(四角)配置。等間隔の格子に置くと、隣り合う器具の光が重なり合って、少ない台数でもムラの少ない面がつくれます。
ポイントは器具の間隔Sと器具から作業面までの高さHの比です。器具ごとに「これ以上広げるとムラが出る」という上限(最大許容間隔比)が決められていて、それを超えない範囲でできるだけ広げる ― これが台数を減らしつつ品質を守るコツです。壁際は、器具間隔の半分あたりを目安にします。
四角配置で4台の光を合成する考え方は 照明の「四角(格子)配置」とは?4台合成で間隔を最大化 に詳しく書いています。
④ プロット図に落とす ― 天井は取り合いの現場
計算どおりの美しい格子が、そのまま天井に載ることはまずありません。天井には、空調の吹出口、スプリンクラーヘッド、煙感知器、点検口、スピーカーが先に住んでいます。そして、たいてい動かせるのは照明のほうです。
だから実務では、格子を崩す前提で余裕を持たせて計算します。ぎりぎりの台数で組むと、1台ずらした瞬間に照度が足りなくなります。そして崩した場所は、必ず図面に理由を書く。第6回で扱う非常照明も、この段階から位置を意識しておくと後戻りが減ります。
実際のプロット図の例は 【電気設備標準図】マンション:プロット図 が参考になります。器具のリスト化と型番管理は 照明器具リスト作成ツール にまとめてあります。
まとめ
- 光束法で台数を出す。N=(E×A)÷(F×U×M)。分子は必要な光、分母は届く光
- 照明率Uは室指数と反射率から表で引く。細長い部屋・高い天井ほど下がる
- 逐点法は一点を確かめる道具。照度は距離の2乗で落ちる
- 格子配置はS/Hの上限を超えない範囲で間隔を最大化。壁際はS/2が目安
- 天井は取り合いの現場。格子は崩れる前提で余裕を持たせ、崩し方を図面に書く
よくある質問
Q1. 照明率Uは、だいたいの値で計算してもいいですか?
A. 概算の段階ならかまいませんが、最終図では器具ごとの表を引いてください。UとMは掛け算で効くので、両方を甘く見ると必要台数が3割ずれます。ずれる方向がいつも「足りない」側なのが厄介なところです。
Q2. 器具の間隔は、広いほうが得ですか?
A. 台数は減りますが、広げすぎると床にシマ模様ができます。平均照度は満たしていても均斉度で落ちる ― これが「計算は合っているのに暗く感じる部屋」の正体です。器具ごとの最大許容間隔比を守ってください。
Q3. 照明計算ソフトがあれば、手計算はいらないのでは?
A. ソフトは速くて正確ですが、入力値の妥当性は判断してくれません。保守率を1.0のまま回せば、そのまま明るい結果が出ます。式の意味を知っている人だけが、出てきた数字を疑えます。
次回予告
第3回は「器具の選定」。同じ光束でも、配光が違えば机上の明るさは何倍も変わります。配光と天井高、色温度と演色性、そして防湿・防雨といった設置環境。カタログのどこを見て決めるかの話です。連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。
→ 公開しました:第3回 器具の選定 ― 配光・色温度・演色性・設置環境





