この記事は連載「照明設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
技術図書館照度計算と器具配置|台数は式が、位置は天井が決める光束法で台数を出し、格子で並べ、逐点法で確かめる。UとMを1.0にすると3割足りなくなるこの資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事の全体像:光束法で台数を出し、逐点法で一点を確かめ、格子配置で間隔を最大化する。天井の取り合いとプロット図まで

こんにちは、HARITAの設計室です。連載「照明設備の設計マニュアル」第2回は照度計算と器具配置第1回で「どこを何ルクスにするか」が決まりました。今回は、その目標を実際の台数と位置に変換します。

今回の合言葉は「台数は式が決め、位置は天井が決める」。何台必要かは計算で出ますが、どこに置けるかは天井の事情で決まります。この2つは別の仕事です。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 光束法の式の、分子と分母はそれぞれ何を表していますか。
  • 照明率Uを1.0で計算すると、台数はどちらにずれますか。
  • 器具の間隔は、広いほうが得ですか。
ペン太ペン太
照度が決まったので、あとは計算して台数を出して並べるだけですね。
はりたはりた
半分正解。何台必要かは計算で出るけど、どこに置けるかは天井の事情で決まる。
ペン太ペン太
天井の事情……。
はりたはりた
空調の吹出口も、スプリンクラーも、感知器も、先に住んでいるからね。今回の合言葉は「台数は式が決め、位置は天井が決める」。この2つは別の仕事だ。
この記事でわかること
第1回で決めた「どこを何ルクスにするか」を、実際の台数と位置に変換します。計算の道具と、天井の現実の話です。

今回の全体像 ― 3つの道具を使い分ける

トピック1:3つの道具を、使い分ける
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図1:光束法・逐点法・格子配置の使い分け

3つは競合する方法ではなく、役割が違う道具です。光束法でおおよその台数を出し、格子配置で並べ、気になる点を逐点法で確かめる。この順番が実務の流れです。

道具何をする使う場面
光束法部屋全体の平均照度から必要な器具の台数を出す最初に、おおよその台数を出す
格子配置等間隔の格子に置いて、少ない台数でムラの少ない面をつくる台数が出たあと、並べる
逐点法特定の一点の明るさを確かめる受付カウンター、機械の操作盤、高天井の作業台
ここまでのポイント
  • 3つは競合する方法ではなく、役割が違う道具
  • 光束法でおおよその台数を出し、格子配置で並べ、気になる点を逐点法で確かめる
  • この順番が、実務の流れ

① 光束法 ― 必要台数を出す

トピック2:必要台数を、出す

光束法は、部屋全体の平均照度から必要な器具の台数を出す方法です。式はひとつだけ覚えれば足ります。

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図2:光束法の式の分解

分子が「その部屋に必要な光の総量」、分母が「器具1台が実際に作業面へ届ける光」。割り算の意味を言葉にすると、そのまま日本語になります。

つまずきやすいのは照明率Uです。器具が出した光のうち、どれだけが作業面に届くかを表す値で、部屋の形(室指数)と天井・壁・床の反射率から、器具メーカーの表を引いて求めます。細長い部屋や天井の高い部屋ほど、光は壁に吸われて届きにくくなる ― これが室指数の正体です。

保守率Mは第1回で触れたとおり、清浄な屋内のLEDなら0.7前後が目安。UとMを1.0のまま計算すると、必要台数が3割ほど足りなくなります

作図イメージ:光束法の式の分解と、天井の取り合いで格子が崩れること
図3:作図イメージ ― 光束法の式の分解と、崩れる格子
ここまでのポイント
  • 光束法は、部屋全体の平均照度から必要な器具の台数を出す方法。式はひとつだけ覚えれば足りる
  • 分子が「その部屋に必要な光の総量」、分母が「器具1台が実際に作業面へ届ける光」
  • つまずきやすいのは照明率U。器具が出した光のうち、どれだけが作業面に届くかを表す値
  • 部屋の形(室指数)と天井・壁・床の反射率から、器具メーカーの表を引いて求める
  • 細長い部屋や天井の高い部屋ほど、光は壁に吸われて届きにくくなる ― これが室指数の正体
  • 保守率Mは清浄な屋内のLEDなら0.7前後が目安。UとMを1.0のまま計算すると、必要台数が3割ほど足りなくなる

② 逐点法 ― 一点の明るさを確かめる

トピック3:一点の明るさを、確かめる

光束法は平均の話です。「部屋の平均は750lxですが、あの隅は400lxです」ということが普通に起こります。特定の一点が気になるとき ― 受付カウンター、機械の操作盤、高天井の作業台 ― に使うのが逐点法です。

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図4:逐点法と照度範囲の円

考え方はシンプルで、照度は光源からの距離の2乗に反比例し、光が斜めから当たるほど弱くなるというものです。だから真下がいちばん明るく、横にずれると急に落ちます。高天井ほど、この落ち方が効いてきます。

この「1台がどこまで照らせるか」を円で捉える考え方は 照度計算の「照度範囲の円」とは?逐点法の基本 で図解しています。円の重なりで面をつくる、という感覚がつかめると配置が速くなります。

ここまでのポイント
  • 光束法は平均の話。「部屋の平均は750lxですが、あの隅は400lxです」ということが普通に起こる
  • 特定の一点が気になるとき ― 受付カウンター、機械の操作盤、高天井の作業台 ― に使うのが逐点法
  • 考え方はシンプルで、照度は光源からの距離の2乗に反比例し、光が斜めから当たるほど弱くなる
  • だから真下がいちばん明るく、横にずれると急に落ちる。高天井ほど、この落ち方が効いてくる
  • 「1台がどこまで照らせるか」を円で捉えると、配置が速くなる

③ 格子配置 ― 間隔を最大化して均斉度を保つ

トピック4:間隔を、最大化する

台数が出たら、次は並べ方です。ここで効くのが格子(四角)配置。等間隔の格子に置くと、隣り合う器具の光が重なり合って、少ない台数でもムラの少ない面がつくれます。

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図5:格子配置と器具間隔

ポイントは器具の間隔S器具から作業面までの高さHの比です。器具ごとに「これ以上広げるとムラが出る」という上限(最大許容間隔比)が決められていて、それを超えない範囲でできるだけ広げる ― これが台数を減らしつつ品質を守るコツです。壁際は、器具間隔の半分あたりを目安にします。

四角配置で4台の光を合成する考え方は 照明の「四角(格子)配置」とは?4台合成で間隔を最大化 に詳しく書いています。

ここまでのポイント
  • 等間隔の格子に置くと、隣り合う器具の光が重なり合って、少ない台数でもムラの少ない面がつくれる
  • ポイントは器具の間隔Sと、器具から作業面までの高さHの比
  • 器具ごとに「これ以上広げるとムラが出る」という上限(最大許容間隔比)が決められている
  • それを超えない範囲でできるだけ広げる ― これが台数を減らしつつ品質を守るコツ
  • 壁際は、器具間隔の半分あたりを目安にする
ペン太ペン太
器具の間隔って、広いほうが台数が減って得ですよね。
はりたはりた
広げすぎると、床にシマ模様ができるよ。
ペン太ペン太
平均照度は満たしているのに、ですか。
はりたはりた
そう。平均は満たしていても均斉度で落ちる ― これが「計算は合っているのに暗く感じる部屋」の正体だ。器具ごとの最大許容間隔比は守ってほしい。

④ プロット図に落とす ― 天井は取り合いの現場

トピック5:天井は、取り合いの現場

計算どおりの美しい格子が、そのまま天井に載ることはまずありません。天井には、空調の吹出口、スプリンクラーヘッド、煙感知器、点検口、スピーカーが先に住んでいます。そして、たいてい動かせるのは照明のほうです

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図6:天井の取り合いとプロット図

だから実務では、格子を崩す前提で余裕を持たせて計算します。ぎりぎりの台数で組むと、1台ずらした瞬間に照度が足りなくなります。そして崩した場所は、必ず図面に理由を書く。第6回で扱う非常照明も、この段階から位置を意識しておくと後戻りが減ります。

実際のプロット図の例は 【電気設備標準図】マンション:プロット図 が参考になります。器具のリスト化と型番管理は 照明器具リスト作成ツール にまとめてあります。

ここまでのポイント
  • 計算どおりの美しい格子が、そのまま天井に載ることはまずない
  • 天井には空調の吹出口、スプリンクラーヘッド、煙感知器、点検口、スピーカーが先に住んでいる
  • そしてたいてい動かせるのは照明のほう
  • だから実務では、格子を崩す前提で余裕を持たせて計算する
  • ぎりぎりの台数で組むと、1台ずらした瞬間に照度が足りなくなる
  • 崩した場所は、必ず図面に理由を書く。非常照明も、この段階から位置を意識しておくと後戻りが減る

まとめ

トピック6:今日のまとめ

照度計算と器具配置は、ふたつの別の仕事です。台数は式が決め、位置は天井が決める ― 何台必要かは計算で出ますが、どこに置けるかは天井の事情で決まります。

決めることと、外したときに起きること

この回の落とし穴は、どれも「計算は合っているのに、現場で困る」タイプです。

決めること決め方外すと
台数N=(E×A)÷(F×U×M)U・Mを甘く見ると、必要台数が3割ずれる。しかも常に「足りない」側
照明率 U室指数と反射率から器具ごとの表を引く細長い部屋・高い天井ほど下がるのに、概算値のまま最終図へ
間隔S/H の上限(最大許容間隔比)を超えない範囲で最大化広げすぎて床にシマ模様。平均は満たしていても均斉度で落ちる
壁際器具間隔の半分あたりが目安壁際が暗くなる
配置格子は崩れる前提で余裕を持たせるぎりぎりの台数で組み、1台ずらした瞬間に足りなくなる

計算 ― 台数を出す

  • 光束法で台数を出す。N=(E×A)÷(F×U×M)。分子は必要な光、分母は届く光
  • 照明率Uは室指数と反射率から表で引く。細長い部屋・高い天井ほど下がる
  • 逐点法は一点を確かめる道具。照度は距離の2乗で落ちる

配置 ― 天井に載せる

  • 格子配置はS/Hの上限を超えない範囲で間隔を最大化。壁際はS/2が目安
  • 天井は取り合いの現場。格子は崩れる前提で余裕を持たせ、崩し方を図面に書く

最後に ― 数字を疑えるかどうか

照明計算ソフトは速くて正確ですが、入力値の妥当性は判断してくれません。保守率を1.0のまま回せば、そのまま明るい結果が出ます。

式の意味を知っている人だけが、出てきた数字を疑えます。分子は必要な光、分母は届く光 ― この一行を持っているかどうかが、ソフトを使いこなせるかどうかの分かれ目です。

よくある質問

トピック7:よくある質問

Q1. 照明率Uは、だいたいの値で計算してもいいですか?
A. 概算の段階ならかまいませんが、最終図では器具ごとの表を引いてください。UとMは掛け算で効くので、両方を甘く見ると必要台数が3割ずれます。ずれる方向がいつも「足りない」側なのが厄介なところです。

Q2. 器具の間隔は、広いほうが得ですか?
A. 台数は減りますが、広げすぎると床にシマ模様ができます。平均照度は満たしていても均斉度で落ちる ― これが「計算は合っているのに暗く感じる部屋」の正体です。器具ごとの最大許容間隔比を守ってください。

Q3. 照明計算ソフトがあれば、手計算はいらないのでは?
A. ソフトは速くて正確ですが、入力値の妥当性は判断してくれません。保守率を1.0のまま回せば、そのまま明るい結果が出ます。式の意味を知っている人だけが、出てきた数字を疑えます。

次回予告

トピック8:次回予告

第3回は「器具の選定」。同じ光束でも、配光が違えば机上の明るさは何倍も変わります。配光と天井高、色温度演色性、そして防湿・防雨といった設置環境。カタログのどこを見て決めるかの話です。連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

→ 公開しました:第3回 器具の選定 ― 配光・色温度・演色性・設置環境

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。