【幹線設備の設計マニュアル⑤】保護と幹線分岐 ― ブレーカーは電線を守るためにある
こんにちは、HARITAの設計室です。連載「幹線設備の設計マニュアル」第5回は保護と幹線分岐。第4回までで、ケーブルのサイズが確定しました。今回は、そのケーブルをどう守るかという話です。
ここで押さえてほしい前提がひとつ。ブレーカーは、機器を守るより先に電線を守るためにあります。今回の合言葉は「守るのは電線、切るのは事故だけ」。
今回の全体像 ― 保護装置の3つの役割
過電流遮断器の仕事は3つです。過負荷(定格を少し超えた電流がじわじわ流れ続ける状態)から守る。短絡(いきなり莫大な電流が流れる状態)から守る。そして事故を波及させない。
過負荷と短絡では、切るまでの時間が違います。過負荷は電線が熱で傷むまでに余裕があるので時間をかけて、短絡は一瞬で切る。ブレーカーが「動作特性」を持っているのは、この2つを1台でこなすためです。基本は 新人講座 第14回 ブレーカー(遮断器)選定のきほん にまとまっています。
① 定格をどう決めるか
第3回でやった不等式に戻ります。IB ≦ In ≦ Iw。負荷電流IB以上で、いちばん近い定格Inを選ぶ ― ただしそれをケーブルの許容電流Iwが受けきれること。
ブレーカーの定格は連続した数値ではなく飛び飛びの刻みです。だからIBが68Aなら、その上の定格を取ることになります。ここで問題が起きるのが、取った定格をケーブルが受けきれないとき。この場合、選択肢はひとつしかありません ― ケーブルを太くする。ブレーカーを小さくすると、こんどは通常運転で落ちます。
定格電流の求め方の詳細は 過電流遮断器の定格電流の求め方、分岐側の小さいブレーカーについては 安全ブレーカーの選定方法【30ATと50ATの違い】 をどうぞ。
② 保護協調 ― 事故に近いほうから切る
1つの分岐で事故が起きたとき、その分岐だけが切れて、ほかは生きたまま。これが保護協調です。逆に主幹まで飛ぶと、関係のない部屋まで巻き添えで止まります。
成立させる考え方はシンプルで、上流ほど「遅く・大きく」。下流のブレーカーが先に動作するように、定格と動作時間の関係を組みます。第1回で「幹線が止まればその先が全部止まる」と書きましたが、止める範囲を設計でコントロールするのがこの話です。
テナントビルや病院のように「止まると困る」建物ほど、ここは丁寧に検討します。第1回の系統の分け方(重要度で分ける)と、セットで効いてきます。
③ 幹線分岐 ― 距離で保護装置を省略できる
幹線の途中から枝を出すとき、分岐したところにすぐ保護装置を置かなければならないのか。ここには距離のルールがあります。
考え方はこうです。分岐した電線が細いほど、保護装置は近くに要る。逆に、分岐した電線が幹線の保護装置でもある程度守られるくらい太ければ、離しても、あるいは距離の制限なしでもよい。
代表的な区分が3m以内/35%以上なら8m以内/55%以上なら制限なしです。ただし%の基準も距離も条件つきなので、適用できるかは案件ごとに内線規程・電気設備技術基準の解釈で確認してください。分岐側のケーブルサイズの決め方は 幹線分岐のケーブルサイズ選定方法、分岐回路側の考え方は 分岐回路の設計について詳しく解説【1.6mm・3m/8m】 にまとめてあります。
実務でありがちなのは、「盤の位置の都合で分岐点から離れてしまった」というケース。設計段階で距離を意識していないと、現場でルール違反に気づくことになります。
④ 手元開閉器 ― 作業する人のためのスイッチ
もうひとつ、保護とは少し目的の違う開閉器があります。手元開閉器です。
これは点検や修理をする人のためにあります。機器のそばで電気を切れて、しかも作業中に誰かが遠くの盤で入れてしまわない。照明編の第4回でやった「消えてはいけない場所に自動制御を入れない」と、根は同じ話です ― 設備は人が触るものという前提を忘れない。
設置基準と、省略できる条件は 手元開閉器とは?設置基準と省略(免除)できる条件【内線規程】 にまとめてあります。省略できる=省略すべき、ではありません。維持管理のしやすさまで含めて判断してください。
まとめ
- ブレーカーは機器より先に電線を守る。役割は過負荷・短絡・波及防止の3つ
- 定格は刻みから選ぶ。取った定格をケーブルが受けきれないなら、太くするしかない
- 保護協調は「上流ほど遅く・大きく」。止める範囲を設計でコントロールする
- 幹線分岐は距離のルールがある。分岐が細いほど保護装置は近くに要る
- 3m/35%以上で8m/55%以上で制限なし が代表的な区分。適用条件は原典で確認
- 手元開閉器は作業する人のため。省略できる=省略すべき、ではない
よくある質問
Q1. ブレーカーは大きめにしておけば落ちなくて安心では?
A. 逆です。大きくすると、電線が傷む電流でもブレーカーが動かなくなります。落ちないのは安心ではなく、守られていない状態です。ブレーカーが落ちるなら、まず疑うべきは負荷の見込みか回路の分け方です。
Q2. 保護協調は、どこまで検討すればいいですか?
A. 建物の性格によります。止まっても数分で復旧できる建物と、止まると業務や人命に関わる建物では、かける手間が違って当然です。ただ「上流ほど遅く・大きく」という原則だけは、規模にかかわらず守ってください。逆転していると、小さな事故で建物全体が止まります。
Q3. 分岐の距離ルールは、施工で守られていないことがあります。どうすれば?
A. 設計側でできるのは、図面に距離の条件を明記しておくことです。「分岐点から3m以内に設置」と書いてあれば、現場で判断がぶれません。コンセント編の第6回でやった「図面の外に情報を置かない」と同じ話です。
次回予告
次回はいよいよ最終回、第6回「分電盤へ落とす」。主幹・分岐・予備という盤の構成、漏電遮断器の設置基準と誤動作対策、感震ブレーカー、そして幹線系統図の描き方。連載の総まとめも入れます。連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。
→ 公開しました:第6回・最終回 分電盤へ落とす ― 盤の構成と幹線系統図





