避雷設備(避雷針)のきほん|受雷部・引下げ導線・接地極の役割と、高さ20mで義務になる理由【新人向け】
屋上のとがった金属の棒、パラペットの上を這う平たい銅の帯、外壁の角を地面まで下りていく1本の線。現場で見かけるこれらは、ぜんぶ一つの設備の部品です。避雷設備は、雷を受けて・流して・逃がす3つの部品でできています。この記事では、配属されたばかりの人が図面と現場で迷わないように、部品の名前と役割、義務になる条件、数字の読み方を順に整理します。
結論
避雷設備は受雷部(受ける)・引下げ導線(流す)・接地極(逃がす)の3点セットです。高さ20mを超える建物には建築基準法で設置が義務づけられ、構造は2025年4月から JIS Z 9290-3:2019 によります。
- 避雷針が守るのは建物そのもの。中の機器を雷サージから守るのは別の対策(内部雷保護)
- 一般の建物は LPSクラスⅣ以上、危険物施設はクラスⅠが基本
- クラスⅣなら回転球体の半径 60m、メッシュ幅 20m、引下げ導線の平均間隔 20m
- 接地抵抗は 10Ω 未満が推奨。古い図面の「10Ω・50Ω」は旧JISの値
避雷設備は何をしている? ― 受ける・流す・逃がす
雷は、建物のいちばん高いところや角に落ちやすい性質があります。何もなければ、雷電流は屋根のコンクリートや外壁の中の金属を勝手に通って地面へ抜けようとし、その途中で火災・コンクリートの破損・人への感電を起こします。避雷設備は、この通り道をこちらで用意しておく設備です。
| 部品 | 役割 | 現場で見る姿 |
|---|---|---|
| ① 受雷部 | 雷を建物より先に受け止める | 屋上の突針(避雷針)、パラペット上の棟上導体、屋上を網目状に走る導体、金属の笠木・手すり |
| ② 引下げ導線 | 受けた雷電流を地面まで運ぶ | 外壁の角を下りる導線。鉄骨造・RC造では柱の鉄骨や鉄筋がこの役を兼ねることが多い |
| ③ 接地極 | 雷電流を大地へ広げて逃がす | 地中の接地棒・接地板、建物を囲む環状接地極、基礎の鉄筋 |
この3点をまとめて外部雷保護と呼びます。規格の言葉では「雷保護システム(LPS)」です。一方で、電源線や通信線から入ってくる雷サージで機器が壊れるのを防ぐ対策は内部雷保護といい、等電位ボンディングと SPD(サージ防護デバイス)が担当します。
ペン太
ハリタ- 避雷設備は「受雷部・引下げ導線・接地極」の3点セット
- 役割は、雷電流の通り道を先に用意して建物の火災や破損を防ぐこと
- 機器を雷サージから守るのは内部雷保護(SPD・等電位ボンディング)で別物
どんな建物に必要? ― 高さ20mと危険物
避雷設備が義務になる主な条件は2つです。
1つ目は高さ20mを超える建築物です。建築基準法第33条で「有効に避雷設備を設けなければならない」とされ、施行令で建物の20mを超える部分を雷から保護するように設けることになっています。周囲の状況から安全上支障がない場合は例外として扱われます。
2つ目は危険物を扱う施設です。消防法の危険物施設(指定数量の10倍以上を扱う製造所など)や火薬庫は、高さに関係なく避雷設備が求められます。
2025年4月から規格が切り替わった
避雷設備の「構造」は国土交通省の告示(平成12年建設省告示第1425号)で決まっていて、ここが 2025年4月1日から JIS A 4201:2003 → JIS Z 9290-3:2019 に変わりました。経過措置は 2026年3月31日までに工事に着手した建物までで、すでに終わっています。これから設計する建物は JIS Z 9290-3 です。
📌 既存の建物の避雷設備はどうなる?
旧JISで作られた既存の避雷設備が、切り替えで直ちに違法になるわけではありません。ただし、増築や大規模な修繕・模様替えのときには新しい規格に合わせる必要が出てきます。改修の現場で「避雷設備も直すの?」となるのはこのためです。
LPSクラス ― 守りの強さの等級
JIS Z 9290-3 では、守りの強さをLPSクラス Ⅰ〜Ⅳの4段階で選びます。Ⅰがいちばん厳しい等級です。一般の建物はクラスⅣ以上、危険物施設はクラスⅠ(合理的な方法で守っていればⅡ)が基本です。落雷の多い地域、人がたくさん集まる建物、重要な設備がある建物は、上のクラスを検討します。
- 義務は「高さ20m超の建物(20mを超える部分を保護)」と「危険物施設」
- 構造の基準は 2025年4月から JIS Z 9290-3:2019
- 一般の建物は LPSクラスⅣ以上、危険物施設はⅠが基本
受雷部 ― 雷を受け止める3つのかたち
受雷部は形で3種類に分かれます。屋上に立てる突針(いわゆる避雷針)、パラペットや棟に沿って這わせる水平導体(棟上導体)、屋上を網目で覆うメッシュ導体です。専用の部材だけでなく、金属の笠木・手すり・屋上の金属タンクなども、厚さや断面積が規格の値を満たせば受雷部として使えます(構造体利用)。
どこに受雷部を置けば建物全体を守れるかは、次の3つの方法で確かめます。
| LPSクラス | 回転球体の半径 r | メッシュの幅 | 引下げ導線の平均間隔 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ | 20m | 5m × 5m | 10m |
| Ⅱ | 30m | 10m × 10m | 10m |
| Ⅲ | 45m | 15m × 15m | 15m |
| Ⅳ | 60m | 20m × 20m | 20m |
回転球体法のイメージはシンプルです。半径 r の大きな球を建物のまわりと上をころがして、球が建物に触れる所には雷が落ちうるので受雷部が要る、と考えます。クラスが厳しいほど球が小さくなり、建物の細かいすき間まで入り込むので、受雷部が増えます。
⚠️ 新しい規格で増えた「屋上の角」への対策
規格が切り替わった理由の一つが、建物の落雷被害の大半が屋上の突角部(角)で起きていることでした。JIS Z 9290-3 では屋上の縁や角に受雷部を沿わせ、角には追加の対策をすることが求められます。金属の笠木で角まで覆われていれば、それが受雷部になります。
もう一つ、高さ60mを超える建物では、屋上だけでなく建物の上部20%の側面にも受雷部を設けます。高い建物は横っ腹にも雷を受けるためです。
ペン太
ハリタ- 受雷部は突針・水平導体・メッシュ導体。金属の笠木や手すりも使える
- 守れる範囲は保護角法・回転球体法・メッシュ法で確かめる
- クラスⅣなら球の半径60m・メッシュ幅20m。屋上の角と縁は重点的に
引下げ導線と接地極 ― 流して、逃がす
引下げ導線のルール
- 2条以上を、建物の外周に沿って等間隔に配置する(水平投影面積 25m² 以下の小さな建物は1条でよい)
- 平均間隔はクラスごとの値以下(クラスⅣで 20m)。できるだけ建物の角に置く
- 地面に向かってまっすぐ・垂直に。ループ状に回さない
- 地表付近と、高さ方向に最大20mごとに水平の環状導体でつなぐのが望ましい
- 雨どいの中に入れない(水分で腐食する)
鉄骨造や、鉄筋の電気的なつながりが確保された RC造では、柱の鉄骨や鉄筋をそのまま引下げ導線として使えます(構造体利用引下げ導線)。この場合、外壁に導線が見えないことも多いので、「引下げ導線がない」と早とちりしないように。
それぞれの引下げ導線には、接地極とつながるところに試験用接続部を設けます。接地抵抗を測るときに工具で切り離せるようにしておく端子で、ふだんはつないだままにしておきます。
接地極のルール
| 形 | 中身 | 向いている建物 |
|---|---|---|
| A形 | 引下げ導線ごとに1つ以上の接地棒・接地板・放射状の接地線 | 戸建てなどの小規模な建物、既存建物、突針や水平導体のシステム |
| B形 | 建物の外側を囲む環状接地極、または基礎の鉄筋を使う基礎接地極 | メッシュ受雷部や引下げ導線が多い建物、電子機器の多い建物、危険物施設、岩盤の敷地 |
接地抵抗は、一般に10Ω 未満が推奨されています。ただ、規格が本当に重視しているのは抵抗値より接地極の形と長さで、10Ω 未満が取れない土地では、クラスと大地抵抗率で決まる最小長さを満たすことで対応します。環状接地極は壁から約1m離し、深さ0.5m以上に埋めるのが望ましいとされています。
📌 古い図面の「総合10Ω以下・単独50Ω以下」
既存建物の竣工図や試験成績書でよく見るこの数字は、1992年版の旧JISの規定です。今の規格とは考え方が違うので、改修で新旧を比べるときは、どの規格で作られた設備かを最初に確かめます。
- 引下げ導線は2条以上、角を優先して外周に等間隔。雨どいの中は禁止
- 鉄骨・鉄筋を引下げ導線として使うことが多い。接地側には試験用接続部
- 接地極はA形(1本ずつ)かB形(ぐるり)。10Ω未満が推奨
図面と現場で見るところ ― 新人のチェックリスト
最後に、配属直後に避雷設備に触れたとき、どこを見ればよいかをまとめます。
✅ 図面で見るところ
- 特記仕様書:適用規格(JIS Z 9290-3:2019 か旧JISか)と LPSクラス
- 屋上伏図:突針・棟上導体・メッシュの位置、笠木や手すりを受雷部に使っているか
- 立面図・平面図:引下げ導線の本数と位置(角にあるか、間隔は足りているか)、構造体利用か専用導線か
- 接地の図:A形かB形か、試験用接続部(試験用端子箱)の位置
⚠️ 現場で見るところ
- 受雷部と導線の接続部にゆるみ・破断・腐食がないか。異なる金属(銅とアルミ・亜鉛めっき鋼)の接触部は腐食しやすい
- 後から付けた屋上の設備(アンテナ・室外機・太陽光など)が保護範囲の外に出ていないか
- 試験用接続部で測った接地抵抗が前回から大きく変わっていないか
- 引下げ導線の近く(おおむね3m以内)に人が集まる場所がある場合、接触電圧・歩幅電圧への対策(舗装や絶縁、立入り制限など)があるか
点検は、完成したときだけでなく定期的に行い、改修や修理のあと、落雷があったときにも行います。避雷設備は、ふだんは何も起きないので劣化に気づきにくい設備です。
ペン太
ハリタ- 図面は「規格とクラス → 受雷部 → 引下げ導線 → 接地」の順で読む
- 現場は接続部のゆるみ・腐食と、後付けの屋上設備を重点的に
- 接地抵抗は前回値と比べる。落雷後・改修後も点検する
よくある質問
避雷設備は何メートルから必要ですか?
建築基準法第33条で、高さ20mを超える建築物には避雷設備を設けることになっています。守る範囲は建物の20mを超える部分です。ただし、周囲の状況から安全上支障がない場合は例外とされています。20m以下でも、危険物を扱う施設は消防法などで設置が求められます。
避雷針をつければ建物の中の家電や機器も守れますか?
守れません。避雷針(外部雷保護)は、建物への直撃雷で火災や破損が起きるのを防ぐ設備です。電源線や通信線から入ってくる雷サージは、SPD(サージ防護デバイス)と等電位ボンディングからなる内部雷保護で別に対策します。
避雷設備の接地抵抗は何Ω以下にすればよいですか?
現行の JIS Z 9290-3:2019 では、一般に 10Ω 未満が推奨されています。ただし規格が重視しているのは抵抗値より接地極の形と長さで、10Ω 未満が取れない場合は接地極の最小長さを満たすことで対応します。古い図面にある「総合10Ω以下・単独50Ω以下」は旧JIS(1992年版)の値です。
LPSクラスとは何ですか?
雷保護システムの等級で、Ⅰ〜Ⅳの4段階があります。Ⅰがもっとも厳しく、一般の建物はⅣ以上、危険物施設はⅠが基本です。クラスが決まると、回転球体の半径、メッシュの幅、引下げ導線の間隔などがまとめて決まります。
引下げ導線を雨どいの中に通してもよいですか?
通してはいけません。雨どいの中は水分で導線が腐食しやすいため、絶縁被覆がある導線でも雨どいの内部には配置しないと規格で定められています。
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