幹線設備の設計|許容電流によるケーブルサイズ選定方法について詳しく解説
幹線のケーブルサイズを許容電流から決める作業は、必要な電流を出す前半と、その電流を流せるサイズを表から引く後半の2つに分かれます。前半は電技解釈第148条の場合分け、後半は電流減少係数と周囲温度の補正です。この記事では、IW・IM・IHの数え方から、表の値に何をかけるか、最後に過電流遮断器の定格と整合させるところまでを、順にたどります。
結論
必要なのは負荷から出したIWと、補正後の許容電流の比較です。どちらか片方だけでは決まりません。
- 許容電流は「流せる電流」ではなく、絶縁体の最高許容温度から逆算した上限
- 最高許容温度はIV・VVが60℃、HIVが75℃、CV・CVTが90℃
- 必要な電流IWは電技解釈第148条第1項第2号で場合分けする
- IMのアンペアは内線規程の規約電流から引く。kWを√3×電圧で割ると1.4〜3倍足りない
- 電動機を含まない、またはIM ≦ IHならそのまま合計する
- IM > IHのときだけ、IMが50A以下で1.25倍、50A超で1.1倍
- 割り増しがかかるのはIMだけ。IHはいつでもそのまま足す
- 需要率・力率が明らかなら修正できる(同条1項3号)
- 表の値には電流減少係数(同一管内3本以下で0.70)をかける
- さらに周囲温度の補正をかける。基準温度は絶縁電線30℃、CVの気中40℃
- 最後に過電流遮断器の定格と整合させる(同条1項5号)
- 結局、何と何を比べるの?
- 許容電流って何の限界?
- IWはどう計算する?
- 動力とそれ以外で何が違う?
- なぜ1.25倍と1.1倍なの?
- 需要率で小さくできる?
- 表の値はそのまま使える?
- 周囲温度と布設方法はどう効く?
- 遮断器との関係はどうなる?
ブラウザでそのまま使える登録不要ツール
この記事の選定手順を系統全体でまとめてチェックするなら、姉妹サイト「セコサポ」の幹線つながりチェック(電線・ブレーカー整合と電圧降下の自動診断・登録不要)が便利です。
まず結論 ― 比べるのは「必要な電流」と「流せる電流」
幹線サイズの選定で迷うのは、2つのまったく別の計算が「許容電流」という同じ言葉で呼ばれているためです。
1つめは必要な電流です。負荷から出す値で、記号はIWを使います。電技解釈第148条第1項第2号の場合分けで求めます。2つめは実際に流せる電流です。電線の表から引いた値に、本数と周囲温度の補正をかけた値です。この2つを比べて、流せる電流 ≧ 必要な電流になる断面積を選びます。
もうひとつ押さえておきたいのは、許容電流はサイズを決める3つの条件のうちの1つにすぎないことです。実務では次の3つをすべて満たすサイズを採ります。
| 検討項目 | 何で決まるか | 効きやすい場面 |
|---|---|---|
| ① 許容電流 | 負荷電流と、電線の発熱の限界 | 短くて電流が大きい幹線 |
| ② 電圧降下 | こう長と電流。標準電圧に対する%で判定 | 長い幹線・上階へ立ち上げる幹線 |
| ③ 分岐幹線と遮断器の関係 | 上位の過電流遮断器の定格と、幹線の長さ | 太い幹線から細い幹線を分岐するとき |
②は幹線設備の設計マニュアル④ 電圧降下の検証と内線規程の電圧降下の規定に、③は分岐した細い幹線に施設する過電流遮断器にまとめています。
ペン太
ハリタ- 許容電流の検討は「必要な電流IW」と「流せる電流」の比較
- IWは負荷から、流せる電流は表の値に補正をかけて出す
- サイズは許容電流・電圧降下・分岐幹線の3項目のうち最大を採る
- 短くて電流が大きい幹線は許容電流で、長い幹線は電圧降下で決まりやすい
許容電流とは何か ― 絶縁体の許容温度から逆算した上限
許容電流は「この電線に流していい電流」ですが、その限界を決めているのは導体ではなく絶縁体です。電流を流すと導体が発熱し、その熱で絶縁体が温まります。絶縁体が長期間耐えられる温度(最高許容温度)に達する電流が許容電流です。
CVのほうが許容電流が大きい理由
同じ14sqでも、IV(ビニル絶縁)とCV(架橋ポリエチレン絶縁)では許容電流が違います。理由は絶縁体が耐えられる温度が60℃と90℃で違うからです。導体の太さは同じでも、許される温度上昇の幅が広ければ、それだけ電流を流せます。
💡 「許容電流を超えたら切れる」のではない
許容電流は連続して流し続けたときに絶縁体が許容温度に達する電流です。超えたら即座に何かが起きるわけではなく、長く続くと絶縁体の劣化が進んで寿命が短くなるという性質のものです。
だから短時間の始動電流は、この判定とは別に考えます。短時間の大電流から幹線を守るのは過電流遮断器の役目で、許容電流は「連続して流せる上限」の話です。
絶縁電線そのものの許容電流は電気設備の基本知識 絶縁電線の許容電流と内線規程の解釈と解説 許容電流で扱っています。
出典:電気設備の技術基準の解釈 第148条(低圧幹線の施設)、内線規程 1340節。条番号や数値は改正で変わることがあります。適用にあたっては最新版をご確認ください。
- 許容電流の限界を決めているのは絶縁体の最高許容温度
- IV・VVは60℃、HIV・EM-IEは75℃、CV・CVTは90℃
- 同じ断面積でCVのほうが大きいのは、許される温度上昇の幅が広いから
- 許容電流は「連続して流せる上限」。短時間の大電流は遮断器が受け持つ
- 表の値は電線の種類・布設方法・周囲温度・条数の4条件つき
必要な電流IWの出し方 ― 電技解釈 第148条第1項第2号
負荷から必要な電流を出す部分は、条文がそのまま計算式になっています。まず負荷を2つに分けるところから始めます。
| 記号 | 中身 | 具体例 |
|---|---|---|
| IM | 電動機その他これに類する起動電流が大きい電気機械器具の定格電流の合計 | 送風機・ポンプ・エレベーター・冷凍機・コンプレッサー |
| IH | そのほかの電気使用機械器具の定格電流の合計 | 照明・コンセント・電気ヒーター・電熱器・OA機器 |
| IW | 幹線(電線)に必要な許容電流。これ以上のサイズを選ぶ | ― |
条文は次のように書かれています。原則は合計値以上で、電動機等の合計がそのほかより大きいときだけ割り増しが入ります。
IMが50Aをまたぐところに、ひとつ罠がある
IH=20Aに固定して、IMを振ってみます。IMが50Aから51Aに増えると、必要なIWが下がります。
| IM | 条件 | 適用する式 | 必要なIW |
|---|---|---|---|
| 10 A | IM < IH | IM + IH | 30.0 A |
| 20 A | IM = IH | IM + IH | 40.0 A |
| 30 A | IM > IH・50A以下 | 1.25 IM + IH | 57.5 A |
| 50 A | IM > IH・50A以下 | 1.25 IM + IH | 82.5 A |
| 51 A | IM > IH・50A超 | 1.1 IM + IH | 76.1 A |
| 60 A | IM > IH・50A超 | 1.1 IM + IH | 86.0 A |
| 100 A | IM > IH・50A超 | 1.1 IM + IH | 130.0 A |
⚠ 50A前後は、大きい側の値で見ておく
式が切り替わるため、IMが50A〜約57Aの範囲ではIM=50Aのときより必要なIWが小さく出ます。条文どおりに計算すれば誤りではありませんが、負荷が増えたのにサイズが下がるのは設計として落ち着きません。
この範囲では1.25IM+IHで計算した値も出しておき、大きいほうを採るのが安全側です。また、IMが50Aちょうどのときは条文が「50A以下」なので1.25倍のほうを使います。ここは読み違えやすいところです。
出典:電気設備の技術基準の解釈 第148条第1項第2号(イ・ロ)。
- IMは起動電流が大きい機器の定格電流の合計、IHはそのほかの合計
- 原則は合計値以上。IM > IH のときだけ割り増しが入る
- IM ≦ 50A で1.25倍、IM > 50A で1.1倍
- 割り増しはIMだけ。IHはいつでもそのまま足す
- IMが50Aちょうどなら「50A以下」なので1.25倍
- IMが50〜57A付近では1.25倍で計算した値も出して、大きいほうを採る
動力とそれ以外で、電流の出し方が違う
条文はIMとIHを「定格電流の合計」としか書いていません。ところが実務でつまずくのは式よりも手前、そのアンペアをどこから持ってくるかのほうです。動力とそれ以外では、拾い方がまったく違います。
動力 ― kWを√3×電圧で割ってはいけない
三相200Vの3.7kWの電動機で考えます。素直に 3700 ÷(√3×200)= 10.7 A としたくなりますが、この値は実際に流れる電流より4割ほど小さい値です。kWは電動機が軸から出す出力で、電源から入ってくる電流は力率と効率のぶんだけ増えるためです。
規約電流とは
設計の段階では、どのメーカーのどの機種が入るかまだ決まっていません。それでも電線と遮断器は先に決めなければならないので、出力ごとに標準的な電流値を定めておいたものが規約電流です。力率と効率はこの値にすでに織り込まれています。
だから規約電流にさらに力率をかけてはいけません。二重に見込むことになります。機器が決まっていて銘板(ネームプレート)の定格電流がわかるなら、銘板値を優先します。
| 定格出力 | √3×200で割った値 | 規約電流 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 0.4 kW | 1.2 A | 3.2 A | 約 2.8 倍 |
| 0.75 kW | 2.2 A | 4.8 A | 約 2.2 倍 |
| 1.5 kW | 4.3 A | 8.0 A | 約 1.8 倍 |
| 2.2 kW | 6.4 A | 11.1 A | 約 1.7 倍 |
| 3.7 kW | 10.7 A | 17.4 A | 約 1.6 倍 |
| 5.5 kW | 15.9 A | 26 A | 約 1.6 倍 |
| 7.5 kW | 21.7 A | 34 A | 約 1.6 倍 |
| 11 kW | 31.8 A | 48 A | 約 1.5 倍 |
| 15 kW | 43.3 A | 65 A | 約 1.5 倍 |
| 22 kW | 63.5 A | 93 A | 約 1.5 倍 |
| 37 kW | 106.8 A | 152 A | 約 1.4 倍 |
出典:内線規程 3705-2表(200V三相誘導電動機1台の場合の分岐回路)の全負荷電流。メーカーの銘板値は機種により多少前後します。
ペン太
ハリタそれ以外 ― 電圧で割るだけ。ただし電圧を間違えない
ヒーター・照明・コンセントは、銘板のkW(またはkVA)をその機器が使う電圧で割るだけです。起動の山がないので、あとで割り増しの係数もかかりません。間違いやすいのはどの電圧で割るかです。
| 負荷 | 電流の出し方 | 例 |
|---|---|---|
| 単相100Vの負荷 | 容量[W] ÷ 100 | 1.5kWの電熱器 → 15 A |
| 単相200Vの負荷 | 容量[W] ÷ 200 | 2kWのエアコン → 10 A |
| 三相200Vのヒーター | 容量[W] ÷(√3×200) | 3kWの電気炉 → 8.7 A |
| 力率が明らかな負荷 | 上の値をさらに力率で割る | LED電源・インバータ機器など |
| 照明器具 | 資料にある器具の入力電流を使う | 安定器や電源の損失込みの値 |
| コンセント | 回路数と想定電流から見込む | 負荷容量の集計で決めておく |
⚠ 電圧の違うものを、そのまま足さない
アンペアは同じ電圧の系統の中でしか足せません。三相200Vの動力幹線と、単相3線式100/200Vの電灯幹線は別の幹線なので、それぞれ別にIM・IHを数えて、別々にサイズを決めます。
同じ幹線に動力とヒーターが載っているときだけ、その幹線の中でIMとIHに分けて足します。なお単相3線式では、100V負荷をどちらの線に振り分けるかで線電流が変わるため、負荷の大きいほうの相で見ます。
係数は、掛ける順番と掛ける先が決まっている
この記事には「係数」と呼ばれるものが4つ出てきます。需要率、1.25倍・1.1倍の割り増し、電流減少係数、周囲温度の補正係数です。これらは負荷側にかけるものと電線側にかけるものの2つに分かれます。混ぜると二重に割り引いたり、打ち消したりします。
| 係数 | 掛ける先 | 段階 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 需要率・不等率 | 負荷の容量 | ①〜② | 内線規程の資料・標準仕様書 |
| 力率 | 負荷の容量(動力は不要) | ①〜② | 148条1項3号 |
| 1.25倍・1.1倍 | IMだけ | ③ | 148条1項2号 |
| 電流減少係数 | 電線の許容電流 | ④ | 内線規程 1340-1 |
| 周囲温度の補正係数 | 電線の許容電流 | ④ | 絶縁体の最高許容温度 |
出典:電気設備の技術基準の解釈 第148条第1項第2号・第3号、内線規程 1340-1表・3705-2表。
- 条文は「定格電流の合計」としか書かない。アンペアの拾い方は自分で決める
- 動力は内線規程の規約電流から引く。kWを√3×電圧で割ると1.4〜3倍足りない
- 規約電流には力率と効率が入っているので、さらに力率をかけない
- 銘板の定格電流がわかるなら、銘板値を優先する
- それ以外は容量÷電圧。単相100V・単相200V・三相200Vで割る値が変わる
- 電圧系統が違う幹線は、別々にIM・IHを数える
- 需要率と力率は負荷側、電流減少係数と温度補正は電線側。混ぜない
なぜ1.25倍と1.1倍なのか
条文に理由は書かれていませんが、始動電流そのものに耐えさせるための数字ではありません。ここを取り違えると、係数の意味がわからなくなります。
電動機の始動電流は定格の5〜7倍になりますが、続くのは数秒です。電線の温度上昇は電流の2乗と時間で決まるので、数秒の大電流では絶縁体の温度はほとんど上がりません。では何のための割り増しかというと、起動の繰り返しと、定格を超えた運転が続く可能性への余裕です。
短時間の大電流から幹線を守るのは過電流遮断器の役目です。このため遮断器の定格が電線の許容電流より大きくてもよいという規定があり、その理由は三相動力負荷の遮断器定格電流が配線の許容電流より大きくて良い理由で扱っています。
ペン太
ハリタ- 始動電流は定格の5〜7倍だが、続くのは数秒
- 電線の温度上昇は電流の2乗と時間で決まるので、数秒では上がりきらない
- 割り増しは起動の繰り返しと過負荷運転への余裕
- 50Aで係数が下がるのは、台数が増えて同時起動の確率が下がるため
- IHに係数をかけないのは、ヒーターや照明に起動電流がないため
需要率・力率で修正できる ― 同条第1項第3号
ここまでの計算は全部の機器が同時に定格で動く前提です。実際にはそうならないため、条文にも修正を認める規定があります。
電技解釈 第148条第1項第3号
前号の規定における電流値は、需要率、力率等が明らかな場合には、これらによって適当に修正した値とすることができる。
「明らかな場合」がポイントです。根拠を示せない割引はできません。集合住宅の戸数に対する需要率のように、標準や実績で示せるものが対象になります。
実務でよく使う修正は次の3つです。どれも計算書に根拠を残せるかが採用の分かれ目になります。
| 修正 | 考え方 | 根拠にするもの |
|---|---|---|
| 需要率 | 設備容量のうち、実際に同時に使われる割合 | 内線規程の資料、標準仕様書、建物用途別の実績値 |
| 不等率 | 系統をまとめたとき、最大需要が同時には来ないこと | 集計の階層ごとに設定。まとめる範囲を明記する |
| 力率 | 有効電力から電流に直すときの換算。改善後の値を使うか | コンデンサの設置計画と、その効果の見込み |
需要率の取り方そのものは幹線設備の設計マニュアル② 負荷容量の集計、集合住宅の具体的な値は集合住宅の幹線需要率、変圧器側の扱いは変圧器容量の選定方法にまとめています。
⚠ 需要率をかけるのはIWを出す前
順番を間違えると値が変わります。需要率は負荷容量の集計段階でかけ、そのうえでIM・IHに分けてから1.25倍や1.1倍を適用します。
逆に、電流減少係数と周囲温度の補正は電線側の許容電流にかけるもので、IWにかけるものではありません。負荷側の割引と電線側の減額を混ぜると、二重に割り引いたり打ち消したりします。
- 需要率・力率等が明らかな場合は修正できる(148条1項3号)
- 「明らかな場合」なので、根拠を計算書に残せることが条件
- 需要率は負荷容量の集計段階でかけ、幹線計算では受け取るだけにする
- 需要率は負荷側、電流減少係数と温度補正は電線側。混ぜない
表の引き方① ― 電流減少係数
ここから後半です。電線の表に載っている値はある条件のもとでの値なので、実際の条件に合わせて下げます。まず効くのがまとめた本数です。
同一の電線管に絶縁電線を何本も入れると、内側の電線の熱が逃げません。このため内線規程では電線数に応じた電流減少係数をかけます。
| 同一管内の電線数 | 3以下 | 4 | 5〜6 | 7〜15 | 16〜40 | 41〜60 | 61以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 電流減少係数 | 0.70 | 0.63 | 0.56 | 0.49 | 0.43 | 0.39 | 0.34 |
⚠ 「3本以下だから補正なし」ではない
いちばん多い勘違いがここです。3本以下でも0.70がかかります。係数が1.00になるのは、がいし引きのように電線を単独で空中に張る場合だけです。
三相3線式の幹線をIVで1本の管に入れるなら、電線は3本なので0.70。接地線を同じ管に入れても、接地線は電流が流れないため電流減少係数の本数には数えません。ただし管のサイズ(占積率)には数えます。
係数の詳しい考え方は内線規程の電流減少係数とはに、管のサイズは電線管の太さの早見表とIV配管サイズ早見表にまとめています。
出典:内線規程 1340-1表とその備考。
- 同一管内の電線数で電流減少係数をかける
- 3本以下でも0.70。係数が1.00になるのはがいし引きの単独布設
- 接地線は電流減少係数の本数に数えないが、管のサイズには数える
- 内線規程1340-1表には、素の値に係数をかけた結果が載っている
表の引き方② ― 周囲温度と布設方法
もうひとつの補正が周囲温度です。ここで見落としやすいのは、表の基準になっている温度が電線の種類で違うことです。
補正係数は、絶縁体の最高許容温度と基準周囲温度から計算します。式は次のとおりです。
周囲温度の補正係数
補正係数 = √{(最高許容温度 − 周囲温度)÷(最高許容温度 − 基準周囲温度)}
例:IV(最高許容温度60℃・基準30℃)を40℃の場所で使う場合
√{(60 − 40) ÷ (60 − 30)}= √0.667 = 0.82
CV(90℃・気中の基準40℃)を40℃で使う場合は√{(90 − 40) ÷ (90 − 40)}= 1.00 です。同じ40℃でも、IVは0.82でCVは1.00になります。
布設方法で表そのものが変わる
ケーブルは布設方法で熱の逃げ方が変わるため、気中・管路・直接埋設で別の表を使います。地中は基準周囲温度が25℃と低いぶん有利ですが、太くなると土の熱抵抗が効いて逆転します。
| 布設方法 | 基準周囲温度 | 熱の逃げ方 | 効いてくること |
|---|---|---|---|
| 気中・暗きょ(ラック) | 40 ℃ | 空気に逃げる | 多条に並べると減少係数がかかる。電気室の室温 |
| 電線管の中(屋内) | 30 ℃ | 管内にこもる | 電線数による電流減少係数がそのまま効く |
| 管路引入れ(地中) | 25 ℃ | 管と土の熱抵抗 | 管路の条数と離隔。同一管路に複数条は不利 |
| 直接埋設(地中) | 25 ℃ | 土の熱抵抗 | 土質と埋設深さ。小サイズでは気中より有利 |
💡 40℃を超える場所は、先に洗い出しておく
電気室、屋上、ピット、厨房、機械室は設計温度が40℃を超えることがあります。IVを40℃で使えば0.82、45℃なら0.71です。14sqの素の値88Aが、管内3本(0.70)+45℃(0.71)で88 × 0.70 × 0.71 = 43Aまで落ちます。
この補正で1〜2サイズ変わることがあるので、設計温度は意匠・設備の各図面で先に揃えておきます。あとから室温条件が変わると、幹線をまるごと拾い直すことになります。
出典:内線規程 1340-1表の備考、各ケーブルメーカーの技術資料(許容電流表)。値はメーカーと条数で変わります。設計では実際に使う製品の資料をご確認ください。
- 表の基準周囲温度は絶縁電線30℃、CVの気中40℃、地中25℃
- 補正係数=√{(最高許容温度−周囲温度)÷(最高許容温度−基準周囲温度)}
- 同じ40℃でもIVは0.82、CVの気中は1.00
- ケーブルは気中・管路・直接埋設で別の表を使う
- 小サイズでは直接埋設のほうが大きく、太くなると気中が有利になる
- 40℃を超える場所は設計温度を先に揃えておく
選定例と、過電流遮断器との整合
最後に、負荷から実際のサイズまで通してみます。電動機3台とヒーター1台で、IMが50Aをまたぐ形にしてあります。電動機の電流は規約電流17.4Aを3台ぶん足した値です。
サイズが決まったら、最後に過電流遮断器の定格と整合させます。ここも条文が計算式になっています。
電技解釈 第148条第1項第5号 ― 過電流遮断器の定格電流
原則はその低圧幹線の許容電流以下。ただし電動機等が接続される場合は、次のいずれかによることができます。
イ 電動機等の定格電流の合計の3倍に、そのほかの機械器具の定格電流の合計を加えた値以下(3 IM + IH)
ロ イの値が幹線の許容電流を2.5倍した値を超える場合は、その2.5倍した値以下
ハ 幹線の許容電流が100Aを超える場合で、イ・ロの値が過電流遮断器の標準定格に該当しないときは、その直近上位の標準定格
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 電流にする | 電動機 3.7kW → 規約電流17.4A × 3台/ヒーター15A | IM 52.2A・IH 15A |
| ② 式を選ぶ | IM(52.2A)> IH(15A)かつ IM > 50A | IW ≧ 1.1 IM + IH |
| ③ IWを出す | 1.1 × 52.2 + 15 = 72.42 | 72.5 A 以上 |
| ③′ 安全側も出す | 1.25 × 52.2 + 15 = 80.25(50A付近のため) | 80.3 A 以上 ← 採用 |
| ④ 布設条件 | ケーブルラック(気中)・周囲温度40℃・3条 | 補正係数 1.00 |
| ⑤ サイズを引く | CVT 22sq の気中許容電流(メーカー値) | 約110A → 満足 |
| ⑥ 遮断器の上限 | 3 × 52.2 + 15 = 171.6、2.5 × 110 = 275 | 171.6A 以下 |
| ⑦ 遮断器を選ぶ | 171.6A以下の標準定格 | 150A |
| ⑧ 電圧降下 | こう長から別途検証する | この記事の範囲外 |
⚠ 遮断器が電線より大きくてよいのは、電動機があるときだけ
⑦で選んだ150Aは、ケーブルの許容電流110Aより大きい値です。一見おかしいのですが、電動機の始動電流で遮断器が動作しないようにするために条文が認めている扱いです。
電動機を含まない幹線ではこの例外は使えず、遮断器の定格 ≦ 幹線の許容電流が原則になります。詳しくは遮断器定格電流が配線の許容電流より大きくて良い理由をご覧ください。
幹線から細い幹線を分岐するときは、分岐した幹線を保護する遮断器を省略できる条件(55%・8m+35%・3m)が別にあります。分岐した細い幹線に施設する過電流遮断器にまとめています。盤に落とすところまでの流れは幹線設備の設計マニュアル⑥ 分電盤へ落とすをご覧ください。
出典:電気設備の技術基準の解釈 第148条第1項第4号・第5号。
- サイズが決まったら過電流遮断器の定格と整合させる
- 原則は「遮断器の定格 ≦ 幹線の許容電流」
- 電動機等があるときは 3 IM + IH 以下、または許容電流の2.5倍以下
- 許容電流100A超でイ・ロが標準定格でないときは直近上位
- 遮断器が電線より大きくてよいのは電動機があるときだけ
- 分岐幹線には55%・8m+35%・3mの別の規定がある
よくある質問
許容電流とは何ですか?
連続して流したときに、絶縁体が最高許容温度に達する電流です。限界を決めているのは導体ではなく絶縁体で、IV・VVは60℃、HIV・EM-IEは75℃、CV・CVTは90℃です。
負荷に電動機を含まない場合の求め方は?
幹線の許容電流IWは、そのほかの負荷の定格電流の合計IH以上(IW ≧ IH)です。割り増しはありません。
電動機を含み、IM ≦ IH の場合は?
IW ≧ IM + IH です。条文の割り増しは「電動機等の合計がそのほかより大きい場合」にしか適用されないため、そのまま合計します。
IM > IH かつ IM ≦ 50A の場合は?
IW ≧ 1.25 IM + IH です。IH=20A・IM=30Aなら 30×1.25+20=57.5A以上になります。
IM > IH かつ IM > 50A の場合は?
IW ≧ 1.1 IM + IH です。IH=20A・IM=60Aなら 60×1.1+20=86A以上になります。
IMがちょうど50Aのときは1.25倍ですか1.1倍ですか?
1.25倍です。条文が「50A以下の場合は1.25倍」「50Aを超える場合は1.1倍」と書いているので、50Aちょうどは1.25倍の側です。
IMが50Aから51Aに増えたら、必要なIWが下がってしまいました。
計算は合っています。IH=20AならIM 50Aで82.5A、51Aで76.1Aです。式が切り替わるために起きる現象で、IMが50〜57A付近では1.25倍で計算した値も出しておき、大きいほうを採るのが安全側です。
IHにも1.25倍や1.1倍をかけますか?
かけません。割り増しは電動機等の合計IMにだけかけ、IHはそのまま加算します。ヒーターや照明には起動電流がないためです。
1.25倍は始動電流の5倍に耐えるための数字ですか?
違います。始動電流は定格の5〜7倍ですが続くのは数秒で、電線の温度上昇は電流の2乗と時間で決まるため、数秒では絶縁体の温度は上がりきりません。割り増しは起動の繰り返しや過負荷運転への余裕で、短時間の大電流から守るのは過電流遮断器の役目です。
電動機のIMは、kWを√3×200で割って出してよいですか?
いけません。kWは軸出力なので、電源から入る電流は力率と効率のぶんだけ大きくなります。3.7kWなら計算値10.7Aに対して規約電流は17.4Aで、6割以上違います。内線規程の規約電流を使うか、機器が決まっていれば銘板の定格電流を使ってください。
規約電流とは何ですか?
設計段階でメーカーや機種が決まっていなくても電線と遮断器を選べるように、出力ごとに定められた標準の電流値です。力率と効率が織り込まれているので、この値にさらに力率をかける必要はありません。
銘板の定格電流と規約電流が違います。どちらを使いますか?
機器が確定していて銘板値がわかるなら銘板値を使います。規約電流は機種が決まる前に設計を進めるための標準値です。図面には、どちらを使ったかを残しておきます。
ヒーターや照明の電流はどう出しますか?
容量をその機器の電圧で割ります。単相100Vなら÷100、単相200Vなら÷200、三相200Vなら÷(√3×200)です。力率が明らかな機器はさらに力率で割ります。照明器具は資料にある器具の入力電流を使うのが確実です。
動力と電灯の電流を足して1本の幹線で計算してよいですか?
電圧系統が違うものは足せません。三相200Vの動力幹線と単相3線式100/200Vの電灯幹線は別々にIM・IHを数え、別々にサイズを決めます。同じ幹線に載っているものだけを足します。
エレベーターや冷凍機はIMに入れますか?
起動電流が大きい機器なのでIMに入れます。条文は「電動機又はこれに類する起動電流が大きい電気機械器具」としており、電動機を内蔵する機器が対象です。
需要率をかけて幹線を細くできますか?
電技解釈第148条第1項第3号で、需要率・力率等が明らかな場合は修正できるとされています。ただし「明らかな場合」なので、内線規程の資料や標準仕様書など、計算書に残せる根拠が必要です。
需要率をかけるのは、1.25倍をかける前ですか後ですか?
前です。需要率は負荷容量の集計段階でかけ、そのうえでIM・IHに分けて割り増しを適用します。
電流減少係数は3本以下なら1.00ですか?
いいえ、3本以下でも0.70です。1.00になるのは、がいし引きのように電線を単独で空中に張る場合だけです。
接地線も電流減少係数の本数に数えますか?
数えません。通常は電流が流れないためです。ただし電線管のサイズ(占積率)の計算には数えます。
周囲温度の補正係数はどう計算しますか?
√{(最高許容温度 − 周囲温度)÷(最高許容温度 − 基準周囲温度)}です。IV(60℃・基準30℃)を40℃で使うなら √{(60−40)÷(60−30)}=0.82 になります。
基準周囲温度は何℃ですか?
電線の種類と布設方法で違います。絶縁電線は30℃、CV・CVTの気中(暗きょ)は40℃、管路引入れと直接埋設は25℃が一般的な基準です。表を見るときは最初に確認してください。
同じ40℃なのに、IVとCVで補正係数が違うのはなぜですか?
基準周囲温度が違うためです。IVは30℃基準なので40℃では0.82ですが、CVの気中は40℃基準なので40℃がちょうど1.00になります。
IVとCVで、同じ断面積なのに許容電流が違うのはなぜですか?
絶縁体の最高許容温度が60℃と90℃で違うためです。許される温度上昇の幅が広いCVのほうが、同じ断面積でも多く流せます。
地中埋設は気中より許容電流が大きいのですか?
サイズによります。地中は基準周囲温度が25℃と低いぶん有利で、22mm²程度では直接埋設のほうが大きくなります。ただし太くなると土の熱抵抗が効いて、60mm²以上では気中のほうが大きくなります。
過電流遮断器の定格は幹線の許容電流以下にしなければいけませんか?
原則はそうです。ただし電動機等が接続される場合は、3 IM + IH 以下、またはその値が幹線の許容電流の2.5倍を超えるときは2.5倍した値以下とすることができます(148条1項5号)。
遮断器の定格がケーブルの許容電流より大きくても大丈夫ですか?
電動機がある幹線では条文が認めています。始動電流で遮断器が動作しないようにするためです。電動機を含まない幹線ではこの例外は使えません。
許容電流だけでサイズを決めてよいですか?
いいえ。許容電流・電圧降下・分岐幹線の遮断器との関係の3項目を検討し、一番大きいサイズを採用します。長い幹線や上階へ立ち上げる幹線は、電圧降下で決まることが多くなります。
メーカーの表とテキストの値が合いません。
前提条件が違う可能性が高いです。基準周囲温度、条数、布設方法、単心かトリプレックスか、絶縁体の種類を順に突き合わせてください。設計では実際に使う製品の資料に合わせます。
まとめ ― 取り違えやすいところ
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| 幹線サイズは許容電流だけで決まる | 許容電流・電圧降下・分岐幹線の遮断器との関係の3項目で最大を採る |
| 電動機の電流はkW÷(√3×電圧)で出す | 規約電流の表から引く。計算値は1.4〜3倍足りない |
| 規約電流にも力率をかける | 規約電流には力率と効率が入っている。二重にかけない |
| 動力と電灯の電流を合わせて数える | 電圧系統が違う幹線は別々に数え、別々にサイズを決める |
| 許容電流は「流せる電流」の値 | 絶縁体の最高許容温度から逆算した、連続して流せる上限 |
| 電動機があれば必ず割り増す | IM > IH のときだけ。IM ≦ IH なら合計するだけ |
| 係数はいつでも1.25倍 | IMが50Aを超えるときは1.1倍 |
| IMが50Aなら1.1倍 | 条文は「50A以下は1.25倍」。50Aちょうどは1.25倍の側 |
| IHにも係数をかける | 割り増しはIMだけ。IHはそのまま加算する |
| 1.25倍は始動電流に耐えるための数字 | 数秒の始動電流では温度は上がらない。連続運転の余裕分 |
| 需要率はIWを出したあとにかける | 負荷容量の集計段階でかける。順番で値が変わる |
| 管内3本以下なら補正なし | 3本以下でも電流減少係数0.70がかかる |
| 接地線も減少係数の本数に数える | 数えない。ただし電線管のサイズには数える |
| 周囲温度の基準はどれも30℃ | 絶縁電線30℃、CVの気中40℃、地中25℃ |
| ケーブルの許容電流は1つの値 | 気中・管路・直接埋設で別の表を使う |
| 地中のほうがいつも有利 | 小サイズでは有利だが、太くなると気中が有利になる |
| 遮断器の定格は必ず許容電流以下 | 電動機等があるときは 3 IM + IH 以下などの例外がある |
| 表の値をそのまま使える | 電流減少係数と周囲温度の補正をかけて初めて実際の値になる |
| 手順 | やること | 見るところ |
|---|---|---|
| 1|電流にする | 動力は規約電流、それ以外は容量÷電圧 | 内線規程 3705-2 |
| 2|負荷の集計 | 需要率・力率をかけて負荷電流を出す | 148条1項3号 |
| 3|IMとIHに分ける | 起動電流が大きい機器かどうかで振り分ける | 電動機・エレベーター・冷凍機 |
| 4|式を選ぶ | IMとIHを比べ、IMと50Aを比べる | 148条1項2号 |
| 5|IWを出す | 1.25倍か1.1倍か、そのまま合計か | 50A付近は大きい側も出す |
| 6|種類と布設方法 | IV/CV/CVT、管内・ラック・管路・直埋 | どの表を引くか |
| 7|補正をかける | 電流減少係数 × 周囲温度の補正係数 | 内線規程 1340-1 |
| 8|比較して確定 | 補正後の許容電流 ≧ IW を満たす断面積 | 電圧降下も別途検証 |
| 9|遮断器と整合 | 定格を決める | 148条1項5号 |
📘 あわせて確認したいこと
この記事は、連載「幹線設備の設計マニュアル」の第3回 幹線サイズの選定の補足解説です。計画全体の流れは第1回 全体フローと系統計画から、はじめて学ぶ場合は新人講座 第12回 幹線・ケーブルサイズの選び方からご覧いただけます。
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