電気設備とお金|第7次エネルギー基本計画を電気設備設計者の視点で詳しく解説
「施主から『これから電気ってどうなるんですか』って聞かれて、答えられませんでした……」
ペン太くんが肩を落としています。
太陽光を載せるか、蓄電池を置くか、受電容量をどう見るか。設計の判断は、いつも「これから電気がどうなるか」という前提の上に立っています。ところがその前提を、私たちは案外きちんと知らないまま仕事をしています。
その前提を国が文書にしたものが、エネルギー基本計画です。2025年2月18日に「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。
この記事では、この計画を電気設備設計者の視点で読み解きます。政策の解説そのものより、それが図面と見積にどう跳ね返るかに重点を置いて整理しました。
📘そもそもエネルギー基本計画とは
エネルギー政策基本法にもとづいて政府が定める、日本のエネルギー政策の基本方針です。おおむね3年ごとに見直され、閣議決定されます。
第7次エネルギー基本計画は2025年2月18日に閣議決定されました。ここには、2040年度に日本の電気をどんな電源でつくるつもりなのかという目標が書かれています。
ポイント!
これは「予測」ではなく「目標」です。実現するかどうかは別の話ですが、補助金・規制・制度はこの目標に向かって設計されます。だから設計実務に効いてきます。
🎯2040年度の電源構成目標
第7次エネルギー基本計画が掲げる2040年度の電源構成は、次のとおりです。
| 電源 | 2040年度の目標 |
|---|---|
| 再生可能エネルギー | 4〜5割程度(うち太陽光 23〜29%程度) |
| 原子力 | 2割程度 |
| 火力 | 3〜4割程度 |
いちばん大きな変化は、再生可能エネルギーが初めて「最大の電源」として位置づけられたことです。これまでの計画では火力が最大でした。
注意点|「程度」という言葉が付いています
原文はいずれも「4〜5割程度」「2割程度」という書き方です。幅を持たせた表現であって、確定した数値ではありません。施主への説明で使うときも「〜程度」まで含めて伝えるのが正確です。
📉目標と実績のギャップを直視する
では、いまはどうなっているのか。資源エネルギー庁が2026年4月に公表した2024年度(令和6年度)のエネルギー需給実績(確報)を見てみましょう。
| 電源 | 2024年度の実績(確報) | 2040年度の目標 |
|---|---|---|
| 火力(バイオマス除く) | 67.5% | 3〜4割程度 |
| 再生可能エネルギー(水力含む) | 23.1% | 4〜5割程度 |
| 原子力 | 9.4% | 2割程度 |
発電電力量は9,911億kWh(前年度比0.4%増)、非化石電源比率は32.5%まで上昇しました。再エネは前年度から0.2ポイント、原子力は0.9ポイントの上昇です。
ただ、こうして並べるとギャップの大きさがはっきりします。火力を67.5%から3〜4割まで落とし、再エネを23.1%から4〜5割まで倍増させ、原子力を9.4%から2割へ倍以上にする。これを15年でやるという目標です。
ポイント!
このギャップの大きさこそが、補助金・規制・制度変更が今後も続く理由です。省エネ基準の強化も、PUE規制も、蓄電池への支援も、すべてこのギャップを埋めるために出てきます。
設計者にとっては「制度がまた変わる」の連続になりますが、背景にあるのは常にこの1枚の表だと思っておくと、個々の制度変更が理解しやすくなります。

⚛️原子力|再稼働は進んだが、目標にはまだ遠い
資源エネルギー庁の資料(2026年3月31日時点)によれば、再稼働している原発は15基です。
| 電力会社 | 再稼働している号機 |
|---|---|
| 関西電力 | 美浜3、高浜1〜4、大飯3・4(計7基) |
| 九州電力 | 玄海3・4、川内1・2(計4基) |
| 東北電力 | 女川2 |
| 東京電力 | 柏崎刈羽6 |
| 四国電力 | 伊方3 |
| 中国電力 | 島根2 |
長らく「再稼働は西日本中心」という西高東低の構造が続いていました。それが、東京電力の柏崎刈羽6号機が2026年4月16日に営業運転を開始したことで変わりつつあります。震災後、東京電力の原発が動くのはこれが初めてです。なお7号機は規制基準への適合が認められていますが、運転再開の時期は示されていません。
とはいえ全発電量に占める比率は9.4%(2024年度確報)で、2040年度目標の「2割程度」まではまだ距離があります。
注意点
原子力の稼働状況は審査・司法判断・地元同意によって変動します。この記事の数値は2026年3月31日時点の資料で確認したものです。最新の状況は資源エネルギー庁のサイトでご確認ください。

🌊洋上風力|第1ラウンドは事実上つまずいた
再エネの主力として期待されていた洋上風力は、いま厳しい局面にあります。
2025年8月、三菱商事を中心とする企業連合が、秋田県沖など3海域から撤退を表明しました。建設コストの上昇が理由です。第1ラウンドで落札した案件だったため、制度そのものへの信頼が揺らぐ事態となりました。
これを受けて経済産業省は、2026年6月に一般海域の占用公募制度の運用指針を改訂しました。迅速性への配点を下げ、事業計画の実行面とサプライチェーン形成への配点を上げるなど、価格・スピード偏重だった評価を見直す内容です。あわせて価格調整のしくみも導入されました。第1ラウンドの3海域も、この新しい制度のもとで再公募される予定です。
事業者の採算面では、長期脱炭素電源オークション(落札した電源は固定費水準の容量収入を原則20年間得られるしくみ)の活用も含めた支えが議論されています。
ポイント!
洋上風力の話は遠い世界のようですが、「再エネの主力が計画どおりに立ち上がらないと、その分どこかで埋め合わせが必要になる」という意味で、太陽光・蓄電池・省エネへの政策的な圧力につながります。私たちの設計する建物側に、より強い省エネ要求が来る流れの一因です。
🔌設計実務にはどう跳ね返るのか
ここからが本題です。この計画は、私たちの図面に4つの形で跳ね返ってきます。
①分散型電源が「標準装備」になっていく
再エネ4〜5割という目標は、建物側に太陽光と蓄電池が載っているのが当たり前という状態を前提にしています。
設計実務としては、次のような検討が標準化していきます。
- 逆潮流の有無と、それに応じた保護協調の設計
- パワーコンディショナの容量と受電設備との整合
- 蓄電池を置く場合の設置スペース・重量・消防手続き
- 自家消費型か余剰売電型かによる系統連系協議の違い
②出力制御が前提の設計に
太陽光の比率が上がると、発電しすぎる時間帯に出力を絞る(出力制御)ことが日常になります。「載せた分だけ発電できる」という前提での投資回収計算は、成り立ちにくくなっていきます。
③系統への接続そのものがボトルネックに
再エネにせよデータセンターにせよ、系統につながらなければ何も動きません。そしていま、この「つながるまでの待ち時間」が深刻な問題になっています。
千葉県印西市では、新規データセンターの受電開始まで最大10年待ちという事例が報じられています(報道ベース)。経済産業省も、系統の空き情報の公開拡充や一定条件下での早期連系など、接続待ちを短縮するしくみの検討を進めています。
ポイント!
計画段階で「電気は引けるものだ」と考えていると、スケジュールが根本から崩れます。大型案件では、系統連系の可否と時期を最初期に確認することが、これまで以上に重要になっています。
④省エネ規制がさらに強くなる
2026年度から、年間のエネルギー使用量が原油換算1,500kL以上の事業者を対象に、定期報告書へデータセンター業の項目(PUEの実績報告)が追加されました。
要求水準は、既設と新設で分かれています。
| 区分 | 求められる水準 |
|---|---|
| 既設(2028年度以前に新設) | ベンチマーク制度により、2030年度に事業者平均PUE 1.4以下 |
| 2029年度以降に新設 | 設計時PUE 1.28以下、稼働開始2年経過後の翌年度以降はPUE 1.3以下 |
データセンター以外の建物でも、省エネ基準の強化は続く方向です。目標と実績のギャップを見れば、緩む理由がありません。
💴電気料金にはどう跳ね返るのか
施主から必ず聞かれるのが「で、電気代はどうなるんですか」という質問です。エネルギー政策は、次の3つの経路で料金に効いてきます。
①再エネ賦課金
再エネの導入を支えるために、電気を使う全員が負担しているのが再生可能エネルギー発電促進賦課金です。2026年度の単価は1kWhあたり4.18円に設定されました。
再エネ比率を上げるという目標を掲げている以上、この賦課金は簡単には下がりません。
②容量拠出金
将来の供給力を確保するための容量市場のしくみを通じて、その費用が小売電気事業者を経由して電気料金に乗ります。「発電所を建てておいてもらうための費用」だと考えるとわかりやすいでしょう。
③政府の補助金(出たり止まったりします)
政府による電気料金の負担軽減策は、時期によって出たり止まったりするのが実態です。2026年の動きを追うと、次のようになっています。
| 使用月 | 低圧の補助単価 |
|---|---|
| 2026年1・2月 | 4.5円/kWh |
| 2026年3月 | 1.5円/kWh(縮小) |
| 2026年4〜6月 | 支援なし |
| 2026年7月 | 3.5円/kWh(再開) |
| 2026年8月 | 4.5円/kWh |
| 2026年9月 | 3.5円/kWh |
いったん4月に途切れたあと、2026年6月に7〜9月使用分の支援が決定され、再開しています。
注意点
補助は「終わった/終わっていない」で語れるものではありません。施主に説明するときは、必ずその時点の適用期間と単価を資源エネルギー庁のサイトで確認してください。この記事の数値も2026年7月30日時点のものです。
ポイント!施主への説明のしかた
「電気代が上がった」と言われたとき、①燃料費・卸電力価格 ②再エネ賦課金 ③容量拠出金 ④政府の補助の有無の4つに分けて説明できると、話が一気に具体的になります。そしてそのうち①〜④はいずれも建物側では動かせず、下げられるのは使用量だけ。ここから省エネ改修や自家消費太陽光の提案に自然につながります。
✅まとめ
- 第7次エネルギー基本計画は2025年2月18日に閣議決定。2040年度の目標は再エネ4〜5割程度、原子力2割程度、火力3〜4割程度
- 再エネが初めて「最大の電源」として位置づけられたのが最大の変化
- 2024年度の実績(確報)は火力67.5%、再エネ23.1%、原子力9.4%。目標とのギャップは非常に大きい
- 原発は15基が再稼働(2026年3月31日時点)。柏崎刈羽6号機が2026年4月16日に営業運転を開始し、「西高東低」の構図に変化
- 洋上風力は2025年8月の三菱商事連合の撤退を受け、2026年6月に公募制度の運用指針が改訂された
- 設計実務への影響は①分散型電源の標準装備化 ②出力制御前提の設計 ③系統接続がボトルネック ④省エネ規制の強化の4つ
- 電気料金は再エネ賦課金(2026年度4.18円/kWh)・容量拠出金・政府補助の有無の3経路で変動。補助は出たり止まったりするので、その都度確認が必要。建物側で下げられるのは使用量だけ
制度の話は遠く感じますが、結局は「なぜこの設計にするのか」を説明する言葉になります。施主に聞かれたときに1枚の表で答えられる状態にしておくと、提案の説得力が変わってきます。
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⚠️免責事項
本記事は、公表されているエネルギー政策の内容を電気設備設計の視点から整理した情報提供であり、特定の設備・商品・投資の推奨を目的とするものではありません。
記載の数値・制度は2026年7月30日時点で公表されている情報にもとづきます。原発の稼働状況、洋上風力の制度設計、電気料金に関わる各種単価(特に政府による補助)は今後変動します。系統接続の待ち時間に関する記述には、報道にもとづく情報が含まれます。
実際の設計・見積にあたっては、必ず最新の一次情報および所轄官庁・電力会社の指示をご確認ください。
参考にした主な情報源
- 経済産業省 第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました(2025年2月18日)
- 資源エネルギー庁 第7次エネルギー基本計画の概要
- 資源エネルギー庁 令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)
- 資源エネルギー庁 原子力政策に関する最近の動向(2026年3月31日)
- 資源エネルギー庁 柏崎刈羽原子力発電所6号機が再稼働
- 経済産業省 2026年度の賦課金単価を設定します(2026年3月19日)
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