【照明設備の設計マニュアル③】器具の選定 ― 配光・色温度・演色性・設置環境
こんにちは、HARITAの設計室です。連載「照明設備の設計マニュアル」第3回は器具の選定。第2回で台数と配置が出ました。次は「では、どの器具にするか」です。
ここで多くの人が、カタログの光束(lm)と消費電力(W)だけを見て選びます。でもそれだけでは足りません。同じ光束でも、配光が違えば机上の明るさは何倍も変わります。今回の合言葉は「カタログの数字は、置き場所とセットで読む」。
今回の全体像 ― 器具は4つの軸で選ぶ
4つとも独立ではありません。天井が高ければ配光は狭角寄りになり、屋外なら取付方式も限られます。順番としては、環境と取付方式で候補を絞り、そのなかから配光と光の色で決めるのが実務的です。
① 配光 ― 同じ光束でも、机上の明るさは変わる
配光とは、器具が光をどの方向にどれだけ出すかの分布です。同じ10,000lmの器具でも、広く薄く配るタイプと、狭く濃く落とすタイプがあります。第2回の照明率Uが器具ごとに違うのは、この配光の違いが正体です。
選び分けの基準は天井高です。天井が低い部屋で狭角を使うと、器具の真下だけが明るい「スポットの水玉模様」になります。逆に高天井で広角を使うと、光が壁と床に散って作業面まで届きません。高い天井ほど狭角へ ― これだけ覚えておけば大きく外しません。
そして配光は、第1回で触れたグレアにも直結します。視界に光源が直接入る配光は、まぶしさの原因になります。ルーバや乳白カバーで抑えた器具を選ぶか、取付位置を工夫するかの判断が要ります。
② 光の色 ― 色温度は「雰囲気」、演色性は「正しさ」
光の色には、性格の違う2つの指標があります。混同されがちですが、まったく別の話です。
実務でよく効くのは「同じ室で色温度を混ぜない」というルールです。改修で器具を部分更新するとき、既存と違う色温度を入れると天井がまだら模様になります。数値は目安ですので、迷ったら既存器具の色温度を現地で確認してから決めてください。
③ 設置環境 ― 水と埃と、その後の掃除
ここを外すと、数年で器具が使えなくなります。しかも交換費用は施主持ちです。環境の判断は、器具選定でいちばん取り返しがつかない部分だと思ってください。
判断がグレーになりやすいのが「湿気の多い場所」と「水気のある場所」の境目です。この区分は内線規程に定義があるので、迷ったら 内線規程の解釈と解説【080】湿気の多い場所又は水気のある場所 で確認してください。屋外照明の施設方法そのものは 内線規程【104】低圧屋外照明の施設 にまとまっています。
もうひとつ、忘れられがちなのがその後の掃除と交換です。高天井の器具は、ランプ寿命が来たときに誰がどうやって届くのか。脚立で届かない場所は、昇降装置つきにするか、寿命の長い器具を選ぶか。設計の段階で、20年後の脚立の位置まで想像しておくと喜ばれます。
④ 取付方式 ― 天井が決まってから器具を選ぶ
取付方式は、電気の都合ではなく建築の都合で決まります。天井が張られるのか躯体現しか、ふところ寸法はいくつあるか、意匠がどう見せたいか。これが決まらないと器具は選べません。
埋込形はすっきり納まりますが、天井ふところが要ります。ダクトや梁と干渉すると、その1台だけ直付に変えることになり、天井の見た目が崩れます。第2回の取り合いの話とまったく同じ構図です。
そして最後に、非常用兼用形という選択肢があります。ふだんは一般照明として使い、停電時には非常照明として点灯する器具です。天井に非常灯を別置きしなくて済むので、意匠面でも有利です。電源の取り方(電池内蔵か電源別置か)で計画が変わるので、詳しくは 非常用照明の「電池内蔵型」と「電源別置型」の違い をどうぞ。第6回でも改めて扱います。
選んだ器具は、型番・仕様・数量をリストにまとめて図面と一緒に渡します。この作業は 照明器具リスト作成ツール を使うと、型番登録からExcel・発注書の出力まで一気に片づきます。
まとめ
- 器具は「配光・光の色・設置環境・取付方式」の4軸。環境と取付で絞り、配光と色で決める
- 配光は天井高とセット。高い天井ほど狭角へ。低い天井の狭角は水玉模様になる
- 色温度は雰囲気、演色性は正しさ。同じ室で色温度を混ぜない
- 湿気・水気・屋外・粉じん塩害で器具の等級が変わる。区分の判断は内線規程を確認
- 取付方式は建築の都合で決まる。天井が決まってから器具を選ぶ
よくある質問
Q1. 光束(lm)が同じなら、どの器具でも同じ明るさになりますか?
A. なりません。光束は「器具が出す光の総量」で、作業面に届く量ではありません。配光が違えば照明率が変わり、机上の照度は大きく変わります。比べるなら、同じ条件で照度計算した結果どうしで比べてください。
Q2. 演色性は高いほど良いのでは?
A. 高いに越したことはありませんが、価格が上がり、同じ消費電力での明るさは下がる傾向があります。倉庫や機械室にRa90を入れる必要はありません。色そのものを判断する場所かどうかで決めてください。
Q3. 屋外なら全部「防水形」にしておけば安心ですか?
A. 安全側ではありますが、コストが上がりますし、必ずしも最適ではありません。軒下で雨がかりのない場所と、吹きさらしの外灯では要求が違います。雨がかりの有無、塩害の有無で分けて指定するのが設計です。
次回予告
第4回は「点滅回路とスイッチ計画」。器具が決まっても、消せなければ設備は完成しません。片切・3路・4路の使い分け、点滅グループの切り方、人感センサや調光の使いどころまで。連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。
→ 公開しました:第4回 点滅回路とスイッチ計画 ― 誰が・どこで・どう消すか





