この記事は連載「照明設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
技術図書館照明器具の選定|カタログの数字は、置き場所とセットで読む配光と天井高の関係、色温度と演色性の違い、外すと戻れない設置環境をスライドで整理しました。この資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事の全体像:器具選定の4つの軸 ― 配光と天井高、色温度と演色性、設置環境、取付方式

こんにちは、HARITAの設計室です。連載「照明設備の設計マニュアル」第3回は器具の選定第2回で台数と配置が出ました。次は「では、どの器具にするか」です。

ここで多くの人が、カタログの光束(lm)と消費電力(W)だけを見て選びます。でもそれだけでは足りません。同じ光束でも、配光が違えば机上の明るさは何倍も変わります。今回の合言葉は「カタログの数字は、置き場所とセットで読む」

この3つ、すぐ答えられますか

  • 光束(lm)が同じなら、どの器具でも同じ明るさになりますか。
  • 色温度と演色性、どちらが「正しさ」の指標ですか。
  • 器具を選ぶ前に、決まっていないといけないことは何ですか。
ペン太ペン太
器具はカタログの光束とワット数を見て、いちばん効率がいいのを選べばいいですよね。
はりたはりた
それだけでは足りないんだ。同じ10,000lmの器具でも、配光が違えば机上の明るさは何倍も変わる。
ペン太ペン太
同じ光束なのに……。
はりたはりた
光束は「器具が出す光の総量」で、作業面に届く量じゃないからね。今回の合言葉は「カタログの数字は、置き場所とセットで読む」。
この記事でわかること
第2回で台数と配置が出ました。次は「では、どの器具にするか」。カタログの数字だけでは決まらない部分を整理します。

今回の全体像 ― 器具は4つの軸で選ぶ

トピック1:器具は、4つの軸で選ぶ
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図1:器具選定の4つの軸

4つとも独立ではありません。天井が高ければ配光は狭角寄りになり、屋外なら取付方式も限られます。順番としては、環境と取付方式で候補を絞り、そのなかから配光と光の色で決めるのが実務的です。

ここまでのポイント
  • 器具は配光・光の色・設置環境・取付方式の4つの軸で選ぶ
  • 4つとも独立ではない。天井が高ければ配光は狭角寄りになり、屋外なら取付方式も限られる
  • 順番としては環境と取付方式で候補を絞り、そのなかから配光と光の色で決めるのが実務的

① 配光 ― 同じ光束でも、机上の明るさは変わる

トピック2:同じ光束でも、変わる

配光とは、器具が光をどの方向にどれだけ出すかの分布です。同じ10,000lmの器具でも、広く薄く配るタイプと、狭く濃く落とすタイプがあります。第2回の照明率Uが器具ごとに違うのは、この配光の違いが正体です。

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図2:広角配光と狭角配光の違い

選び分けの基準は天井高です。天井が低い部屋で狭角を使うと、器具の真下だけが明るい「スポットの水玉模様」になります。逆に高天井で広角を使うと、光が壁と床に散って作業面まで届きません。高い天井ほど狭角へ ― これだけ覚えておけば大きく外しません。

そして配光は、第1回で触れたグレアにも直結します。視界に光源が直接入る配光は、まぶしさの原因になります。ルーバや乳白カバーで抑えた器具を選ぶか、取付位置を工夫するかの判断が要ります。

作図イメージ:配光と天井高の関係、そして器具を選ぶ順番
図3:作図イメージ ― 配光と天井高、そして選ぶ順番
ここまでのポイント
  • 配光とは、器具が光をどの方向にどれだけ出すかの分布
  • 同じ10,000lmの器具でも、広く薄く配るタイプと、狭く濃く落とすタイプがある
  • 第2回の照明率Uが器具ごとに違うのは、この配光の違いが正体
  • 選び分けの基準は天井高。低い天井で狭角を使うと、器具の真下だけが明るい「スポットの水玉模様」になる
  • 逆に高天井で広角を使うと、光が壁と床に散って作業面まで届かない
  • 高い天井ほど狭角へ ― これだけ覚えておけば大きく外さない
  • 配光はグレアにも直結する。視界に光源が直接入る配光は、まぶしさの原因になる

② 光の色 ― 色温度は「雰囲気」、演色性は「正しさ」

トピック3:雰囲気と、正しさ

光の色には、性格の違う2つの指標があります。混同されがちですが、まったく別の話です。

K 2,700K3,500K5,000K6,500K                    Ra Ra 80 Ra 90 HARITA
図4:色温度と演色性

実務でよく効くのは「同じ室で色温度を混ぜない」というルールです。改修で器具を部分更新するとき、既存と違う色温度を入れると天井がまだら模様になります。数値は目安ですので、迷ったら既存器具の色温度を現地で確認してから決めてください。

何を表すかひとことで実務で効くこと
色温度光の色みの数値雰囲気同じ室で色温度を混ぜない。部分更新で天井がまだら模様になる
演色性ものの色がどれだけ正しく見えるか正しさ高いほど良いとは限らない。色そのものを判断する場所かどうかで決める
ここまでのポイント
  • 光の色には性格の違う2つの指標がある。混同されがちだが、まったく別の話
  • 色温度は「雰囲気」、演色性は「正しさ」
  • 実務でよく効くのは「同じ室で色温度を混ぜない」というルール
  • 改修で器具を部分更新するとき、既存と違う色温度を入れると天井がまだら模様になる
  • 数値は目安。迷ったら既存器具の色温度を現地で確認してから決める

③ 設置環境 ― 水と埃と、その後の掃除

トピック4:水と埃と、その後の掃除

ここを外すと、数年で器具が使えなくなります。しかも交換費用は施主持ちです。環境の判断は、器具選定でいちばん取り返しがつかない部分だと思ってください。

湿湿HARITA
図5:設置環境による器具の選び分け

判断がグレーになりやすいのが「湿気の多い場所」と「水気のある場所」の境目です。この区分は内線規程に定義があるので、迷ったら 内線規程の解釈と解説【081】湿気の多い場所又は水気のある場所 で確認してください。屋外照明の施設方法そのものは 内線規程【104】低圧屋外照明の施設 にまとまっています。

もうひとつ、忘れられがちなのがその後の掃除と交換です。高天井の器具は、ランプ寿命が来たときに誰がどうやって届くのか。脚立で届かない場所は、昇降装置つきにするか、寿命の長い器具を選ぶか。設計の段階で、20年後の脚立の位置まで想像しておくと喜ばれます。

ここまでのポイント
  • ここを外すと、数年で器具が使えなくなる。しかも交換費用は施主持ち
  • 器具選定でいちばん取り返しがつかない部分
  • 判断がグレーになりやすいのが「湿気の多い場所」と「水気のある場所」の境目。区分は内線規程に定義がある
  • 忘れられがちなのがその後の掃除と交換。高天井の器具は、ランプ寿命が来たときに誰がどうやって届くのか
  • 脚立で届かない場所は、昇降装置つきにするか、寿命の長い器具を選ぶ
  • 設計の段階で、20年後の脚立の位置まで想像しておくと喜ばれる
ペン太ペン太
屋外なら、全部「防水形」にしておけば安心ですよね。
はりたはりた
安全側ではあるけど、コストが上がるし、必ずしも最適じゃない。
ペン太ペン太
屋外は屋外じゃないんですか。
はりたはりた
軒下で雨がかりのない場所と、吹きさらしの外灯では要求が違う。雨がかりの有無、塩害の有無で分けて指定するのが設計だよ。

④ 取付方式 ― 天井が決まってから器具を選ぶ

トピック5:天井が決まってから

取付方式は、電気の都合ではなく建築の都合で決まります。天井が張られるのか躯体現しか、ふところ寸法はいくつあるか、意匠がどう見せたいか。これが決まらないと器具は選べません。

調 6HARITA
図6:取付方式と非常用兼用

埋込形はすっきり納まりますが、天井ふところが要ります。ダクトや梁と干渉すると、その1台だけ直付に変えることになり、天井の見た目が崩れます。第2回の取り合いの話とまったく同じ構図です。

そして最後に、非常用兼用形という選択肢があります。ふだんは一般照明として使い、停電時には非常照明として点灯する器具です。天井に非常灯を別置きしなくて済むので、意匠面でも有利です。

電源の取り方(電池内蔵か電源別置か)で計画が変わるので、詳しくは 非常用照明の「電池内蔵型」と「電源別置型」の違い をどうぞ。第6回でも改めて扱います。

選んだ器具は、型番・仕様・数量をリストにまとめて図面と一緒に渡します。この作業は 照明器具リスト作成ツール を使うと、型番登録からExcel・発注書の出力まで一気に片づきます。

ここまでのポイント
  • 取付方式は電気の都合ではなく、建築の都合で決まる
  • 天井が張られるのか躯体現しか、ふところ寸法はいくつあるか、意匠がどう見せたいか。これが決まらないと器具は選べない
  • 埋込形はすっきり納まるが、天井ふところが要る。ダクトや梁と干渉すると、その1台だけ直付に変えることになり、天井の見た目が崩れる
  • 非常用兼用形という選択肢もある。ふだんは一般照明、停電時は非常照明として点灯する器具
  • 天井に非常灯を別置きしなくて済むので、意匠面でも有利。電源の取り方(電池内蔵か電源別置か)で計画が変わる
  • 選んだ器具は、型番・仕様・数量をリストにまとめて図面と一緒に渡す

まとめ

トピック6:今日のまとめ

器具の選定でつまずくのは、カタログの光束(lm)と消費電力(W)だけを見て選んでしまうときです。カタログの数字は、置き場所とセットで読む ― 同じ光束でも、配光が違えば机上の明るさは何倍も変わります。

4つの軸と、外したときに起きること

絞る2つ(環境・取付)と、決める2つ(配光・色)。この順番で見ていくのが実務的です。

決め手外すと
③ 設置環境湿気・水気・屋外・粉じん塩害で器具の等級が変わる数年で器具が使えなくなる。交換費用は施主持ち
④ 取付方式建築の都合で決まる。天井が決まってから器具を選ぶダクトや梁と干渉して1台だけ直付に。天井の見た目が崩れる
① 配光天井高とセット。高い天井ほど狭角へ低い天井の狭角は水玉模様、高天井の広角は作業面まで届かない
② 光の色色温度は雰囲気、演色性は正しさ同じ室で色温度を混ぜると、天井がまだら模様になる

光の側 ― 配光と、色

  • 器具は「配光・光の色・設置環境・取付方式」の4軸環境と取付で絞り、配光と色で決める
  • 配光は天井高とセット高い天井ほど狭角へ。低い天井の狭角は水玉模様になる
  • 色温度は雰囲気、演色性は正しさ同じ室で色温度を混ぜない

建物の側 ― 環境と、取付

  • 湿気・水気・屋外・粉じん塩害で器具の等級が変わる。区分の判断は内線規程を確認
  • 取付方式は建築の都合で決まる天井が決まってから器具を選ぶ

最後に ― 20年後の、脚立の位置

設置環境の判断は、器具選定でいちばん取り返しがつかない部分です。外せば数年で器具が使えなくなり、しかも交換費用は施主持ちになります。

そして忘れられがちなのが、その後の掃除と交換です。高天井の器具は、ランプ寿命が来たときに誰がどうやって届くのか。設計の段階で20年後の脚立の位置まで想像しておくと、きっと喜ばれます。

よくある質問

トピック7:よくある質問

Q1. 光束(lm)が同じなら、どの器具でも同じ明るさになりますか?
A. なりません。光束は「器具が出す光の総量」で、作業面に届く量ではありません。配光が違えば照明率が変わり、机上の照度は大きく変わります。比べるなら、同じ条件で照度計算した結果どうしで比べてください。

Q2. 演色性は高いほど良いのでは?
A. 高いに越したことはありませんが、価格が上がり、同じ消費電力での明るさは下がる傾向があります。倉庫や機械室にRa90を入れる必要はありません。色そのものを判断する場所かどうかで決めてください。

Q3. 屋外なら全部「防水形」にしておけば安心ですか?
A. 安全側ではありますが、コストが上がりますし、必ずしも最適ではありません。軒下で雨がかりのない場所と、吹きさらしの外灯では要求が違います。雨がかりの有無、塩害の有無で分けて指定するのが設計です。

次回予告

トピック8:次回予告

第4回は「点滅回路とスイッチ計画」。器具が決まっても、消せなければ設備は完成しません。片切・3路・4路の使い分け、点滅グループの切り方、人感センサや調光の使いどころまで。連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

→ 公開しました:第4回 点滅回路とスイッチ計画 ― 誰が・どこで・どう消すか

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。