【照明設備の設計マニュアル⑤】回路分割と分電盤 ― 1回路の容量・電圧降下・開閉器
こんにちは、HARITAの設計室です。連載「照明設備の設計マニュアル」第5回は回路分割と分電盤。第4回までで、器具と点滅グループが決まりました。ここから先は電気の話です。決めたものを、盤の中に落とし込みます。
今回の合言葉は「1回路は“容量”と“長さ”の両方で決まる」。台数だけで回路を割ると、長い廊下や屋外灯でつまずきます。
今回の全体像 ― 器具から盤まで4ステップ
幹線・分電盤・回路の関係そのものがあやふやな人は、新人講座 第9回 幹線・分電盤・回路のきほん を先に読んでおくと、この回がすっと入ります。
① 1回路に何台載せるか ― 器は8割で満杯
1回路の容量は、開閉器の定格で決まります。ただし定格いっぱいまで使ってはいけません。照明は一度点けたら何時間も連続して流れる負荷です。連続使用の負荷は、定格の8割程度までに抑えるのが目安です。
ここで混同しやすいのが、点滅グループと回路は別ものだという点です。第4回で決めたA・B・Cのグループは「スイッチの分け方」であって、「ブレーカーの分け方」ではありません。同じ回路のなかでスイッチだけ3つに分けることもできますし、逆にグループごとに回路を分けることもできます。グループ単位で回路を分けておくと、後の改修や増設がやりやすくなる ― これは覚えておく価値があります。
そして専用回路にするもの。屋外灯(他室に影響させない・自動点滅器がつく)、非常照明(第6回で詳説)、そして大容量の器具。これらは最初から独立させます。分岐回路の考え方そのものは 分岐回路の設計について詳しく解説 にまとまっています。
② 電圧降下 ― 長さが効いてくる
容量が足りていても、盤から遠い器具は電圧が下がります。電線にも抵抗があるからです。落ち方は「流れる電流 × こう長」にだいたい比例します。事務室のような近い負荷では問題になりませんが、長い廊下、駐車場の外灯、離れた棟の照明では一気に効いてきます。
電圧が下がるとどうなるか。LEDの場合、多少の電圧変動では明るさはほとんど変わりませんが、電源装置の許容範囲を下回るとちらつきや不点灯が起きます。しかも竣工時は問題なくても、末端に器具を1台足した瞬間に症状が出る、という現れ方をします。
対策は3つ。電線を太くするのがいちばん素直ですが、こう長が長いと材料費が跳ね上がります。回路を分けて1回路あたりの電流を減らすのも有効です。距離がどうにもならない場合は、200V配電にして電流そのものを半分にする方法もあります。第2回で決めた配置が、ここで効いてくるわけです。
③ 開閉器と電線 ― セットで決める
開閉器(ブレーカー)と電線は、どちらか一方だけでは決まりません。負荷電流から開閉器の定格を決め、その開閉器が守れる太さの電線を選ぶ。この順番です。
逆にすると危険です。太い開閉器に細い電線をつなぐと、ブレーカーが落ちる前に電線が発熱します。守るべきものが守られない状態です。分岐回路の定格・電線太さ・こう長の組み合わせは内線規程に表があるので、必ず確認してください。
ブレーカー選定の考え方は 新人講座 第14回 ブレーカー(遮断器)選定のきほん、電灯負荷に絞った開閉器サイズの選び方は 電灯負荷の開閉器サイズ選定方法 に詳しく書いています。
④ 分電盤と回路表 ― 番号で全部つなぐ
最後に、決めた回路を盤に並べます。ここでやることは、コンセント編の第6回とまったく同じです。平面図・回路表・盤の3つを、回路番号という共通のキーで結ぶ。
回路表の用途欄には、室名だけでなく「窓側」「専用」といった性格まで書いておくと親切です。10年後に改修する人が、どの回路を触っていいかを判断できます。
盤そのものの構成 ― 主幹の選定、分岐の数、予備回路の持ち方 ― は 分電盤の構成と計画指針 にまとめてあります。予備回路は必ず残してください。将来の増設は「あるかもしれない」ではなく「必ず起きる」ものです。
回路ごとの容量を積み上げて盤の主幹まで確認する作業には、単相3線式 盤図作成用 容量積み上げツール が使えます。手計算で表を埋めていた時間が、そのまま浮きます。
まとめ
- 1回路の容量は開閉器の定格で決まる。連続負荷は定格の8割程度までが目安
- 点滅グループと回路は別もの。ただしグループ単位で回路を分けると改修が楽になる
- 屋外灯・非常照明・大容量器具は専用回路にする
- 電圧降下は「電流×こう長」で効く。対策は太くする・分ける・200Vにするの3つ
- 開閉器と電線はセット。開閉器が守れる太さの電線を選ぶ
- 回路番号で平面図・回路表・盤をつなぐ。予備回路は必ず残す
よくある質問
Q1. LEDは消費電力が小さいので、1回路にたくさん載せても平気では?
A. 電流だけ見ればそのとおりで、以前より多くの台数が載ります。ただし突入電流には注意が必要です。LED器具は電源装置を持っていて、点灯の瞬間に定格をはるかに超える電流が一瞬流れます。台数が多いと、点けた瞬間にブレーカーが落ちることがあります。器具のカタログで突入電流と、その開閉器に接続できる台数を確認してください。
Q2. 点滅グループごとに回路を分けたほうがいいですか?
A. 必須ではありませんが、分けておくと得です。改修で「窓側だけ器具を替える」「一部を非常照明に変更する」といった話が出たとき、回路が分かれていれば工事範囲が閉じます。回路数が増えるぶん盤は大きくなるので、そのバランスで判断してください。
Q3. 電圧降下は、どのくらいまで許容されますか?
A. 許容値はこう長と受電方式で変わり、内線規程に基準が示されています。数値をここで断言するより、案件ごとに表で確認する習慣を持ってください。そのうえで、末端に器具を足す余地があるかどうかまで見ておくと安全です。
次回予告
次回はいよいよ最終回、第6回「非常照明・誘導灯」。建築基準法の非常照明と、消防法の誘導灯。名前が似ていて、根拠も目的もまったく違う2つを整理します。電池内蔵形と電源別置形、耐火配線、そして回路の取り方まで。連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。
→ 公開しました:第6回・最終回 非常照明・誘導灯 ― 建築基準法と消防法の二本立て





