技術図書館需要率と不等率|足してから割り引く設備容量×需要率÷不等率+余裕。需要率はグループの中、不等率はグループ同士の割引で、使う場面が違うこの資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事は連載「幹線設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
この記事の全体像:設備容量の積み上げ、需要率と不等率の違い、集合住宅の戸数による考え方

こんにちは、HARITAの設計室です。連載「幹線設備の設計マニュアル」第2回は負荷容量の集計第1回で盤の位置と系統が決まりました。次は「その盤に、どれだけの電気を送るか」です。

ここで初学者がつまずくのが、足した数字をそのまま使ってはいけないという点です。建物にある機器の容量を全部足すと、実際に流れる電流よりずっと大きな値になります。そこで登場するのが需要率と不等率という「割引」の考え方。今回の合言葉は「全部足してから、正しく割り引く」です。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 需要率と不等率、先に使うのはどちらですか。
  • 需要率は1以下、では不等率は?
  • 集計で「予備」の行を最初から立てるのは、なぜですか。
ペン太ペン太
その盤にぶら下がる機器の容量、全部足しました。これでケーブルが選べますね。
はりたはりた
足した数字を、そのまま使ってはいけないんだ。
ペン太ペン太
え、足したのに……。
はりたはりた
建物にある機器を全部足すと、実際に流れる電流よりずっと大きくなる。そこで需要率と不等率という「割引」が出てくる。今回の合言葉は「全部足してから、正しく割り引く」だ。
この記事でわかること
足した数字をそのまま使ってはいけない理由と、需要率・不等率という2つの「割引」の使い分けを整理します。

今回の全体像 ― 設備容量から幹線容量まで

トピック1:足してから、割り引く
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図1:設備容量から幹線容量まで

順番はこうです。設備容量を全部足す → 需要率を掛けて最大需要電力を出す → 不等率で割ってピークのずれを見込む → 余裕を足して幹線容量を決める。

大事なのは、足すのは機械的に、割り引くのは根拠を持ってという姿勢です。足し忘れは取り返しがつきませんが、割引は「なぜその値を使ったか」を説明できれば議論できます。基礎の考え方は 新人講座 第11回 負荷容量と需要率・不等率 にまとめてあります。

ここまでのポイント
  • 順番は 設備容量を全部足す → 需要率を掛けて最大需要電力 → 不等率で割ってピークのずれを見込む → 余裕を足して幹線容量
  • 足すのは機械的に、割り引くのは根拠を持って
  • 足し忘れは取り返しがつかないが、割引は「なぜその値を使ったか」を説明できれば議論できる

① 設備容量を積み上げる ― まず全部足す

トピック2:まず、全部足す

最初の作業は単純です。その盤にぶら下がる負荷を、種類ごとに拾って足す。電灯、コンセント動力、空調、その他。この段階では一切割り引きません

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図2:負荷の種類別に設備容量を積み上げる

気をつけたいのが3点。ひとつめは拾い漏れ。あとから「この機器が抜けていました」となっても、幹線の入替えでは吸収できません。コンセント編の第6回でやった拾い出しと同じで、数える順番を決めて、閉じながら進めるのがコツです。

ふたつめは単位。kWとkVAを混ぜると、あとで力率の扱いがわからなくなります。集計表のどの列が何の単位かを最初に決めてください。みっつめは将来の増設。「予備」という行を最初から立てておくと、あとから説明しやすくなります。

積み上げの実作業には 単相3線式 盤図作成用 容量積み上げツール が使えます。表計算で毎回組み直していた人は、一度試してみてください。

作図イメージ:集計表の並べ方と、需要率・不等率を使う場面の違い
図3:作図イメージ ― 集計表の並べ方と、2つの割引の使い分け
ここまでのポイント
  • その盤にぶら下がる負荷を、種類ごとに拾って足す。この段階では一切割り引かない
  • 拾い漏れ ― あとから「この機器が抜けていました」となっても、幹線の入替えでは吸収できない
  • 数える順番を決めて、閉じながら進めるのがコツ
  • 単位 ― kWとkVAを混ぜると、あとで力率の扱いがわからなくなる。集計表のどの列が何の単位かを最初に決める
  • 将来の増設 ―「予備」という行を最初から立てておくと、あとから説明しやすい

② 需要率 ― 「全部同時には使わない」

トピック3:全部同時には、使わない

10台のエアコンがある建物で、10台が同時にフル運転することはまずありません。この「実際に同時に使われる割合」が需要率です。

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図4:需要率のイメージ

式にすると需要率=最大需要電力÷設備容量。1以下の値になります。注意したいのは、これは設計者が勘で決める値ではないということ。建物の用途や規模ごとに目安が示されているので、それを根拠として使います。特記仕様書や施主基準に指定があれば、当然そちらが優先です。

需要率を小さく取れば幹線は細くなり、コストは下がります。でも読み違えれば、竣工後に容量不足で泣くことになります。攻めるところではありません

何の割引かどこで効くか
需要率1つのグループの中での割引1以下(=最大需要電力÷設備容量)各グループの中で、まず掛ける
不等率グループ同士の割引1以上(=各最大需要電力の和÷合成最大需要電力)上流の盤ほど大きく効く。和をこの値で割る
ここまでのポイント
  • 10台のエアコンがあっても、10台が同時にフル運転することはまずない。この「実際に同時に使われる割合」が需要率
  • 需要率=最大需要電力÷設備容量。1以下の値になる
  • 設計者が勘で決める値ではない。建物の用途や規模ごとに目安が示されているので、それを根拠として使う
  • 特記仕様書や施主基準に指定があれば、当然そちらが優先
  • 小さく取れば幹線は細くなりコストは下がるが、読み違えれば竣工後に容量不足で泣く。攻めるところではない
ペン太ペン太
需要率、少し小さめに取ればケーブルが細くなってコストが下がりますよね。
はりたはりた
攻めるところじゃないよ、そこは。読み違えれば、竣工後に容量不足で泣くことになる。
ペン太ペン太
じゃあ、どう決めれば……。
はりたはりた
建物の用途や規模ごとに目安が示されているから、それを根拠に使う。特記仕様書や施主基準に指定があれば当然そちらが優先だ。聞かれたら「用途◯◯なのでこの目安を採用しました」と、出典と用途区分をセットで示せばいい。

③ 不等率 ― ピークの時間はずれている

トピック4:ピークの時間は、ずれている

需要率が「1つのグループの中での割引」だとすれば、不等率はグループ同士の割引です。照明のピークと空調のピークは、同じ時刻には来ません。

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図5:不等率とピークのずれ

それぞれの最大値を単純に足すと、実際には起きない大きさになります。不等率=各負荷の最大需要電力の和÷合成した最大需要電力。1以上の値になり、和をこの値で割ると、上流に必要な容量が出ます。

この効果は上流の盤ほど大きく効きます分電盤1面ぶんではあまり差が出ませんが、複数の盤を束ねる幹線や、受変電設備の容量では無視できない差になります。使う場面を取り違えないでください ― 需要率はグループの中、不等率はグループ同士です。

ここまでのポイント
  • 需要率が「1つのグループの中での割引」なら、不等率はグループ同士の割引
  • 照明のピークと空調のピークは、同じ時刻には来ない。それぞれの最大値を単純に足すと、実際には起きない大きさになる
  • 不等率=各負荷の最大需要電力の和÷合成した最大需要電力。1以上の値になり、和をこの値で割ると上流に必要な容量が出る
  • この効果は上流の盤ほど大きく効く。分電盤1面ぶんでは差が出にくいが、複数の盤を束ねる幹線や受変電設備では無視できない
  • 使う場面を取り違えない ― 需要率はグループの中、不等率はグループ同士

④ 集合住宅の幹線計算 ― 戸数で効いてくる

トピック5:戸数で、効いてくる

集合住宅は、この考え方がいちばんきれいに現れる建物です。住戸が増えるほど、生活のばらつきが平均化されて、1戸あたりに見込む容量は小さくできます

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図6:集合住宅の戸数と需要率

4戸のアパートと100戸のマンションでは、1戸あたりの見込みがまったく違います。実務では住戸数に応じた計算方法が整理されているので、それに沿って求めます。具体的な計算手順は 集合住宅の幹線需要率と幹線計算方法 に例つきでまとめてあります。

ここでも注意点はひとつ。住戸の設備水準が変われば前提が変わりますオール電化かガス併用か、EV充電を各戸に用意するのか。近年はここが大きく動いているので、「前の物件と同じ」で流さないでください。

ここまでのポイント
  • 集合住宅は、この考え方がいちばんきれいに現れる建物
  • 住戸が増えるほど、生活のばらつきが平均化されて、1戸あたりに見込む容量は小さくできる
  • 4戸のアパートと100戸のマンションでは、1戸あたりの見込みがまったく違う
  • 実務では住戸数に応じた計算方法が整理されているので、それに沿って求める
  • 住戸の設備水準が変われば前提が変わる。オール電化かガス併用か、EV充電を各戸に用意するのか ―「前の物件と同じ」で流さない

まとめ

トピック6:今日のまとめ

負荷容量の集計は、足す作業と、割り引く作業のふたつでできています。足すのは機械的に、割り引くのは根拠を持って ― 足し忘れは取り返しがつきませんが、割引は理由を説明できれば議論の余地があります。

段階ごとに、外すと何が起きるか

順番そのものは単純です。つまずくのは、たいてい単位と、割引の使い分けのところです。

段階やること外すと
① 設備容量種類ごとに拾って足す。一切割り引かない拾い漏れは、幹線の入替えでは吸収できない
単位の扱い集計表のどの列が何の単位か、最初に決めるkWとkVAを混ぜると、力率の扱いがわからなくなる
② 需要率用途ごとの目安を根拠に掛ける(1以下)勘で小さく取ると、竣工後に容量不足で泣く
③ 不等率グループを束ねるとき、和を割る(1以上)需要率と取り違える。需要率は中、不等率は同士
④ 余裕増設が起きそうな建物ほど厚く幹線はあとから太くできない。迷ったら上流ほど厚く

足す ― 割り引く前の作業

  • 順番は 設備容量 →×需要率→ 最大需要電力 →÷不等率→ 合成最大 →+余裕→ 幹線容量
  • 足すのは機械的に。拾い漏れは幹線の入替えでは吸収できない
  • kWとkVAを混ぜない。「予備」の行を最初から立てる

割り引く ― 2つの割引の使い分け

  • 需要率は1つのグループの中での割引。用途ごとの目安を根拠に使う
  • 不等率はグループ同士の割引。上流の盤ほど効いてくる
  • 集合住宅は戸数で効く。設備水準が変われば前提も変わる

最後に ― 数字ではなく、根拠を答える

需要率の根拠を求められたときの正解は、数字ではありません。「用途◯◯の建物なので、この目安を採用しました」と、出典と用途区分をセットで示す。数字だけを答えると必ず追加質問が来ますし、あとから設計変更が入ったときに再検討できません。

そして余裕の取り方も同じです。一律の数字はなく、判断材料は「その建物で増設が起きそうか」。幹線はあとから太くできないので、迷ったら上流ほど厚く取るのが安全側です。

よくある質問

トピック7:よくある質問

Q1. 需要率と不等率、どちらを先に使うのですか?
A. 需要率が先です。まず各グループの中で「同時に使う割合」を掛けて最大需要電力を出し、そのうえで複数グループを束ねるときに不等率で割ります。下流から上流へ、順に積み上げていくと覚えてください。

Q2. 余裕はどのくらい持たせればいいですか?
A. 一律の数字はありません。判断材料は「その建物で増設が起きそうか」です。テナントビルや工場は用途変更が前提なので厚めに、専用住宅は薄めに。ただし幹線はあとから太くできないので、迷ったら上流ほど厚く取るのが安全側です。

Q3. 需要率の根拠を求められたら、どう答えますか?
A. 「用途◯◯の建物なので、この目安を採用しました」と出典と用途区分をセットで示すのが正解です。

数字だけを答えると必ず追加質問が来ますし、あとから設計変更が入ったときに再検討できません。集計表に根拠の列を作っておくと、この質問に一瞬で答えられます。

次回予告

トピック8:次回予告

第3回は「幹線サイズの選定」。今回出した容量から電流を求め、ケーブルの太さを決めます。鍵になるのは許容電流 ― これは発熱の限界で決まる値です。布設条件による低減まで扱います。連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

→ 公開しました:第3回 幹線サイズの選定 ― 許容電流は「発熱の限界」で決まる

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。