【EV充電・再エネ設備の設計マニュアル②】EV充電設備 ― 台数ではなく、同時に何台使うか
「この駐車場に、充電器は何台置けますか」。EV充電設備の相談は、たいていこの形で来ます。
台数だけでは答えられません。1台6kWの充電器を10台置いても、同時に2台しか使わないなら必要な容量は12kWです。逆に、来客用で全台が同時に使われる前提なら60kWを確保しなければならない。同じ10台でも、必要な受電容量は5倍違います。
合言葉は「台数ではなく、同時に何台使うか」。今回は、その同時性をどう見積もり、どう設計に落とすかを扱います。
先に決めるのは、充電方式
容量の話の前に、充電方式を決めます。ここで必要な電力がほぼ決まるからです。
- EV用コンセント(200V・20A程度):約3kW。器具は安価で、車載のケーブルを使う。集合住宅や従業員用に向く
- 普通充電器(ケーブル付):3kW〜6kW。ケーブルが備え付けで使いやすい。事業所の社用車、来客用に多い
- 急速充電器:20kW〜90kW以上。直流で一気に充電する。商業施設や道の駅など、短時間で帰る客を想定する場所
決め手は電力ではなく滞在時間です。翌朝まで停めているなら3kWでも足ります。30分で帰る客を相手にするなら、急速充電でなければ意味がありません。
同時使用率を、どう置くか
容量計算そのものは単純です。台数 × 1台あたりの出力 × 同時使用率。悩ましいのは最後の係数です。
照明やコンセントの需要率のように、広く共有された数値が確立しているわけではありません。だからこそ、置いた根拠を残すことが設計の仕事になります。判断材料は使われ方です。
- 社用車:台数と車両数が一致し、夜間に一斉に充電される。同時使用率は高く見る
- 従業員用:出社時刻が重なるが、全員がEVではない。EV比率の想定が効く
- 来客用:滞在時間が短く回転する。台数は少ないが、使われるときは同時に埋まりやすい
- 集合住宅:各戸の車が夜間に停まる。将来のEV普及率をどこまで見込むかが最大の変数
集合住宅は特に難しい判断です。いま需要が2台でも、10年後に半数がEVになる可能性がある。いま何台つけるかと、将来何台まで伸ばせるようにしておくかは、別々に決めます。前者は機器費、後者は配管と幹線の話です。
負荷率制御 ― 容量の代わりに、時間を使う
第1回で触れた負荷率制御(ダイナミックコントロール)を、もう少し具体的に見ます。
仕組みは単純です。受電点や幹線に電流センサを付けて建物全体の使用電力を測り、契約電力までの残りを充電に配分します。他の負荷が増えれば充電を絞り、減れば戻す。
- 全体上限方式:充電設備全体の合計をある値以下に保つ。いちばん単純
- 均等配分方式:接続中の台数で余裕を割る。3台なら1台あたり1/3
- 優先順位方式:来客用を優先し、社用車は余ったぶんで充電するなど、用途で重みを付ける
導入すると、受電設備を増強せずに台数を増やせます。ただし制約もあります。充電完了時刻が保証されません。建物の使用電力が高い日は、充電が遅くなる。これを許容できる用途かどうかが判断の分かれ目です。
もうひとつ、設計上の注意点があります。制御が止まったときにどうなるかです。通信断や制御装置の故障で指令が届かなくなったとき、充電器がフル出力で動き続ける設計だと、契約電力を超えます。フェイルセーフ側(停止または最小出力)に倒れる製品を選び、その動作を試験で確認してください。
駐車場は、屋内の分電盤とは条件が違う
容量が決まったら、次は駐車場という現場の条件です。ここで見落とすと、竣工間際に手戻りします。
- 距離が出る:分電盤から駐車場の奥まで100mを超えることがある。電圧降下の検討は必須で、電線サイズが太くなりやすい。ケーブルラックや管路のスペースも先に確保する
- 屋外環境:雨がかり、雪、直射日光。機器の防水等級と、ケーブル引込口の処理。地際は特に劣化しやすい
- 車が当たる:充電器の前に車止め、必要ならガードポール。ケーブルを引きずって踏まれない収納方法も含めて考える
- 接地と保護:EV充電回路は専用の分岐回路とし、漏電遮断器を施設する。EV充電では直流成分を含む地絡電流が生じうるため、その検出に対応した構成になっているかを製品仕様で確認する
- 機械式駐車場:パレットが動くため、充電設備を置ける段が限られる。可動部への配線は基本的に成立しないので、設備側の対応品かどうかを先に確認する
とくに電圧降下は、企画段階の概算に入っていないことが多い項目です。「充電器の値段」ではなく「そこまで電気を持っていく費用」が支配的になる現場は珍しくありません。
1台目のときに、10台目を考える
EV充電設備でいちばん差がつくのが、この点です。
最初は1台か2台で始まります。予算も限られている。そこで最短距離の配線で1台だけ付けると、3年後に「あと5台増やしたい」と言われたときに、また掘り返して、また盤を開けることになります。
先に仕込んでおくと安いものと、後からでも間に合うものがあります。
- 先に仕込む:管路・ハンドホール(掘削がいちばん高い)/ケーブルラックのスペース/盤の内部スペースと予備ブレーカー/幹線の余裕/制御用の配線ルート
- 後でよい:充電器本体/課金や認証の仕組み/制御装置(通信で後付けできる製品なら)
とくに掘削と管路は、あとから追加すると舗装の復旧まで含めて費用が跳ね上がります。空配管を1本余分に入れておく判断は、ほとんどの現場で回収できます。
まとめ
- 必要な容量は台数では決まらない。台数 × 出力 × 同時使用率で、効くのは最後の係数
- 充電方式は出力ではなく滞在時間で決める。翌朝までなら3kWで足りる
- 同時使用率に定まった正解はない。運用の聞き取りと、その根拠を書き残すことが設計になる
- 負荷率制御を使えば受電設備を増強せずに台数を増やせる。ただし充電完了時刻は保証されない
- 制御が止まったときにフェイルセーフ側へ倒れるか、必ず確認する
- 駐車場は距離が出る。電圧降下と管路が費用を支配することが多い
- EV充電回路は専用の分岐回路と漏電遮断器。直流成分を含む地絡への対応を製品仕様で確認する
- 掘削と管路は先に仕込む。将来計画は図面に書いてはじめて次の人に伝わる
よくある質問
Q1. 同時使用率は、いくつを使えばよいですか?
一律に使える数値はありません。社用車のように運用が固定されているなら実台数から積み上げ、従業員用や集合住宅なら想定EV比率から組み立てます。大事なのは値そのものより、どの前提から出したかを残すことです。前提が変われば見直せる形にしておいてください。
Q2. 200Vのコンセントを付けるだけなら、簡単ですよね?
器具は簡単ですが、回路は簡単ではありません。EV用コンセントは連続して3kW前後を使い続ける負荷で、一般のコンセント回路とは性格が違います。専用の分岐回路とし、漏電遮断器を施設し、こう長に応じた電線サイズを選ぶ必要があります。「コンセント1個」の感覚で見積もると足が出ます。
Q3. 集合住宅で、各戸のメーターから引くことはできますか?
各戸契約から引く方式と、共用部から引いて課金する方式があります。前者は電気料金が各戸の契約に乗るので課金の仕組みが不要ですが、駐車区画と住戸の対応が固定される必要があります。後者は柔軟ですが、共用部の契約電力が増え、課金や認証の仕組みが要ります。管理組合の合意事項なので、電気の話に入る前に決めておくことです。
Q4. 急速充電器を1台入れたいのですが、何に注意しますか?
50kW級を1台入れるだけで、小規模な建物の契約電力に匹敵します。低圧受電では成立せず、高圧受電への変更や受変電設備の増強が必要になることが多い。まず受電方式から確認してください。あわせて、直流機器なので設置スペース・換気・騒音、そして接地の扱いも普通充電とは別に検討が要ります。
次回予告
第3回は「太陽光の系統連系」です。パワーコンディショナの選び方、連系点をどこに置くか、逆潮流の有無で変わる保護継電器の構成、単独運転防止という考え方、そして電力会社との協議で何を聞かれるか。ここから相手が電力会社になります。
合言葉は「つなぐ相手は電力会社」。→ 第3回 太陽光の系統連系 を公開しました。




