技術図書館非常コンセントを7枚のスライドで読む設置が必要な階と位置、幹線の系統数・面数・容量の考え方を図解つきで確認できます。スライドを見る資料一覧を見る

非常コンセントは、消防隊が現場で電動工具や照明をつなぐための設備です。設計でつまずくのはたいてい2か所で、どの建物のどの階に付けるのかと、幹線1本ぶんで容量を出してしまうところです。この記事では、消防法施行令第29条の2と施行規則第31条の2の条文を分解したうえで、保護箱の数え方、回路の分け方、電源容量の出し方、そして電圧降下から決まるケーブルサイズまでを順に整理します。

結論

政令が決めているのは対象になる建物と設ける階と位置だけで、数・回路・容量は規則と審査基準で決まります。

  • 対象は地階を除く階数が11以上の建築物と、延べ面積1,000m²以上の地下街の2つだけ
  • 設けるのは11階以上の階(地下街は地階)。1〜10階には付けない
  • 位置は階段室・非常用エレベーターの乗降ロビーなどで、水平距離50m以下をカバーする
  • 供給できる電気は単相交流100Vで15A以上。高さは床面から1m以上1.5m以下
  • 「1回路に10以下」の10は保護箱の数。保護箱1個にプラグ受けは2個
  • 回路は各階2以上。ただし階ごとの数が1個なら1回路でよい
  • 電源容量は1つの保護箱あたり1.5kWで、幹線ごとに出して合計する
  • ケーブルは電圧降下2%(電気使用場所内の変圧器から供給なら3%)で決まる
  • コンセント回路は耐火配線、表示灯の回路は耐熱配線
  • 「地下4階以下」「開閉弁から5m以内」などは所轄消防の審査基準。政令の条文ではない
上の3つで数が決まり、下の3つで太さと種別が決まります。

まず結論 ― 対象になる建物と、設ける階は別

非常コンセントは、消防隊が使う電源

非常コンセントは、火災のときに消防隊が持ち込んだ資機材に電気を供給するための設備です。排煙用の送風機、照明、破壊器具などをつなぎます。建物を使う人のための設備ではないので、ふだんは保護箱に収まったまま使われません。

ここが一般のコンセントとの大きな違いです。一般のコンセントは誰がどう使うかを想定して数と位置を決めるのに対し、非常コンセントは消防隊が上がってくる経路の途中に、法令が決めた位置へ置くものです。設計の入口も、負荷の想定ではなく法令の判定から始まります。負荷から数を決めていく一般のコンセントの手順はコンセント設備の設計マニュアル③ 回路分割で扱っています。

なぜ「11階以上」と「地下街」なのか

条文に理由は書かれていませんが、一般に消防隊が外から電源を持ち込みにくい場所だからと説明されます。はしご車が届く高さには限りがあり、普及している30m級でおよそ10階ぶんです。それより上の階では、消防隊は階段や非常用エレベーターで上がってその階で電源を取ることになります。1階から延長コードを引き上げて済む話ではありません。

地下街も同じ理由です。出入口が限られ、煙が抜けにくく、外から電源を引き込む経路も取りにくいので、地階の中で電源を取れるようにしておきます。このため非常コンセントは、高い建物と広い地下街という、外から電源を持ち込みにくい2つの場所に限って求められます。

設置対象になるのは、この2つだけ

設計でいちばん最初に確かめるのは、その建物が設置対象に当たるかです。消防法施行令第29条の2第1項が挙げているのは、次の2つだけです。

数を数えるのはこのあとです。まずは対象かどうかだけを判定します。

この2つには用途の条件が付いていません。事務所でも共同住宅でもホテルでも、令別表第一に載る用途で地階を除く階数が11以上なら対象になります。「特定防火対象物かどうか」で切り分ける設備ではない、というのがまず押さえどころです。

判定は4段階 ― 建物 → 階 → 位置 → 仕様の順に降りる

ここで取り違えやすいのが、対象になるのは建物ぜんぶで、設けるのは11階以上の階だけという点です。第1項が建物の話、第2項が階と位置の話で、条文そのものが分かれています。実務では次の順に降りていくと、数を数える単位を間違えません。

段階 見るもの 判定の内容 根拠
1段階目 建物 地階を除く階数が11以上、または延べ面積1,000m²以上の地下街 令29条の2第1項
2段階目 階 11階以上の階(地下街は地階) 令29条の2第2項第1号
3段階目 位置 階段室・非常用EVの乗降ロビーなどで、水平距離50m以下 令29条の2第2項第1号
4段階目 仕様 高さ・保護箱・表示灯・回路数・電源容量 規則31条の2
1段階目で止めずに、2・3段階目まで降りてから保護箱の数を数えます。

「11階建てのビルなので全階に非常コンセントが要る」という拾い方をすると、1〜10階ぶんの保護箱と回路が余分に出てきます。逆に「11階建てではないから不要」と判断して、所轄消防の審査基準にある地下階の付加規定を落としてしまうこともあります。どちらも、建物の判定と階の判定を1段で済ませたことが原因です。

ペン太ペン太
11階建てなので、1階から全部に付けました。
ハリタハリタ
設けるのは11階以上の階です。対象になる建物と、付ける階は別に書かれています。
ここまでのポイント
  • 非常コンセントは消防隊が使う電源。ふだんは使わない
  • 一般のコンセントと違い、負荷の想定ではなく法令の判定から決まる
  • 対象は「地階を除く階数が11以上の建築物」と「延べ1,000m²以上の地下街」
  • 用途の限定はない。令別表第一に載る用途であれば対象になる
  • 設けるのは11階以上の階。地下街は地階
  • 判定は建物→階→位置→仕様の順。1段で済ませると数を間違える
  • 地下階の付加規定は所轄消防の審査基準なので、別に確認する


政令が決めているのはここだけ ― 令第29条の2

条文を読むときは、第1項(対象になる防火対象物)と第2項(設ける階・位置・仕様)を分けて読むと迷いません。

第1項が「どの建物か」、第2項が「どこに、どういうものを」。読み分けが先です。

階数の数え方は建築基準法で決まる

「地階を除く階数が11以上」の階数は、建築基準法施行令第2条第1項第8号によります。塔屋や屋上に出るだけの機械室で、水平投影面積の合計が建築面積の8分の1以下のものは階数に算入しません。10階建てのビルに塔屋があっても、それだけでは11階にはならないということです。

⚠ 「11階以上」の建物で、11階だけが小さいとき

下層が大きく、11階から上がセットバックして小さくなっている建物でも、11階以上の階には非常コンセントが必要です。床面積の下限は政令にありません。

この場合、階段室が1か所しかないことも多く、その階の各部分から水平距離50m以下という条件は保護箱1個で満たせます。ただし規則第31条の2第6号の「各階で2以上の回路」の扱いを所轄消防に確認しておいてください。階ごとの数が1個なら1回路でよいという例外が使えます。

位置は「消防隊が有効に消火活動を行える位置」

第2項第1号は、設ける場所を階段室・非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所と定め、そのうえで消防隊が有効に消火活動を行える位置と書いています。「その他これらに類する場所」に何が入るかは、所轄消防の審査基準で具体化されているのが実情です。特別避難階段の附室(前室)やバルコニーが挙げられていることもあります。

出典:消防法施行令 第29条の2、建築基準法施行令 第2条第1項第8号。条番号や数値は改正で変わることがあります。適用にあたっては最新版をご確認ください。

ここまでのポイント
  • 第1項が対象になる防火対象物、第2項が設ける階・位置・仕様
  • 階数の数え方は建築基準法施行令第2条第1項第8号による
  • 位置は階段室・非常用EVの乗降ロビーその他これらに類する場所
  • その階の各部分から1の非常コンセントまで水平距離50m以下
  • 単相交流100Vで15A以上を供給できるもので、非常電源を附置する


政令にない基準が出てくる理由 ― 所轄消防の審査基準

非常コンセントを調べると、「地下4階以下の階で床面積の合計が1,000m²以上」という条件がよく出てきます。これは消防法施行令の条文ではなく、東京消防庁や一部の市の消防本部が審査基準として運用しているものです。政令だけを読んで数を決めると、この地下階ぶんが丸ごと抜けます。

並べてみると、どこまでが条文でどこからが運用かがはっきりします。
左が第1項の話、右が第2項の話。条文でも別に書かれています。

💡 審査基準は「着手前」に取りに行く

審査基準は各消防本部のウェブサイトで公開されていることが多く、「(自治体名)消防 審査基準 非常コンセント」で見つかります。ただし改定されるので、基本設計の段階で所轄消防署の予防課に確認しておくのが確実です。

確認しておきたいのは、①地下階の付加規定があるか、②位置の細目(屋内消火栓の開閉弁からの距離、扉からの距離)、③同一階に保護箱が2個以上のときの回路数、④刃受の接地極の接地工事の種別、の4つです。ここが決まらないと保護箱の数も回路数も出ません。

関連する設備の設置基準も同じ構造になっています。非常コンセントと同じ条文グループにある無線通信補助設備については非常コンセント設備と無線通信補助設備に、総合操作盤の義務の判定は総合操作盤はいつ義務になるかに整理しています。

出典:東京消防庁 火災予防審査・検査基準、船橋市消防局・堺市消防局ほかの審査基準。内容は地域と時期によって異なります。適用にあたっては所轄の消防本部にご確認ください。

ここまでのポイント
  • 「地下4階以下・1,000m²以上」は政令の条文ではなく審査基準の運用
  • 位置の細目(開閉弁から5m以内、扉から2m以内など)も審査基準
  • 同一階に保護箱2個以上なら箱の数だけ専用回路、とする基準が多い
  • 刃受の接地極の接地はD種接地工事とする基準が多い
  • 基本設計の段階で所轄消防署に確認しておく


非常コンセントそのものの仕様 ― 規則第31条の2

政令が書いているのは「単相交流100Vで15A以上」までです。形・高さ・表示・配線は、消防法施行規則第31条の2の全10号で決まります。

高さ・保護箱・コンセントの形・表示灯。号ごとに1つずつ決まっています。

保護箱は「埋込式」で、上部に赤色の灯火

第二号は埋込式の保護箱と定めています。露出型を使うには所轄消防の判断が必要です。躯体に箱を埋め込むので、階段室の壁厚とスラブの位置を建築図で先に確認しておきます。階段室はコンクリート壁が薄いことがあり、埋込深さが取れずに位置を動かすことがあります。

第九号の表示は2つあります。イ ― 保護箱の表面に「非常コンセント」と表示、ロ ― 保護箱の上部に赤色の灯火を設けるです。灯火は常時点灯で、その回路の配線は耐熱配線になります(九号ハ)。姿図には表示文字の大きさ(審査基準では1文字につき各辺2cm以上)も入れておきます。

コンセントはJIS C 8303の接地形二極

第三号はJIS C 8303に定める接地形二極コンセント(15A・125V)です。一般のコンセントと同じ形ですが、第四号で刃受の接地極に接地工事を施すことが求められます。接地の種別は政令・規則には書かれておらず、審査基準でD種接地工事とされているのが一般的です。接地極付きコンセントの考え方そのものはコンセント設備の設計マニュアル④ 接地と特殊コンセントで扱っています。

号 決まっていること 図面に書くところ
一号 床面又は階段の踏面から1m以上1.5m以下の高さ 姿図・平面図
二号 埋込式の保護箱の中に設ける 建築との取合い
三号 JIS C 8303 接地形二極コンセント(15A・125V) 機器表
四号 刃受の接地極に接地工事(審査基準ではD種) 接地系統図
五号 電源は専用回路とし、開閉器に用途を表示(第24条第3号の例) 分電盤結線図
六号 非常コンセントの回路は各階で2以上 幹線系統図
七号 1回路に接続する非常コンセントは10以下 幹線系統図
八号 非常電源を附置する(第12条第1項第4号に準じる) 単線結線図
九号 「非常コンセント」の表示/上部に赤色の灯火/灯火の配線は耐熱配線 姿図・凡例
十号 配線は耐火配線(第12条第1項第8号を準用) 配線種別の凡例
10号すべてが図面のどこかに現れます。抜けやすいのは四号の接地と九号ロの灯火です。

⚠ 高さの基準面は「床面」か「階段の踏面」

第一号は床面又は階段の踏面から1m以上1.5m以下です。階段室の踊り場に付けるなら踊り場の床面から、階段の途中なら踏面から測ります。踊り場と階段のどちらに付けるかで基準面が変わるので、姿図には基準面がどこかを明記しておきます。

この高さは、消防隊が防火衣と手袋のままプラグを差せるようにするためのものです。前に物が置かれない位置であることも、実際の使い勝手として同じくらい大事です。

出典:消防法施行規則 第31条の2、第12条第1項第4号・第5号・第8号、第24条第3号。JIS C 8303。

ここまでのポイント
  • 高さは床面または階段の踏面から1m以上1.5m以下
  • 保護箱は埋込式。上部に赤色の灯火(九号ロ)
  • コンセントはJIS C 8303の接地形二極(15A・125V)
  • 刃受の接地極に接地工事。種別は審査基準でD種が一般的
  • 保護箱の表面に「非常コンセント」と表示する
  • 電源は専用回路で、開閉器に用途を表示する


系統数と「10以下」― 数えるのは保護箱

規則第31条の2第七号は「1の回路に接続する非常コンセントは10以下」です。ここで「非常コンセント」をプラグ受けの数で数えるか保護箱の数で数えるかで、回路数が2倍変わります。

保護箱1個にプラグ受けは2個。数えるのは箱のほうです。

審査基準では保護箱の数で数えるとされています。堺市消防局の審査基準は「一回路に10以下とする非常コンセントの数については、保護箱の数とすること」と明記しています。同時に保護箱内にはプラグ受けを2個設けるともされているので、1回路には最大で20口がつながることになります。

箱で数えるので、1回路に10箱。プラグ受けでは数えません。

「各階2以上」には例外がある

第六号は各階で2以上の回路ですが、ただし、階ごとの非常コンセントの数が1個であるときは1回路とすることができるという例外があります。11階以上がセットバックして階段室が1か所しかない階では、この例外が使えます。

一方で審査基準のほうは、政令より厳しい運用をしていることがあります。船橋市や堺市の審査基準では「同一階に保護箱を2個以上設置する場合は、同一階の保護箱の数だけの専用回路とすること」とされており、箱3個なら回路3という数え方になります。回路数がそのまま幹線のサイズと分電盤の大きさに効くので、基本設計の段階で確認しておく項目です。

ペン太ペン太
1階ぶんの箱が3個なので、2回路にまとめました。
ハリタハリタ
審査基準で箱の数だけ専用回路とされていることがあります。所轄に確認してください。
数え方 政令・規則 審査基準でよくある運用
「10以下」の単位 非常コンセントの数 保護箱の数で数える
保護箱1個の口数 定めなし プラグ受けを2個設ける
各階の回路数 2以上(1個のときは1でよい) 箱が2個以上なら箱の数だけ専用回路
1回路の上限 非常コンセント10以下 保護箱10個以下=最大20口
規則の最低ラインと審査基準の運用は、そろっていないことがあります。

💡 回路数が決まると、盤と幹線が決まる

回路数は、そのまま非常用分電盤の回路数になります。五号で専用回路が求められるので、ほかの負荷と共用できません。開閉器には用途の表示も必要です(第24条第3号の例)。

回路をどう割って盤に落とすかの考え方はコンセント設備の設計マニュアル③ 回路分割と幹線設備の設計マニュアル⑥ 分電盤へ落とすで扱っています。

ここまでのポイント
  • 「1回路に10以下」の10は保護箱の数(審査基準)
  • 保護箱1個にプラグ受けは2個。1回路で最大20口
  • 回路は各階2以上。階ごとの数が1個なら1回路でよい
  • 審査基準では箱の数だけ専用回路とするものが多い
  • 電源は専用回路で、開閉器に用途を表示する(五号)

電源容量 ― 幹線ごとに出して合計する

非常コンセントの電源容量は、1つの非常コンセントあたり1.5kW(力率1.0)で計算します。ここでつまずくのは、幹線1本ぶんで止めてしまうことです。

1幹線は最大で3×1.5=4.5kW。その上限だけを見ていると読み違えます。

審査基準の書き方はこうなっています。「電源容量は、1の幹線に接続される非常コンセントの数(4以上の場合は3とする)に、1の非常コンセント当りの容量を乗じて得た幹線ごとの値の合計値以上とすること」。

読みどころは2つです。1つめは「4以上の場合は3とする」。同時に全部が使われることはないという想定で、1幹線あたりの上限が3×1.5=4.5kWに抑えられます。2つめは「幹線ごとの値の合計値以上」。幹線が3本あれば4.5+4.5+3.0のように足し上げます。1系統4.5kVAで終わりではありません。

ペン太ペン太
1系統4.5kVAだったので、発電機は4.5kVAで拾いました。
ハリタハリタ
幹線が3本あるなら合計です。幹線ごとに出してから足してください。
幹線 その幹線の保護箱 計算に使う数 幹線ごとの容量
幹線A(11〜13階) 6個 3 3 × 1.5 = 4.5 kW
幹線B(14〜16階) 4個 3 3 × 1.5 = 4.5 kW
幹線C(17階) 2個 2 2 × 1.5 = 3.0 kW
合計 12個 ― 12.0 kW 以上
幹線ごとに出して合計する。幹線1本ぶんで止めると非常電源が足りません。

⚠ 「保護箱の数」と「幹線に接続される数」を分けて数える

回路数の「10以下」は1回路あたりの話、容量の「4以上の場合は3」は1幹線あたりの話です。1本の幹線に複数の回路が乗る計画なら、幹線に乗る保護箱の総数で容量を出します。

力率は1.0で計算するので、kWとkVAは同じ数字になります。発電機や蓄電池を選ぶときは、非常コンセント以外の非常電源負荷(非常照明・排煙・消火ポンプなど)とあわせて拾い直してください。

出典:大阪市消防局ほかの審査基準における非常コンセント設備の電源容量の算定。算定式は地域によって異なることがあります。適用にあたっては所轄の消防本部にご確認ください。

ここまでのポイント
  • 1つの非常コンセントあたり1.5kW(力率1.0)
  • 1幹線の非常コンセントが4以上のときは「3」として計算する
  • 電源容量は幹線ごとの値を合計した値以上
  • 幹線1本ぶんの4.5kWで止めると足りない
  • 非常電源の容量は、ほかの非常電源負荷とあわせて拾い直す

ケーブルサイズ ― 電圧降下2%で決まる

非常コンセントの回路は15Aです。許容電流だけなら2.0sqでも足りますが、実際に決まるのは電圧降下です。11階以上の階に付ける設備なので、分電盤からいちばん遠い保護箱までのこう長が長くなるためです。

原則は標準電圧の2%以下。電気使用場所内の変圧器から供給する場合は3%以下にできます。

単相2線式の簡易式は次のとおりです。

電圧降下の簡易式(単相2線式)

e = 35.6 × L × I ÷ (1000 × A)

e:電圧降下[V]/L:こう長[m]/I:電流[A]/A:導体断面積[mm²]

これを断面積について解くと A ≧ 35.6 × L × I ÷ (1000 × e) になります。I=15A、e=2.0V(100Vの2%)なら A ≧ 0.267 × L です。

この式でこう長ごとに必要な断面積を出すと、次のようになります。

こう長 2%(e=2.0V)必要断面積 選定 3%(e=3.0V)必要断面積 選定
20 m 5.34 mm² 5.5 sq 3.56 mm² 5.5 sq
40 m 10.68 mm² 14 sq 7.12 mm² 8 sq
60 m 16.02 mm² 22 sq 10.68 mm² 14 sq
80 m 21.36 mm² 22 sq 14.24 mm² 22 sq
100 m 26.70 mm² 38 sq 17.80 mm² 22 sq
単相2線式100V・15A・銅導体の場合。2%と3%のどちらで見るかで1〜2サイズ変わります。

表のとおり、15Aの回路でもこう長が60mを超えると22sqになります。許容電流で決めていると必ず足りません。2%と3%のどちらで見るかで1〜2サイズ変わるので、変圧器が電気使用場所内にあるかどうかを先に確認します。

ペン太ペン太
15Aなので2.0sqで拾いました。
ハリタハリタ
こう長が60mなら22sqです。電圧降下で決まる回路です。

💡 こう長は「図面の直線距離」ではない

非常コンセントは上の階に集まるので、立ち上がりぶんがこう長の大半になります。階高4mの建物で1階の非常用分電盤から17階まで立ち上げれば、それだけで60m以上です。盤の位置を上階に寄せられるなら、ケーブルサイズが1〜2サイズ落ちます。

こう長の拾い方は幹線設備の設計マニュアル④ 電圧降下の検証に、許容値の考え方は内線規程の電圧降下の規定にまとめています。サイズを手早く確かめるだけなら電圧降下計算ツールも使えます。

出典:内線規程 1310節(電圧降下)、消防法施行規則 第31条の2。2%・3%は標準電圧に対する値です。

ここまでのポイント
  • 非常コンセントの回路は15A。決まるのは許容電流ではなく電圧降下
  • 原則は標準電圧の2%以下。電気使用場所内の変圧器から供給する場合は3%以下
  • 単相2線式は e=35.6×L×I÷(1000×A)
  • 100V・15A・2%なら A≧0.267×L。こう長60mで22sq
  • こう長は立ち上がりぶんが大半。盤の位置で1〜2サイズ変わる

配線と非常電源 ― 耐火配線と耐熱配線

非常コンセントの配線は2種類あります。コンセント回路は耐火配線(十号)、表示灯の回路は耐熱配線(九号ハ)です。系統図では線種を変えて描き分けます。

非常電源から保護箱までが赤、表示灯の回路が破線です。

耐火配線の2つの工事方法

規則第12条第1項第8号を準用するので、次の2つのどちらかになります。

方法 電線 工事方法
① 耐火電線(消防庁長官が定める基準に適合するもの)・MIケーブル そのまま配線できる
② 600V2種ビニル絶縁電線(HIV)ほか、規則で定める電線 金属管・2種金属製可とう電線管・合成樹脂管に収め、耐火構造とした主要構造部に、壁体等の表面から2cm以上の深さに埋設する
②は「2cm以上の深さに埋設」が条件です。露出配管では耐火配線になりません。

②を選ぶと躯体への埋設が必要になるため、建築との取合いが早い段階で決まっている必要があります。設計段階では①の耐火電線を前提にしておき、経済性を詰める段階で②に振り替えるのが扱いやすいところです。耐火配線の考え方は電源別置形と耐火配線でも扱っています。

非常電源は4種類から選ぶ

八号の非常電源は、規則第12条第1項第4号に準じます。非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備の4種類で、容量は30分以上です。

非常電源の種類 使えるところ 容量
非常電源専用受電設備 延べ面積1,000m²以上の特定防火対象物では使えない ―
自家発電設備 制限なし 30分以上
蓄電池設備 制限なし 30分以上
燃料電池設備 制限なし 30分以上
非常コンセントが必要な建物は規模が大きいので、実際には自家発電設備が中心になります。

⚠ 非常電源専用受電設備が使えないことが多い

非常コンセントが必要になる建物は、地階を除く階数が11以上か延べ1,000m²以上の地下街です。用途が特定防火対象物に当たり延べ面積1,000m²以上であれば、非常電源専用受電設備は使えません。自家発電設備または蓄電池設備になります。

非常電源の4種類の違いは消防用設備の非常電源に、専用受電設備の要件は非常電源専用受電設備の設置基準に整理しています。発電機・UPS・蓄電池の図面表記は非常用発電機・UPS・蓄電池の読み方をご覧ください。

出典:消防法施行規則 第31条の2第八号・第十号、第12条第1項第4号・第5号・第8号。

ここまでのポイント
  • コンセント回路は耐火配線(十号)、表示灯の回路は耐熱配線(九号ハ)
  • 耐火配線は①耐火電線・MIケーブル、②HIVなどを管に収め2cm以上埋設
  • 露出配管では耐火配線にならない
  • 非常電源は4種類。容量は30分以上
  • 延べ1,000m²以上の特定防火対象物では非常電源専用受電設備が使えない

よくある質問

非常コンセントはどんな建物に必要ですか?

消防法施行令第29条の2第1項により、①令別表第一に掲げる建築物で地階を除く階数が11以上のもの、②令別表第一(十六の二)項の地下街で延べ面積1,000m²以上のもの、の2つです。用途の限定はありません。

11階建てのビルなら全階に必要ですか?

いいえ。設けるのは11階以上の階です(令第29条の2第2項第1号イ)。対象になるのは建物ぜんぶですが、付けるのは11階以上の階だけです。1〜10階には政令上の設置義務はありません。

「地下4階以下の階で1,000m²以上」という条件を見ました。政令のどこですか?

消防法施行令にはありません。東京消防庁や一部の市の消防本部が審査基準として運用しているものです。地域と時期で内容が違うので、所轄の消防署で確認してください。

どこに設置しますか?

階段室・非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所で、消防隊が有効に消火活動を行える位置です。その階の各部分から1の非常コンセントまでの水平距離が50m以下になるように配置します。

取付高さはどのくらいですか?

床面又は階段の踏面から1m以上1.5m以下です(規則第31条の2第一号)。踊り場に付けるなら踊り場の床面から、階段の途中なら踏面から測ります。

保護箱は露出型でもよいですか?

規則第31条の2第二号は「埋込式の保護箱」と定めています。露出型を使うには所轄消防の判断が必要です。階段室の壁厚が薄いと埋込深さが取れないことがあるので、建築図で先に確認してください。

コンセントの種類は何を使いますか?

JIS C 8303に定める接地形二極コンセントで、15A・125Vのものです(第三号)。さらに第四号で、刃受の接地極に接地工事を施すことが求められます。

刃受の接地極の接地は何種ですか?

規則には種別が書かれていません。審査基準ではD種接地工事とされているのが一般的です。所轄消防の審査基準で確認してください。

「1回路に10以下」の10は、口の数ですか箱の数ですか?

保護箱の数です。堺市消防局の審査基準は「一回路に10以下とする非常コンセントの数については、保護箱の数とすること」と明記しています。保護箱内にはプラグ受けを2個設けるので、1回路で最大20口になります。

回路は各階いくつ必要ですか?

規則第31条の2第六号で各階に2以上です。ただし、階ごとの非常コンセントの数が1個であるときは1回路とすることができます。審査基準では「同一階に保護箱を2個以上設置する場合は、保護箱の数だけの専用回路」とするものが多いので、あわせて確認してください。

非常コンセントの回路をほかの負荷と共用できますか?

できません。第五号で、電源は規則第24条第3号の例により専用回路とし、開閉器には用途を表示することが求められます。

電源容量はどう計算しますか?

1つの非常コンセントあたり1.5kW(力率1.0)です。1の幹線に接続される非常コンセントの数(4以上の場合は3とする)に1個あたりの容量を乗じ、幹線ごとに出した値を合計した値以上とします。

1系統4.5kVAと覚えていますが、それで足りますか?

足りません。4.5kVAは1幹線あたりの上限(3×1.5kW)です。幹線が3本あるなら、幹線ごとの値を合計した値以上が必要です。幹線A 4.5+幹線B 4.5+幹線C 3.0なら12.0kW以上になります。

ケーブルサイズは許容電流で決めてよいですか?

ほとんどの場合、電圧降下で決まります。回路は15Aなので許容電流だけなら2.0sqで足りますが、非常コンセントは上の階に集まるためこう長が長く、100V・15A・電圧降下2%ならこう長60mで22sqが必要になります。

電圧降下は何%以下にしますか?

標準電圧の2%以下です。ただし、電気使用場所内に設けた変圧器から供給する場合は3%以下とすることができます。どちらで見るかで1〜2サイズ変わります。

電圧降下の計算式を教えてください。

単相2線式の簡易式は e=35.6×L×I÷(1000×A) です。eは電圧降下[V]、Lはこう長[m]、Iは電流[A]、Aは導体断面積[mm²]です。断面積について解くと A≧35.6×L×I÷(1000×e) になります。

配線は耐火配線ですか耐熱配線ですか?

両方使います。コンセント回路は耐火配線(第十号)、表示灯の回路は耐熱配線(第九号ハ)です。系統図では線種を変えて描き分けます。

耐火配線はどう施工しますか?

①耐火電線(消防庁長官が定める基準に適合するもの)やMIケーブルはそのまま配線できます。②600V2種ビニル絶縁電線などを使う場合は、金属管・2種金属製可とう電線管・合成樹脂管に収め、耐火構造とした主要構造部に、壁体等の表面から2cm以上の深さに埋設します。露出配管では耐火配線になりません。

非常電源には何が使えますか?

非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備の4種類で、容量は30分以上です。ただし延べ面積1,000m²以上の特定防火対象物などでは非常電源専用受電設備は使えません。

表示灯は常時点灯ですか?

はい。第九号ロで保護箱の上部に赤色の灯火を設けることが求められ、ハでその回路の配線は耐熱配線とされています。消防隊が煙の中で位置を見つけるための灯火なので、常時点灯です。

保護箱の大きさに決まりはありますか?

規則には寸法の定めがありませんが、審査基準では長辺25cm以上・短辺20cm以上、厚さ1.6mm以上の鋼製で防せい加工を施したもの、とされているのが一般的です。表示の文字は1文字につき各辺2cm以上とされます。

無線通信補助設備も一緒に必要になりますか?

非常コンセントと無線通信補助設備は別の条文です(無線通信補助設備は令第29条の3)。対象も違うので、それぞれで判定します。地下街や大規模な地下階では両方必要になることがあります。

まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
11階建てなら全階に必要 対象は建物ぜんぶ、設けるのは11階以上の階(令29条の2第2項1号イ)
建物の地階も地下街と同じ扱い 政令の対象は地下街だけ。地階の付加は所轄消防の審査基準
「地下4階以下・1,000m²以上」は政令 政令にはない。東京消防庁などの審査基準の運用
塔屋があれば11階になる 建基令2条1項8号による。8分の1以下の塔屋は階数に算入しない
「10以下」は口の数 保護箱の数で数える。箱1個にプラグ受けは2個=1回路で最大20口
回路は各階2つでよい 政令の下限は2。審査基準では箱の数だけ専用回路とするものが多い
非常コンセントの回路は共用できる 五号で専用回路。開閉器に用途を表示する
電源容量は1系統4.5kVA 4.5kWは1幹線の上限。幹線ごとに出して合計する
箱が6個なら6×1.5=9kW 1幹線で4以上のときは3として計算する。3×1.5=4.5kW
15Aだから2.0sqで足りる 電圧降下で決まる。100V・2%ならこう長60mで22sq
電圧降下はいつでも2% 電気使用場所内の変圧器から供給する場合は3%にできる
配線は全部耐火配線 コンセント回路が耐火(十号)、表示灯の回路が耐熱(九号ハ)
HIVを管に入れれば耐火配線 耐火構造の主要構造部に表面から2cm以上埋設して初めて耐火配線
非常電源は専用受電設備でよい 延べ1,000m²以上の特定防火対象物では使えない
接地は不要 四号で刃受の接地極に接地工事。審査基準ではD種
「対象になる建物と設ける階は別」「数えるのは箱」「容量は幹線ごとに合計」の3つを押さえれば外しません。
手順 やること 見るところ
1|判定 設置対象か確かめる 11階以上/地下街1,000m²
2|階と位置 設ける階と位置を決める 階段室・非常用EVロビー・50m
3|箱を数える 階ごとに保護箱の数を出す 箱1個=プラグ受け2個
4|回路 回路を分ける 各階2以上/1回路に箱10以下
5|容量 幹線ごとに出して合計する 1箱1.5kW/4以上は3
6|ケーブル 電圧降下からサイズを決める 2%または3%/こう長
7|配線種別 耐火配線と耐熱配線を描き分ける 十号/九号ハ
8|非常電源 種類と容量を決める 4種類/30分以上
この8手順で、平面図・幹線系統図・機器表に書けるところまで決まります。

📘 あわせて確認したいこと

非常コンセントと無線通信補助設備の関係は非常コンセント設備と無線通信補助設備に、非常照明・誘導灯との使い分けは照明設備の設計マニュアル⑥ 非常照明・誘導灯にまとめています。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。