技術図書館コンセントの回路分割|大物から先に抜く専用回路を先に確保して残りをエリアで割る。1個150VAで10個前後、遮断器と電線はセットで決めるこの資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事は連載「コンセント設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
コンセント設備の設計マニュアル③ 回路分割の全体像
コンセント回路の分割方法を5ステップで解説。専用回路の仕分け、1回路あたりの個数、遮断器と電線をセットで決める考え方、回路表への落とし込み。

こんにちは、HARITAの設計室です。連載「コンセント設備の設計マニュアル」第3回は回路分割第1回で数えた負荷を、第2回で図面に配置しました。今回は、その一つひとつをどのブレーカーにぶら下げるかを決めます。連載の中でいちばん「電気設計らしい」回です。

回路分割を雑にやると、竣工後に起きるのは「電子レンジとポットを同時に使うとブレーカーが落ちる」「複合機が動くたびにPCの画面がちらつく」という、あのクレームたちです。逆にここが丁寧だと、建物は静かに、何事もなく動き続けます。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 専用回路にすべき負荷を、ひと言で言えますか。
  • 1回路に何個まで、という規定はありますか。
  • 遮断器だけを大きくしてはいけないのは、なぜですか。
ペン太ペン太
回路分割って、とりあえず均等に割ればいいんですよね。
はりたはりた
逆です。大物(専用回路)を先に確保して、残りを割る。この順番を外すと、竣工後に「同時に使うと落ちる」が返ってきます。

回路分割の進め方 ― 5ステップ

トピック1:大物から先に、確保する

進め方はシンプルです。大物(専用回路)から先に確保して、残りを割る。この順番さえ守れば迷いません。

回路分割は この順番1専用回路を先に仕分け2残りをエリアでグルーピング31回路の個数をチェック4遮断器と電線をセットで決定5回路表に落とす(予備も忘れず)コツ:大物(専用)から先に。残りを割るのはそのあと!HARITAの設計室
図1:回路分割の5ステップ ― 専用を先に仕分け、残りをエリアで割る
ここまでのポイント
  • 進め方は、大物(専用回路)から先に確保して、残りを割る
  • この順番さえ守れば迷わない
  • 雑にやると「同時に使うとブレーカーが落ちる」が竣工後に返ってくる

ステップ① まず「専用回路」を仕分ける

トピック2:大きい・止めたくない・水と熱

第1回の4分類で「専用」「特殊」に入れた負荷は、他のコンセントと共用せず1機器1回路にします。判断の合言葉は「大きい・止めたくない・水と熱」です。

この負荷が来たら「専用回路」と叫ぶエアコン大容量+常時運転IH・電子レンジ洗濯乾燥機長時間+大容量食洗機・給湯器水回りの固定機器複合機・大型OAサーバー・通信止めたら事故。独立必須厨房機器機器ごとに1回路自動販売機24時間稼働EV充電・床暖房200V系はそもそも別合言葉:「大きい・止めたくない・水と熱」は専用回路HARITAの設計室
図2:専用回路が必要な負荷 ― 「大きい・止めたくない・水と熱」

エアコンがなぜ専用でなければならないかは エアコンに専用コンセントが必要な理由 に詳しく書きました。住宅の台所は専用回路だらけになりますが、それが正解です(キッチンのコンセント計画)。

ここまでのポイント
  • 第1回の4分類で「専用」「特殊」に入れた負荷は、他と共用せず1機器1回路にする
  • 判断の合言葉は「大きい・止めたくない・水と熱」
  • 住宅の台所は専用回路だらけになるが、それが正解

ステップ② 一般・OA用は「1回路にいくつ」で割る

トピック3:個数は上限ではなく、目安

専用を除いた一般・OA用のコンセントを、部屋やエリアごとにまとめて回路にしていきます。ここで出てくるのが「1回路に何個までつなげるの?」という定番の疑問です。

一般コンセントは「1回路にいくつ」?20Aブレーカー150VA150VA150VA150VA150VA150VA150VA150VA150VA150VA1150VA 101,500VA個数は「上限」ではなく目安。実際に挿さる機器のVA(第1回の負荷想定!)住宅は「部屋単位」で回路を分けるのが基本。詳しい根拠は本文のリンク記事へHARITAの設計室
図3:1回路あたりの目安 ― 1個150VAで見込み、10個前後で約1,500VA

実は、内線規程に「1回路◯個まで」という一律の制限はありません。実務では一般コンセント1個あたり150VAで見込み、1回路の合計が1,500VA程度=10個前後を目安にします。

この根拠と考え方は 1回路あたりのコンセント接続個数の選定方法 で、1つのコンセントにどこまで負荷をつなげるかは コンセント1つに接続可能な負荷 で詳しく解説しています。

ここまでのポイント
  • 一般・OA用は、1個150VAで見込むと10個前後で約1,500VA
  • 個数は「上限」ではなく目安。一律の規定はない
  • 判断の本体は、実際に挿さる機器の合計VA(第1回の負荷想定)

ステップ③ 遮断器と電線の太さはセットで決める

トピック4:どれか1つだけは、変えられない

回路が決まったら、その回路を守る遮断器と電線の太さを選びます。大事なのは、遮断器・電線・コンセント定格の3つは必ずセットで決まるということ。どれか1つだけ変えることはできません。

遮断器と電線は「セット」で決まる15A分岐電線の太さ1.6mm以上つなげるコンセント15A以下20A 電線の太さ1.6mm以上つなげるコンセント20A以下20A ヒューズ電線の太さ2.0mm以上つなげるコンセント20A30A分岐電線の太さ2.6mm(5.5sq)以上つなげるコンセント20〜30A20A1.6mmHARITAの設計室
図4:分岐回路の遮断器と電線の太さ ― 3つはセットで決まる

実務でいちばん使うのは「20A配線用遮断器+1.6mm」の組み合わせです。この対応関係の根拠(内線規程の分岐回路のルール)は 分岐回路の設計【1.6mm・3m/8m】 に、ブレーカーそのものの選び方は 新人講座 第14回 ブレーカー選定のきほん にまとまっています。

分岐回路電線の太さつなげるコンセント
15A 分岐1.6mm 以上15A 以下
20A 配線用遮断器1.6mm 以上20A 以下
20A ヒューズ2.0mm 以上20A
30A 分岐2.6mm(5.5sq)以上20〜30A
ここまでのポイント
  • 遮断器・電線・コンセント定格の3つは必ずセットで決まる。どれか1つだけは変えられない
  • 実務でいちばん使うのは「20A配線用遮断器+1.6mm」の組み合わせ
  • 根拠は内線規程の分岐回路のルール

ステップ④ 分電盤の回路表に落とし込む

トピック5:10年後に読む人のために書く

最後に、決めた回路を分電盤の回路表(負荷表)にまとめます。ここまで来ると、コンセント計画は分電盤の設計とつながります。

最後は「回路表」に落とし込むL-1事務室 東側 一般コンセント20AL-2事務室 西側 一般コンセント20AL-3OAAB20AL-4給湯室(冷蔵庫・レンジは専用)20AL-5複合機 専用20AL-6サーバーラック 専用20AL-7予備20AL-8予備20A回路名は「場所+用途」で。10年後の改修工事の人が読んでも分かる名前に予備回路を2回路!レイアウト変更・増設は必ずやって来るHARITAの設計室
図5:分電盤の回路表イメージ ― 回路名は「場所+用途」で書く

分電盤側の考え方は 分電盤の構成と計画指針電灯負荷の開閉器サイズ選定方法 へ。回路表から単線結線図を起こす作業は、セコサポの 分電盤単線結線図作成ツール を使うと時短できます。幹線が長くなる場合の電圧降下チェックには 電圧降下計算ツール をどうぞ。

作図イメージ:専用回路を先に抜いてから残りをエリアで割る手順と、1回路の負荷を150VAで積み上げる考え方
図6:作図イメージ ― 専用回路を先に抜き、残りをエリアで割る流れ。下段は1個150VAで積んだときの、10個前後という目安の中身
ここまでのポイント
  • 決めた回路は、分電盤の回路表(負荷表)にまとめる
  • 回路名は「場所+用途」で書く。10年後の改修工事の人が読んでも分かるように
  • 予備回路を2回路残しておく
ペン太ペン太
安全側に、全部専用回路にしておくのはどうですか。
はりたはりた
それは設計としては思考停止です。回路が増えれば分電盤が大きくなり、コストも設置スペースも増える。目安と負荷想定で、必要十分な回路数を狙ってください。

まとめ

トピック6:順番が、そのままクレームを防ぐ

回路分割は、均等に割る作業ではなく、順番の作業です。大物(専用回路)を先に確保して、残りをエリアで割る。この順番を外したぶんが、竣工後のクレームになって返ってきます。

決めることと、外したときに起きること

ステップ決めること外したときに起きること
① 専用回路「大きい・止めたくない・水と熱」を1機器1回路に電子レンジとポットを同時に使うとブレーカーが落ちる
② グルーピング残りを部屋・エリア単位でまとめる複合機が動くたびにPCの画面がちらつく
③ 個数1個150VAで見込み、実際に挿さる機器の合計VAで判断する目安の10個を機械的に当てて、密集エリアで足りなくなる
④ 遮断器と電線遮断器・電線・コンセント定格をセットで決める遮断器だけ大きくして、電線が先に焼ける
⑤ 回路表「場所+用途」で名前を付け、予備を2回路残す10年後の改修工事で、どこが止まるか分からなくなる

順番と、専用回路の見分け方

  • 回路分割は「専用回路を先に確保→残りをエリアで割る」の順番
  • 専用回路の合言葉は「大きい・止めたくない・水と熱」

個数・遮断器・回路表

  • 一般コンセントは1個150VA・1回路10個前後が実務の目安(一律の規定はない)
  • 遮断器・電線・コンセント定格はセット。主役は「20A配線用遮断器+1.6mm」
  • 回路表は「場所+用途」の名前で書き、予備回路を2回路残す

最後に ― 必要十分を狙う

「安全側に全部専用」は、設計としては思考停止です。回路が増えれば分電盤が大きくなり、コストも設置スペースも増えます。目安と負荷想定で、必要十分な回路数を狙ってください。ここが丁寧だと、建物は静かに、何事もなく動き続けます。

よくある質問

トピック7:現場でよく出る、3つの疑問

Q1. 10個を超えたらダメですか?
A. ダメではありません。10個はあくまで目安で、判断の本体は「実際に挿さる機器の合計VA」です。清掃用ばかりで同時使用が少ないなら個数が多くても問題ないし、逆にOA密集エリアは10個未満でも分けるべきです。

Q2. 専用回路のコンセントは形も変えるべき?
A. 抜け止め形にする、接地極付にする、200V用の形状になる、など専用回路はコンセント形状もセットで変わることが多いです。このあたりは次回(第4回)でまとめて扱います。

Q3. 回路数が増えると何が困るの?
A. 分電盤が大きくなり、コストと設置スペースが増えます。「安全側に全部専用」は設計としては思考停止です。目安と負荷想定で、必要十分な回路数を狙ってください。

次回予告

トピック8:次は、特殊コンセントへ

第4回は「接地と特殊コンセント」。接地極付と接地端子付の使い分け、200V回路、EV充電、そして消防法の非常コンセントまで。コンセントの「ちょっと特殊な世界」を一気に整理します。

→ 公開しました:第4回 接地と特殊コンセント ― 接地極・200V・EV・非常コンセント連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。