【コンセント設備の設計マニュアル⑥・最終回】図面化と拾い・積算 ― 「あとで拾える図面」で締めくくる
こんにちは、HARITAの設計室です。連載「コンセント設備の設計マニュアル」もいよいよ最終回、第6回は図面化と拾い・積算。第5回までで、決めるべきことはすべて決まりました。残る仕事はひとつ、決めたことを、他人が読める形にして渡すことです。
図面は、設計者から現場と積算担当への引き継ぎ書です。引き継ぎ書は、書いた本人がいなくても読めなければ意味がありません。今回の合言葉は「描いた人がいなくても拾える図面」。これが最終回のすべてです。
今回の全体像 ― 図面は線であり、同時に伝票である
設計者が描いた線は、そのまま数量になり、数量はそのまま金額になります。この一本道のどこかで情報が抜けると、抜けた分は質問として設計者に戻ってくるか、もっと悪い場合は誰かの見落としのまま金額になります。図面の描き方が、そのまま見積の精度なのです。
設計から図面一式ができるまでの全体像は 新人講座 第19回 設計の流れ に、作図そのものの基本は 新人講座 第20回 CAD・作図のきほん にまとめてあります。
① あとで拾える図面の3条件
「きれいな図面」と「拾える図面」は別物です。線が整っていても情報が足りなければ拾えませんし、少し粗くても情報が揃っていれば拾えます。条件は3つだけです。
3つとも、突き詰めれば「図面の外に情報を置かない」という一点に集約されます。頭の中や打合せメモに置いた情報は、必ずどこかで落ちます。
② コンセント図と回路表 ― 番号でつなぐ
コンセントの図面化は、平面図と回路表の2枚1組で考えます。平面図は「どこに何個あるか」、回路表は「それがどのブレーカーに載っているか」。この2枚を回路番号という共通のキーで結びます。
回路表の「備考」に、接地の種別(E・EET)、プレートの防水・防塵、取付高さの指定を書いておくと、拾い出しの担当者は図面を往復せずに数えられます。回路と盤の関係が曖昧な人は 新人講座 第9回 幹線・分電盤・回路のきほん を先に読むと、この表の意味がはっきりします。回路分割そのものは 第3回 に戻って確認してください。
③ 拾い出し ― 数える順番を先に決める
拾い出しでミスが出るのは、数える力が足りないからではありません。数える順番を決めていないからです。行き当たりばったりで数えると、二重に数えるか、まるごと飛ばすかのどちらかになります。
拾い出しの基本動作は 新人講座 第21回 拾い出しのきほん、様式のつくり方は 積算編② 拾い書のつくり方、実際に金額が狂った事例は 積算編③ 拾いミスの事例集 にまとめてあります。特に事例集は、一度読んでおくと同じ穴に落ちなくなります。
盤側の容量を積み上げながら数量を整理したいときは 単相3線式 盤図作成用 容量積み上げツール も使えます。
④ 積算へ ― 数量が金額に変わる場所
拾い書ができたら、あとは単価を掛けるだけ……と言いたいところですが、ここに複合単価という関門があります。材料費だけでは金額になりません。取り付ける手間(労務費)が乗って、はじめて1個いくらになります。
複合単価と歩掛の考え方は 積算編④ 複合単価と歩掛、内訳書の読み方と見積の比べ方は 積算編⑤ 内訳書の読み方・見積比較、改修案件で外しやすい点は 積算編⑥ 改修・増設の積算 に詳しくあります。
⑤ 連載の総まとめ ― コンセント設計の6ステップ
全6回で歩いてきた道を、1枚に畳んでおきます。次の案件でコンセントの計画を始めるとき、この順番どおりに手を動かせば、大きな抜けは起きません。
各ステップの詳細は、第1回 全体フローと負荷の想定/第2回 配置計画/第3回 回路分割/第4回 接地と特殊コンセント/第5回 施工・検査 に戻ってご確認ください。
まとめ
- 図面は線であり、同時に数量と金額の元になる伝票でもある
- 拾える図面の条件は、記号と凡例の一致・全器具への回路番号・特記の図面内完結の3つ
- 平面図と回路表は「回路番号」でつなぐ。備考に接地・防水・高さを書けば往復が減る
- 拾い出しは順番を先に決める。室ごと→回路ごと→材料ごと
- 金額は数量×複合単価。材料費だけでは金額にならない
よくある質問
Q1. 回路番号は全部のコンセントに書かないとダメですか?
A. 拾う側の立場で考えると答えが出ます。1個でも番号のない器具があれば、その1個がどの回路の何個目か誰にも分かりません。結果、質問が来るか、勝手に判断されるかのどちらかです。全数に書くのが結局いちばん早い方法です。
Q2. 拾い出しは設計者の仕事ですか?
A. 会社や案件によって分担は変わります。ただ、拾う人が別でも拾える図面を描く責任は設計側にあります。自分で一度拾ってみると、自分の図面のどこが不親切かがよく分かるので、新人のうちに一度は経験しておくと効きます。
Q3. 見積が2社で大きく違うときは、どこを見ればいいですか?
A. 総額ではなく内訳書の中身を比べます。数量が違うのか、単価が違うのか、そもそも項目が入っていないのか。安い側に何かが抜けていることは珍しくありません。詳しくは積算編⑤をどうぞ。
連載を終えて ― 次はどこへ
全6回、おつかれさまでした。コンセントは、電気設備のなかでいちばん身近で、いちばん軽く見られがちな設備です。けれど「何が挿さるか」から「いくらになるか」までを一本で通して考えられる人は、そう多くありません。ここまで読んだあなたは、もうその一人です。
他の工事項目の計画ステップは、ハブページ 設計・施工マニュアル にまとめてあります。引込・受変電・幹線・動力・電灯・接地・弱電・防災まで、工事項目ごとに「何を・どの順番で決めるか」を並べてあるので、次の案件の入口としてお使いください。
受変電設備については、すでに 高圧受変電設備の設計マニュアル が連載として走っています。コンセント編と同じく、手順と判断基準だけを追える構成です。
今後は、ハブの「(準備中)」になっている電力会社との協議・申込み、照明器具の選定・配置計画、医用接地などの特殊な接地、LAN・テレビ共聴・放送設備を順に埋めていく予定です。連載として次に取り上げてほしいテーマがあれば、ぜひ教えてください。





