こんにちは、HARITAの設計室です。

動力設備の設計マニュアル、第2回です。前回は電灯と動力の分け方を見ました。今回は、機器表を受け取ったあと最初にやる作業――負荷容量の換算です。

ほしい数字が、書いていない

ほしい数字が、書いていない機器の銘板三相 200V出力 3.7 kW(例)選びたいものブレーカーの定格ケーブルのサイズどちらも「電流」で決まる?kW と 電流 のあいだを埋めるのが、この回の話HARITAの設計室

機器表や機器の銘板に書いてあるのは、たいてい出力(kW)です。「三相200V 3.7kW」のように。

ところが、こちらが選びたいのはブレーカーとケーブルです。そしてブレーカーもケーブルも、電流で決まります。kWのままでは選べません。

この kW と 電流 のあいだを埋める作業が、今回の話です。地味ですが、ここを飛ばすとその先が全部止まります。

電流は、4つの数字から出てくる

電流は、4つの数字から出てくる電流 = 出力 ÷(√3 × 電圧 × 力率 × 効率)出力銘板に書いてあるkW の値軸から出る力√3 × 電圧三相だから √3200V が中心単相なら √3 は付かない力率電流のうち、実際に仕事をする割合機種で変わる効率入れた電力のうち出力になる割合機種で変わる銘板のkWは「出力」。入れる電力はそれより大きいHARITAの設計室

三相電動機の電流は、次の関係で出ます。

電流 = 出力 ÷(√3 × 電圧 × 力率 × 効率)

分母に4つの要素が並んでいます。ひとつずつ見ます。

  • 出力 銘板に書いてあるkWです。ここで大事なのは、これが軸から出る力だということ。電気として入れた量ではありません。
  • √3 × 電圧 三相だから √3 が付きます。単相なら付きません。
  • 力率 流れた電流のうち、実際に仕事をする割合。
  • 効率 入れた電力のうち、出力になる割合。

新人のうちにつまずくのは、効率がなぜ入るのかだと思います。銘板の3.7kWは出力なので、電動機の中で失われる分を考えると、入れる電力はそれより大きくなります。だから効率で割るわけです。

力率と効率は、機種で変わる
力率も効率も、電動機の種類・極数・容量・メーカーによって違います。一律の値を覚えて当てはめるものではありません。実機が決まっていればカタログや銘板の値を、決まっていなければ次に説明する規約電流を使います。

実機が決まる前に、電流が要る

実機が決まる前に、電流が要る実際の電流はばらつくA社B社C社同じ出力でも、力率と効率が違えば電流は変わる設計では規約電流を使う出力ごとに決められた目安の電流値。内線規程などの表に示されている実機が決まっていなくても回路とケーブルを先に決められる実機が確定したら、銘板の値で必ず確認し直すHARITAの設計室

ここで実務的な問題が出てきます。設計の段階では、実機がまだ決まっていないことが多いのです。

メーカーが決まらなければ力率も効率も分からない。でも回路とケーブルは決めないと図面が描けない。

この問題を解くのが規約電流です。出力ごとに「だいたいこれくらいの電流が流れる」という目安の値が、内線規程などの表に示されています。設計ではこれを使って回路とケーブルを先に決めます。

換算表は 動力(電動機)の負荷容量換算表【規約電流・kVA】資料|電動機の容量換算表 にまとめています。

ただし、これはあくまで設計を先に進めるための目安です。実機が確定したら、銘板の値で必ず確認し直してください。とくに容量の大きい機器や、特殊な用途の機器では差が出ることがあります。

3つの単位は、使う場面が違う

3つの単位は、使う場面が違うkW出力機器の能力を表す機器表・契約の話電流 A規約電流ブレーカーを選ぶケーブルを選ぶkVA皮相電力変圧器容量に効く幹線の集計に積む同じ機器を、見る目的によって違う単位で表しているHARITAの設計室

動力の話では kW・電流(A)・kVA の3つが出てきます。同じ機器を、見る目的によって違う単位で表しているだけです。

  • kW(出力) 機器の能力を表します。機器表に載り、契約の話にも出てきます。
  • 電流(規約電流) ブレーカーとケーブルを選ぶために使います。分岐回路の設計はこれ。
  • kVA(皮相電力) 変圧器の容量や幹線の集計に積み上げるときに使います。

迷ったら「いま何を選ぼうとしているか」で考えてください。分岐回路を選ぶなら電流、上流に積み上げるならkVAです。

kVAで積み上げた先は幹線の話になります。幹線設備の設計マニュアル② 負荷容量の集計 で扱った需要率・不等率が、そこで効いてきます。

変圧器容量への積み上げは 変圧器容量の選定・計算方法と需要率の適用基準 もあわせてどうぞ。

換算した数字は、負荷表に並ぶ

換算した数字は、負荷表に並ぶ回路負荷名出力 kW規約電流ブレーカーケーブル1給水ポンプ3.7………………………2排水ポンプ2.2………………………3空調室外機5.5………………………4排気ファン1.5………………………機器表からもらう換算して自分で埋めるkWの値は説明のための例示。規約電流は内線規程の表と機器の銘板で確認してくださいこの表ができれば、盤も幹線も積み上げられるHARITAの設計室

換算の結果は、動力盤の負荷表に落ちます。

表の左側――回路番号、負荷名、出力kW――は機器表からもらう情報です。右側――規約電流、ブレーカー、ケーブル――が、こちらで埋めていくところ。

この表ができると、盤の回路数が決まり、幹線に積み上げる数字も出ます。動力設計の背骨と言っていい表です。

負荷表そのものは 計算ツール|動力分電盤負荷表作成ツール で作れます。分岐回路のサイズは 200V三相誘導電動機の分岐回路サイズ選定ツール が使えます。

仮の数字には印をつける
機器表がまだ出ていない段階では、想定値で埋めることになります。そのときどのセルが仮の値なのかを、表の中で分かるようにしておいてください。仮の数字がそのまま確定値として扱われるのが、動力設計でいちばん多い事故です。

まとめ ― kWのままでは、電線は選べない

  • 銘板にあるのは出力kW。選びたいブレーカーとケーブルは電流で決まる
  • 電流 = 出力 ÷(√3 × 電圧 × 力率 × 効率)。効率が入るのは、銘板のkWが出力だから
  • 力率と効率は機種で変わる。一律の値を覚えて当てはめない
  • 実機が決まる前は規約電流で先に進め、確定したら銘板で確認し直す
  • kWは能力、電流は分岐回路、kVAは上流への積み上げ
  • 換算結果は動力盤の負荷表に落ちる。仮の値には印をつけておく
今回の合言葉
kWのままでは、電線は選べない。
ほしい数字は、いつも電流のほうです。

よくある質問

Q1. 力率と効率は、いくつを使えばいいですか?

一律の値はありません。実機が決まっていればカタログ・銘板の値を使い、決まっていなければ規約電流の表を使ってください。「だいたいこれくらい」で覚えた数字を全案件に当てはめるのは避けてください。とくに小容量の電動機と大容量の電動機では傾向が違います。

Q2. 規約電流の表は、どの版を見ればいいですか?

内線規程は改定されます。案件で採用している版を確認してください。特記仕様書で版が指定されていることもあります。表番号だけを覚えて中身を確認しないのが危ないパターンです。

Q3. 単相200Vの機器も、同じ式で計算できますか?

√3 が付かないだけで、考え方は同じです。電流 = 出力 ÷(電圧 × 力率 × 効率)になります。ただし単相の機器は電灯回路から供給することも多いので、どの盤から取るのかを先に決めてから計算してください。

次回予告

第3回は「始動電流という別の顔」です。電動機は動き出す瞬間だけ、定格よりずっと大きな電流が流れます。それがブレーカーの選定や電圧降下にどう効いてくるのか。全電圧始動・スターデルタ・インバータの使い分けも扱います。

合言葉は「動く瞬間だけ、別の機械になる」。→ 第3回 始動電流という別の顔 を公開しました。

次に読むならこれ【動力設備の設計マニュアル③】始動電流という別の顔 ― 動く瞬間だけ、別の機械になる設計マニュアル