【接地・雷保護の設計マニュアル④】等電位ボンディング ― つながっていれば、差は生まれない
第3回の結論は「つなぐ」でした。では、実際に何と何を、どのくらいの太さの電線で、どこでつなぐのか。今回はその中身です。
等電位ボンディングという言葉は、日本語にすると「電位を等しくするために、金属体どうしを電気的に結ぶこと」です。接地が「大地とつなぐ」話だったのに対して、こちらは建物の中の金属どうしをつなぐ話。相手が大地ではないので、抵抗値の目標もありません。あるのは「差を作らない」という一点だけです。
合言葉は「つながっていれば、差は生まれない」。
主等電位ボンディングと、補助等電位ボンディング
等電位ボンディングは、規模で2つに分かれます。
- 主等電位ボンディング:建物全体を対象に、引込口付近で一度だけ行う。建物という箱ぜんたいを同じ電位に乗せるための処置
- 補助等電位ボンディング:浴室や医用室のように、人が同時に2つの金属体に触れうる狭い場所で、その範囲だけを追加でそろえる処置
順番も役割も違います。主等電位ボンディングは建物の基礎工事に近い位置づけで、あとから足すのが難しい。補助等電位ボンディングは部屋単位なので、改修でも足せます。
主等電位ボンディングでつなぐ相手は、大きく3種類です。外から建物に入ってくる金属体(水道管、ガス管、地中の通信ケーブルの金属被覆など)、建物そのものの金属(鉄骨、基礎鉄筋、鉄筋コンクリートの主筋)、そして電気設備の保護導体(接地線、避雷設備の引下げ導線)。これを主接地端子という1点に集めます。
なぜ、引込口の近くでつなぐのか
場所には理由があります。外から入ってくる金属管は、建物の外の電位を引きずって入ってきます。建物側の電位が雷や地絡で持ち上がったとき、その管だけが低いままだと、管と建物のあいだに電位差ができる。
その差が生まれる場所は、管が建物に入った地点です。だから、入ったところですぐつなぐ。奥まで引き込んでからつないだのでは、入口から接続点までの区間が「差を持ったまま建物の中を走っている配管」になります。
導体の太さは、どう決めるか
等電位ボンディング用の導体は、事故時に流れる電流を受け止める必要があります。ただし接地線のように「大地へ逃がす」わけではなく、金属体どうしを同じ電位に保つのが役目なので、考え方が少し違います。
国際規格の系統では、次のように整理されています。主等電位ボンディング用の導体は、その設備で最も太い保護導体の断面積の2分の1以上。ただし最小は銅で6mm²、上限は銅で25mm²相当まで太くすれば足りる、という組み立てです。上限があるのは、いくら太くしても等電位化の効果は頭打ちになるからです。
補助等電位ボンディングは、つなぐ相手で変わります。金属製の外箱どうしをつなぐなら、細いほうの保護導体と同等以上。外箱と配管のように、片方が電気設備でない金属体の場合は、保護導体の2分の1以上。
補助等電位ボンディング ― 「同時に触れられる範囲」を決める
補助等電位ボンディングの設計は、範囲の決め方がすべてです。基準は人が同時に2つの金属体に触れられるかどうか。片手で蛇口、もう片方の手で機器の外箱、という状況が成り立つなら、その2つはつないでおく。
対象になりやすいのは、水と人と金属が同居する場所です。
- 医用室(患者周辺の機器・金属什器・配管)
- プール・浴槽まわり、洗車設備など水がかかる場所
- 屋外の金属製手すり・架台と、そこに載る電気設備
- サーバ室・電算室のフリーアクセス床の金属フレームとラック
日本の一般住宅の浴室は、この処置が義務づけられているわけではありません。国内では医用室や特殊な場所が中心です。ただし、金属浴槽と給湯機器と換気設備が至近距離にある構成では、検討する価値があります。
効くかどうかは、接続の作り方で決まる
等電位ボンディングは、設計図の上ではただの線です。効果を決めるのは、その線の両端をどう留めたかです。
現場で効かなくなる原因は、だいたい決まっています。
- 塗装・防錆処理の上から締めている。塗膜は絶縁物なので、いくら強く締めても導通しない。接触面の塗装を落とすか、歯付き座金で塗膜を破る
- 異種金属を直接締めている。銅とアルミ、銅と亜鉛めっき鋼を直接接触させると、湿気があるところで腐食が進み、数年で導通が落ちる。専用の異種金属接続端子や、めっきした部材を使う
- 圧着が甘い。指定外の工具や、サイズ違いのダイスで圧着した端子は、初期は導通しても振動と熱で緩む
- 配管のフランジやユニオンをまたいでいる。パッキンが入る継手は電気的に切れていることがある。またぐ場合はボンディングジャンパを入れる
もうひとつ、忘れられがちなのが測定用の開放点です。第3回にも書きましたが、竣工後にボンディングの状態を確かめるには、一度切り離して測れる箇所が必要です。すべてを溶接で固めてしまうと、以後は誰も確認できません。
まとめ
- 等電位ボンディングは、大地ではなく建物の中の金属どうしをつなぐ処置。抵抗値の目標はなく、目的は「差を作らない」ことだけ
- 主等電位ボンディングは建物全体が対象。外から入る金属管、建物の鉄骨・鉄筋、電気設備の保護導体を、主接地端子に集める
- つなぐ場所は引込口の近く。奥でつなぐと、その手前の区間が差を持ったまま建物内を走る
- 導体は「最も太い保護導体の1/2以上、銅6mm²以上、25mm²相当で上限」が国際規格系の考え方。日本では特記と内線規程が優先
- 補助等電位ボンディングは「同時に触れられる範囲」で決める。接地極まで引くより、その範囲で互いに結ぶことが効く
- 効くかどうかは接続の作り方次第。塗装の上から締めない、異種金属を直接締めない、継手はジャンパでまたぐ、測定用の開放点を1か所残す
よくある質問
Q1. 水道管が樹脂管なら、何もしなくてよいですか?
その配管については接続する相手がないので、不要です。ただし2点。ひとつは、建物内で金属管に切り替わっている区間がないかを確認すること。もうひとつは、「樹脂管のため接続なし」と図面に明記しておくことです。将来の改修で金属管に更新されたとき、接続が必要になったことに誰も気づけなくなります。
Q2. 鉄骨造なら、鉄骨がつながっているので何もしなくてよいのでは?
鉄骨自体は電気的につながっていますが、それは「鉄骨と、他の金属体との接続」を保証しません。配管、電気設備の保護導体、避雷設備の引下げ導線を鉄骨に結ぶ作業は別途必要です。また、鉄骨を等電位化の経路として使う場合は、その旨を構造側と合意し、耐火被覆の施工前に接続部を確保しておく必要があります。
Q3. 補助等電位ボンディングの導通は、どのくらいの値なら合格ですか?
数値の基準は適用する規格や特記によります。実務としては、ミリオーム計や低抵抗計で測ってごく低い値であること、そして測定値そのものより「前回と比べて上がっていないこと」を見るのが現実的です。竣工時の値を記録しておかないと、この比較ができません。
Q4. 既存建物に主等電位ボンディングがありません。どうしますか?
まず現状を測って、どの金属体が孤立しているかを把握します。そのうえで、追加できるところから順に結んでいくことになりますが、全部を一度にやる必要はありません。優先すべきは、外から入ってくる金属管と、避雷設備の引下げ導線です。この2つは電位差の入口になるので、効果が大きいところから手を付けるのが現実的です。
次回予告
第5回は「雷保護の全体像」です。ここまでは主に地絡と感電の話でしたが、次回から雷に入ります。避雷針から地面までの外部雷保護と、建物の中の機器を守る内部雷保護。この2つはよく混同されますが、守る対象も手段もまったく別のものです。
合言葉は「外部と内部は別の話」。→ 第5回 雷保護の全体像 を公開しました。




