【コンセント設備の設計マニュアル①】計画の全体フローと負荷の想定 ― 「何個つける」より先に「何が挿さるか」
こんにちは、HARITAの設計室です。今回から「コンセント設備の設計マニュアル」という新しい連載を始めます。
コンセントは、電気設備の中でいちばん身近で、いちばん「なんとなく」で決められがちな設備です。図面の隅に記号をポンポンと置いていくだけなら誰でもできます。でも、竣工後に「ブレーカーがよく落ちる」「複合機を置く場所にコンセントがない」「増設工事に数十万円」というクレームになるのは、たいていコンセントです。
この連載では、コンセント計画を「個数決め」ではなく「電気の割り振り」として、実務の順番どおりに解説していきます。工事項目別の全体像は 設計・施工マニュアル(工事項目別 計画ステップ) にまとめてあるので、あわせてどうぞ。
この連載の地図(全6回)
連載は、実際に設計を進める手順そのままの順番で構成しています。
- 第1回(今回):計画の全体フローと負荷の想定 ― 「何が挿さるか」を数える
- 第2回:配置計画 ― 設置数・取付高さ・器具の選び方
- 第3回:回路分割 ― 1回路の個数・専用回路・分岐回路の設計
- 第4回:接地と特殊コンセント ― 接地極・200V・EV・非常コンセント
- 第5回:施工・検査 ― 現場でのおさまりとトラブル予防
- 第6回:図面化と拾い・積算 ― 計画を「数量とお金」にする
コンセント計画は「個数決め」ではない
新人のころ、先輩に「この部屋、コンセントいくつ付けとけばいい?」と聞いて「2〜3個でいいよ」と言われた経験はないでしょうか。実は、この会話には大事な前提が隠れています。先輩の頭の中では「その部屋で何を使うか」の想定が先に終わっていて、個数はその結果にすぎない、ということです。
コンセント計画の本質は、建物の中で使われる電気機器を洗い出し、それぞれに適切な電気の通り道を割り振ることです。個数・位置・回路・種類は、すべてこの「何が挿さるか」から逆算で決まります。だから連載の第1回は、図記号でも取付高さでもなく、負荷の想定から始めます。
計画フローの全体像 ― 6つのステップ
まず、コンセント計画がどんな手順で進むのか、地図を持っておきましょう。
ステップ① 負荷の想定 ― 何が挿さるかを数える
室ごとに、使われる電気機器を洗い出します。ここが今回のテーマです。
ステップ② 配置計画 ― どこに・いくつ・どの高さで
想定した機器から、設置数・位置・取付高さを決め、器具の種類(接地極付・抜け止め・防雨形など)を選びます。→ 第2回で詳説
ステップ③ 回路分割 ― どのブレーカーにぶら下げるか
1回路に接続する個数の目安と、専用回路にすべき負荷を仕分けて、分電盤の回路構成に落とし込みます。→ 第3回で詳説
ステップ④ 接地・特殊コンセントの選定
接地極・接地端子の使い分け、200V・EV・非常コンセントなど特殊な負荷への対応を決めます。→ 第4回で詳説
ステップ⑤ 施工・検査
ボックスのおさまり、結線、検査時のチェックポイント。設計と施工の橋渡しです。→ 第5回で詳説
ステップ⑥ 図面化・拾い・積算
計画を「あとで拾える図面」にし、数量と金額につなげます。→ 第6回で詳説
ステップ① 負荷の想定 ― 4つの分類で数える
「何が挿さるか」を数えると言っても、テレビ1台・掃除機1台と数え上げていたらキリがありません。実務では、負荷を4つに分類して考えると整理できます。
分類① 一般用 ― 「誰が何を挿すかわからない」コンセント
清掃機器やスマホの充電など、不特定の機器が挿さる、いわゆる普通のコンセントです。機器を特定できないぶん、室の用途と広さから配置で決めていきます(第2回のテーマ)。コンセントの形と定格の関係は コンセントの種類と読み方 で先に押さえておくと、このあとの話がぐっと楽になります。
分類② OA用 ― 情報機器のかたまり
パソコン・モニタ・プリンタ・ネットワーク機器など、事務室のデスクまわりに集中する負荷です。1台1台は小さくても、島型のデスクレイアウトでは1か所に十数台がぶら下がります。デスクレイアウト図をもらってから考えるのが鉄則です。
分類③ 専用回路 ― 「この機器のためだけ」の負荷
エアコン・給湯器・複合機・厨房機器・自動販売機など、消費電力が大きい、または動作を止めたくない機器は、他と共用せず専用回路にします。なぜ専用にするのかは エアコンに専用コンセントが必要な理由 が分かりやすい例です。住宅の台所はこの分類の宝庫で、キッチンのコンセント計画 に家電の消費電力一覧をまとめています。
分類④ 特殊 ― 200V・EV・非常用
単相200Vの機器(大型エアコン・IH・工具類)、EV充電、消防法で求められる非常コンセントなどです。電圧・法規・引込み方が一般用と違うため、計画の早い段階で有無を確認しておきます。詳しくは第4回で扱いますが、200Vコンセントの仕組み、非常コンセントの設置基準 で先取りできます。
見落とすと手戻りになる負荷チェックリスト
負荷の想定でこわいのは「数え間違い」より「数え漏れ」です。図面に現れにくく、あとから発覚しやすい負荷をリストにしました。打合せや現地調査のチェックリストとして使ってください。
- 複合機・シュレッダー:起動時の電流が大きく、共用回路だとブレーカーが落ちる定番
- 給湯室:ポット・冷蔵庫・電子レンジ・食洗機が狭い場所に集中する
- 自動販売機:設置が決まるのが工事の終盤になりがち。位置と回路を先に確保
- サーバーラック・通信機器:24時間稼働。清掃用と共用すると事故のもと
- 電気錠・自動ドア・セキュリティ機器:施主支給・別途工事に紛れて漏れやすい
- 廊下・ホールの清掃用:日常の清掃動線に沿って一定間隔で必要
- 屋外・外構:看板・イベント・散水・防犯カメラ。防水仕様の検討が必要
- 将来増設のスペース:レイアウト変更・テナント入替を見込んだ予備
まとめ
- コンセント計画は「個数決め」ではなく「電気の割り振り」。すべては「何が挿さるか」からの逆算
- 負荷は「一般用・OA用・専用回路・特殊」の4分類で数えると整理できる
- 数え間違いより数え漏れがこわい。チェックリストで潰す
- 計画は 負荷想定→配置→回路分割→種類・接地→施工・検査→図面化 の6ステップで進む
よくある質問
Q1. コンセント1個あたり何VAで見込めばいいですか?
A. 一律に「1個◯VA」と決めるのではなく、回路側で管理するのが実務の考え方です。1回路に接続できる個数や負荷の考え方は第3回で詳しく解説します。先取りしたい方は 1回路あたりのコンセント接続個数の選定方法 へ。
Q2. 住宅と事務所で考え方は変わりますか?
A. 4分類の考え方は同じですが、住宅は「専用回路の割合」が高くなります。キッチン や 書斎(在宅勤務) の計画例が参考になります。
Q3. この連載と既存の解説記事はどう使い分ければいいですか?
A. 連載は「手順と判断」、個別記事は「根拠と深掘り」です。連載を読みながら、気になったところでリンク先に潜る、という使い方を想定しています。全体の地図は 設計・施工マニュアル にあります。
次回予告
第2回は「配置計画」。想定した負荷を、どこに・いくつ・どの高さで置くか。室用途別の設置数の目安と、接地極付・抜け止め・防雨形といった器具の選び分け、図記号の書き方まで進めます。お楽しみに。





