📚 この記事は連載「高圧受変電設備の設計マニュアル」(全14回)の第13回です。前回:第12回 接地 ― A種〜D種の目的/資料編:機器別 目的早見表

こんにちは、HARITAの設計室です。第13回は非常用発電設備と系統連系。第1回で挙げた6つの役割の最後、「備える」です。

ここには受変電のほかのブロックにはない特徴があります。ふだんは動かない設備なのに、動かなければ人が逃げられない。そして間違って動くと、電力会社の作業員を感電させます

ペンタ
発電機の図面、点線で囲われてたり切替のスイッチがあったりして…主回路と別世界に見えます。
はりた
別世界にしてあるんだ。商用と発電機は、絶対に同時につながってはいけない。その「絶対」を図面で表現したのが、あの切替とインタロックだよ。

予備電源には2つの性格がある

区分 対象 性格
法令で求められる
非常電源
非常用照明、誘導灯、屋内消火栓、スプリンクラー、排煙設備、非常放送 など 設置しないと建物が使えない。容量も切替時間も法令で決まる
事業継続のための
予備電源
サーバ、医療機器、生産設備、冷凍・冷蔵、通信 など 発注者が決める。何をどこまで守るかは施主との合意で決まる
⚠ この2つを図面上で混ぜない
法令で求められる非常電源の回路に、あとから一般負荷をつないでしまう――現場で実際に起きるトラブルです。非常用と一般用は、回路も盤も名称も明確に分ける。第10回の「負荷名称の書き方」が効いてくる場面です。

予備電源の3タイプ

方式 切替の速さ 持続時間 向いている用途
非常用発電機
ディーゼル・ガス
数十秒
始動〜電圧確立
長い
燃料次第
消防設備、非常照明、建物全体の重要負荷
蓄電池設備
直流電源・UPS
瞬時
無停電も可能
短い サーバ、制御電源、遮断器のトリップ電源(第6回)
太陽光+蓄電池 条件による 条件による 自立運転による部分的なバックアップ。停電時に使えるかは構成次第
組み合わせて使うのが実際
発電機は起動に時間がかかり、蓄電池は長く持ちません。だから「立ち上がるまでは蓄電池、以降は発電機」という組み合わせが基本になります。
遮断器のトリップ電源に直流電源装置を使うのも同じ考え方(第6回)。速さと持続時間は両立しないので、役割を分けるのです。

停電から給電までの流れ ― UVRの出番

第8回で扱ったUVR(27・不足電圧継電器)が主役になります。停電を検出して発電機を起こすのがUVRの仕事です。

📐 停電 → 給電 → 復電 の一連の流れ
【停電したとき】
① 商用が停電
② UVR(27)が電圧低下を検出
③ 商用側の遮断器を開放
④ 発電機を始動
⑤ 電圧・周波数が確立するのを待つ
⑥ 発電機側の遮断器を投入
⑦ 非常用負荷へ給電

【復電したとき】
⑧ 商用の復電を確認(一定時間待つ)
⑨ 発電機側の遮断器を開放
⑩ 商用側の遮断器を投入
⑪ 発電機を無負荷で冷却運転
⑫ 停止・待機状態へ

③が④より先
発電機をつなぐ前に、必ず商用側を切り離す。この順序が崩れると次章の逆充電が起きます。
⑧で「待つ」理由
復電直後は電圧が不安定で、再び停電することがあります。すぐ切り戻すと二度手間になるため、確認時間を置きます。
⑪の冷却運転
発電機はいきなり止めません。無負荷で回して冷やしてから停止します。この動作も展開接続図に描かれます(第2回)。
📖 消防用設備の非常電源には「切替時間」の規定がある
消防用設備等の非常電源として自家発電設備を使う場合、常用電源が停止してから電圧確立・投入までの所要時間に上限が定められています(消防法令)。
「発電機さえ置けばよい」ではなく、始動して電気が届くまでの時間まで含めて要求されているのがポイントです。実際の数値と適用範囲は、物件の用途と規模に応じて必ず法令・所轄消防で確認してください。


インタロック ― 絶対に同時投入させない

⚡ もし商用と発電機が同時につながったら
停電中、発電機が運転している
   ↓
商用側の遮断器も入ったままだった
   ↓
発電機の電気が構外へ逆流(逆充電)
   ↓
停電したはずの配電線が充電される
   ↓
復旧作業中の電力会社の作業員が感電
これが逆充電です。第4回の波及事故は「自分の事故を外に出す」話でしたが、こちらは「自分の電気を外に出す」話。どちらも構外に危害を及ぼします。
そのため、商用側と発電機側の遮断器は機械的・電気的の二重のインタロックで、同時に投入できないようにします。
インタロックの実現方法
機械的インタロック…物理的な機構で、片方が入っていると片方が入らない
電気的インタロック…相手の遮断器のb接点(52b)を投入回路に直列に入れる(第3回の補助記号がここで効きます)
切替開閉器…そもそも1つのスイッチで「商用/切/発電機」を選ぶ方式

単線結線図では点線や記号で簡略表示されますが、実際の動きは展開接続図でしか読めません。試験や点検では必ずインタロックの動作確認を行います。

系統連系 ― 太陽光をつなぐときに増える保護

太陽光発電などを電力会社の系統につなぐことを系統連系といいます。予備電源と似ていますが、ふだんから商用と並列で運転する点が決定的に違います。

逆潮流あり/なし
逆潮流あり…余った電力を系統へ送る(売電)。系統側への影響が大きいため保護も手厚くなる
逆潮流なし…構内で使い切る。系統へ送らないことを保証するため、逆電力継電器(RPR)で監視する

どちらにするかで必要な保護継電器の顔ぶれが変わります。図面を読むときは、まずここを確認してください。

⚡ 単独運転 ― 系統連系でいちばん重要な概念
系統が停電しているのに、太陽光だけが運転を続けて配電線に電気を送り続けている状態を単独運転といいます。
結果は逆充電と同じ。停電したはずの電線が生きているため、復旧作業者が感電します。
そのため連系する設備には単独運転検出機能が義務づけられ、検出したらただちに系統から切り離す(解列する)必要があります。
連系保護に使われる継電器
OVR(59)過電圧継電器…系統の電圧が上がりすぎたら解列
UVR(27)不足電圧継電器…系統が停電したら解列
OFR/UFR 周波数継電器…周波数の上昇・低下を検出して解列
RPR 逆電力継電器…逆潮流なしの場合、系統へ電気が流れ出すのを検出
単独運転検出機能…受動的方式(電圧位相や周波数の急変を見る)と能動的方式(あえて微小な変動を与えて反応を見る)を組み合わせる

第8回で扱った継電器が、ここでも役割を変えて登場します。整定値と保護方式は電力会社との連系協議で決まります

ペンタ
波及事故も、逆充電も、単独運転も…全部「構外に迷惑をかけない」って話なんですね。
はりた
そこに気づけたら、この連載の見方編は卒業だね。受変電設備の設計思想は「自分を守る」と「他人に迷惑をかけない」の2本柱。図面はその思想が形になったものなんだ。


単線結線図では、こう描かれる

予備電源・系統連系の記載要素
① 発電機 G…容量(kVA)、電圧、燃料種別。点線の枠で囲って区別することが多い
② 発電機側の遮断器…52。商用側の52とセットでインタロックの表示
③ 切替の方式…切替開閉器か、遮断器2台か
④ 非常用母線…一般用の母線と分けて描く
⑤ 非常用負荷…名称に「非常」を明記(第10回)
⑥ 連系点…太陽光などの接続位置と、連系保護装置の記載
⑦ 蓄電池・直流電源装置…トリップ電源を兼ねる場合はその旨

新人がやりがちなミス 3選

① 非常用母線に一般負荷をつなぐ
発電機の容量は非常用負荷に合わせて決めてあります。あとから一般負荷を足すと、いざというときに容量不足で落ちます。増設の相談を受けたら、まず発電機容量の再計算から。
② インタロックを「付いているから大丈夫」で済ませる
インタロックは動作確認をして初めて機能が保証されます。竣工時と定期点検で必ず試験してください。「図面に描いてある」と「実物が動く」は別の話です。
③ 太陽光を「後付けできる」と安易に答える
連系には電力会社との協議、保護装置の追加、力率改善設備の見直し(第11回)が伴います。「パネルを載せるだけ」ではありません。受変電側の検討が必要だと、早い段階で伝えてください。

まとめ

第13回のまとめ
・予備電源には法令で求められる非常電源事業継続のための予備電源がある。図面上で混ぜない
・発電機は長く持つが立ち上がりに時間がかかる、蓄電池は瞬時だが短い。組み合わせて使う
・停電時はUVR(27)が検出 → 商用を切り離す → 発電機を起動 → 投入の順
商用を切り離してから発電機をつなぐ。順序が崩れると逆充電になる
・商用と発電機は機械的・電気的の二重インタロックで同時投入を防ぐ
・系統連系では単独運転を検出して解列することが必須
・波及事故・逆充電・単独運転はすべて「構外に迷惑をかけない」という同じ思想
✅ 今日のチェックリスト(できたらチェック)


よくある質問

Q. 発電機の容量はどう決めるのですか?
まず何を守るか(非常用負荷の範囲)を確定させ、その合計から求めます。注意点は電動機の始動時に必要な容量。定常運転の合計だけで決めると、消火ポンプの始動で電圧が落ちて立ち上がりません。始動条件まで含めた検討が必要です。
Q. 発電機の燃料はどれくらい備えるのですか?
法令上の最低限に加えて、発注者がどれだけの停電継続を想定するかで決まります。燃料タンクの容量は危険物の規制(少量危険物・指定数量)にも関わるため、建築側との調整が必要です。
→ 少量危険物貯蔵庫と発電機の油庫|指定数量・届出・構造基準
Q. 太陽光があれば停電時も電気が使えますか?
そのままでは使えません。系統が停電すると単独運転防止のため、パワーコンディショナは自動的に停止するからです。停電時に使うには自立運転機能や蓄電池との組み合わせが必要で、使える容量にも制限があります。
→ 太陽光+蓄電池が停電時に「生きる」条件|4パターン別の実力
Q. 発電機は動かさずに置いておけばよいのですか?
いいえ。ふだん動かない設備ほど、定期的に動かして確認する必要があります。始動試験、負荷試験、燃料の劣化管理、バッテリーの点検。「いざというときに動かなかった」が最も多い失敗です。保安規程の点検計画に必ず織り込んでください。

次回予告

第14回(最終回):単線結線図の作図手順とセルフチェック
見方編はここで終わり、いよいよ書き方編です。白紙から単線結線図を描く手順、三線結線図・展開接続図への展開、そして自分で記入漏れを見つけるためのチェックリストをまとめます。

参考:高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/系統連系規程 JEAC 9701/消防法および同施行令・施行規則/建築基準法施行令/内線規程 JEAC 8001

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