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ビルの屋上の室外機、地下の給水ポンプ、エレベーター。こうした大きな機械を動かしているのが三相回路です。家の照明やコンセントの単相回路とは、波の数も電線の数も、図面の書き方も違います。この記事では、三相がモーターを回すしくみ、3線式と4線式、つなぐ順番(相回転)と欠相、図面の読み方、建物の中の使いどころを、使っている場面の動く図解でほどきます。超基本の12本目です。

結論

三相は少しずつずれた3つの波を使う回路で、力が途切れずモーターをひとりでに回せます。建物では3φ3W 200Vが基本で、2本を入れ替えると逆に回り、1本切れると熱くなります。

  • 単相は電灯、三相は動力。同じ200Vでも別物
  • 同じ電力なら、三相は1本あたりの電流が小さい
  • 送電のときは検相器で正相か逆相かを確かめる
  • 図面では丸にMの横に「3φ200V 3.7kW」
この記事で押さえる5つのこと
項目を押すと、その章へ飛びます。図はすべて使っている場面の動く図解で、押すと大きく見られます。

この図の読み方

くり返し動きます。左から、もの・記号・用途の順です。

  1. もの:ずれた3つの波で、力が途切れない
  2. 記号:3φ3W、モーターは丸にM
  3. 用途:空調・ポンプ・エレベーターの動力

動く図解で学ぶ電気設備動力設備の動く図解7本を、まとめて見られます見る →

用語集で調べる:三相動力相回転欠相

三相とは ― 3つの波がモーターを回す

三相は、同じ形の交流の波を3分の1ずつずらして3本の線で送る方式です。3つの波はそれぞれR相・S相・T相と呼びます。単相は波の谷で力がゼロになりますが、三相はつねにどれかの波が山なので力が途切れません。モーターの中の3組のコイルが順に強くなり、磁石の向きがぐるぐる回る回転磁界ができて、モーターがひとりでに回ります。

三相のしくみ

左の3つの波に合わせて、右のモーターの中のコイルが順に光り、向きが回ります。

  1. R・S・Tの3つの波が少しずつずれる
  2. コイルが順に強くなり、向きが回る
  3. だからモーターがひとりでに回る
たとえるなら
三相は「3人でタイミングをずらしてこぐ自転車」
1人でこぐ(単相)と、ペダルが真上や真下に来たところで力が抜けます。3人が少しずつタイミングをずらしてこぐ(三相)と、いつも誰かが力を入れているので、自転車はなめらかに進み続けます。
ひっかけ注意
「200Vと書いてあれば三相」ではありません。
家庭のエアコンやIHの200Vは単相200Vです。三相200Vは動力の電源で、盤も配線も契約も別になります。機器の銘板で「単相200V」か「三相200V」かを必ず確かめます。

単相と三相の違いは単相回路とはと【新人講座 第2回】直流と交流/単相と三相のちがいで解説しています。

動く図解で見る:直流・交流と三相三相の波とモーターを動く図解で(電気のきほんのページへ)

ここまでのポイント
  • 三相は3分の1ずつずれた3つの波
  • つねにどれかが山で力が途切れない
  • 回転磁界でモーターがひとりでに回る

三相3線式と三相4線式 ― 200Vと415V/240V

建物でいちばん多いのは三相3線式(3φ3W)200Vで、R・S・Tの3本のどの2本の間も200Vです。大きなビルでは、Y(スター)結線の中心から中性線を出した三相4線式(3φ4W)を使うことがあり、R・S・Tどうしの間は415V、各線と中性線の間は240Vになります。415Vで大きな動力を、240Vで照明を動かします。

3線式と4線式

左が3線式、右が4線式。電圧のラベルが順に光ります。

  1. 3φ3Wはどの2本の間も200V
  2. 3φ4Wは線間415V、中性線との間240V
  3. 三相は線と線の間の電圧で呼ぶ

三相は、同じ電力を送るときの1本あたりの電流が小さくて済みます。10kWを200Vで送ると、単相では2本に50A、三相では3本に約29Aずつです。三相の電力は√3 × 電圧 × 電流 × 力率で求めます。

電流のくらべ方

同じ10kWでも、単相は50A、三相は約29Aが流れます。

  1. 単相200V・10kWは50A
  2. 三相200V・10kWは約29A
  3. √3(約1.73)が三相の係数
方式 電圧 おもな使いどころ
三相3線式(3φ3W) 200V 中小のビル・工場・店舗の動力
三相4線式(3φ4W) 415V/240V 大きなビル・工場の動力と照明
単相3線式(1φ3W) 100V/200V 住宅・ビルの電灯(照明・コンセント)
低圧での代表的な方式です。どれを使うかは、建物の規模と電力会社との契約で決まります。

三相の電流と電力の計算は第2種電気工事士|電気理論で例題つきで解説しています。

ここまでのポイント
  • 建物の基本は3φ3W 200V
  • 3φ4Wは415Vと240Vを取り出せる
  • 三相の電力は√3×電圧×電流×力率


相回転と欠相 ― 順番と1本の断線に注意

三相にはつなぐ順番(相回転)があります。R・S・Tの順(正相)ならモーターは正しい向きに回りますが、どれか2本を入れ替えると逆相になり、モーターが逆に回ります。ポンプなら水が上がらず、ファンなら風の向きが逆になります。

相回転

前半は正相で水が上がり、後半はSとTを入れ替えて逆に回ります。

  1. R・S・Tの順(正相)で正しく回る
  2. 2本を入れ替えると逆相で逆に回る
  3. 送電のときは検相器で確かめる

もうひとつ怖いのが欠相です。3本のうち1本が切れると、モーターは回らずにうなり、残りの2本に大きな電流が流れて熱くなります。そのままにすると焼損のおそれがあります。

欠相

後半、T相が切れるとモーターが止まってうなり、熱くなります。

  1. 1本切れると回らずにうなる
  2. 残りの線に大きな電流が流れて熱くなる
  3. 3Eリレーやサーマルで見張って止める
ひっかけ注意
「三相の白は接地側だから触っても平気」ではありません。
家の屋内配線は白が接地側ですが、三相の盤の中ではR・S・Tを赤・白・青で区別することがあり、白が電圧のかかった相になります。単相の感覚を持ち込まず、検電してから作業します。

送電前の相回転の確認は【新人講座 施工実務編⑧】竣工前の試験・測定、電線の色の決まりは電線の色は誰が決めたのかで解説しています。

ここまでのポイント
  • 2本を入れ替えるとモーターが逆に回る
  • 1本切れる(欠相)とモーターが熱くなる
  • 三相の白は電圧がかかっていることがある

図面では、3φ3Wと丸にMで読む

図面では、三相3線式を3φ3W、三相4線式を3φ4Wと書きます。平面図では丸にMが電動機(モーター)で、横に3φ200V 3.7kWのように相・電圧・出力を書きます。動力の機器は、動力盤から1台ずつ回路を分けてつなぐのが基本です。

図面の読み方

方式の書き方と、平面図の動力盤からモーターへのつながりが順に光ります。

  1. 3φ3Wは三相3線式、3φ4Wは三相4線式
  2. 丸にMは電動機(モーター)
  3. 横の3φ200V 3.7kWで相・電圧・出力を読む
書き方 読み方
3φ3W 200V 三相3線式・200V(動力)
3φ4W 415V/240V 三相4線式・415Vと240V
丸にM 電動機(モーター)
3φ200V 3.7kW 三相200V・出力3.7kWの機器
P-1 動力盤の番号(Pは動力)
盤の名前の付け方は事務所ごとに違うことがあります。図面の凡例と盤図で確かめます。

機器の記号と「3φ200V 3.7kW」の読み方は【プロット図の見方⑤】換気扇・機器・盤、動力盤の盤図は制御盤・動力盤の盤図の読み方で解説しています。

ここまでのポイント
  • 三相3線式は3φ3W
  • モーターは丸にM
  • 横に相・電圧・出力を書く


用途で見る ― ビルの中の動力

ビルでは、屋上の空調の室外機や換気ファン、地下の給水ポンプ、エレベーターなどが三相の動力で動いています。これらは照明・コンセントの電灯分電盤とは別の動力盤から、1台ずつ回路を分けてつなぎます。電気の契約も、電灯とは別に動力の契約を結ぶのが一般的です。

ビルの動力

番号のピンが順に立ち、動力盤から各機械へつながります。

  1. 動力盤から1台ずつ回路を分ける
  2. 空調・ファン・ポンプ・エレベーター
  3. 動力は電灯とは別の盤・別の契約
くらべる点 電灯(単相) 動力(三相)
盤 電灯分電盤 動力盤
方式 1φ3W 100/200V 3φ3W 200V
1回路につなぐもの 照明・コンセントを複数 機器1台が基本
おもな機器 照明・コンセント 空調・ポンプ・ファン・エレベーター
住宅は電灯だけ。店舗・ビル・工場は電灯と動力の両方を使うことが多い。

動力盤の組み立て方は【動力設備の設計マニュアル⑤】動力盤の構成、モーターが動き出す瞬間の大きな電流は【動力設備の設計マニュアル③】始動電流で解説しています。

動く図解で見る:動力盤の構成1台1回路の動力盤を動く図解で(動力設備のページへ)

ここまでのポイント
  • ビルの空調・ポンプ・エレベーターは三相
  • 動力盤から1台ずつ回路を分ける
  • 動力は電灯とは別の契約

読み違えやすいところ

よくある読み違い

  1. 200V=三相と思う:家庭の200Vは単相です。銘板で確かめます。
  2. 3φ3Wの2つの3を取り違える:φの前は相の数、Wの前は電線の本数です。
  3. 三相の白を接地側と思う:三相では白が電圧のかかった相のことがあります。
  4. 相回転の確認を忘れる:ポンプやファンが逆に回ります。
  5. 3φ4Wの415Vと240Vを混同する:415Vは線どうし、240Vは線と中性線の間です。

動く図解で学ぶ電気設備この記事の図のほかにも、動力設備を動く図解で見られます。気になるジャンルを選んでください。

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よくある質問

三相回路とは何ですか?

少しずつずれた3つの交流の波(R相・S相・T相)を使う回路です。つねにどれかの波が山になるので力が途切れず、モーターをひとりでに回せます。ビルや工場の空調・ポンプ・エレベーターなどの動力に使います。

単相と三相の違いは?

単相は波が1つで、住宅の照明やコンセントに使います。三相は波が3つで、モーター(動力)に向いています。同じ200Vでも、家のエアコンの単相200Vと、業務用の三相200Vは電源も契約も別物です。

三相3線式と三相4線式の違いは?

三相3線式はR・S・Tの3本で、どの2本の間も200Vです。三相4線式はY結線の中心から中性線を出した4本で、R・S・Tどうしの間が415V、各線と中性線の間が240Vになり、大きなビルで動力と照明の両方に使います。

相回転(逆相)とは何ですか?

三相をつなぐ順番のことです。R・S・Tの順(正相)ならモーターは正しい向きに回りますが、どれか2本を入れ替えると逆相になり、モーターが逆に回ってポンプの水が上がらない、ファンの風が逆になるといったことが起きます。送電のときは検相器で確かめます。

欠相とは何ですか?

三相の3本のうち1本が切れた状態です。モーターは回らずにうなり、残りの線に大きな電流が流れて熱くなり、焼損のおそれがあります。欠相は3Eリレーやサーマル(熱動継電器)で見張って止めます。

図面の「3φ200V 3.7kW」は何を表しますか?

丸にMの電動機(モーター)の横に書く文字で、三相200V・出力3.7kWのモーターという意味です。φは相の数を表し、3φは三相です。

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。