図解まとめ:低圧配電部は「太い1本を細い何本かに分けていく」区間。MCCBの3視点、幹線サイズの3条件、負荷名称の書き方を1枚に整理しました。こんにちは、HARITAの設計室です。第10回は低圧配電部、単線結線図のいちばん下です。
ここは「もう受変電じゃないから」と軽く見られがちなブロックですが、実は図面の質がいちばん露骨に出る場所でもあります。理由は最後の「負荷名称」の章で分かります。

変圧器から下は、
ブレーカーが並んでるだけですよね。ここは正直、そんなに難しくない気がします。

じゃあ質問。停電作業のとき、どのブレーカーを切ればどこが止まるか――その図面から読み取れる?読み取れないなら、それは書き方の問題なんだ。
📐 図1 変圧器の二次から負荷まで ― 図面での描かれ方
図1:幹線1本ごとに「遮断器の定格・電線の種類とサイズ・行き先の盤名」をセットで書きます。右は分電盤の中身と回路表(負荷名称)の例です。
低圧配電部の役割は「配る」
変圧器の二次側から先が低圧配電部です。ここでの仕事は、作った低圧を、必要な場所へ必要な量だけ、安全に配ること。
📐 低圧配電部のツリー構造
変圧器 T(3φ 210V / 1φ3W 105-210V)
│
[主幹]ACB または MCCB
│
├─[分岐]MCCB ── 1F 電灯
分電盤 ├─[分岐]MCCB ── 2F 電灯分電盤
├─[分岐]MCCB ── 空調
動力盤 ├─[分岐]MCCB ── ポンプ盤
└─[分岐]MCCB ──
非常照明分電盤
主幹(しゅかん)
その変圧器の出口をまとめて入り切りする1台。ここを切ればそのバンク全体が止まります。
分岐
行き先ごとに分けたブレーカー。停電させたい範囲の単位がここで決まります。
その先の盤分電盤・
動力盤の中でさらに細かく分岐します。受変電の単線結線図では
盤の名前までを描き、中身は分電盤結線図に委ねます。
📐 図2 MCCB の銘板の読み方 ― AF・AT・Icu
図2:AFは器体の大きさ、ATは実際に切れる電流。「負荷電流 < AT < 電線の許容電流」の順に並べば選定は成立します。Icu はその点の短絡電流より大きいことが必須です。
MCCBを選ぶ3つの視点
低圧のブレーカー選定は、次の3つを同時に満たすことで決まります。1つでも外すと設計として成立しません。
| 視点 | 条件 | 外すとどうなるか |
| ① 定格電流 | 負荷電流以上、かつ電線の許容電流以下。ブレーカーは電線を守るためにある | 小さすぎれば誤動作、大きすぎれば電線が先に焼ける |
| ② 遮断容量 | その位置で起こりうる短絡電流以上 | 短絡時にブレーカー自身が壊れる。第6回と同じ考え方 |
| ③ 保護協調 | 上位(主幹・変圧器一次PF)より先に動作する | 分岐の事故で建物全体が停電する(第8回) |
⚠ ブレーカーは「機器」ではなく「電線」を守っている
新人がいちばん誤解しやすい点です。過電流遮断器の第一の目的は電線が過熱して火災になるのを防ぐこと。
だから「余裕を見て大きめのブレーカー」は逆に危険になります。ブレーカーと電線はセットで決めると覚えてください。
ELCB(漏電遮断器)はどこに入れるか
過電流を切るMCCBに対し、ELCBは
漏電を検出して感電と電気火災を防ぐブレーカーです。
・人体保護を目的とする場所…
高感度・高速形(定格感度電流30mA程度)・電路の保護・防火を目的とする場所…
より大きな感度電流を選ぶことがある
感度を細かくしすぎると、ノイズや対地静電容量で
誤動作します。選定基準は個別記事にまとめています。
→ 漏電遮断器[ELCB]の設置基準と選定方法/
→ ELCBが誤動作する主な原因
📐 図3 幹線サイズの3条件 ― 許容電流・電圧降下・熱的強度
図3:許容電流だけで決めると、長い幹線では電圧が足りません。電圧降下の許容値と計算方法は 幹線設備の設計|電圧降下による幹線サイズの選定方法 でくわしく解説しています。
幹線サイズは3つの条件で決まる
ブレーカーとセットで決まるのが幹線(ケーブル)のサイズです。こちらも3条件を同時に満たします。
幹線サイズを決める3条件
① 許容電流…その電流を流し続けても電線が過熱しないこと。敷設条件(管内・ラック・気中)で値が変わる
② 電圧降下…末端の機器に必要な電圧が届くこと。こう長が長いほど太くなる
③ 機械的強度・短絡耐量…施工時の張力に耐え、短絡電流が流れた瞬間にも耐えること
実務では①で仮決めし、②で太くなることが多いのがパターンです。こう長の長い物件では、許容電流だけで選ぶと必ず後戻りします。
📖 電圧降下の許容値
内線規程では、供給変圧器の二次側端子(または引込線取付点)から
最遠端の負荷までの電圧降下に許容値が定められています。
基本は
こう長60m以下で2%以内。こう長が長くなるほど段階的に緩和され、
構内に変圧器がある場合はさらに緩和されます。
具体的な数値表と計算例は個別記事にまとめています。
→ 電圧降下の許容範囲は何%?幹線サイズの選定方法と計算例
負荷名称の書き方 ― 地味だが図面の質を決める
ここが第10回のいちばん伝えたいところです。単線結線図の末端に書く負荷名称は、「この図面を将来だれが、何を判断するために読むか」がそのまま出ます。
📐 悪い書き方と良い書き方
✕ 判断に使えない
MCCB ── 照明
MCCB ── 動力
MCCB ── 動力
MCCB ── その他
MCCB ── 予備
どこの照明?何の動力?「その他」に何が入っているかは、もう誰も分かりません。
○ 判断に使える
MCCB ── 1F 電灯分電盤 L-1F
MCCB ── 2F 電灯分電盤 L-2F
MCCB ── 空調動力盤 P-AC
MCCB ── 給水ポンプ盤 P-W
MCCB ── 非常照明分電盤 EL-1
MCCB ── 予備(2口・容量記載)
盤名・記号・階が入っている。停電範囲がすぐ分かり、盤の実物とも突き合わせられます。
判断基準:「このブレーカーを切ったらどこが止まるか」が名称だけで言えるか。言えないなら粒度が粗すぎます。
名称に入れておきたい4要素
① 用途…電灯/動力/非常用/特定負荷
② 場所…階、エリア、室名
③ 盤記号…L-1F、P-AC など。実物の盤に貼られる記号と一致させる
④ 特記…非常電源、無停電、EV充電、テナント専用 など
とくに非常用と一般用の区別は必須です。消防設備や非常照明への回路は、点検でも改修でも真っ先に確認されるため、名称で判別できないと必ず手戻りが出ます。

「予備」って書いてあるブレーカー、けっこう見ます。あれも書き方があるんですか?

予備こそ容量と口数を書く。「将来どれだけ増やせるか」を判断するのが予備の役目だからね。ただ「予備」とだけ書いてあると、使えるかどうか調べ直しになるんだ。
単線結線図では、こう描かれる
低圧配電部の記載要素
① 低圧母線…電圧・相線式(例:3φ3W 210V、1φ3W 105-210V)
② 主幹…ACB/MCCB の定格(フレーム AF・トリップ AT)
③ 分岐…MCCB/ELCB の定格。ELCBは感度電流も記載
④ 幹線…ケーブルの種類・サイズ・条数(例:CVT 100sq×1)
⑤ 負荷名称…盤名・記号・場所
⑥ 計器…変圧器二次のCT+電流計、電圧計
「AF」はフレームサイズ(器体の大きさ)、「AT」は引外し電流。225AF/150AT のように書きます。将来の増設はATだけ替えれば済むようAFに余裕を持たせるという設計の作法もここに表れます。
新人がやりがちなミス 3選
① 余裕を見てブレーカーを大きくする
ブレーカーは電線を守る機器です。電線より大きい定格にすると、電線が過熱しても切れない状態になります。余裕は電線を太くすることで確保してください。
② 許容電流だけで幹線サイズを決める
こう長が長い物件では、電圧降下で必ず太くなります。許容電流で決めて配置図に落とし、後から距離を測って作り直す――よくある手戻りです。ルートと距離を先に押さえるのが早道です(第4回の引込ケーブルと同じ)。
③ 負荷名称を「照明」「動力」で済ませる
その図面は、10年後の停電作業で使われます。書いた本人はもういません。名称の粒度は、未来の誰かへの引き継ぎだと考えてください。
まとめ
第10回のまとめ
・低圧配電部は主幹 → 分岐 → 各盤のツリー構造。分岐が停電範囲の単位になる
・MCCBは定格電流・遮断容量・保護協調の3条件を同時に満たす
・過電流遮断器は機器ではなく電線を守る。大きすぎるブレーカーは危険
・幹線サイズは許容電流・電圧降下・機械的強度で決まる。長いこう長では②が効く
・負荷名称には用途・場所・盤記号・特記を入れる
・「このブレーカーを切ったらどこが止まるか」が名称だけで言えるかが合格ライン
・予備は容量と口数まで書く
📝 理解度チェック(全3問クイズ)
Q1. MCCBの「AF」と「AT」の意味は?
A.AF=フレームの大きさ、AT=動作する電流値
B.AF=動作する電流値、AT=遮断容量
C.どちらも同じ意味
答えと解説を見る
正解:A
AF(アンペアフレーム)は器体のサイズ、AT(アンペアトリップ)は引き外し電流です。図面には「100AF/60AT」のように併記します。
Q2. 幹線サイズを決める3つの条件に含まれないものは?
A.許容電流
B.電圧降下
C.ケーブルの被覆の色
答えと解説を見る
正解:C
許容電流・電圧降下・短絡時の熱的強度の3条件で決めます。どれか1つでも満たさなければサイズアップが必要です。
Q3. 単線結線図の負荷名称の書き方として適切なのは?
A.「動力1」「電灯2」のような通し番号だけにする
B.系統・用途・室名がわかる名称にし、現場の盤表示と一致させる
C.施工者が決めるので図面には書かない
答えと解説を見る
正解:B
負荷名称は保守で最初に見られる情報です。「3F 空調機(AHU-1)」のように、現場の表示と一致した名称にしておくと、停電作業の範囲判断が一気に楽になります。
※ まず自分で答えを考えてから「答えと解説を見る」を開いてみてください。
よくある質問
Q. 低圧主幹はACBとMCCB、どちらを使うのですか?
容量が大きくなるほどACB(気中遮断器)が選ばれます。保護要素を内蔵し、整定の自由度が高いためです。中小規模ではMCCBで足りることがほとんど。判断軸は容量と、上位・下位との保護協調をどこまで作り込むかです。
Q. AFとATはどう違うのですか?
AF(アンペアフレーム)は器体の大きさ、AT(アンペアトリップ)は実際に引き外す電流です。同じ225AFの枠の中で、100AT・150AT・225ATなどを選べます。将来の増設が読めるならAFに余裕を持たせておくと、盤を作り替えずにATだけ変更できます。
Q. 受変電の単線結線図に、分電盤の中身まで描くべきですか?
描きません。受変電の図面は「盤の名前まで」が原則です。中身は分電盤結線図(盤図)に分けます。1枚に詰め込みすぎると読めなくなる、という第2回の考え方がここでも効きます。
Q. 予備ブレーカーはどれくらい用意すべきですか?
建物の用途次第です。テナントビルや工場のように用途変更が起きる施設では多めに、用途が確定した施設では最小限に。大事なのは数より「何Aの予備が何口あるか」を図面に書くこと。書いていない予備は、将来使われません。
次回予告
参考:内線規程 JEAC 8001/高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/電気設備の技術基準の解釈
30秒アンケートこの記事は役に立ちましたか?
タップするだけで完了します。あなたの声でこのサイトは育ちます。
ご回答ありがとうございます!
よければ、あと3つだけ教えてください(任意・答えなくてもOK)
内容への興味・関心低い高い
文章の読みやすさ読みにくい読みやすい
実務での使いやすさ使いにくい使いやすい
ありがとうございました。いただいた声は記事の改善に使わせていただきます。
連載「高圧受変電設備の設計マニュアル」を読み進める
次に読むならこれ【EV充電・再エネ設備の設計マニュアル⑥・最終回】申請と図面化 ― 申請が設計の締切を決める設計マニュアル
関連