
図解まとめ:低圧配電部は「太い1本を細い何本かに分けていく」区間。MCCBの3視点、幹線サイズの3条件、負荷名称の書き方を1枚に整理しました。こんにちは、HARITAの設計室です。第10回は低圧配電部、単線結線図のいちばん下です。
ここは「もう受変電じゃないから」と軽く見られがちなブロックですが、実は図面の質がいちばん露骨に出る場所でもあります。理由は最後の「負荷名称」の章で分かります。
この記事で押さえる3つ
- 過電流遮断器が守っているのは、機器ですか、電線ですか。
- 許容電流を満たしていても、幹線を太くしなければならないのはどんなときですか。
- その図面で「このブレーカーを切ったらどこが止まるか」を言えますか。

変圧器から下は、ブレーカーが並んでるだけですよね。ここは正直、そんなに難しくない気がします。

じゃあ質問。停電作業のとき、どのブレーカーを切ればどこが止まるか――その図面から読み取れる?読み取れないなら、それは書き方の問題なんだ。
MCCBを選ぶ3つの視点
低圧のブレーカー選定は、次の3つを同時に満たすことで決まります。1つでも外すと設計として成立しません。
| 視点 | 条件 | 外すとどうなるか |
| ① 定格電流 | 負荷電流以上、かつ電線の許容電流以下。ブレーカーは電線を守るためにある | 小さすぎれば誤動作、大きすぎれば電線が先に焼ける |
| ② 遮断容量 | その位置で起こりうる短絡電流以上 | 短絡時にブレーカー自身が壊れる。第6回と同じ考え方 |
| ③ 保護協調 | 上位(主幹・変圧器一次PF)より先に動作する | 分岐の事故で建物全体が停電する(第8回) |
⚠ ブレーカーは「機器」ではなく「電線」を守っている
新人がいちばん誤解しやすい点です。過電流遮断器の第一の目的は電線が過熱して火災になるのを防ぐこと。
だから「余裕を見て大きめのブレーカー」は逆に危険になります。ブレーカーと電線はセットで決めると覚えてください。
ELCB(漏電遮断器)はどこに入れるか
過電流を切るMCCBに対し、ELCBは
漏電を検出して感電と電気火災を防ぐブレーカーです。
・人体保護を目的とする場所…
高感度・高速形(定格感度電流30mA程度)・電路の保護・防火を目的とする場所…
より大きな感度電流を選ぶことがある
感度を細かくしすぎると、ノイズや対地静電容量で
誤動作します。選定基準は個別記事にまとめています。
→ 漏電遮断器[ELCB]の設置基準と選定方法/
→ ELCBが誤動作する主な原因
📐 図3 幹線サイズの3条件 ― 許容電流・電圧降下・熱的強度
図3:許容電流だけで決めると、長い幹線では電圧が足りません。電圧降下の許容値と計算方法は 幹線設備の設計|電圧降下による幹線サイズの選定方法 でくわしく解説しています。
ここまでのポイント
- MCCBは定格電流・遮断容量・保護協調の3条件を同時に満たす。1つでも外すと成立しない
- 過電流遮断器の第一の目的は、電線が過熱して火災になるのを防ぐこと
- だから「余裕を見て大きめ」は逆に危険。余裕は電線を太くして確保する
定格電流 ATは電線の許容電流以下。
遮断容量 短絡電流以上。
保護協調 事故の近くが先に動く。
守るのは、電線 機器ではない。
たとえるならブレーカーは、電線の体温計つき見張り
ブレーカーは、電線が熱くなりすぎる前に電気を止める見張り番です。見張るのは電線の体温なので、ブレーカーの大きさは電線に合わせて決めます。機器のために大きくしたくなったら、ブレーカーではなく電線を太くします。
ここに注意!「ブレーカーは、機器を守るために付ける」ではありません。
過電流遮断器の第一の目的は、電線が過熱して火災になるのを防ぐことです。だから定格電流は、電線の許容電流をこえないように選びます。
ここに注意!「余裕を見て、ブレーカーは大きめに」ではありません。
ブレーカーを大きくすると、電線が過熱しても切れなくなります。余裕は、ブレーカーではなく電線を太くして確保します。将来の増設に備えるなら、AF(器体の大きさ)に余裕を持たせます。
幹線サイズは3つの条件で決まる
ブレーカーとセットで決まるのが幹線(ケーブル)のサイズです。こちらも3条件を同時に満たします。
幹線サイズを決める3条件
① 許容電流…その電流を流し続けても電線が過熱しないこと。
敷設条件(管内・ラック・気中)で値が変わる② 電圧降下…末端の機器に必要な電圧が届くこと。こう長が長いほど太くなる
③ 機械的強度・短絡耐量…施工時の張力に耐え、
短絡電流が流れた瞬間にも耐えること
実務では
①で仮決めし、②で太くなることが多いのがパターンです。こう長の長い物件では、許容電流だけで選ぶと必ず後戻りします。
📖 電圧降下の許容値
内線規程では、供給変圧器の二次側端子(または引込線取付点)から
最遠端の負荷までの電圧降下に許容値が定められています。
基本は
こう長60m以下で2%以内。こう長が長くなるほど段階的に緩和され、
構内に変圧器がある場合はさらに緩和されます。
具体的な数値表と計算例は個別記事にまとめています。
→ 電圧降下の許容範囲は何%?幹線サイズの選定方法と計算例
| 条件 | 中身 | 効いてくる場面 |
| ① 許容電流 | その電流を流し続けても電線が過熱しないこと | 敷設条件(管内・ラック・気中)で値が変わる |
| ② 電圧降下 | 末端の機器に必要な電圧が届くこと | こう長が長い物件では、これで必ず太くなる |
| ③ 機械的・熱的強度 | 短絡電流が流れたときに耐えられること | 短絡電流が大きい受電点近くの幹線 |
ここまでのポイント
- 幹線サイズもブレーカーとセットで、3条件を同時に満たすように決める
- 許容電流だけで決めると、長い幹線では末端の電圧が足りない
- ELCBは漏電を検出して感電と電気火災を防ぐ。感度を細かくしすぎると誤動作する
許容電流 敷設条件で変わる。
電圧降下 こう長が長いと効く。
機械的・熱的強度 受電点の近くで効く。
①で仮決め、②で太くなる 長い物件のパターン。
ここに注意!「許容電流を満たせば、幹線サイズは決まり」ではありません。
こう長が長いと電圧降下で太くなり、受電点の近くでは短絡に耐える強度も要ります。許容電流・電圧降下・機械的強度の3つを同時に満たすサイズにします。
負荷名称の書き方 ― 地味だが図面の質を決める
ここが第10回のいちばん伝えたいところです。単線結線図の末端に書く負荷名称は、「この図面を将来だれが、何を判断するために読むか」がそのまま出ます。
📐 悪い書き方と良い書き方
✕ 判断に使えない
MCCB ── 照明
MCCB ── 動力
MCCB ── 動力
MCCB ── その他
MCCB ── 予備
どこの照明?何の動力?「その他」に何が入っているかは、もう誰も分かりません。
○ 判断に使える
MCCB ── 1F 電灯分電盤 L-1F
MCCB ── 2F 電灯分電盤 L-2F
MCCB ── 空調動力盤 P-AC
MCCB ── 給水ポンプ盤 P-W
MCCB ── 非常照明分電盤 EL-1
MCCB ── 予備(2口・容量記載)
盤名・記号・階が入っている。停電範囲がすぐ分かり、盤の実物とも突き合わせられます。
判断基準:「このブレーカーを切ったらどこが止まるか」が名称だけで言えるか。言えないなら粒度が粗すぎます。
名称に入れておきたい4要素
① 用途…電灯/動力/非常用/特定負荷
② 場所…階、エリア、室名
③ 盤記号…L-1F、P-AC など。実物の盤に貼られる記号と一致させる
④ 特記…非常電源、無停電、EV充電、テナント専用 など
とくに非常用と一般用の区別は必須です。消防設備や非常照明への回路は、点検でも改修でも真っ先に確認されるため、名称で判別できないと必ず手戻りが出ます。

「予備」って書いてあるブレーカー、けっこう見ます。あれも書き方があるんですか?

予備こそ容量と口数を書く。「将来どれだけ増やせるか」を判断するのが予備の役目だからね。ただ「予備」とだけ書いてあると、使えるかどうか調べ直しになるんだ。
ここまでのポイント
- 名称に入れる4要素は①用途 ②場所 ③盤記号 ④特記
- 盤記号は、実物の盤に貼られる記号と一致させる
- 判断基準は「このブレーカーを切ったらどこが止まるか」が名称だけで言えるかどうか
用途と場所 1F 事務室 電灯。
盤記号と特記 L-1F(非常用)。
予備は、容量と口数 将来の増設に。
合格ライン 名前で停電範囲が言える。
単線結線図では、こう描かれる
低圧配電部の記載要素
① 低圧母線…電圧・相線式(例:3φ3W 210V、1φ3W 105-210V)
② 主幹…ACB/MCCB の定格(フレーム AF・トリップ AT)
③ 分岐…MCCB/ELCB の定格。ELCBは感度電流も記載
④ 幹線…ケーブルの種類・サイズ・条数(例:CVT 100sq×1)
⑤ 負荷名称…盤名・記号・場所
⑥ 計器…変圧器二次のCT+電流計、電圧計
「AF」はフレームサイズ(器体の大きさ)、「AT」は引外し電流。225AF/150AT のように書きます。将来の増設はATだけ替えれば済むようAFに余裕を持たせるという設計の作法もここに表れます。
図4:作図イメージ ― 低圧母線・主幹・分岐・幹線・負荷名称・計器の6要素を、幹線1本ごとにセットで書きます。下段は負荷名称の粒度の違いです(数値は書式を示すための記載例)。
ここまでのポイント
- 記載要素は①低圧母線 ②主幹 ③分岐 ④幹線 ⑤負荷名称 ⑥計器
- AFはフレームサイズ(器体の大きさ)、ATは引外し電流。225AF/150AT のように書く
- 将来の増設はATだけ替えれば済むよう、AFに余裕を持たせるという作法もここに表れる
新人がやりがちなミス 3選
① 余裕を見てブレーカーを大きくする
ブレーカーは電線を守る機器です。電線より大きい定格にすると、電線が過熱しても切れない状態になります。余裕は電線を太くすることで確保してください。
② 許容電流だけで幹線サイズを決める
こう長が長い物件では、
電圧降下で必ず太くなります。許容電流で決めて
配置図に落とし、後から距離を測って作り直す――よくある手戻りです。
ルートと距離を先に押さえるのが早道です(第4回の引込ケーブルと同じ)。
③ 負荷名称を「照明」「動力」で済ませる
その図面は、10年後の停電作業で使われます。書いた本人はもういません。名称の粒度は、未来の誰かへの引き継ぎだと考えてください。
ここまでのポイント
- 余裕を見てブレーカーを大きくすると、電線が過熱しても切れない状態になる
- 許容電流だけで幹線サイズを決めると、こう長が長い物件で電圧降下に泣く
- 負荷名称を「照明」「動力」で済ませない。粒度は、未来の誰かへの引き継ぎ
まとめ
その図面は、10年後の停電作業で使われます。書いた本人は、もういません。低圧配電部が「図面の質がいちばん露骨に出る場所」だというのは、そういう意味です。MCCBも幹線も名称も、決め方の正しさより、あとから読める形になっているかで評価されます。
決めることと、外したときに起きること
| 項目 | 決め方 | 外したときに起きること |
| MCCBの定格電流 | 負荷電流以上、かつ電線の許容電流以下 | 小さすぎれば誤動作、大きすぎれば電線が先に焼ける |
| 遮断容量 | その位置で起こりうる短絡電流以上 | 短絡時にブレーカー自身が壊れる |
| 保護協調 | 上位(主幹・変圧器一次PF)より先に動作する | 分岐の事故で建物全体が停電する |
| 幹線サイズ | 許容電流・電圧降下・機械的強度を同時に満たす | 末端の電圧が足りない、または短絡で耐えられない |
| 負荷名称 | 用途・場所・盤記号・特記を入れる | 停電範囲が読めず、点検も改修も手戻りになる |
ブレーカーと幹線
選び方
- 低圧配電部は主幹 → 分岐 → 各盤のツリー構造。分岐が停電範囲の単位になる
- MCCBは定格電流・遮断容量・保護協調の3条件を同時に満たす
- 過電流遮断器は機器ではなく電線を守る。大きすぎるブレーカーは危険
- 幹線サイズは許容電流・電圧降下・機械的強度で決まる。長いこう長では②が効く
名称の書き方
あとから読める図面に
- 負荷名称には用途・場所・盤記号・特記を入れる
- 「このブレーカーを切ったらどこが止まるか」が名称だけで言えるかが合格ライン
- 予備は容量と口数まで書く
最後に ― 未来の誰かへの引き継ぎ
「予備」とだけ書かれたブレーカーは、将来どれだけ増やせるかを調べ直させます。名称の粒度は、未来の誰かへの引き継ぎです。配るだけの区間に見えて、ここに手を抜いた図面は、10年後にいちばん恨まれます。
よくある質問
Q. 低圧主幹はACBとMCCB、どちらを使うのですか?
容量が大きくなるほどACB(気中遮断器)が選ばれます。保護要素を内蔵し、整定の自由度が高いためです。中小規模ではMCCBで足りることがほとんど。判断軸は容量と、上位・下位との保護協調をどこまで作り込むかです。
Q. AFとATはどう違うのですか?
AF(アンペアフレーム)は器体の大きさ、AT(アンペアトリップ)は実際に引き外す電流です。同じ225AFの枠の中で、100AT・150AT・225ATなどを選べます。将来の増設が読めるならAFに余裕を持たせておくと、盤を作り替えずにATだけ変更できます。
Q. 受変電の単線結線図に、分電盤の中身まで描くべきですか?
描きません。受変電の図面は「盤の名前まで」が原則です。中身は分電盤結線図(盤図)に分けます。1枚に詰め込みすぎると読めなくなる、という第2回の考え方がここでも効きます。
Q. 予備ブレーカーはどれくらい用意すべきですか?
建物の用途次第です。テナントビルや工場のように用途変更が起きる施設では多めに、用途が確定した施設では最小限に。大事なのは数より「何Aの予備が何口あるか」を図面に書くこと。書いていない予備は、将来使われません。
次回予告
参考:内線規程 JEAC 8001/高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/電気設備の技術基準の解釈
連載「高圧受変電設備の設計マニュアル」を読み進める
次に読むならこれ【EV充電・再エネ設備の設計マニュアル⑥・最終回】申請と図面化 ― 申請が設計の締切を決める設計マニュアル
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