📚 この記事は連載「高圧受変電設備の設計マニュアル」(全14回)の第11回です。前回:第10回 低圧配電部 ― 幹線・MCCB・負荷名称/資料編:機器別 目的早見表

こんにちは、HARITAの設計室です。第11回は力率改善設備単線結線図の右下にいつも並んでいる、あの2つの記号です。

この回で答えたい問いは2つ。なぜコンデンサを付けると電気代が下がるのか。そしてなぜ、リアクトルが「必ず」その手前に要るのか

ペンタ
先輩、コンデンサの前に必ずリアクトルが描いてありますよね。あれ、省いたらダメなんですか?安くなりそうですけど…。
はりた
絶対にダメ。省くと投入のたびに大電流が流れて開閉器が傷み、しかも高調波を増幅する。あれは「おまけ」じゃなくてコンデンサを成立させるための部品なんだ。理由は今日ちゃんとやるよ。

そもそも力率とは何か

3つの電力
有効電力 P[kW]…実際に仕事をする電力
無効電力 Q[kvar]…仕事はしないが、コイルの磁界をつくるために往復する電力
皮相電力 S[kVA]…電線に実際に流れる分。P と Q のベクトル合成

力率 cosθ = P ÷ S
モータや変圧器のようなコイルを持つ負荷(誘導性負荷)が多いと、Qが増えて力率が下がります。これを遅れ力率といいます。

📎 kW・kVA・kvarの関係は、当サイトの新人講座で図解しています。
→ 【新人講座 第3回】電力・電力量・力率ってなに? kW・kVA・kvarはビールジョッキで分かる

力率が悪いと、何が困るのか

📐 力率が悪いと起きる3つのこと
同じ仕事(P=100kW)をするのに…

力率 1.00 → S=100kVA → 電流 小
力率 0.80 → S=125kVA → 電流 1.25倍
力率 0.60 → S=167kVA → 電流 1.67倍

 電流が増える
  ├→ 電線・変圧器を太く/大きく
  ├→ 損失(I²R)が増える
  └→ 電圧降下が大きくなる

① 設備が余分に要る
同じkWを送るのに太い電線と大きい変圧器が必要になります。初期費用が増えます。
② 損失と電圧降下が増える
損失は電流の2乗。力率0.8なら損失は約1.56倍です。
③ 電気料金が上がる
高圧受電には力率による基本料金の割引・割増があります。一般に力率85%を基準に、上回れば割引、下回れば割増。
💰 力率割引は「毎月ずっと」効く
力率改善の投資回収がしやすいのは、割引が基本料金に対して毎月かかり続けるからです。設備としては地味ですが、施主に金額で説明できる数少ない項目でもあります。
具体的な割引率は電力会社の約款によるため、必ず該当エリアの供給約款で確認してください。
→ 「電気代が上がった」を5つに分解する|電気料金の中身

進相コンデンサSC ― 遅れを打ち消す

SC(進相コンデンサ)は、コイルとは逆向きの無効電力(進み)をつくる機器です。遅れの無効電力を進みで打ち消して、S(皮相電力)を小さくするのが仕事です。

どこに付けるか(3つの考え方)
① 高圧一括…受電部の高圧母線にまとめて設置。設備が少なく管理しやすい。受変電設備で最も一般的
② 低圧一括…変圧器の二次側にまとめて設置。低圧幹線の電流も減らせる
③ 負荷直結…大型モータの端子に直付け。その負荷の電流そのものを減らせるので効果は最大だが、台数が増える

単線結線図の右下にあるのは、たいてい①の高圧一括です。

📎 コンデンサ容量と開閉器の選定は個別記事で詳しく扱っています。
→ コンデンサの開閉器仕様と容量の選定方法


なぜ直列リアクトルSRが「必ず」要るのか

SRを入れる理由は2つあります。どちらも入れないと確実に困る類のものです。

⚡ 理由① 投入時の突入電流を抑える
コンデンサは、電圧をかけた瞬間ほぼ短絡状態になります。SRがないと、投入のたびに定格電流の何十倍もの突入電流が流れ、開閉器の接点が急速に傷みます。
SRはこの電流の立ち上がりを抑えるブレーキの役目を果たします。
⚡ 理由② 高調波を拡大させない
インバータやUPSなど、電流を細かく切り刻む機器からは高調波(基本波の整数倍の成分)が出ます。とくに三相回路では第5調波が多くなります。
コンデンサは周波数が高いほど電流を通しやすいため、そのままでは高調波を吸い込み、条件次第では共振して増幅してしまいます。SRはこれを防ぎます。

6%リアクトルの根拠 ― 数字で確かめる

図面に「SR 6%」と書かれている、あの6%です。なぜ6%なのかを、簡単な計算で確かめてみます。

📐 第5調波でのふるまい
基本波でのリアクタンスを次のように置く
  コンデンサ Xc = 1.00
  リアクトル XL = 0.06 (=6%)

第n調波では XL は n 倍、Xc は 1/n 倍になる

【第5調波(n=5)】
  XL = 5 × 0.06 = 0.30
  Xc = 1 ÷ 5   = 0.20
  合成 = 0.30 − 0.20 = +0.10 → 誘導性

【共振する周波数は?】
  XL = Xc となるのは n² × 0.06 = 1
   → n ≒ 4.08 (第5調波より下)

つまり6%のリアクトルを入れると、共振点が第5調波より低いところに移り、第5調波に対しては回路全体が誘導性になります。誘導性であれば高調波を吸い込んで拡大することがありません。

仮に3%だとどうなるか。共振点は n ≒ 5.77 となり、第5調波では容量性のまま。共振点にも近く、拡大の危険が残ります。6%という数字は、第5調波を確実に誘導性側に追い出すための最小限の値なのです。

13%リアクトルを使う場合
第3調波が多く出る設備(単相負荷の偏りが大きい場合など)では、13%のリアクトルを使います。
同じ計算をすると共振点は n ≒ 2.77 となり、第3調波(n=3)でも誘導性になります。
ただしリアクトルが大きいほど損失と発熱、寸法、コストが増えるため、必要がなければ6%が標準です。


入れっぱなしは危険 ― 進み力率という落とし穴

⚠ 夜間・休日にコンデンサを入れたままにすると
負荷が軽い時間帯は、打ち消すべき遅れの無効電力そのものが減っています。そこにコンデンサを入れたままにすると、進み側に振れすぎて(進み力率)、かえって電圧が上昇します。
電力会社の系統にも影響するため、軽負荷時にはコンデンサを開放するのが原則です。
だから自動制御が使われる
APFR(自動力率調整装置)…力率を監視して、コンデンサ群を自動で投入・開放する
VMC(高圧真空電磁接触器)…頻繁な開閉に耐える開閉器。APFRの指令で動く

単線結線図でコンデンサ回路が2群・3群に分かれているのは、負荷に応じて段階的に投入するためです。第1回の図で「SC 106kvar」が2つ並んでいたのは、こういう理由でした。

単線結線図では、こう描かれる

力率改善回路の記載要素(上から順に)
① 開閉器…LBS+PF、または VMC(自動制御の場合)
② SR(直列リアクトル)6%(または13%)と、容量 kvar
③ SC(進相コンデンサ)…容量 kvar
④ 群分け…複数群に分かれている場合はその数だけ縦に並ぶ
⑤ APFR…自動制御の場合、制御線の記載

順番が重要です。電源側から見て必ず 開閉器 → SR → SC の順。SRがSCの手前(電源側)にあることを、図面上で必ず確認してください。

新人がやりがちなミス 3選

① コスト削減でSRを省く
開閉器が早期に劣化し、高調波障害の原因にもなります。SRはコンデンサとセットで1つの設備。省くという選択肢はありません。
② 力率100%を目指して容量を入れすぎる
ピーク時にちょうど良くても、軽負荷時に進み力率になります。目標は「常に100%」ではなく、割引の基準を満たしつつ進み側に振れない範囲。群分けと自動制御で調整します。
③ 図面でSRとSCの順番を逆に描く
SRは電源側(上)、SCは負荷側(下)。逆に描くと、突入電流も高調波も抑えられない回路になります。作図時のチェック項目に入れてください。


まとめ

第11回のまとめ
・力率が悪いと電流が増え、設備が余分に要り、損失も電気代も増える
・SCは遅れの無効電力を進みで打ち消して皮相電力を小さくする
・SRが必要な理由は①投入時の突入電流を抑える ②高調波を拡大させない
6%は、共振点を第5調波より下(n≒4.08)に移し、第5調波で誘導性にするための値
・第3調波が多い設備では13%(共振点 n≒2.77)
・軽負荷時に入れっぱなしにすると進み力率になる。APFR+VMCで自動制御
・図面では必ず開閉器 → SR → SC の順
✅ 今日のチェックリスト(できたらチェック)

よくある質問

Q. コンデンサ容量はどうやって決めるのですか?
改善前の力率と目標力率から、必要な無効電力の差を求めて算出します。ポイントはピーク時ではなく、実際の負荷変動の幅で考えること。ピークに合わせて1群にすると軽負荷時に進み力率になるため、群分けして段階投入する設計が基本です。
Q. 低圧側にコンデンサを付けてもよいですか?
構いません。むしろ低圧幹線の電流まで減らせるぶん効果は大きくなります。ただし台数が増え、管理箇所も増えます。高圧一括は管理が楽、負荷直結は効果が最大、というトレードオフで選びます。
Q. コンデンサに寿命はありますか?
あります。内部の素子は経年で劣化し、膨れ・油漏れ・異音が出ることがあります。高調波の多い環境では劣化が早まります。点検では外観と温度、そして設備更新の目安時期を意識してください。異常のあるコンデンサをそのまま使い続けると破裂に至ることもあります。
Q. 太陽光を入れると力率はどうなりますか?
パワーコンディショナは通常ほぼ力率1で運転しますが、受電点で見た力率は変わります。有効電力Pが太陽光で相殺される一方、負荷の無効電力Qは残るためです。太陽光を導入したら力率改善設備の再検討が要ります。系統連系は第13回で扱います。


次回予告

第12回:接地 ― A種〜D種の目的と図面上の表現
設備全体にかかる話です。4つの接地種別を「なにを守るための接地か」で整理します。B種接地が変圧器の二次側にある理由(第9回の混触の話の答え合わせ)も扱います。

参考:高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/内線規程 JEAC 8001/高調波抑制対策ガイドライン/各電力会社の電気供給約款(力率割引)

次に読むならこれ【コンセント設備の設計マニュアル⑥・最終回】図面化と拾い・積算 ― 「あとで拾える図面」で締めくくる設計マニュアル